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心世界  作者: rin極
第六章 修行編 ㊦
30/48

第30話 「踊れ」



師よ、なぜあなたは自ら片目片腕を切り落としたのか。


煩悩を断つために切り落とす。


師の逸話である。





俺は戦う術を磨き、来たるべき戦線に備え、自己研鑽に励んだ。

まず俺がやったことは、意思の統一、すなわち自問自答である。

己に問うた。



『心躍るビジョン』



その言葉は、俺の魂の真髄に響かず。

俺は思った。


「ショウ、はっきり言っておく」


ビジョンを持たずして、修行など出来ないと。

目的のない修行ほど無意味なものはなかった。

でも何を目標にすればいいのか分からなかった。

どうやって修行に励むべきなのだろうか。


「お前さんに戦いの才能は無い」


俺はまだ、なにも成し遂げてなどいなかった。


「才能ってのは天からの授かりものだ」


目的が無いわけじゃなかった。

ただ、目先の目標が思いつかないだけだ。


「されを最初から手にしてる奴がいるって事に、ワシはひどく落胆した」


だから、己に問うた。


「なあ、お主のゴールは何じゃ?」


この果てしない修練を終え、結末はどこへ向かうのか。

答えは自然と出た。


「師匠、前に俺に言ったよな、俺には才能はないがセンスはあるってな」


ゴールなんて、いらなかった。


「十分だ…!それで戦えるっ…!」


世界が終わるまで、いろんな国にいって、流れるように生きられれば、それで良かった。


「じゃからお主、どこへ行きたいんじゃ」


ただ世界を見て回りたかった。


「才能がなくともセンスがあるならよ、それなら…」


行き先なんて、そんとき決めりゃあ良い。


「センスを限界まで磨けばいい」



ああ…自由になりてえ…。





いつか、この弱さが足枷になるかもしれない。



そう思った。



俺の夢は、夢じゃなかった。


俺の人生の目標であり、目的であり、貫くべき信念である。



だからよお、心が踊るビジョンなんてよ、そんなのただの夢じゃねえか。


俺の夢なんか、そんなもんとっくに見失っちまったよ。


もはや今の俺に必要なのは、生き様を貫き通すための、盤石(ばんじゃく)な信念だけだ。



ははっ、やっぱそうなるよな。


とにかく俺は、強くならなくちゃいけねえって訳だ。



--



俺は今、師匠に洗濯物を干すのを手伝わされている最中であった。

今日は、朝から雲一つとない天気で、ちょうどいい風が吹いていて、おまけに湿度も低いし気温は暖かい。

まさに洗濯物を干すのにはうってつけの日だ。

師匠曰く、こういう日は洗濯狐が現れるらしい。


「今日は洗濯日和だ」


洗濯狐が我々の目の前にさっそうと現れ、そう呟いた。

師匠が洗濯狐の対応をする。


「洗濯狐どの、お元気でしたか?」

「ああ、悪くない。しかし、私は長く生きすぎたようだ」

「それに、私はただ、地獄に呼ばれこの地に馳せ参じただけであるが故に、すぐにここを去らなければならん」

「天界に参られるのですね?」

「・・・・」

「アブソリュート、私はいつまでもそなたを待っているぞ…」


洗濯狐はそれだけ告げると、去っていった。

しばらくの間沈黙が続いた。

やがて、師匠が静かに語り始めた。


「ショウ・・・」

「洗濯狐が、この世を去るようだ」

「…うん」

「ハウメアの日を待たずして、先に逝くとはな」

「洗濯狐、死ぬのか?」

「ああ、おそらくな」

「やれやれじゃ、これでもう…タイガの森を守る残りの守護呪霊は、米とぎ(ババア)小豆婆(あずきばあ)の愚者共だけだとはのう、腐っても婆婆とはいえ、厳しかろう…」


師匠はため息をついた。


「森の精霊も居なくなってはや十数年、もはや森の安らぎも守りきることは難しくなるじゃろうて」


カッコ、てんてん句読点、カッコ閉じ。


「・・。」


「それまで続いてきた平穏も、いつか崩れる(さが)、これを人間の心に例えるならば、それはきっと…その人は、不安定な荒波の上を彷徨っている」

「ところでお前さん、修行においても、心の平穏を保つことは重要であることを知っておるかの?」


派手なハテナぶっ放す。


「!!?」

「ショウ、強き心を保つには、何が必要だ?」


俺は質問に答えようと、思考する。


「強き心を保つには…」


ノーアイディア。

直訳すると、


「分からない」


師匠が答える。


「それは()()()()だ」


・・・・ビジョン。


「それが無ければ、成し遂げられない」

「ビジョンは、お前さんが望む未来へと導くだろう」

「ショウ、考えるんだ」

「お前さんがこの先、何を行い、何を成すのか」

「未来について、己と対話するのだ」

「願いというものは、思い続けることで叶うものだ」

「お前さん、これからどうするつもりなんだ?」

「具体的なビジョンは、考えているのか?」

「・・・・・」

「今、考えてるよ…」

「そうか、まあ…ゆっくり考えるがよい」

「だがこれだけは忘れるな、お前さんは世間一般でいう未来ある若者かもしれんが、この世界に未来は無いのだぞ」


ああ、分かっているよ、そのぐらい。



--呼吸を整えて



ここは森の中、熊さんに出会う訳もなく、少し開けた場に出ると、そこは日の光が差し込む森の樹海であった。

プーさんと愉快な仲間たちのような小動物が共鳴し、森がそれに応えると同時に、時間は川のように流れていく。


「あの花が咲いたのは、そこに種があったからで、いつかまた枯れてゆくだろう」

「しかし、落とした種が次なる世代へと花を咲かす」

「そして、巡り、巡んでゆくのだ」

「つまり、きっかけが必要なのだ」

「これが〝循転(じゅんてん)〟だ」

「ワシが培ってきた技のすべてだ」


循転とは、生命の循環。

故に、循転の本質は、体内エネルギーを循環させることにある。

この技術は魔法使いが得意とし、故に、魔力の扱いに長けた人物が魔法使いになれるのだ。

しかし、ショウは魔力を持たない。

では、何を巡らすというのか。

おっと、忘れてはいけない、ショウの体内には龍種のヒバナがいるではないか。


祖龍子(ソリューシ)エネルギーだ」

「それは、龍種が活動するのに必要なエネルギーである」


《この世界にはいろんな種類のドラゴンがいてな、族で分けられているんだ。それぞれの族の長は〝柱〟と呼ばれ、〝暫定(ざんてい)龍種〟としてその存在を世界に知られている。暫定龍種に任命されている龍で俺様が知っているのは、まずはこの俺様、日花(ヒバナ)、そして、現在貴様の師匠アブソリュートに移った氷我(ヒョウガ)、他には、雷電(ライデン)、亜国、ぐらいんなもんか…》

《あとの雑魚は暫定残種(ざんていざんしゅ)だ。奴らはドラゴンというよりトカゲに近い》


「ワシらのように祖龍子エネルギーを人間は、いわゆる龍人としてソルジャーの間では認知されておる」

「〝循転〟を行うためには、その祖龍子エネルギーを体内で循環させなければならない」


てなわけで、循転を出来るようになるために、まずは、呼吸の訓練から始まった。


鼻から息を吸い、口からゆっくりと吐く。

吸うときはお腹を膨らませ、吐くときは縮める。


たったこれだけだ。

なにも難しいことはない、数回ほどの呼吸であればだが。

しかし、何時間も続けるとなると、途端に難易度が跳ね上がる。

これを意識せずとも出来るようにしなければならない。

ああ、難し。


気を取り直して、とりあえず効率よくこの呼吸法を身につけるにはどうすれば良いかを考えた。

小一時間ほど熟考すると、呼吸を制限するという一種の縛りというアイデアを思いついた。

これが一番手っ取り早いと思ったので、やってみる事にした。

さっそくヒバナに頼み、この呼吸法以外では息が出来ないようにしてもらう。


効果はてきめんで、一日足らずで身についた。

何度か呼吸困難でパニックになったが、まあ、それは致し方ないだろう。


「この呼吸法は、体の緊張を和らげ、常にリラックスの状態を作り出すことが出来る」

「以前よりも集中力が増すことだろう」



--ゾーン



「ところでお前さん、人間は本来の力の約二割ほどしか出せないように設計されておるという事は知っとるかのう?」

「まあ、話ぐらいは聞いたことあるよ」

「実はな、これを突破できる方法があるのだ」

「かの人神(ひとがみ)ホモデウスが、人間に与えた力の限界を定めた、しかし、人間には設計ミスがあった」


「集中力が極限までに高まった時、人間は限界を超える」

「人はこの現象を潜在能力の開放、ゾーンと名付けた」


「ゾーンに入ることが出来れば、お前さんが持つ潜在的な能力をすべて引き出せるようになり、感覚は研ぎ澄まされ、狩りをするのに最適な状態を作り出せる」

「ゾーンは、己を超え、人間を超えることが出来る」


「なるほど、火事場の馬鹿力って奴か」

「でもよお、それマズいんじゃないか?体が持たねえ」

「そこは再生でなんとかすんじゃ」

「壊したそばから治せばよい」


ゾーンに入る方法は、とにかく集中することである。

呼吸を整えて、意識の統一を計るのだ。


それから俺たちは、極限の集中を得るため、いろいろと試した。

釣りをしたり、狩りをしたり、師匠と小石でキャッチボールしたりと、いろいろとやってみたは良いのだが、なかなかゾーンの感覚が掴めなかった。


「ショウ、銃弾を避けてみるか?」

「おう・・・え?今なんて?」

「お前さん、死ぬ覚悟はできておるか?」

「え、ええ?」


師匠が銃を構える。


バアアアアアン!


師匠が俺の脳天を撃ち抜いた。


バタッ。


俺は一度気絶して倒れる。

そしてすぐにハッと起き上がった。


「・・・のう、どうじゃったか?一度死んでみた感想は」

「痛エエええ!!」

「ハッ、とっとと構えろ馬鹿たれが」

「いきなり過ぎんだろ!」

「あれえええ!?脳みそン中に銃弾が入ったよ!どうしよう!」

「取り除くしかなかろうて」

「ほれっ」


デュクシ!


師匠の指が俺の頭蓋骨を貫通し、頭の中の銃弾に触れた。


「んギイイイイイ!!脳みそ出るううう!!!」

「じっとせんか!こぼしてまうぞ!」

「ほら、弾は取り除いたぞ、さっさと再生しろ」

「うほっ、脳汁やべえっ!」

『再生』


ギュルル!!!


頭に開いた穴が塞がる。


「さて、もう一発行くぞ」

「まっ…!!!!!!」


俺が集中する前に師匠はすでに銃を構えていた。

師匠が至近距離で銃の引き金を引いた。


「・・・・・っ!」


その瞬間、銃弾がスローモーションのようにゆっくりと見えた。

俺は一瞬にして、極限の集中状態に入ったのだ。


弾道の軌道が、見える!

こ、これがっ!これこそが!〝ゾーン〟って奴か!


俺は歓喜した。

これなら銃弾を避けれられると思ったからだ。

しかし、身体はワンテンポ遅れて動いた。


ヴァアアアアン!!!!


結果はさっきと同じ、弾は脳天をぶち抜いた。


「ゾーンの感覚は分かったな」

「ああ、でも、身体が思うように動かなかった、どうしてだ?」

「当然の話やのう、見えても体が動かん」

「それは、目ェ自体は直接脳みそと繋がっておるから、視覚の伝達は恐ろしく早いが、頭で考え、その命令が体の運動機能に伝達する速度には僅かながらスキがある」

「だが案ずるな、それを改善できる技術こそが〝循転〟なのだ」

「〝循転〟はその僅かな時差をさらに縮める事ができるという訳だ」



--循転



極限の集中状態、〝ゾーン〟の入り方を覚えた俺は、いよいよ〝純転〟を習得するための訓練に入った。


「ワシらのような龍人は、後頭部から脊髄にかけての部位に全てのエネルギーが収束している」

「なあ、そもそもの話だけど、龍人って一体何だ?」

「ふむ、まあ知らなくても仕方あるまい。良いか、龍人というのはソリューシを持つ人間の事だ」

「お前さんの場合は龍種のヒバナが体内に居るであろう?」

「ああ」

「ワシは自我を持たないヒョウガの力をもっておる」

「え?師匠も体ん中にドラゴンがいるのか!?」

「ワシのは、お前さんのそれとはチト違う、龍種ヒョウガの力を持ってるだけで体内にヒョウガがいる訳ではない」

「えっと、するてっと〜つまり、何だって?」

「ヒバナ、小僧に教えてやれ」


《しゃあねえな、俺様がルーキにも分かりやすく説明してやるよ》

《世の中にはいろんなドラゴンがいるが、ヒョウガに関しちゃ、もう本体も魂も消えてエネルギーだけになっている》


「へえ」


「ヒバナ、龍種の体について、詳しい説明をしろ」


《おい、俺様に指図すんなよ、この俺様に物を言って良いのはショウだけだ》

《リュートてめえヒョウガの力を持ってるからって図に乗るなよ?煮て食うぞ》


「ああもうワシが悪かったよ、でも小僧の為にも教えてやってくれ、ワシよりお前さんの方が詳しいであろう?」


《ふん、いいかショウ、このクソジジイの言うことに耳を貸すなよ?》


ははっ、いいからさっさと説明の続きを。


《龍種は祖龍子エネルギーをもつクリーチャーのことを差す、脊髄のとこらへんに龍子核(リュウシカク)ってのがあって、そこにエネルギーが集まってるんだ》

《循転をすることによって体内のエネルギーを循環させるって訳》

《さあ、やってみろ、ゾーンに入った状態で脊髄の所に眠っているエネルギーに集中するんだ》


「よし、やってみるか!」


俺は集中した。

首の後ろに、エネルギーが収束している。

それを感じ取るんだ。

暫く集中した。


「くそっ、ちっとも分かんねえ」


《じゃあ俺様に主導権を渡せ、ソリューシが流れる感覚を味わせてやる》


「頼むよヒバナ」


俺はヒバナに体の主導権を渡した。


おお!体の中に何かが流れるような感覚が!


《これが循転だ》


『返せ』


「なるほど、これが!循転の感覚か!」


やってみたら意外と簡単だ。

師匠は、俺が簡単に循転を習得したことに驚いていた。


「いやはや驚いた、僅か2日ほどで〝循転〟を習得するとは」

「へっ、こんなん余裕よ」



--



純転を習得した俺は次の修行に移った。

今度は体の使い方を覚える訓練をする。


「さあ!この滝を泳いで登れ!鯉の滝登りのようにな!」

「ええ!!!マジカヨ!!」


俺はそれから日中ずっと滝の中を泳ごうとした。

すぐにこれは無理だと悟った。


「なあ、師匠、どうやって登れんだよ」

「頑張りたまえ、精進するのみ」

「ちょっとお手本みせろよ」

「年寄に無茶させんたらあかんでえ?」

「ちぇっ」


俺は滝を登る鯉を観察することにした。

鯉の動きはしなやかさがあってそれでいて力強い。


鯉の泳ぎ方からインスピレーションを得た俺は、取り合えず川を逆流して泳ぐところから始めた。

3日後、なんとか滝を泳いで登る事に成功した。


滝登りの次は帰らずの森でリアル鬼ごっこだ。

この修行では体をアクロバティックかつダイナミックに扱えるようになった。

木の上で移動するときは、そういうのが得意な動物の動きを真似て学習した。

森の中で走り回るのも、ウサギやオオカミなどの逃げ足の早い動物の動きを見て参考にし、実行した。


巨人の赤鬼にからは影になる場所を探しながら逃げ、脚力のある赤鬼からは全力で逃げた。

水平移動してくる青鬼にも手を焼いた。


途中からムガロも参戦した。

半場師匠に無理やり訓練に参加させられたのだ。


俺とムガロは鬼から必死に逃げる。

ムガロも中々身体能力が高く、俺ほどではないがよく動き回れていた。


しかし、体力は無限に有るわけではない。

有るものは尽きるのだ。


ムガロが鬼に捕まりそうになった。

高みの見物の鬼婆と師匠はたいそう面白そうに観戦していた。


「あああ!!!あのクソジジイイイイ!!とっととくたばりやがれエエエエ!!!!」


ムガロが必死に鬼から逃げながら、捕まる寸前でそう叫んだ。

俺はムガロを庇うために鬼の前に躍り出た。


「ムガロ、クソジジイじゃねえ」

「は?あんた何言って…」


俺は超高速に移動し、ムガロを庇った。


「ロマンスグレーだ・・・・!」


ダアアアアアン!!!


俺は巨体の鬼に押しつぶされた。


「ショウ!」


ムガロが俺の名を叫んだ。


「おや、死によったか?」

「死んだ?」


鬼婆と師匠が口々にそう呟く。


ばあああん!!!!


その時、ショウに覆いかぶさっていた鬼が吹き飛ばされた。

ショウがパワーで吹き飛ばしたのだ。


「死んじゃいなああああい!!!!!」


俺の形相を見た彼らは、驚いたような顔をした。

ショウから凄まじいほどの気迫とオーラを感じとったのだ。


溢れんばかりのエネルギーを振りかざし、暴発するその巨大すぎる力に圧倒された彼らは、額に汗を流すのだった。


「こいつは、とんでもねえ奴になりそうじゃわい」


鬼婆がそう呟いた。


「さあ!鬼畜生共!かかってきやがれ!!俺はまだやれるぞ!!!!」

「鬼さんこちら!!!!!」



--格闘訓練



鬼ごっこと並行して、対人格闘の修行が始まった。

ムガロも師匠によって強制参加させられている。


修行場所は龍草原にある大きな洞窟だ。

ここなら、天候に作用されず、帰らずの森のように直射日光も防げるので、ムガロも俺と一緒に訓練できる。


「さて、まずは戦い方の基本を教える」

「お前さん達、戦いにおいて重要なことが何か分かるか?」

「覚悟、とかです?」


ムガロが答える。


「ショウはどうだ?」

「ん〜、常に冷静でいることか?」

「ふむ、両者択一ともいかんが、どちらもいい線いっとる、正解といってもよいかもしれん」

「「はあ…」」

「ショウ、ムガロ、肉弾戦において重要なことはのう」

「環境を利用する事と、相手の弱点をつくことだ。戦い方はその時の相手や状況によって変えるものだ。臨機応変に」

「この2つの点を抑えるにはショウが言ったように冷静でいることが必要だ、相手や状況を注意深く見て判断する」

「さらに、攻撃するときに迷いがあってもいかん、強い敵に怯えてもならん、これにはムガロが言ったおり覚悟が必要だ」

「さて、今日はお前さん達二人には、その覚悟とやらを身に着けてもらう」

「覚悟は一番手っ取り早いからのう」

「さあ!ワシを殴れ!躊躇せず!人を殴る感覚に慣れろ!」

「ワシは動かん」

「え?殴っていいの?」


ムガロが聞いた。


「無論、人といのは殴るときに躊躇するもの、今回はそれをなくす…ぐほおおおお!!!!」


ムガロは積年の恨みを晴らすかの如く、まったく躊躇せず師匠の股間を思いっきり蹴った。

そして「よっしゃあ」と叫ぶ。


「次は俺の番だな!いくぜ師匠!」

「おらああ!!!」


股間を押さえ蹲っていた師匠の顔面を、サッカーボールのように蹴った。


「ぶほおおおお!???」


師匠は吹っ飛んでいき、洞窟の壁に激突し、ビタン大きな音を立てて壁にめり込んだ。

やがてバタリと地面に落ちて、あとには壁にクレーターだけを残した。


「あれ?やりすぎた?」


俺たちは師匠の元に駆けつけた。


「死んじゃいねえよな」


師匠がゴホッと咳をし呼吸が再開する。


「ねえ、ショウ、こいつまだ息があるよ、人思いに殺っちゃう?」

「おい、バカなこと言うんじゃねえ」


師匠がゼエハア言いながらむくっと立ち上がる。

体中から煙のようなものが出ていた。


「お前さん達、ちったあ手加減せえ、超絶痛かったわい」

「ごめんて…」


「まあよい、お前さんらには人を殴ることにまったく躊躇がないようだしのう、逆にそれが心配だが」

「覚悟は見て取れた、あとは実際に戦って冷静さを身につける訓練としよう」



Monsoon is coming soon

季節風はもうすぐ来る

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