第32話 「イヌの町」
あばよ、ノアの町。
愛しの町に別れを告げ、俺は旅立った。
異国の大商人マルコ・ポーロの馬車に揺られ、アビス街道を走る。
特にやることがない俺は、馬車の中でゆったりと過ごした。
どこか寂しく感じるノアの町を、遠く離れた場所から眺めている俺な訳だが、馬車の荷台の中で座っているだけというのは、実に退屈である。
しかし楽なもんだ。
整備された平らな道を、ただひたすらに馬車に乗って進むだけなのだから。
乗り心地も案外悪くない。
マルコが俺に話しかける。
「本当に北で合ってるんだな?」
「そうだよ、北だよ北、とにかく北に進め」
「このまま行くと、イヌの町に着くんだが」
「イヌの町か、とりあえずそこまで」
「イヌの町ね」
ムガロは北に向かった。
その痕跡があった。
匂いを辿ると、おそらくイヌの町に続くはずだ。
「なあマルコ、後どのくらいだ?」
「もうすぐのはずだ」
「そうか、にしてもその馬速えな、それにぜんぜん疲れねえ」
「馬じゃない」
「馬よりよほど便利さ」
「こいつはウダイっていう生物だ覚えとけ」
「行商人にとっちゃあ、馬なんかよりこっちが主流だ」
ふうん。
「っで、そいつに名前とか付けてんの?」
「ああ」
「なんて?」
「バシャウマだ」
「・・・・・」
それからさらにウダイを走らすこと1時間、やがて、町らしき面影が見えてきた頃、人々の活気がやっと感じ取れるようになった。
あれがイヌの町か。
ずいぶんとまあ、ごく普通の町だ。
どうやって町を回しているのかまったく検討もつかない。
商業も牧畜も作物も宗教も、どれも盛んではないと聞く。
この町は、ノアの町から北上して数10キロメートルの距離にある。
属しているもの以外は普通の町だ。
ノアの町、ミネの町、イヌの町、アヌの町、ウクの町は、ノアとその子孫らが作り上げた由緒正しき町である。
そして、それらの町はアダムス平野と呼ばれる場所にある。
ウダイの行商人、マルコ・ポーロに礼を言いイヌの町の入口へ向かった。
とは言ったものの、入口など無かった。
入口どころか町を囲う柵すらなかった。
ここら辺は襲ってくるクリーチャーや盗賊も居ないのだろうか、だとしたら、この世界にしては珍しく平和ボケしてそうな村だ。
間違えた……町だ。
さてさて、勝手に入っても宜しいのでしょうか。
土足で失礼。
早速町に入った。
小さな町だ。
俺は町に来た目的を忘れちゃいない。
ムガロを追ってここまで来たんだ。
よし、町の人々に聞き込み開始だ。
「おっさん、ちょっと良いかい?」
「何だい?カツアゲでもすんのかい?」
「この辺で白髪の女を見なかったか?」
「ああ、グランマのことか?」
「違う」
「ならホワイトだ」
「ええっと、目が黒くて角が生えてて、フードを深く被っている若い女だ」
「ううん、そんな奴は知らんな、話はそれだけか?」
「まあ…」
「ん」
おっさんが俺に手を差し出す。
「何だよ」
「ん・・・!」
「は?」
「ん”ん”!!!」
「あ?」
「金」
最初っからそう言えよ。
俺はおっさんに100ポンドを渡す。
すると彼は機嫌悪そうに去っていった。
それからも暫く聞き込みを続けるも、大した情報は得られなかった。
ムガロの匂いはここで途切れている。
ここから先の行方が分からない。
どうやって消えたんだ。
分からない。
何もかも。
どうして出ていったのかも。
理由も訳も分からない。
俺は絶望し、町のベンチに頭を抱えながら座っていると、とある男4人衆の会話が聞こえてきた。
「くそっ、畜生っあの女!絶対コロス!」
「落ち着け保身のジョウ、たしかにお前の犬はひどい目に合った」
「落ち着けるかよ!あの白髪の魔女のせいで、俺の犬が、玉が一個なくなったんだ!」
「それは災難だったな、でも去勢チンポのお前には嬉しい話じゃねえのか?」
「んなわけあるかよ!」
「ペットは飼い主に似ると言うが、まさかアソコまでとはな」
「おい、その話、詳しく聞かせろよ」
「んな?っだてめえ」
奴らは俺の顔を見た瞬間、ビビり散らかしたような顔をした。
「誰でも良いだろ」
「っで、その白髪の魔女って?」
「・・・・・」
「髪が白かったんだよ」
「俺が昔、子供の頃、チンコを切り落とされた事があってな」
「切り落とされた?」
「ああ、こう、ナタかなんかでズバッとな」
彼はそう言いながらジェスチャーをする。
「そいつにやられたんだ」
「あの野郎、20年前と姿変わらずで現れやがった」
「まるで魔女さ」
「古のな」
「さっき20年ぶりに、たまたま町で見かけてよ、復讐しようと思ったんだが、逆に俺の犬がやられた」
「ははっ、ははは!」
「ハハハハハ!」
「なんだよそんなに俺のチンポがおかしいか?」
「違えよ、ありがとな」
間違いない、ムガロだ。
それに、彼が「さっき」って発言したということは、彼女が近くにいるという何よりも証拠だ。
にしても20年前って、あいつ一体何年生きてんだよ。
200歳って話もあながち嘘じゃねえのか?
情報の宝庫、この町の唯一の酒場、『スワロウテイル』に行くことにした。
ふむ、ここか。
地味な看板ぶら下げやがって、分かりづれえじゃねえか。
ピュロロン♪
入店したら変な音が鳴った。
店長らしき人物が酒のコップを磨いていた。
「おい、大将!一番キツイ酒お願い」
「ぐはははは、威勢がいいなあ、若いの」
「てめえみてえな若造にゃあ、こいつをお見舞いだ」
ドン!
「ミルクか?馬鹿にしやがって」
「そいつはミルクじゃねえさ、白洋酒っていってなあ北側諸国の酒さ」
「東の帝国から仕入れた」
へえ。
俺はそれをいっきに飲み干す。
ほらな、なんともねえ。
「やるじゃねえか、サービスに、南国の果物をくれてやるよ」
「なあ大将、俺は人を探してるんだが、そういうのに長けた人物を紹介してくれねえか?」
大将は頷いた。
「俺の知り合いにドーベルマンとイヌイットって奴がいるんだが、そいつらがこの町の情報屋だ」
「毎晩俺の店に飲みに来る、今夜また来い」
「ああ、助かるよ」
俺はその言葉を聞いてとりあえず店の外に出た。
近くにいるはずなのに、匂いが辿れないのは、どういうことなのだろうか。
もしかして、飛んでいってしまったのだろうか。
いやいや、そんなわけがない。
色々、噂によればその白髪の魔女は、氷の魔法を使うらしい。
実際にその現場も見た。
路地裏全体が、凍っていたのだ。
永久凍土のように溶けないらしい。
ある人は氷の魔女と呼んだ。
またとある老人は白い悪魔と呼んだ。
随分と、滅茶苦茶やってるみたいだな。
それに、氷の魔法というのがどうにも気になる。
ムガロは魔法が使えなかったはずだ。
奴の能力なのか?
とりあえず俺は、目の前のえげつない氷を溶かす事にした。
大剣で氷を砕き、粉々にした。
炎で炙って溶かそうと思ったのだが、中々溶けなかった。
このまま火力を上げ続ければ辺りが燃えてしまいそうなので辞めにした。
こんな所で放火魔になんかなりたくない。
大人しく夜になるのを待つとするか。
--
夜になった。
約束通り酒場に向かった。
「話は聞いているよ、俺がドーベルマンだ。そしてコイツがイヌイット」
「よろしくな」
「っで誰を探すんだ?」
「名はムガロ、白髪の女で、鬼人族の見た目だ」
「いつもフードを被っているのも特徴だ」
「なるほど、ムガロか、奴はこの町でフォックス・シーンに合っていたはずだ」
「とりあえず奴の店に行くぞ」
俺たちはフォックス・シーンに合った。
狐顔で防弾チョッキのようなものを着ていた。
どうやら武器を売っている武器屋らしい。
「ムガロか?ああ、来たね。うちの常連さ」
「昨日、ここで弾と包帯を買っていったよ」
「どこに行ったか知っているか?」
「さあね、僕もさっぱりさ」
「ふうむ」
なるほど、手がかりなしか。
「っで、狐野郎、いつまでこの町にいるんだ?」
「明日には出ていくつもりだよ」
「どこへ?」
「この大陸も随分と周ったからな、そろそろ新天地を目指すことにしたんだ」
「俺は、〝不気味の谷〟の向こう側に行く」
「はああ!?おいおいマジかよ死ぬ気かよい、文字通り死の淵を渡る様なもんだぜえ?」
「なんだよ、〝向こう側〟って」
「お前、知らないのか?」
「向こう側には、もう一つの大陸と呼ばれるほどのクソでけえ土地が広がっているんだ。そして、クリーチャーどもがわんさかいるやべえ所さ」
「魔力の掃き溜めになっていて、まあ、弱え奴はまず生き残れねえ世界だ」
「お前もソルジャーを目指すんなら知っとくべきだぜ?」
「ソルジャーねえ」
「まあ、たいしたコネも金も学もねえ俺がやれる職業といやあ、それだけか」
「でも、向こう側は面白い所らしいぜ」
「こんな無気力なパナム王国よりずっとエネルギッシュな生活を送れそうだ」
「へえ、でも俺は無気力でいい」
「そうか」
どんな所なんだろう。
「なあ、もっと教えてくれよ」
「え?ああ、僕もそんなに詳しい訳じゃないからなあ、知ってるのは」
「この世界の真ん中にあるってことさ」
「世界の真ん中?」
「ああ、この世界は、4つの大きな大地があってそれらの領域は互いに干渉し合っている」
「今僕らがいるのはルドロス大地で、まあ一番経済的で豊かな所さ」
「ああ因みに、不気味の谷の向こう側は〝不毛の大地〟と呼ばれてるよ」
「まあ、僕が知ってるのこれだけかな」
「そういえば、彼女言ってたな、いつか向こう側に行くって」
「ムガロが?」
「ああ」
何でまた。
--
翌日、借りた宿で目を覚まし、朝日を浴びた。
そろそろ次の町に行くか。
しかし、宛がないな。
やれたれ、困ったもんだ。
宿で朝食を取った。
この宿は、一階が飯屋になっており、昼間は飲食で稼いでるそうだ。
家主のおばちゃんに聞いた話によると、この町を仕切っている重要人物は、いや、人間では無いのだが、とにかくこの町のトップの存在が少々特殊なのだ。
アルチューのチンパンジーがこの町を管理しているらしい。
レディーファーストと老人優先による譲り合いが行われた路地裏を通り、ドックフードの不味さに気づいた犬が多発している住宅街を抜け、ペンキが乾いていないベンチに座った。
それから、町を散歩していると、キャンプ用品専門店の前でたむろしている三人組と仲良くなった。
彼らの名前は、ダックス、プードル、ブルドックだ。
俺は彼らと友達になった証に、一緒に昼飯を食うことになった。
ダックスは、ホームレスみたいな見た目で、髪を切ってないし、爪も伸ばしっぱ、ハゲてるし歳もそれなりに取っている感じだ。縁の細い銀枠のメガネを掛けている。
プードルは、卑しい感じの見た目で、金に汚い。孫の顔を見れば遺伝子の強さに度肝を抜かれることだろう。間違いなく老後は退職金をすべて株に捧げる。
ブルドックは、アメリカの好青年って感じだ。ただ、麻薬の売買に手をだして警察に捕まりそうな頭の悪さがある。若くしてヘルニアを患っており、これまでの人生で苦労ばかりしてきたそうだ。もし豚箱に入れられたら、穴ほって脱獄するタイプの人間だ。
「やれやれ、疲れたぜ」
「もう嫌だ」
ブルドックがそう呟いた。
「聞き飽きたぜそのセリフ」
ダックスがブルドックにそう返した。
「俺は足を洗うぜ、大人になるんだ」
「お前はアヒルだろ」
「クワーっかっか、クワーー!!」
プードルがアヒルかなんかの鳴き真似をし、一同が軽く笑った。
「らしくないぜ」
「足を洗うって、お前ら、なんか悪い事したのか?」
ショウが彼らに質問する。
「・・・・・」
「実は俺たち、昨日強盗したんだ」
「ははっ、面白い冗談だな」
ウェイトレスが来た。
「ご注文は、どうされます?」
「コーヒーを、それと彼にハーブを一茎」
「かしこまりました」
「っで、話の続きなんだが、今は銀行強盗するのが楽な時代なのさ」
「銀行が?嘘つけ、返り討ちに合うだけだろ?」
「いや、そうでもない、最近は保険に入ってる銀行が多いから、下手な抵抗をしないのさ」
「セキュリティーを雇う必要もなくなる、人件費削減さ」
「なるほど」
「銀行強盗すんのか?」
「ラクっていっただけだ」
「酒屋より?」
「ああ、今の時代、酒屋とか飲み屋は自衛用に銃をもってる、それに奴らは執念深いから、結局殺す羽目になる」
「殺しはヤダな」
「オラはイイけどな、人、いっぱい殺ちたい」
「いいか?酒場はだめ、殺しもイヤ」
「オラはイイけど」
「うるせえ黙れ」
「とにかくココだ」
「レストランを叩くってか?」
「パシッ、パシッ、ぷへはあ!」
「レストランは強盗に狙われにくい、だから無防備だ」
「それにただの雇われウェイトレスが店のために命を落とすか?」
「それもそうだな」
「でも、この店に金があるとは思えんが」
「狙うのは客の財布だ」
「…なるほど、そりゃ名案だ」
「あったまイイ!」
どうしてこんな奴らと仲良くなっちまったんだ。
案の定、奴らは昨晩強盗をしていた。
しかもスワローテイルで。
そして俺は、奴らが強盗をして得た金で奢ってもらった訳だ。
食事中に、兵士みたいな格好をした男が近づいていた。
俺以外はみんな気づいていなかった。
「君たち、ちょっと良いかな?」
その男が俺たちに話しかける。
彼らもその声でようやく気づいた。
彼らから、「しまった」という心の声が聞こえた気がした。
顔を見ればひと目で分かる。
「私は衛兵だ、支所まで同行を願う」
どうやら、ユダ王国の衛兵のようだ。
プードルが一目散に逃げるが、一瞬で捕まった。
「まて!俺たちはやってない!人違いだ!」
「問答無用!黙ってついて来い!」
そして何故か、俺も捕まった。
逃げても良かったのだが、とりあえず捕まってみた。
「ふざけんなよ、必ずぶっ殺す」と言いたい所だが、ここはあえて、発言を控えておこう。
すぐに俺たちはイヌの町の小さな牢屋に入れられた。
この町には裁判所がないので、別の拘置所に送られることになるのだが、普通ならユダ王国の方で裁かれるらしい。
しかし俺は、身分証を持っていたのでパナム王国の方で裁かれることになった。
俺のダチのダックス、プードル、ブルドックは、ユダ王国に連れて行かれた。
もう合うことは二度と無いだろう。
まあ、あんなどうでもいい奴らのことは置いといて、問題はこの俺な訳だが、さて、一体どうなることやら。
イヌの町の古くて小さい牢屋で1日ほど、首を長くして待ってようやく、送迎用の馬車が来た。
いやもうホント、待ちすぎて首がろくろ首になる所だった。
「罪人のくせに立派な馬車でお送りします、どうぞこちらへ」
馬車の中から執事のようなおじいさんが紳士の立ち振舞で俺を歓迎する。
手綱で縛られた俺を引っ張り、馬車の中に連れて行かれる。
こんなボロい縄、簡単に千切れそうだ。
しかし、今は大人しくしていよう。
この国の監獄生活もちょっと気になるしな。
飽きたら脱獄でもしよう。
俺はパナム王国のどこかにある拘置所に送られた。
独房の牢屋に入れられる。
俺はとりあえずベットに横たわり、休憩することにした。
しばらくそうしていると、隣の拘束者から話かけられた。
「よお、何やらかしたんだ?万引きか?」
「何もやってねえよ」
「へっ、みんなそう言うぜ」
「裁判はいつだ?」
「知らねえ」
「もし裁判が始まったら肝に銘じとけ、長引きそうになったらさっさと罪を認めるこった、俺みたいになるぜ」
「俺はよお、しょうもねえ罪で捕まったわけだがよ、ずっと裁判で無罪を主張し続けていたら、想像以上に裁判が長引いちまってよ」
「何年ここにいるんだ?」
「20年間だ」
「ちなみに禁固何年の罪だったんだ?」
「2年だ」
「・・・・」
それから一晩たったある朝、俺の部屋まで監視役がやってきて、移動させられた。
俺はよく分からんでかい建物の中に入れられた。
パナム王国の裁判所だった。
そこで裁判が行われた。
「被告は、武装強盗の共謀及び、飲食店での金銭未払、つきましてやロスアイランド酒蔵を荒らした罪の容疑がかけられている!」
「さあ、被告!なにか言い訳は?」
「証拠はあるのかよ」
「・・・・」
それはやった奴のセリフだ。
しまった〜、墓穴掘った。
「ノアの町にあるレストランの『鹿が叱った亭』で行われた食い逃げの目撃者に来てもらった」
どこかから、その目撃者を名乗る女性が現れた。
「どうかね?コヤツで間違いないかね?」
「はい、間違いありません」
嘘だろ!?
「次、ロストアイランド酒蔵の持ち主だ」
「よう、あん時のクソガキ、よくも逃げやがったなあ」
あ、あん時のおっさん。
なんでいるんだよ。
「ロスト、間違いないか?」
「ああ、コイツだ。ただ、もう一人居たはずなんだが、まあ、ここはクソガキ一人でが満足してやるよ」
くそっ、言い逃れできない!
「それでは、貴様は有罪というわけだな」
「異議あり!」
「なんだ被告!」
「俺は強盗なんざやってねえ!」
「しかし、彼らが強盗して得た金で飯を食べたのは事実だろう?ならば、立派な共謀だ」
「それはあまりにも理不尽だ!」
「ふん、まあ、強盗の共謀については無罪にしてやってもいい」
「しかし!それ以外の罪は真面目に裁きを受け給えよ」
「裁判官、ちょっと良いですか?」
「うん?どうした弁護人」
「私は、彼のすべての罪において、無罪だと主張します」
「なぜだ!目撃者がいるのだぞ!」
「まず、食い逃げについてですが、原則として、注文履歴の書類に金銭が支払われたかどうかのチェックが必要になります」
「その書類がなければ、裁けないようになっています」
「そして、その書類は売上の二割を税として国に収めるための重要な資料になるため、書類の制作をサボるのは脱税を疑われます」
「まあ、ノアの町の店なので我々がとやかく言う必要はありませんが、パナム王国の法で裁くのであれば、彼は無罪となります」
「そして目撃者は、店の関係者でもなんでもないただの客、しかも旅行者であるためあまりにも不自然だ」
「あなた、彼女にお金でも渡して目撃証言をしろとでも言ったのでは?」
ロストアイランドのあっさんが轟く。
「あなたは、常日頃から、お偉いさん方に賄賂を渡しているそうですね」
「む、そうなのかね?」
「さ、裁判官!それはとんでもない言いがかりだ!」
「というかそもそも、ロストアイランドについて調べてみたんですがね」
「あの島は誰の所有物でもないそうですね」
「つまり、勝手にその島に酒を溜め込んでいたわけだ」
「まあ、誰のものでもない島に好き勝手やったところで、誰も文句は言いませんが、その島で酒を保管した場合、その酒は廃棄処分したものという扱いになるため、荒らしの罪もクソもありませんよ」
そう、この弁護人は俺が選んだ。
有能そうだと思ってこの人にしたのだが、正解だったな。
「よって、彼に掛けられたすべての容疑において、無罪を主張します!」
「裁判官!判決を」
「ぐぬぬ、む、彼は、無罪とします、これにてへい…」
「まて」
裁判官のさらに後ろにドーンっと座っている偉そうな奴が、閉廷を延期させた。
「どうされました、芋男爵様」
「・・・・・」
「ちみ、うざいから有罪」
「え…?」
「ひ、被告は、有罪とする!判決は!禁固千年!」
おいおいおい、ふざけてんじゃねえぞ。
「これにて、閉廷!」
カンカンカン!!!
裁判官が叩いたハンマーの音が、法廷中に響き渡った。
俺は晴れて罪人となった。
Fuck you
くそったれ




