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心世界  作者: rin極
第五章 学生編
26/48

第26話 「超常現象」



--10月6日



「ビビイイイイイイイイイイン!!!」


学校のブザーが鳴る。


「ざわざわざわ」


教室が奏でる雑音。

聖なる安らぎ。


「――――――――はい、それでは皆さん。資料を回収します」


ガタッ。


「¥ervo」

「ςλκБелые вороны...」


「なあ、ユリウスって何したんだ?」


^3あ。


「…これにて、授業を終わります」


ざあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。


「ノイズが聴こえる…もうすぐ冬か」


午後。


「ざつ、ざっ、ざっ」


土を踏む効果音。


「ヒューぴぴっ、キョエエエエ!?」


小鳥の(さえず)り。

今朝、校舎裏を歩いている時、白いカラスの死骸を見た。


ふと不思議に思った。

なぜ死骸は、生きている時と姿形が変わらないのに、人目でもはや命がないものと分かるのだろうか。


アアアアアアアアアアアアあああああああああああああああああああああああああああああああああ。


人は、(カラス)の死骸見ることが出来ない。


烏の死体を見ない理由。

それは、死時(しにどき)を知っているからだ。

まるで死神みたいだろ?

そして死を迎えた時、仲間がその死骸を片付けるのさ。

だから(すずめ)の死体を見ることがあっても、烏の死体を見る機会はまず無いだろう。


それが普通だ。

でもこの烏は違った。

こいつは俺に自分の死骸を見せた。

白い烏は仲間はずれにされて孤独に生きる。

だからこいつは最後まで、誰かに自分の存在を見て欲しかったのかもしれない。


俺は1人でそう想いに(ふけ)る。


カァァァァァッ


バサバサバサッ。


カラスの鳴き声がして、羽音が聞こえてきた。

音がした方角に顔を向ける。

その瞬間、数羽の黒いカラスが飛び去っていった。


カラスが飛び去った向こうに、1人の少女がいた。

ムガロだ。


ムガロは右手の甲に1匹のカラスをのせ、カラスと見つめ合っていた。

その様は、まるで会話をしているかのように見えた。

俺の存在に気づいたムガロが、俺に話しかける。


「この子は疫病神(やくびょうがみ)

「私のペット」

「へえ、趣味()りぃ」

「そう?」


それから、ムガロは寂しそうな目でカラスを見つめた後。


「行って」


彼女がそう呟いて、疫病神は躊躇(ちゅうちょ)せず空に向かって飛び去っていった。


それと同時に、校舎の方から学生の声が聞こえてきた。

彼女もそれが耳に入ったのか、俺に心配の声をかける。


「ねえショウちゃん、授業遅れるよ」


言われ、俺は午前の授業が迫っていることに気がついた。


「ちゃん付け辞めろよなあ…気持ちわりぃ」


俺はそう言って、中に入ろうと思ったとき、ふと立ち止まった。

空を見れば太陽が真上にあり、真昼だという事が分かる。

振り返ってムガロに問う。


「ていうかお前、外に出て大丈夫なのか」

「・・・・・」


それには一瞬、沈黙で答えた。


「後で話そ?屋上でね」


ムガロは質問には答えず、俺に背中を向けて歩き出した。

俺も校舎の中に入って教室へと向かった。


「・・・・・・・・・・・」


放課後、俺とムガロは屋上で会話をした。

まずは世間話からだ。


「なあムガロ、最近どうよ」

「別に、普通…」

「あんたこそどうなの?上手くやってる?」

「俺?俺は楽しくやってるよ」

「そう…よかったわね」


なんだか悲壮感が強いな。

そう思いつつ、ただ黙って屋上の柵に己の体重をダラーっと乗っけた。

そよ風が吹き、二人してボッーと屋上からの景色を見つめる。

なんだか眠くなってきたなあ・・・


会話を続ける。


「お前のペット、疫病神だっけ?ありゃ一体何だ?」

「・・・」


ムガロが一瞬固まる。

そして思考は蘇る。


「ああ、あれね、私が小さい頃から飼ってたんだ」

「頭がよくてお利口さんなの」

「お前がペットを飼っていたなんて、今日まで知らなかったよ」

「まあ、ちょっと()()()までお使いを頼んでたから」


隣国?


「へえ、それよりお前、外に出て大丈夫なのか?」

「何が?」

「…って、おいっ」


ムガロが鼻血を出していた。


「お前…やっぱり無理してんじゃねえか」


一刻も早く、彼女を太陽の光から遠ざけなければ、という思いで俺は無理やりムガロを建物の中に入れた。

彼女は嫌がって抵抗していたが、力が弱かった。


いつもより力が弱まっていたんだ。

彼女はあの華奢な見た目でよく騙されるのだが、一般的には怪力といっても良いほどの力がある。

とはいっても、俺のパワーには遠く及ばんがね。

彼女の様子を見る。


「馬鹿野郎」


ムガロは気絶していた。

俺はお姫様だっこをして屋上の階段を降りた。

途中、コイツをお姫様抱っこするのは胸糞悪いのでおんぶに切り替えた。


「ちっ、きたねえ…」


医療室までの階段を降りているとき、ムガロがよだれを垂らしながらスピスピと寝ていることに気がついた。

俺の服が汚れた。


最悪だぜド畜生。


頭にきた俺は、服についた(きた)ねえよだれをムガロの顔面で拭うと、再び目的の場所に向かって廊下を歩き出した。

それから、数分足らずで第1学生医療室へと到着した。

ムガロの病状を伝え、ベッドに運び終えた俺はすぐさま寮に戻ろうとしたが、医療の先生に止められた。


この子のために…と。


「いつまでも寝そべってる奴を、いつまでも待ってやるほど俺は過保護じゃねえ」

「寝てりゃ治んだろ?」

「ショウ君、そんな寂しい事言わないでください。この子は体だけじゃなく、心も痛めているんです」

「あなたの妹みたいなものでしょ?一緒に居てあげて」

「はあ…」

「言っとくけど俺、カウンセリングとか出来ねえっすよ」


やれやれ、手のかかる奴よ。

聞いてみると、ムガロはちょくちょく医療室に来ていたようだ。

保健室登校みてえな事をやってたらしい。


ムガロはクラスに馴染めなかったようだ。

ムガロがそんな悩みを抱えていたなんて、俺は知らなかったよ。


思えば最近、ムガロと話す機会が無かったように思う。

もっと定期的に様子を見るべきだろう。

俺は師匠からムガロを守るようにと言われている。

しぶしぶ受けたとはいえ、一度受けた約束は守らなければならない。


ヒバナもムガロと仲良くしろって言うしな。

ただ、ちょっと面倒くせえんだよな。


それからというものの、とりあえず俺は2時間ほど待つことになった。

その間、とにかく暇だった。

これが本っ当に、暇で、暇で。

もうど〜〜しようもないほど退屈していたわけだが。


そう、余りにも暇すぎて素因数分解を自力で考案したその時だった。


「うわっ…!」


ムガロが突然、情けない声を一瞬出しながら勢いよく目を覚ました。

そしてすぐに顔を手で抑えた。

そして彼女はこう言う。


「痛ったああ…!!」


ムガロは全身に火傷(やけど)を負っていた。

特に顔の部分の日焼けが酷く、皮膚が剥がれそうだった。

これは痛そうだ。


「真っ昼間から外に出るからそうなるんですよ!!」

「もうこんな馬鹿なことは辞めなさい!」


スクールドクターの先生がムガロを叱った。


「…ごめんなさい」


ムガロは、先生に謝ったあと、俺の存在に気づいた。


「うぇ、なんであんたがいんの?」


そう言われ、俺はちょっと気分を害した。

医療の先生が説明をする。


「私がここにいるように言ったんです。目が覚めたとき近くに知人がいると安心するでしょう?」

「はあ…」


「でっ、ムガロ、何でんなバカなことやったんだ?」

「まあ言わなくても分かるよ。いじめられたんだろ?」

「違う…」

「誰にやられたんだ?」

「言わない!」


ムガロはそう言ってベットから出た。

部屋を出ていこうとして、途中で遮られる。


「これ、氷袋、これで体を冷やしてくださいね」


ムガロはそれを少し乱暴に受け取ると勢いよく部屋を出た。


「・・・・・」


はあ、面倒くせえ。

なあムガロ、俺はお前の口から助けてくれって言葉が出ない限り、助けてやんねえからな。



--10月17日



「ああ、なんて素晴らしい人生だ…」


俺は幸せだぜ。

頭んなかお花畑で、能天気で進む毎日。

まったく気が狂っちまいそうだぜ。


麻薬を吸ってもいないのにハイになっちまうよ。


ああそうそう、もうすぐ部屋替えがあるらしい。

ルームメイトが変わるのか、アグニはなかなか良いやつだったなあ。

今度はどんな奴かな。


部屋替えは先生が勝手に決めるらしい。

薬学科と俺以外の魔法工学科はもう全員決まっているそうで、余っているのは魔法科の奴らだけらしい。

したがって、次は魔法科のやつと同部屋になるだろう。

魔法科の奴は頭のおかしい奴が多いと聞くので、不安である。

まあ今はそんなことよりテストだ。

もうすぐ定期テストがある。

今度こそ一位を狙うつもりだ。


っと、そんな感じで勉強に集中しようと思っていたんだが、ルームメイトであるアグニ君が自室に友達を招き入れ、お泊まり会が始まった。

俺は最初快く思っていなかった。

なぜなら奴らはうるさくて勉強の邪魔になるし睡眠もまともに取れないからだ。

しかし、明日は休日なので夜遅くに寝ても問題はない。

勉強も一日ぐらいサボったっていいだろう。


売店で買ったお菓子を食べたり、トランプをした。

楽しかった。

あのサラダって奴はめちゃくちゃ面白え奴だった。

声も渋くてなんか笑える。



--10月16日



今日はカッタークラブでバーベキューをした。

え?カッターをご存知ない?

ボートに乗ってみんなで漕ぐ競技のことだよ。

ああそうだったそうだった。

言うのを忘れていたが、実は俺、カータークラブに入ってるんだ。

なんか面白そうと思って入ったんだ。


っで、今日は久しぶりに美味しい肉を食べたってわけさ。

海にも入った。

もうすぐ寒くなる時期だったが故に、割と冷たかった。

まあ俺のホットな心で冷水もヒート。

熱く燃えるローリングハートも少しクールになったってわけ、ああ、何言ってんだ俺。

しかし、海は気持ちが良かった。

海水がとても綺麗で、どこかの町とは大違いだ。


それから3日後のことだった。

部屋替えをした。


結論から先に言おう、相手はクソだ。

クソっていても排泄部のことじゃあ無いぜえ?

これは比喩表現ってやつだ。


まあ取り敢えずみんな、聞いてくれよ。

今回の同部屋の奴がこれがまた糞でさあ。

模様替え手伝ってやったのにありがとうの一言もなし。


頑張る俺にもっとエールを。

頑張った俺に褒美を。

ってのをモットーに生きている俺からすりゃあ大問題ってわけよ。

陰険なやつで、俺はもうこいつの事が嫌いだ。


不条理、どこかに消えたおれの鉛筆。

探してる間に変わった部屋。

これを機におれも前を向いて進まなければならない。

成長しなければ、大人になれない。


最近、息も絶え絶え、一緒の空間に住んでるやつの性格がクソじゃあやってけねえよ。


なんかさあ、今、切実に思うよ。

世界が俺を拒んでんじゃないかって。

元々俺はこの世界の住民じゃない。

だから、そろそろ潮時かなあっと考えるも、そもそも帰る方法が思いつかない。

ああこれもう八方塞がり。


開き直って、同居人に馴れ馴れしくやってみたら更に嫌われたよ。

もう何もかも上手くいかねえ。



--10月22日



部屋替えがあってから数日が経過した。

どうやら俺の神経は案外図太いらしい。


今日、ルームメイトの奴と口喧嘩をした。

アイツがずっと1人でぶつぶつ何か言ってて、それで俺は勉強にあまり集中出来ず、少しイラッとして奴に声をかけた。

それがきっかけで口論になった。

なんというか、奴は自己中だ。


まあ、なんか仲直りしたけど。

これからは大変な寮生活になりそうだ。



--10月29日



今日は休日だ。

昨日も今日もお泊まり会、本当にアイツはお泊まり会が大好きだ。

よく飽きないよ。

俺はもうとっくに飽きた。

早く寝ろよ、まじで。

睡眠を邪魔されるのが一番ムカつくんだよなあ。

ていうか俺の部屋でお泊まり会すんなら俺に許可とれっての。

お前だけの部屋じゃないんだぜ?

共同生活というのは同居人に対して気づかうのが常識だろ?

ほんっと、人としての常識がねえ、だから人間性もお粗末(そまつ)なんだよ。



--11月6日



テストが近い。

今日は数学と第二外国語の勉強をした。

数学で分からない所があったので、非常に(しゃく)だがルームメイトのアイツに教えてもらった。

奴はムカつくことに入試成績で学年2位だ。

賢い奴に教えを請うのは当然のことだろう?

対価はプリン6つ、もちろん奢ってやるつもりは微塵もない。



--



テストが終わった。

学校生活が始まってから初めてのテストなので、俺は気合を入れて真面目に勉強をした。

それなりに手応えはあったので成績上位に組み込むだろう。


数日後に出た結果はやはり上々、クラスで2番だった。

1位は俺の予想通り、学科首席のバニーラビットだ。


驚くべきことに、ムガロは魔法科の座学でトップだった。

あいつは地頭が良い。

流石学年首席ということか。

だが、実技ではあまりいい成績をとれなかったらしい。


自分には魔法の才能が無いと嘆いていた。

魔力が有るだけマシだろ、っと言ってやった。


寮生活について、近況報告をする。

ルームメイトとの仲はあれから更に悪くなり、お互いストレスがヤバい。


何度か口喧嘩っぽいことをして気づいた。


俺は口下手だ。

いや、昔からそうだった。

忘れてたよ。


口が回らないから、いつも何も言い返せずにひもじい思いをするんだ。

だから頑張って言い返してみるも、いつも相手と噛み合わない。

なんかズレてる気がしてならねえ。


本当は殴り合いの喧嘩がしたいんだ俺は。

でも、アイツはそういうタイプじゃねえ。

世の中そんな奴ばっかりだ。

だから、いつも俺が不利になる。


学校って場所は、なんでこんな小せえ奴しかいねえんだ。

なんていうか、小せえんだよ、心が。

どいつもこいつも、魂が錆びれちまってる。


俺は姑息で陰湿な奴が嫌いだ。

そしてこの場所ではそんな人間が(うじ)のように湧いてきやがる。


どこの世界でも、学校って所は息が詰まる。

こんな所にいちゃあ、どんどん自分の世界が小さくなっていく気がしてならねえんだ。


「世界…」


住んでる星はでけえ筈だが、俺が今生きているのは狭い世界だ。


「はあ…」

「これはまさに、惰性で生きるダセえ生き方」

「・・・・」


1人、独り言を漏らした俺は考える。


俺が今いる場所は寮の中の狭い部屋だ。

まるで刑務所の中にいるような閉塞感を感じさせる無機質な壁に囲まれている。

窓は一つ、それが唯一の換気口だ。


俺の人間性は理想よりの法則型だと思っている。

つまり、何かに縛られるのが大嫌いだ。


ルールに縛られるのも嫌なんだ。

そもそも、ルールなんて皆が守ると信じてなきゃ成立しないただの幻想にすぎないのだ。

真面目に従うなんて馬鹿みてえだ。


いや、まてよ。


この学校という世界では、あまりに情弱的で、落胆的である。

しかし、私個人の場合に限り、ルールに従いマナーを破棄せ。

私、いやこの俺が支配者となる。


1週間後、ちょうど生徒会役員の人員交代がある。

これは支配者になれるチャンスだ。

そこで、俺は生徒会長に立候補することにした。

さっそくムガロを俺の推薦者にして、面接を受けた。

生徒会長になりうる人材かどうかを見られるというわけだ。


「ええと、お名前は」

「私はムガロ、タダのムガロよ」

「ほう、でそちらは…」


これは持論だが、自己紹介は勢いが大事だ。

相手をビビらせるんだ。


「私の名前はちょおおおおおお(ショウ)二度寝好きいいい(ニドネスキー)!!!あ…因みに私は有料です」

「・・・・・」


彼の努力の成果で、室内が一瞬静まった。


「お、おう…そうですか」

「それでは、志望動機を」

「私つくづく思うんですよねえ、この世は縛りが多すぎる!!っと」

「ほう」

「そして断言できる!この学校のルールはクソだ!!!」

「…だ、だにいい!?」

「ベルサイユ・カムソハムニダ学園長!今一度言う!この学校の規則はクソだ!もう一度言う!うんこだ!つまり!システムは人間の排泄物同様!」

「そもそもルールなんてものはねえ、んなまやかしよりもテーブルマナーを学んだほうが遥かに有意義!!」

「なぬ?」

「先生、私であれば必ずや、このクソみたいな世界を変えてみせましょう」

「世界を、変える?ふふ、笑わせてくれる。小僧、そこまでぬかすか」

「いいだろう、気に入った。ならば変えてみせろっ!このクソみたいな世界を!!」


バアアアアアアン!!!!


審査は通った。

後は会長の座を勝ち取るまでよ。

話が終わり、校長室を出た後、ムガロが話しかけてきた。


「おねショウ」


誰がオネショだ。


「何だ?ムガロ」

「ルールがクソってのは私も同意見だわ」

「そうか」

「先生や大人は、ルールとはある種ある場所などを有意義な場にするためにあると言うけど、私はどうもそれが納得出来なかった」

「それは何故だ?」

「だって私、ルールのおかげで有意義な時間を過ごせた事がないんだもん」

「それどころかルールを破ってしまったほうが(はる)かに気持ちよく過ごせた」

「それで私はこう考えた、あらゆる法、世界の決まりは、我々を飼いならし、捕らえるために作ったものなんじゃないかって」

「ほう、なるほど」

「そう、だから規則が前提の学校社会は私達にとって生きづらい」

「そうだな、そうかもな」


それから、ムガロと久しぶりに一緒に飯を食うことにした。

食堂では男女別のテーブルなので、町のパスタ屋へと(おもむ)く。


仕事で忙しい向けに作られた店なので、注文をしてからすぐに自分たちのテーブルに料理が運ばれてきた。

パスタを食べながら、2人で話す。


「なあムガロ、そのフォークの持ち方変だぜ?」

「はあ?そんなの私の勝手でしょ?」

「マナー違反だ」

「何?この私にフォークの持ち方さえ規制するわけ?私の個性を潰す気?」

「ははっ、フォークの持ち方を個性と主張するか、だがなあムガロ、ルールは破ってもマナーは守れよ?」

「は?何で?」

「最低限のマナーも守れんやつは結局どんな規則も守れん」

「別に規則なって守らなくてもいいでしょ?」

「たしかにルールはクソだが、時と場合によっちゃあ素直に従ったほうが良いときもあんのよ」

「それもそうだけど、今関係ある?それ」

「え?」

「そもそもフォークの持ち方気にするのどこかの神経質野郎とあなたぐらいよ」

「ぐっ」

「ていうかそれで誰かの迷惑になるわけ?」

「あなたが言いたいのは誰かに迷惑をかけるなってことでしょ?それも特に自分達にとって不利益になる場合に限ってだけど」

「そ、その通りだ…」

「ああ悪かったよムガロ、個性を大事にしろよ、俺はもう何も言わないからさあ」


畜生、完全に言い(まく)られた。


それからあっという間に一ヶ月がすぎ、俺は生徒会長という地位の争奪戦に、見事に破れた。

諦めた俺は普通に学校生活を送ることにした。


という事があった。


「はあ…やれやれ」


ため息を吐きながら部屋に入った。

数歩ほど歩き、椅子に座ろうとしたその時。


「いってえっ!!」


なんと、その椅子に画鋲がばら撒かれていたのだ。

俺はムシャクシャして頭をクシャクシャした。


「ん、なんだこれ」


頭を触った手のひらに、何か・・・


「あ…」


今、何が起こっているのかを皆様に率直に伝えよう。

一言でいうと、つまりこうだ。

ショウが寮生活のストレスで禿げた。


俺ことショウ=ニドネスキーが、それに気付いたのはついさっき!

俺がイライラして髪をクシャクシャとしたとき、自分の手のひらを見てみると決して少なくはない量の髪の抜け毛がへばり付いていたのだ!

この事実に俺は驚愕した!


「え’’え’’え’’えええええ!!!」


あ…やばい、これホントにやばい。

え?ちょっ待て、これ、自分の髪の毛だよな。

うわマジじゃん、ホントのホントにヤバい。


信じられなかった俺は、もう一度髪の毛を触ってみる。

今度は優しく、だ。


ひらっ


俺の目の前で何かがフワッと舞い降りた。

床を見ると2,3本ほどの髪の毛が落ちていた。


「なっ…」


間違いねええ・・・!これは俺の抜け毛だ。

俺はすでに禿げ始めている!!おかしいっ、老齢期はまだの筈だ!

おい、嘘だろおううう!!


未だに信じられねえ。


俺は走って共同洗面所に向かい、鏡で自分の後頭部を見てみる。

つむじの所が怪しかった。


おい、禿げるのだけはごめんだぜ。


確認した俺はすぐさま薬屋さんに行った。


「店長!育毛剤をくれ!」

「育毛剤?」

「これでいいのかい!?」

「もらったああああ!!!」

「ちょっ、お客さん!お金をまだっ!」

「心配ご無用!代金はすでに支払っている!!」

「なぬっ!!!」


店長がいた支払い場のカウンターの上にお金が置かれていた。


「ちょっと足りねえじゃねええかああああ!!!」


店長がそう叫んだとき、彼はもういない。


育毛剤を手に入れた俺は、寮に戻った。

さっそく部屋でその育毛剤をぶっかける。


ジョボジョボジョボジョボッ、ジョボボボボジョボッジョボボボーボ、ボーボボ、ジョジョ!、ジョボボボボ


《おい、少し掛け過ぎじゃないか?》


ヒバナが声をかける。


「良いんだよ、こういうのは量がありゃいいんだよ」


《んなわけあるか!!》


結局、俺は育毛剤を全部使い切った。


《いくらなんでもつけ過ぎだ!》


「何だよヒバナ、つけ過ぎなぐらいが丁度いいんだよ」


《せめて使用方法ぐらい確認しろ。正しい使い方をしなければ意味がないぞ》


『ん?それもそうだなあ…』


俺は今更、自分が持っている育毛剤のボトルに表記されている使用方法の所を読んだ。


①まず気になる所に、このジャスティスフィンガーを塗ります(手のひらにミドル硬貨ほどの大きさ)

②15分待て。早まるな

③水で洗い流し、これで剛毛なあなたもお肌ツルツルに!


んんん・・・!!!???

剛毛が・・ツルッツル?


俺はボトルの表側を見る。

そして俺は気づいた。

この俺の最大の過ちを・・・


「ってこれ、よく見たら脱毛剤じゃねえかよ!!!」


俺はボトルを思いっきり投げ捨てた。

クソオオオ!!

やっちまったあ!俺としたことが!育毛剤と間違えて脱毛剤をぶっかけちまったああ!!!


俺は頭を抱えてブリッチをしながら叫ぶ。


「どうすんだよおおおお!全部かけちまったじゃねえかよおおお!!!!」


《馬鹿野郎!!!ちゃんと見ないからそうなるんだ!自業自得だぞ!》


●今日の雑学


『ショウは、育毛剤と間違えて、脱毛剤を使用した事がある。』



--



髪の毛は一度全部むしり取ってからヒバナに再生してもらって事なきをえた。

ストレスで禿げかけたことをムガロに打ち明けたら、彼女は笑ってくれた。


「良かったね、髪亡くならなくて」

「ホントだよ」

「あ、そういえば、話変わるけどあなたの両親はどこにいるの?」

「何だよムガロ、急だなあ、俺の親に興味があるのか?まあ、少なくとも、すぐ会えるような場所にはいねえけどな」

「たぶん生きてんじゃねえの?」

「へえ」

「それこそお前、親はいるのか?」

「死んだよ、私が小さい頃にね」

「そっか」


俺はふと思う。

母ちゃん、元気してっかな。


「ああ、母さんに会いたい」


心の声がポロッと漏れた。


「母に会いたいの?」

「ああ」

「なんで?」

「だって、マミーの膝の上が一番落ち着くだろ?」

「そっか、だからあなたはいつも落ち着きが無いのね」

「・・・・」



--



それから、俺はクラブ活動をして、寮に戻った後、水浴びを済ませて自室に入る。

いつものように部屋で紅茶を飲みながら本を読んでいたら、いきなりドアをノックされた。

誰かが俺に用があるらしい、もしくは同部屋の奴か。


俺はドアを開ける。


「これ、ショウに渡しとけって」

「お、おう、ありがとよ」


俺宛?

俺は早速机に戻って中を開ける。


『ショウ君、君は生徒会長の座を手にすることは出来なかったが、どうだ?委員会に入ってはどうだ?今なら会議委員の役が残っているぞ?ベルサイユ・カムソハムニダ校長より』


委員会か、まあ入って見るか。


さっそく先生に聞いて見ると、どうやら会議委員って仕事はあらゆる会議の議長、司会を務める役らしい。

ふむっ、やってやろうじゃねえか。


とある会議で、俺は司会を任せられた。

会議当日。


「今回のおっぱい講義、司会を務めさせていただくショウ・ニドネスキーです」

「それではさっそく、本題に移ろうと思います」

「ズバリ、おっぱいは大きい方がいいのか!、それとも、小さいほうがいいのか!です」


そう俺が言ったとき、周囲にでけええ方がいいに決まっている!とか、貧乳万歳!!てな感じのやじが聞こえてきた。


ちくしょう!どっちでもいいだろそんなの!!!

なんで俺がこんなくだらねえ会議に参加しなきゃなんねえだ!

もっとまじめな会議とかすんのかと思ってたぜ。

しかも変な野次馬共がいるしよォ。

これ会議ってより公開ディベート対決じゃねえか!


ま、まあいい、一度引き受けたからには最後までやるしかねえ!


俺は気を取り直してカンペを読む。


「この問題には多くの哲学者や科学者、作家、音楽家など、あらゆる天才たちをもってしても未だに結論も出ぬ人間たちの命題とも言えます」

「それではまず大きさを正義と主張するみなさんか見て左側のおっぱいマンに意見を聞いてみましょう」

「巨乳について、あなたの意見を教えてください」


おっぱいマンがマイクを握る。


「まず初めに言っておくが!そもそも!大は小を兼ねるとはまさにこのこと!」


おお、いきなりだな。


「そして不愉快なのが、僕が巨乳好きと伝えると往々(おうおう)にしてこのように帰ってくることだ」

「「いや、巨乳の女の子って大変らしいし可愛そうじゃん」と、僕は非常に怒っている」


知るか!


「ケツの穴から拳を突っ込んで奥歯をガタガタ言わせてやりたい!」


勝手にやれ。


「そういう女の子目線で配慮できる俺ってできる男なんだって女に伝えたいのが手に取るように分かる!」

「無論、巨乳である女の子は大変でしょう。僕に彼女らの悩みを真に理解することなど不可能!」

「だからこそ!我々は彼女らに敬意を示し!敬礼!その場でかじつかなければならない!」


ええ…?


「巨乳とはこの世の理!まるで至高(しこう)の大地のように柔らかく受け止め、大海のばらのように美しく!この青い星をすべて覆い尽くすと言わんばかり!」


え?今のどういう意味?

わっかんねえ・・・


「人間は直線に芸術性を見出すことは出来ない。しか〜〜〜しっ!滑らかで清らかな曲線にこそ宿るのです!人間の魂というものは!!!!」

「そして!だからこそ!本能を刺激し!谷間という魔界への入口へと!人間をさらなるステージへと押し上げるのだ!そう!巨乳には我々には計り知れない無限の可能性を秘めているというのだ!」

「そして!・・」


あかん、こりゃまだまだ続きそうだ。


「あー、なるほど、最もな意見だ」

「遮るなああ!話の途中!まだまだ語り足りない、カタルシスも不十分!」

「時間切れです!じゃあ次!貧乳に取り憑かれたおっぱいマン!」

「若干13歳にしてその魅力にとりつかれ、ついには宗教団体まで作り上げたという会長にも意見を聞こう!」


右側のおっぱいマンが自信満々な面持ちでマイクを握る。


「まず初めに、貧乳という言葉がナンセンス」

「悪意を感じる。屈辱的だ」

「そも貧しくない。ていうかその言葉、金品、食料が不足、それ自体が乏しい状態を指す」

「つまり矛盾している」

「貧しいは大変後ろ向きな言葉だ、おっぱいは人間の前についているからやはり不適切」


たしかに胸は前に付いているが・・・


「それに胸が小さいイコール乏しい?ノンノン、進化の上で最適化された結果だ」

「シンデレラバスト!は、太陽と水と大地や豊かな自然が揃うことで生み出される」


何がシンデレラバスト!だ。

新しい単語作るんじゃねえよ。

これ以上辞書のページ数を増やすつもりか?


「さらに許せないのは巨乳を自らの武器と称している罪深き連中である」

「胸は武器ではない。武器とは戦うために存在する」

「平和の象徴であるおっぱいが武器であってはならない」

「つまり、女性全員がシンデレラバスト!になればこの戦いは終わる」


やっと終わったか。


「なるほど、こいつはとんでもない奴を連れてきてしまったようだ」

「巨乳が全て無くなれば良い?それじゃ反出生主義と一緒で思考停止している危ない奴だ」

「はたして、巨乳が正義か、シンデレラバスト!が正義か。さあ、勝利の女神がスマイルするのはどっちかな?」



――



はあ、やれやれ・・・

とんでもねえ目に合わされたぜ。

もう辞めだ辞め。

やってらんねえよ。


コンッコンッ


ドアを叩く音が聞こえる。

誰だ?俺の部屋に用がある奴は。


「って、またお前か…」

「ショウ、次の仕事だ」


俺はしぶしぶ封筒を受け取り、奴を部屋から追い出した後、それを開封しようとした。


いや待てよ。

これ、まさか。

いや、そんなわけ・・・


『魅力的な男性器の定義とは何かを語り合う会 司会進行を求む 11月23日 午後四時半頃 第二会議室にて』


あるのかよ!


「糞がああああああああ!!!!!」


俺はそう叫びながら書類を豪快に破った。



--



たまに俺が考えることがある。

この世界はフィクションで、実際には存在しないんじゃないかって。


今さっき思いついたこのフレーズ。

深く考えたことはない。


君は平気かい?

人間は本質的にネガティブなんだ。

ポジティブに生きようだなんて考えなくたっていい。


この世界はフィクションだ。

全てが嘘でホント。

全てホントで嘘。


ザ・フィクション、ザ・インパクト。

新世界、ここが新世界。


死んじゃ嫌。

何が愛だ。

陰険な。

贖罪か?

死なない。

死ねない。

でも死にたいよ。


生き急ぎ、それは死に急ぎ。

そして憤り、俺は息をする。


息を吸って、吐いてを繰り返す。

そして今日も俺は生きている。

でも人として、は生きてない。


この世界のすべて、ないのなら、すべての事象が嘘ならば、もう好き勝手やったて構わない。

ならもういっそ、好きに生きようじゃんか。



If all events are lies

すべての事象が嘘ならば

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