第20話 「サイコパス日記」
俺はサイコパスだ。
それに気づいたのは10歳の頃だった。
初めて人を殺したのは8歳の時。
まず初めに父親を殺した。
その次に母。
最後は口封じに弟を殺した。
全ては生きるためだ。
遺体はネットで調べて処理をした。
一月ほどかけてバラバラにし、骨は燃やしてばら撒き、肉は川へ流した。
幸い、家は山奥にあったのでバレずにすんだ。
1day
人生には意外な展開、意外な結末がある。
今がその瞬間で、歩めるときならば、変わるときなのか。
俺は、何をすればいい。
誰か教えてこの状況。
「電気もねえ、水道もねえ、おまけにトイレもねえ」
到着したぜまずは拠点探し、どんな事が起こるか分からない。
コンパスなしで自由に探検。
俺たちは今、無人島にいた。
人がいない島、ロストアイランドと名付けてみた。
とにかく、地上に立つのは久しぶりだった。
白い砂浜に足跡を残した俺はしばらく感動していた。
「バタッ」
そんなふうに感慨深く砂浜を眺めていたら、突然ムガロが倒れた。
彼女は日が昇っている時間帯で無理をしたのだ。
いつもフードを深く被っているのはそういうことだろう。
「はああああ、泣きたか笑え」
俺はムガロを背負って日が当たらない場所に移った。
彼女を木の下に寝かせ、一息ついた俺はその場でゆっくりと腰を下ろした。
木の幹に背中を預け、目を閉じる。
疲れた。
--
気づいたら俺は寝ていた。
パチパチと鳴る焚き火の音で目を覚ます。
それと同時に、自分がパンイチなことに気づいた。
「・・・っ!」
おや?焚き火の向こうに誰かいるようだ。
まさか・・・
俺は目の前の男性に声をかけた。
「てっきり死んでんのかと思ってたぜ」
「ああ、なんとかな」
「死に損なった気分だ」
フーパーだった。
みんな死んじまったと思っていたが、俺たち以外にも生き残りがいたのか。
ふと気になって、ムガロの方を見た。
毛布の代わりにフーパーの上着がかけられていた。
まだ寝ている。
木の枝に彼女の衣服が干されていた。
「ところでフーパー、俺の衣服が行方不明なんだが・・・」
「風邪引いたら困るだろ?」
「ああ、分かってる」
俺は自分の服を探し、素早く着替えた。
さすがにパンイチじゃ恥ずかしい。
フーパーが俺に尋ねる。
「生き残ったのはお前らだけか?」
「ああ」
「そうか、はあ...」
フーパーは頭を抱えて深いため息をついた。
しばらく続く沈黙。
時刻は夕方。
空は夕暮れに染まっていた。
彼とは色々話したが、どうにも記憶に残らない。
何をするにもやる気が起きない。
それに、ボーッとするし、なんだか体がホットだ。
ポカポカする。
わりと放心状態だし、アドレナリンが出てる状態に近い。
こんな事は、人外になってから初めてだ。
--
「はっ」
気づいたら日が沈んでいた。
フーパーはさっき寝ると言って寝た。
いびきをかいて寝ている。
いつの間にかムガロが起きていた。
既に着替えており、変わらずフードを被っている。
彼女に声をかけられ、目が覚めたようにハッとなったのだ。
彼女はただ一言、「ついてきて」と。
俺はムガロに引っ張られ、林の中を歩いた。
彼女の腕の中には、白い布に包まれたそれがあった。
俺はそれが何なのかを知っている。
「で、俺は何を?」
「これ埋めるから手伝って」
「食べるんじゃなかったのか?それ」
「・・・・・」
「フーパーいるでしょ?彼、きっと感染症で死ぬわ」
「嘘だろっ、んなわけ、って、それが何の関係があんだ?」
「えっと、その...」
「・・・・・」
「はあ、手伝うよ」
俺たちは穴を掘って埋めた。
「ふう、墓穴掘るのも楽じゃないわね」
誰かさんの左足は土の中だ。
埋葬を終えた俺たちは、その場を後にした。
--
浜辺に戻った俺は、一人で準備してキャンプファイヤーを始めた。
ムガロはそんな俺の行動をじっと見つめていた。
ムガロが俺に尋ねる。
「ねえ、あなたって人間?」
「俺?」
「俺はエイリアン」
「なにそれ」
「これがあながち嘘じゃないんだ」
そうだ、俺はエイリアン。
俺はエイリアン。
君は人間?
「お前こそ人間なのかよ」
「ええ、察しの通り私は人間じゃないわ」
「ずっと疑問に思ってたんだけど、手から火を出してたよね?」
「これの事か?」
俺は手のひらから炎を出してみせた。
「それ!おかしい!なんなのそれ!」
「さあな」
「ずっと隠してたのね」
「いや、別に隠してたわけじゃ」
「つーか、大体お前だって人体爆破で滅茶苦茶やってたじゃねえか!ありゃ一体何だ?バケモンだぜお前はよ」
「あなたには言われたくないわ」
「おめえにも言われたかねえ」
「怪物の体に穴を開けたのは誰?化け物はあなたよ」
「・・・・・」
「あ、ごめん、ちょっと言い過ぎたかも」
「はあ、私の悪い癖なの」
彼女の言葉に、俺は少し拍子抜けだ。
「・・・・っ!」
ムガロが俺にハグをする。
いきなりだったので、俺はビックリする。
終いに、ムガロは偉そうに俺の肩をポンと叩いた。
「ほら、仲直りのハグ、意見を聞かせて?」
「・・・・・」
「俺も悪かったよ、女の子を化け物呼ばわりしちまって」
「良いの、本当の事だし」
「えっと、その、あの時、助けようとしてくれたのよね?」
「・・・・・」
「その、ありがとう」
「そりゃどうも」
「・・・やっと言えた」
「…え」
「私、お礼を言うの得意じゃないから」
「お前、今日はやけに素直だな」
「うん」
2day
今日は島を探索することにした。
フーパーは体調が悪そうだったので寝かしておいた。
一応、フーパーにはムガロを守るように言ってある。
俺はまず島の周りを一周した。
それほど大きな島ではなかったのですぐに周れた。
次に、林の中を探索した。
特に目ぼしいものはなく、大きな岩があった事ぐらしか記憶に残らなかった。
食べれそうなものは雑草ぐらいだ。
俺は2ヶ月ほど何も食べなくても平気らしいが、彼らはそうじゃない。
早くこの問題を解決しないとな。
昼過ぎぐらいから雨が降り出した。
恵みの雨だ。
それからというものの、特にやることはない。
雨水を飲むぐらいだ。
3day
誰かの唸り声で目を覚ました。
フーパーが苦しそうだった。
酷く汗をかいており、呼吸も辛そうだった。
俺に出来ることは何もない。
せいぜい見守ってやるだけだ。
フーパー、死ぬのだろうか。
そんなふうに心配していたが、3時頃にあっさりと復活した。
「フーパー、大丈夫なのか?」
「ああ、大分マシになったよ」
そう云うフーパーの顔は真っ青だ。
「そういや、アソコはもう痛まねえのか?」
「ああ?痛いに決まってるだろ!」
「おぉ、すまん」
「ショウ、人生には痛みが付きものだ」
「そうか?」
「ああ、少なくとも俺はそうだったよ」
「俺を見て!俺を取り!俺に震え!俺を感じた俺の人生!!それは、痛みだ!!!」
「覚えとけ!このバカッ!」
やけに凄みがあるフーパーだった。
--
彼の提案でもう一度島を探索することになった。
俺たちは島中のあちこちを歩き周った。
数時間ほど歩き、俺はやけにしなる地面を見つけた。
俺はそこでジャンプしてみる。
「ギシッ、ギシッ」
ふむ、弾むな
弾力がある。
「フーパー!」
「フーパーーーー!!」
俺はフーパーを呼び寄せ、怪しい場所の土を払っていく。
数分ほどその作業を続けると、木製の蓋が浮かび上がってきた。
俺たちは興奮した。
「でかしたぞ、ショウ!」
「まだ喜ぶのは早計だよフーパー」
「蓋は被せるためにあるんだ」
適当なことを言いつつ、その大きな蓋を開けてみる。
その中には、無数の酒瓶が収納されていた。
フーパーはそれを見た瞬間、奇声を上げて喜んだ。
ロストアイランドは無人島だ。
しかし、酒がある。
この島は誰かの所有物だ。
--
「全ての出会いに感謝」
俺がそう言いい、みんなで乾杯をする。
その夜、俺たちは焚き火を囲って酒を飲んだ。
俺たちは歌った。
暗黒の天に届かんとす大きな声で。
俺たちは踊った。
その場に包まれた闇を払うかのよに、大きな動きで。
俺たちは飲んで飲んで飲みまくり、歌って踊って楽しんだ。
--
『糞の酒』
この最低な〜♪クソな世界でえ♪
歌えラ〜♪ラ〜♪ララッラ〜♪
痔に病みつけ〜♪
頭飛び抜け〜♪
進め前へ前へ前へ〜え♪
酒で酔えば怖くないから♪
みんなで酔えば怖くないから♪
でもいつまでも酒が足りないから♪
死ん!じゃう!よおね~え!♪
糞を〜♪漏らした記憶がね♪
いつも〜♪僕の気持ち悪くする♪
それで〜も、別に良いじゃない〜♪
--
「今思えばあれが、俺の人生のターニングポイントだったよ」
「あはははは!」
「あいつ、脳みそ母体に忘れてきたらしいぜ」
「この高そうな酒は私が貰うわ」
「あア!ずりいぞ!公平に分けるべきだ!」
「そうだ、その通りだ!」
「この世に公平なんて存在しないわよ!まあ後2年待つことね!」
「はあ!?なんでさ!」
「この世に平等なんて無くて、それが訪れるのは世界が終わるときだけだから」
ムガロはそう言って酒を一口飲む。
「へへっ」
彼女はニヒルに笑った。
そして、突然立ち上がり、逃げるように走り出した。
俺もそれに続いて走り出した。
ムガロは走りながら上着を脱ぎ捨てる。
そのまま海に突っ込んでもお構いなし。
俺も海水の上をビチャビチャと走り、ある程度の深さまで行くと転んでドボンだ。
「あははははははははは!!」
「ははっ、冷たっ、あはははは!」
声たか笑うよあの子。
誰か助けてあの子。
俺はいいよ関係ねえ。
「馬鹿じゃん私達っ」
「なあムガロ、どうやら俺たちはまともじゃないらしいぜ?」
「フーパーが言ってた、障害者だって」
まさかの経典、え?いいの?
なあ神様よ。
そこにいるのなら。
「私達って似たもの同士かもね、普通じゃない」
「え?俺は普通でしょ」
「いやあんた頭イッてるからww」
「ええ〜、そうかなあ」
幸せにし欲しいのあの子。
全てよ笑え。
神様上がる。
世界は終わる。
「はあ、人間っていいなあ」
「・・・・・」
君のその一言で、僕はなんとも言えない気持ちになった。
はは、あはは、母笑うよシスター。
誰か言った世界の敗者。
例を言うよ雷電、ええ。
すうはあ、はびこる僕の心臓。
いつか分かるよきっと。
もう泣かないでよsad。
儚い笑み。
消える来世。
4day
フーパーがいない。
どこ行ったんだあいつ。
ムガロは寝てるし、暇だ。
「やることねえ」
ああ、そういえば、何でムガロって陽の光に弱いんだ?
いやまあ、今更だけどよ。
ムガロの肌は心配になるほどに白い。
不健康そうな青白さだ。
皮膚の病気と考えるのが妥当かな。
考えても分かるもんじゃない。
俺は、その事について考えるのをやめた。
--
日が沈んでも、フーパーは帰って来なかった。
俺はムガロを揺さぶり起こした。
「んん…なに?」
「おいムガロ、起きてくれ、フーパーがいないんだ」
こんな事なら、島中を探し周るべきだったな。
今更になって思う。
「あ…」
「・・・・・」
ムガロは黙りこくった。
「お前、何か知ってんのか?」
「しっ、知らない」
「嘘ついてるな」
「え…」
「・・・・・」
「知ってる」
あっさり白状したな。
「フーパーはどこだ?」
「えっと、その、彼は死んだの」
死んだ?
「遺体は?」
「えっと・・・」
彼女は一瞬考えた後、答えた。
「埋めた」
「・・・・・」
「そっか、せめて言ってくれりゃあ良かったのに、俺も埋葬ぐらいしたかったよ」
「え…ごめん」
5day
憂鬱な気分が晴れない。
何をするにもやる気が起きない。
今日は何もしたくない。
フーパーは死んだ。
そういえば、俺と出会った人間みんな死んでくよな。
ステファは死んだ。
ザフィルが死んで、セレヌンティウスも死んだ。
テュポンも死んだし、ガルムも死んだ。
そして、今度はオーロラ号の乗組員が全滅した。
クイント、サジ、ヴァイセ、ウォッカ、スピルバーグ、ジョーンズ、フーパー。
みんな死んじまった。
もう誰も、死なないでくれ。
--
夜になった。
焚き火の近くでムガロと座り、一緒に酒を飲んだ。
酒を飲んでも酔っ払ったりしないので、ただの水分補給だ。
「なあムガロ、お前は死なないでくれよ」
「・・・・・」
「え?急に何?」
「心配しなくても、私は死なないわ」
「そっか…」
「はあ、ねえ何でそんな事聞くの?」
「え、ああ」
「今思い返せばよ、俺と出会った人間みんな死んでんだ」
「だから、もう誰も死んでほしくないんだ」
「え、なんか心配になってきた」
「え?」
「私死ぬかも」
「あ、でも私、人間じゃないから安心して」
6day
深夜に目を覚ました。
目が冴えてきて、眠れそうにない。
俺は体を起こし、辺りを見回した。
今夜は月明かりに照らされていた。
ムガロがいない。
ていうか、そういえばあいつ、夜の間は何してんだ?
俺は無性にそのことが気になり、ムガロの居場所を探し始めた。
林の中に入って歩き周った。
小一時間ほど歩き、彼女の居場所を見つけた。
血の匂いを辿ればすぐだ。
ムガロは大きな岩の影にいた。
「おいムガロ、そんな所で何をやってんだ?」
俺が声をかけると、彼女はビクついた。
錆びた鉄のような強烈な匂い。
むせ返りそうなほどの生臭さ。
ムガロの姿を見た瞬間。
俺は物凄い衝撃を受けた。
彼女は、人の肉を食べていた。
「な…んで」
「ゾンビって言ったでしょ」
ムガロはゾンビだった。
彼女は、あの有名なカニバリストだったのだ。
「はあ…」
ムガロは小さくため息を付いた。
そして、呟いた。
「人間なんて…」
人間なんて。
それがどうした。
「人間なんてっ!」
「人間なんて食物連鎖の頂点によいしょっ!
あぐらかいては神様気取りの中途半端に賢くなった愚物っ!!
あ〜あっ!自分で自分に首輪をかけちゃって可哀想に!!
所詮、明日を生きる理由なんてくだらない言い訳探してる可哀想な生き物!!」
ムガロは泣きながら叫んでいた。
うつむいてばかりでこっちの顔を見やしない。
「獣っ!」
「ゴミ!」
なあ、落ち着けよムガロ。
「なあ!」
「あっち行って・・・!」
「おい!ムガロ!」
「あっち行ってよ!!」
「なんでだよ!」
「あっち行って!!行って!」
「話し合おう!な?」
「話したくない!」
「話したくない!」
「だからっ!あっち行ってよ!行けよ!」
「来ないでよ!」
「なんで?何でなの?もう何で!?」
「何で、何で何でなんで何で何でなんで何でなんで!!!」
「ああもう最悪っ!何で来たの!?もう!何でなの!ねえ!!」
ムガロは苦しそうだった。
「ムガロっ!」
「うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」
「あっち行け!」
「・・・・・」
「ああ分かったよ。話したくないんだな」
「話す気が無えんならもういい」
彼女はうつむいたまま返事もしなかった。
ムガロはそっから黙りこくった。
俺はムガロから離れた。
林の中を歩く。
はあ、何だよそれ。
マジかよ。
ふざけんなよ。
林を抜け、海に出る。
浜辺に戻ると俺は、その場に座り込んだ。
人生には、意外な展開がある。
今がまさにそれだ。
「はあ…」
俺は深い溜息をついた。
夜空を見上げる。
今日は満月だ。
月明かりのせいで星が綺麗に見えなかった。
--
2時間ほどが過ぎ、ムガロが浜辺にやって来た。
「やっと話す気になったか?」
「まあ、一応」
彼女は落ち着いていた。
しかし、苦しそうな顔をしていた。
ムガロは恐る恐るといった感じで俺の隣りに座った。
ぎこちない動作だった。
お互い顔を合わさない。
彼女が俺に尋ねる。
「どう思った?」
「何がだよ」
「私が殺人鬼で、どう思った?」
「どうって…俺は別に、気にはするけどさ、お前がゾンビだからって避けたりしねえよ」
「嘘つき」
「嘘じゃねえ、本当にそう思ってる」
ムガロは胡散臭そうに俺の顔を見る。
「俺、サイコパスだし」
「え?」
そうさ、俺はサイコパスさ。
それを言うべきか、言わざるべきか。
「嘘だと思うかもだけど、実は俺サイコパスなんだ」
「え?なに?さいこぱす?」
「いずれバレるだろうから言うけど…」
「だからっ、サイコパスって何!?」
「一部の感情が欠けてるんだ」
「フーパーが死んだときだって、特に何も思わなかった」
「それは、嘘でしょ?だってあなた、彼が死んだとき、落ち込んでたじゃない」
「あれは、この島で生活する上で役立つ人材が消えたから、落ち込んでたんだ」
「自分の不利益に敏感だからな」
「・・・・・」
「だからムガロ、俺はお前が殺人鬼でも大丈夫だ」
ムガロは俺の顔を疑い深く覗いた。
「俺は話したぞ、次はお前の番だ早く言え…」
俺がそう言うと、彼女は小さく息を吸った。
「・・・・・」
やがて、ポツリと呟いた。
「まあ、いつかバレるとは思ってたのよ…」
「そうか…」
「いつかはこういう日が来るって、分かってはいたの」
「でも、知られたくなかった」
「だからあなたに見つかったとき、ビックリしちゃった」
「ていうか、私の食事シーンは見ないでほしかったんだけど」
「それは、ごめん」
「結構デリケートな問題だからこれ」
「はあ、フーパーだけは、彼だけは食べたくなかったのに…」
「空腹がそれを許さない・・・・!」
「どうしようもなく腹が減って、頭がおかしくなりそうだったの・・・!」
「ねえ!人間ってどんな味か知ってる!?」
「知らねえよ!」
「筋が多くて、少し食べづらいんだけど…」
「やめろ、聞きたくねえ!」
「あ…ごめん」
「・・・・・」
ムガロが再び俺に尋ねる。
「ねえ…」
「あなたは一緒にいてくれるの?」
「何でそんな事聞くんだ?」
「私、ずっと寂しかったの」
「独りぼっちだったから」
意外だった。
ムガロの口からこういう言葉が出るなんて、思ってもいなかった。
だから俺は返答に困る。
「まあ、いいよ、一緒にいてやっても」
俺がそう言ったとたん、彼女は驚いたように俺の顔を見た。
「・・・・・」
「ありがとう…」
「えっと、ハグしてもいい?」
彼女はそう言って俺にハグをした。
「なあ、逆にお前、俺のこと信用できんのか?」
「出来るよ」
「それはどうしてなんだ?」
「あなたには首筋に刻印がある。それとハグ」
「え…」
何で?
「知ってたのか」
「いつからだ?」
「だいぶ前よ」
「・・・・・」
「マジかよ…」
俺は少しヘコんだ。
「えっと、その…隠してたから、気になって」
「私にもあるの」
「え?」
ムガロはそう言って、フードを除けて後ろの髪を分ける。
首筋に俺と同じような刻印が見えた。
初めて知る、衝撃の事実。
「なるほど、な」
「それで、信用できるのか?」
「私には充分よ」
「はあ…」
俺はムガロのその一言で、安心した。
俺はその場で寝転がり、夜空を見上げる。
確かに、彼女との間には奇妙な何かを感じる
それが何なのか、俺には分からない。
でも、何か通じるものがある。
「夜はじっと座って考える」
ムガロがゆっくりと話しだした。
「ここにいれば自由になれると思ってた」
「でも実際はそうじゃなかった」
「やりたいことは出来ないし、食べるものもないし、トイレもない」
「こんな不自由な生活は嫌なの・・・・!」
「だからさっ、逃げようよ」
「夢にも思わなかったことを感じて、それで、自由になろうよ」
「あなたは自分を失ったりなんかしない」
「果てしない海の向こうへ」
「ここには背を向けてさ」
「行こうとも思わなかった場所へ行って」
「自由になろうよ」
「ずるいって思う?」
「あなたはさ、どうしたいの?」
「くだらない学校なんか行きたいの?」
「・・・え」
「あなたは私の気持ち、めちゃくちゃにするよね」
「もうおしまい、話したくない」
彼女はそう言って立ち上がった。
「おい、待てよ!」
「やめて、聞きたくないの」
ムガロは最後にそう言って、俺に背を向けて歩き出した。
俺はムガロを追いかけようとしたが、すぐにやめた。
彼女は、悩んでいた。
まあ、嫌だろな、こんな所で死ぬのは。
って、あれ?
俺、やばくね?
俺の人生変えねえとな
そうだ、変えなきゃ。
「・・・・・」
--
人生には波がある。
不幸なときがあれば、幸せなときもある。
でも、全部合わせれば結局はプラマイゼロだ。
これだけはみんな同じさ。
波が小さい奴はつまんねえ人生を送るのさ。
おかしな事に、世の中には不幸な奴と幸せな奴がいる。
それは何故か。
答えは簡単だ。
死に時を選べないからだ。
彼らは不幸だから死んだんじゃない、不幸なときに死んだのさ。
もし生きてれば、アイツラにも良いことあったかもな。
死ぬのは運命が決めることじゃない。
ただの偶然。
些細なことで死に至る。
その偶然は、元を辿れば最後は自分。
だから、自分の人生変えたきゃまずは自分を変えろ。
今のままじゃダメだ。
そうだ、こんなんじゃダメだ。
ダメなんだ。
「ふぅ…」
俺の人生、ここで終わりか?
俺はこの島で、一生過ごすのか?
それは嫌だ。
人生はプライスレス。
こんな所で一生を終わらす気は無い。
俺とムガロの人生がかかってる。
この先短い人生を、ここで終わらすな。
--
朝になった。
「ぼおおおおおおおん!」
爆発音と共に目を覚ます。
何事かと俺は周囲を見回した。
ムガロが焚き火に酒瓶を放り投げていた。
二度寝したせいか、俺はまだ眠い。
勘弁してくれ。
「おいムガロ!何してる!」
「燃やしてるの」
「なんでだよ!」
「煙で誰か気づくかも」
「はあ!?んなわけあるか!」
「いいからやめろ、もったいねえ」
俺がそう言っても、彼女は酒瓶を放り投げるのをやめてくれない。
ふと、肉が焦げる匂いがした。
そこで俺は気づく。
「お前…」
「・・・・・」
「それ、大事な食料なんだろ?」
「もういいの」
「私はこの島を出るわ」
「え・・・・?」
「なんだよ、急だな」
「無茶言うじゃねえ」
「分かってるわよ!それぐらい!」
「でも、もうここにいるのは嫌なの!」
「いや、もっとなんかこう、準備とかしなくて良いのか!?」
「いらない!」
「いいからやめろよ、まだ早いって!」
「私の為だって言うの?そんな嘘、信じられない!」
ムガロはそう言って海の方へ歩き出した。
くそっ、何だよマジで。
こっちはクソ眠いってのに。
「…あ」
ムガロが立ち止まった。
そして、俺たちは気づく。
目の前の海岸に船が止まっていた。
この島の持ち主が来たのだ。
「え、嘘でしょ?」
俺が、みんなに伝えたいことがある。
人生には意外な結末があるってことさ。
「・・・・・」
「ははっ」
俺たちは無人島を脱出した。
We can't grow up
僕たちは大人になれない




