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心世界  作者: rin極
第二章 帰らずの森編
13/48

第13話 「始まり」


〜アブソリュート視点〜


木陰にあたる窓のした、椅子に腰かけ風が吹く、3日食わずのご老人。

食わずの鹿は、ただの骨。うさぎに角は、ただの耳。

あれやこれや、兎にも角にも話がずれた。


 その目はまだ、開いてない。

その中身は誰も知らない銀のたま。

その眼球は僕の筆箱。送る箱。

赤い羽根には500円。


僕は昔のおじさんさ。

時が経てばワシになる。


ワシは窓から入ってくるそよ風を浴びながら静かに座っていた。

ワシは鳥では無く人間さ、老い先短い爺さんだ。


ショウと言う小童どもが帰らずの森に行ってから6日たった。

正直、小僧が帰ってくるとは思わない。

もう既に死んでいるだろう。


神が恐れるのは婆婆だ。

それを閉じ込める為に帰らずの森がある。


出られるわけがない。


いや、もう出ているかも知れないな。

ヒバナは帰らずの森の呪いは効かない。

でも、ワシには罪悪感があった。

ワシがこんなに気にするなど、昔は考えられなかった。


年を取れば情が深くなるのだ。


最近、ショウが戻って来て欲しいと思い始めた。

あの少年にはヒバナが宿っている。

とても危険な存在なのだ。


あれは少し前だった、少年をワシの家に泊めていたときだ。

 少年は突然ワシを襲った。

それも深夜に、ワシも危なかった。

朝になってから聞くと少年はその事を覚えていなかった。


 あの時の目を見ればすぐに分かった。

あれは、ヒバナの目だ。


ヒバナは、もう既に少年の体を支配していた。

 早すぎる。と、ワシはそう思った。


だが考えてみれば当たり前のことだ。

あの小童は自力でヒバナの支配に耐えている。と言っていた。

 でも、そんな事はあり得ないのだ。


あれはヒバナがショウを支配していないだけで、その気になれば何時でも支配できるのだ。

だからワシは、念の為ヒバナに暗示をかけた。

ショウには手を出すな、と。


ワシがかけた暗示には代償がある。

それは己の寿命だ。


長くは続かない。

この命が尽きれば、ヒバナが覚醒してしまう。


 頭では分かっている。

あの少年は殺さねばならない。


でも、なぜか、ワシはもう、人は殺せなくなってしまった。

大事な人を無くしたあの日から。


ああそうさ、わざわざあの少年を帰らずの森に行かせなくても、直接手を出せばいい話なのだ。

何故そうしなかったのか、言うまでもないだろう。


仕方あるまい、ワシも一度くらい人のために行動せねば。

この身を犠牲にしてでも。


あの少年はまだ生きていると、ワシはそう信じた。


    〜視点が戻り、少年へ〜


俺は、今、あの婆さんの家に入らせてもらっている。


家の中はどこか寂しく、懐かしい。

あの日のことを思い出させてくれる。

 

 普段と違う、家の匂い。

線香、煮物、味噌汁、外からでも漂う不思議な匂い。


二人で食べるので精一杯な小さな机、その上には丸い入れ物。

 無数の黒飴、黄金糖。

不思議なお菓子がこんなにいっぱい。


すぐ側に、横に大きくなった白い猫。

その上には古くなったカレンダー。

部屋のあちこちに貼っている。


俺の右手には餅の入ったお菓子の空き缶。

俺はそれをつまみながら待っていた。

優雅にお茶も飲んでいる。


チラシを折って作ったゴミ箱。


お土産はまず仏壇へ。


物干し竿に玉ねぎ。それと柿。


どれも昔良く見た光景だった。

似ているかも知れない。


少年が部屋のあちこちを見回していたら。

ゆっくりとした年季のある足音が聞こえてきた。


その音がどんどん近づいてくる。


 ギッ と廊下の音一つ。


扉が開いた。

優しい笑みをもった婆ちゃん。

その手には大きなお盆。

おいしそうなご飯の香り。


その黒いお盆を机の上に置いた。

俺の目の前には沢山のごちそう。

 量が多く。ご飯は大盛り。


思わずゴクリと唾液を飲む。


分かってるじゃ無いか。

俺が今一番欲しいものだ。


「なあ、あんたは覚えているかい?」


その婆ちゃんはゆっくりと腰を掛け、俺に質問をした。


「何が?」


「あんたが大好きだったお婆ちゃんだよ」

「まあ、そりゃ覚えてる。もうあやふやだけどな」


「耳が遠くなってボケてきたお婆ちゃん。それでもあんたの名前はちゃんと呼んでくれた。あんたの婆ちゃんは太陽の匂いがするのさ。今じゃあんたの方がデカくなっちまったねえ」


「おい婆さん、飯食っていいのか?」


少年はもうメシのことにしか眼中に無かった。

既に理性はぶっ飛んでいる。


「ん?ああええよ。子供は遠慮せんでええ」

「悪いな、てか、ホントに礼はいらねえのか?」

「別にそんなもんはいらん、ついでに、ありがとう、ご飯が美味しい、野菜が新鮮、とでも言ってくれたらアタシは満足さ」


「そっか、ありがとな」


俺はガツガツと目の前にある飯を食べ始めた。

あっという間に平らげてしまう。


「ほう、よく食べるねえ」

「おかわりあるよ」


そう言うとお婆ちゃんは部屋を出ていった。


そういえば、俺には、お婆ちゃんがいた。

最近あまり思い出して無かったな。

でもこの世界には居ない。

俺の家族も含めて。


俺の婆ちゃんはいつも抱きしめてくれる。

物事がうまくいかないときも、どうすれば良いかを教えてくれる。

他には無い視点を教えてくれる。

どんな事に対しても応援してくれる。

いつまでも最後まで俺の話しを聞いてくれる。


見返りの無い愛情にあふれている。

いつも俺たちの為にお菓子を用意してくれる。

自分の欠点も美しいと褒めてくれる。

ゼッタイに誕生日を覚えてくれる。

いつも俺を特別な気分にさせてくれる。

辛いときには沢山励ましてくれる。

それも鬱陶しいぐらい。


自分の心とどう向き合うべきかを教えてくれる。

でもそれはお婆ちゃんがいないと俺は自分の心に向き合えない。

毎年手書きの手紙を送ってくれる。

同じ家に住んでいるのにわざわざ郵便で。


美味しいご飯を作ってくれる。

世界で一番強い女性で、その笑い声は聞くだけで気分がよくなる。

自分ができないって思ったことも、可能にしてくれる。

自分の大切なものは何か、て事を思い出させてくれる。

辛い時や楽しいときはいつも側に居てくれる。

でも、今は居ない。

約束を守る大切さも教えてくれた。

でも未だに約束を果たしたことは無かった。


俺はそんなふうに思想に浸りながらおかわりを待つ。

思えば、俺はお婆ちゃんに依存していたのだ。


まあもう俺も大人になったからな。

1人でも生きていけるんだわさ。


しばらくすると老女が戻ってきた。

俺はその飯を食べ尽くした。


多少満足したところで俺はおかしな事に気付いた。

 頭の傷、治ってねえな。


俺はコップを掴もうと手をのばす。


「あれ?」


手が空振った。

思わず声が出る。


視界のピントが合わない。

部屋の周りを見る。


今度ははっきりと見えた。

カレンダーの文字までクッキリと。


俺、こんな状態で飯食ってたのか?

どんだけ腹空いてたんだよ。


『なあヒバナ・・・』


「・・・」


心のなかで呟くが、返事が無い。

まだ寝てんのか?


俺が考えごとをしていると、婆ちゃんが喋った。


「あんた、そういや約束はまだかい?」

「約束?」

「なんだい忘れたのかい、嘘つくんじゃ無いよ」

「は?」

「もういいさね、まあ世の中、嘘とホラがあったほうが面白い」

「何いってんだお前・・・」


俺が言葉を発した瞬間婆婆の雰囲気が変わった。

何ていうか、初めてコイツの素を見た気がする。

 俺より年を食ったおばちゃんは、それだけの重りを渡してきた。

俺の両手でもその重さには耐えられない、それだけ重い言葉を婆婆は口にだす。

だてに年だけ食ったわけじゃないと分かる。

全然意味が分からない言葉だったが、なぜか年季が入っていると分かった。

にしても、何が言いたいかは分からないが。

ホント何いってんだコイツ。


「あのなあ、約束事は悪いんじゃねえ名カロリに名じて腐った重曹でも舐めてろ。ワシャ城下町の娘や」

「は?」


「あんた、もう風呂入って寝な。ワシは風呂炊いとるわ」

「まだ炊いてねえのかよ」


「水から入って頭冷やしな」

「肩までしか冷えねえよ」


楽しい会話が終わると婆婆は部屋から出た。

いきなり態度が変わったのでびっくりした。


今後、老人には態度を改めよう。

どうやら、年を食った大人は、なぜか子供にデカイ面されると喜ぶってのは俺だけの常識だったらしい。

他人に対して偉そうな態度をとるのは控えよう。

なんちゃって、するわけ無いだろバーカ。

大事なのは年寄りに対するリスペクトだ。

それさえ伝われば大抵何とかなる。

俺の尊敬できる爺ちゃんが昔言ってたのを思い出した。


 「何か来てんな、、」


この時、ある一つの気配が近づいてきているのが分かった。

誰の客だ?まずいな、婆ちゃん今は居ない、俺が店番するか。


もしかすると俺の客かもしれんしな。

はて、俺いつ店ひらいたっけな。

おいおい、ここは俺の店じゃないぜ、ダダの民家だ。


対して気にならずそのまま風呂に入る。

湯に浸かった後は、「ああ〜〜〜」手な感じでリラックス。

CMに出れそうだ。

ふう、いいね〜。

こりゃ全身に効くぜ。

風の予防にもなる。

風呂に出た後も暖かくなりそうだ。

ていうか、出た方が温かいな。


 「バザアッ」


湯船を出る。


「冷た、おいおい婆さんマジ頼むよ、肩から下冷えてしもうた」

「文句言うんじゃ無いよ、湯船ってのはなあ、常温から入るのが良いんだよ。たくっ、若いんだからさっさともういっぺん入ってみい」


「ホントかよ」 


俺はさっさと着替えた。

ていうか、出た後もしばらく寒かった。

久しぶり入った風呂も台無しだ。

もう二度と入らねえ。


つまらなそうな表情を浮かべるババアと廊下を通るなか、途中、気になる扉あった。

 そのドアにはティッシュサイズの紙が貼られていた。

ババアは少し嫌そうな顔をする。


「何か書いてある」


その紙に書いてある文字を見る。

そういえば、今まで気づかなかったが言葉が通じるのって何かおかしくね?

今更?て思うかも知れないけどこの世界の言葉ってのは日本語なのだ。


日本が存在しないこの世界で、なんで日本語で話して日本語でかい・・・いや、文字は今まで見たことがないものだ。

だが何て書いてあるかは分かるのだ。


それに気付いた時、物凄い違和感を覚えた。


「なあ婆ちゃん、この家にずっと引きこもってたのか?これじゃあ民主主義じゃないぜ」


何も考えずに取り敢えず日本語で喋ってみた。

すると、婆ちゃんは目を白黒させながら驚いた顔をした。


「あんた、さっきなに語で喋ってたんだい?」

「日本語だよ」

「日本語・・・そうかい、でも、聞いたことも無いねえ。」

「だろうな」

「あんたァ、どこから来たんだい?」

「日本だよ」

「えんれえ、珍しいところから来たんだねえ」

「そうさ、寿司とか知らねえだろ」

「そうだねえ、もういっぺん日本語で喋ってみ?」

「しゃあねえな」


少年が日本語を話そうとした時、何かがつっかえる感覚があった。


 あァんるれえ?


日本語を話そうとしても、何かが喉を抑えらつけられる。


「やっぱ無理だ」

「そうかい、それは残念だねえ」


「ていうか、このドア何なんだ?ゼッタイに開けるなって書いてあるけど」


いつまでも日本語についての話をするのは気が進まなかった。

改めてドアの方に目を向ける。


「コイツはねえ、開かずの扉って言うんだ。間違っても開けるんじゃないよ」

「へえ〜、気になるなあ」


このドアは、全体的に古びた感じの横扉だ。

オンボロである。


わずかに異臭もする、何ていうか、ちょっと生臭いっていうか。


「さっ、あんたはもう寝な」

「うっ」


婆ちゃんに手を引っ張られる。

俺はその手を振り払った。


寝室に入る。

どうやらお客さん用の部屋を貸してくれるみたいだ。

部屋の中央に布団が敷いてある。


その脇に火のついたロウソク一本。

ただそれだけの部屋だ。


俺が部屋を眺めていると、婆ちゃんはどこかに行った。

布団の中に入り、寝ることにした。

静かにまぶたを閉じる。

しばらくもやもやとした後に映像を見る。

これは夢を見るための準備さ。

俺の優秀な脳みそが寝かせるために入眠心像を起こす。

現実の延長のような場面なのに、ちょっと現実とはどこか違う景色。

やがて無になる世界。


虫の鳴き声を聞きながら。

少年の意識は深い闇の中へと沈んでいった。


目が覚めるとフクロウが泣いていた。

まだ外は暗い。

俺は覚醒した。

俺の意識は闇から這い上がった。

突然の尿意に目が覚めたのだ。

布団から出てトイレに向かう。


暗い廊下を歩き続ける。

足の裏はもうすっかり冷えていた。

少し肌寒い。

くしゃみが出そうだ。


少便が終わると今度は眠気が来る。

尿が出そうだ。

俺はウトウトしながら再び廊下を歩き出す。

鉄が擦れる音を聞きながら、ある扉の前で立ち止まる。


その扉は、婆ちゃんには絶対に開けるなと言われた。

 いわゆる開かずの扉ってやつだ。


最初は生臭い匂いだなと思っていたが。

しかしこれは、間違いない。

この鉄の様な何とも言えない、匂いを嗅ぐだけで気分が悪くなる。

そんな匂いだ。

 最初から怪しいと思ってたんだ。

俺は扉を無理やり開けた。


目の前に広がった光景に、俺は一瞬呆然とする。

扉の向こうはまさに地獄だった。

心の中で開けちゃ駄目だって声が聞こえた気がしたのは間違いじゃなさそうだ。


無数の死体が天井から吊るされていた。

10人くらいかな、大人から子供まで、中には俺と同じくらいの子も、よく見ると内蔵だけが取り除かれていた。

いや、脳みそもだ。


しばらくの間はただずっとその光景を眺めるだけだ。

豚を干してベーコンにするように、人間を干して人間のベーコンにでもするつもりなのか?

そういや昨日食べたご飯に肉も混じってたよな、ありゃ何の肉だ?


何かが背筋を凍らす。


考えただけでゾッとした。

考えないようにしよう。


「アタシが鬼婆さ」


背後から声がした。


 敵だ


俺はそのまま振り返る。

そして蹴りを一発、と思ったら。


振り上げた右足は無くなっていた。

俺はすぐさま殴ろうと思ったが辞めた。


その婆ちゃんは、俺の右足を持っていた。

ボタボタと血の塊が床に落ちている。

これで膝から下が無くなった。

そして悟った、俺はコイツに勝てないと。


「やっぱりお前が鬼婆か、怪しいと思ってたんだよ」


飯をくれて、布団も貸してくれた婆ちゃんは、鬼婆だったのだ。

俺は逃げるスキを伺う。


「そういやお前さあ、お腹すいてるって言ってたくせにご飯を食べなかったよな。俺がこの家に来てくれただけで願いが叶うって言ってたのは、俺を食べるつもりなのか」


「ああそうさあ、あたしはあんたを食うぜえ、軟骨がこりゃうめえんだ。子供は特になあ」

「あんたのお婆ちゃんも頂いたさねえ、まあ、まずかったがなあ」

「は?お、オイお前、嘘つくなよ」

「嘘じゃないよ、ちゃんとアタシの目を見な」


俺はその瞬間、呼吸のしかたを忘れた。

俺の婆ちゃんは飢えを満たす餌となったのだ。

鬼婆によって、食われた人達の中に家族がいた。


既に逃げようという気持ちは無くなっていた。

その代わり鬼婆に向ける殺意が増した。


俺は逃げない、せっかくこんな遠くまで来たんだ。

たとえそれで傷ついても、俺はその傷を誇ればいい!!


深く息を吸い、呼吸を整えて、乱れたハートの形を整える。

 冷静になった。


こうなるとショウは昔に戻る。

まだ俺に弟が居なかった時代だ。


「俺の婆ちゃんは太陽の匂いがするんだ」

「お前の場合は血の匂いがプンプンするぜ」

「ちゃんと風呂入ってんのか?ああ!?」


その瞬間、鬼婆は眉毛ピクリと動かす。

そして言葉を発した。


「おめえ、年寄舐め・・・」


てんのか? と言う前に俺は首元の刻印を使って家を壊しながら鬼婆に向けて柱や家具、床などの、家ごとをぶつける。

自分には当てないように気をつけながら。

経ったの0.3秒で鬼婆の住処は全壊した。

踏んであった床は鬼婆の方に飛んでった。


その壊れた廃材は全て鬼婆の下敷きになった。


俺は右足を失い、鬼婆は家の下敷き。

だが俺の足は再生しない。


このままじゃ勝機は無い。

なぜかそう思った。

もし鬼婆が再生の能力を持っていたら最悪だ。


 

数秒もしない間に鬼婆は出てきた。


俺は落ちていた斧を拾い、鬼婆の元に走る。


「甘えんだよ歯ァ食いしばっとけ!!」


そうすりゃ少しの痛みは耐えられるだろう?


俺は全力で斧を振る。

鬼婆は突っ立っていただけなので首を落とすのは簡単だった。


その後は全力で逃げるだけさ。

鬼婆は再生を始めていた。最悪だ。


首から何本もの筋肉繊維が出てきて体と首に神経同士で繋がり始める。

俺は逃げながら木を一本引き抜いて鬼婆に向けて投げようかななどと考えていたが。

俺はいつもの様な力が出なかった。

それこそ、ヒバナを吸収する前の体力と同じだ。


つまり今の俺は普通の人間ぐらいの力しか出ないのだ。

何故だろう。


さっきからヒバナに何度も話しかけているが返事がない。


「アタシらみんな、死ぬまでハロウィン、何時でも狂ってハイになってそして言うんだ。アタシらみんな、死ぬまでハロウィン!!」


鬼婆が急に謎の歌を歌いだし、復活した。

そして追いかけてくる。

怖い。


いつもなら現時点で逃げ切れているはずだが。

刻印を使った影響で全身が痛い。

それだけならまだしも、ヒバナの力が使えなくなっていた。


少年と鬼婆との距離が物凄い勢いで縮まる。

俺は全力で足をを回す。


だがすぐに追いつかれた。

そもそも右足を失っていたので当然っちゃ当然。

しかし鬼婆が俺に触れる直前に少年は横え大きくジャンプする。


身を挺してのスライニング!!

からの受け身!!

ここで鬼婆が大きく距離をとった。

理解し難い!!


そして少年が立ち上がった!

再び走り出す。


が!ここで力尽きる。

少年は倒れた。


今にも鼓膜を破りそうな心臓の音を聞きながら、ゆっくりと近づいてくる鬼婆を眺める。

耳から心臓が飛び出そうだ。

鬼婆は俺の婆ちゃんを食った。

てことは俺の家族がこの世界に来ていたことになる。

チッ、こんな思いをするのは俺だけで十分なんだ。

なあ神様よ、頼むから俺の家族には指一本でも触れるんじゃあねえぞ。


俺はそんなことを考えていた。

だが、俺の命も危ない。

やばい、終わりだ。


クソッ


体が動かねえ

よく見りゃ自分の胸元に包丁が刺さっていた。

気づかなかった。

いつの間に投げたんだよチキショウ。


ああ、不可解だ。

名前すら知らない赤い花が錆びれた少年の心臓に咲いた。

その赤い花は溢れ出てくる。


俺は鬼婆に質問をした。


「なあ、何でお前は人を食うんだ?」


鬼婆は俺の問に答える。


「人は麻薬さあ、うまいんじゃ麻薬なんての比じゃねえ、食うと手放せなくなる。あたしはねえ、毎日がハロウィンさ。それになあ、人間1人の人生より、アタシの魂の方が大事さねえ。だから人を喰う」

「人ってそんなにうめえのかよ、こんな事言いたかねえが人を食うのは辞めてくれ」


すると鬼婆はため息をついた。


「人を食うのが駄目だなんて、おかしな事を言う輩なんてたくさんいる。もうウンザリさ」

「人を食うのを辞める?アタシはもう既に何千回とやったさ。アタシは酒は飲まない、そして人を食う。それを辞めるなら死んだほうがマシさね」

「じゃあ死んでくれ」

「無理な話だね、「黙れ人食い」まあ聞きな、みんな、生きるのにも飢えを満たすのにも、殺すことしかできん。でも人はアタシを否定する。だから人は愛せんのだ。アタシは街を去った。この森にいる。こんなことになるって知ってれば、アタシは何者にも成らなかった。三年後に世界が終わる。もっと早く知ってれば、アタシはもっと良いもんになれたんだ」


「何が言いたい」


「あのなあ小僧、アタシが一番はじめに食べた人の肉は自分の足だ」


俺はその言葉を聞いて一瞬、固まった。

自分の足を食う。それは虚気の沙汰。

ただたんにイカれているのか、それとも正気の上で仕方なく。か。

やはり正気とは思えないが。

殺しはまだ良し、人食う時点でアウトだろ。


でもなあだからって俺はお前を許さないぜ。


「あんたを殺せばもう一日が終わる」

「なあ、一日が24時間って誰が決めたんだろうな」


「俺が知るかよ」


鬼婆はとどめをさそうとする。

俺は死を覚悟しながら喚き散らかす。


「ああクソッ、一生許さねえ、てめえは一生後悔しながら死ね!俺を殺したから後悔するんだ!人の見た目して人を食うのが駄目なんだ!!動物は食べないのに人は食べるから!!!だがら不幸になる。白い服来てるくせに血で汚すな!赤い服着ろ!騙しやがって」

「どうせこれからも人を食うんだろ?人を愛せないって?人もお前を愛せねえよ!!お前みたいな・・・」


その時、鬼婆は手に持ってた包丁を落とした。


「もうやめな。あんたの怒りは伝わったさ。でもなあ、何も意味ないねえ、1人や二人の人間に嫌われたところで。人間はまだ何億人もいるんだ」


論点が違うんだよなあ。


「あっそう」


あ、リュート居た。


俺はゆっくりと体を起こす。


右を見るとリュートがいた。

何で居るんだよ。

助かったけど。

鬼婆はリュートを見るとため息をついた。

俺の方を向き問いかけてくる。

俺ではなくヒバナに。


「ヒバナやあ、いるんだろう?隠れてないで出てきな、あの時の隠れんぼの続きでもしたいのかい?」


鬼婆がそんなふうに話しかけてきた。

なぜ鬼婆がヒバナの事を知っているんだ?


《いやあ、中々面白かった。まさかここまで粘るとはなあ》


『おいヒバナ、何やってたんだ』


ヒバナは俺の問を無視して鬼婆と話し始めた。


《久しぶりだな鬼婆》


「あんたも意地悪だねえ、表に出てりゃこのガキ襲わなかったのに」


《いいのさ、面白かったし》


「よくねえよ」


思わず口にする。

そして心のなかでヒバナに問う。


『何が面白いんだよ』


《何も面白くない》


それにしてもヒバナと鬼婆は知り合いだったのか。

衝撃の事実に唖然とする。

ホント何で隠してたんだよ。

頭の傷は既に治っていた。

胸元の傷と右足は再生中だ。

足の切断面から蒸気が出ている。


なぜ鬼婆が急に襲うのを辞めたのか疑問だが。

神経は尖らせてる。

いつでも逃げれるぜ。


少したっていつの間にかリュートが俺のすぐ側にいた。

俺は話しかける。


「おいリュート、こりゃどういう事だ?」


アブソリュートがそれに反応する。


「まずは敬語を使え」

「それより先に俺に言うことは?」

「よく生きてたなショウ」


違う違うそうじゃない。


「謝れ」

「すまんかった」

「かよわい少年をこんな森に連れていくんじゃねえ」

「つーかお前俺を殺すつもりだったんだろ?ヒバナは暴れないぜ?」

「取り敢えず俺を弟子にしろ」


《おいリュート、ヒョウガを出せ》


突然ヒバナが入ってきた。

邪魔だ。


『おいヒバナ、黙れ』


その時リュートがヒバナの問いかけに反応した。


「何のことだ」


「おいおい俺の話を聞け!ていうかヒョウガって何だよ!!」


《貴様は知らなくていい》


『じゃあ知らねえ!!』


「なあリュート、俺何回死にかけたと思う?」


「さあな」


ショウは指を折って数える。

リュートに見えるように。


「ひーふーみー、おっと数える指がたりん」


怒りを混ぜながらそうつぶやく。

するとリュートは目を白黒させながら驚いた顔をした。

ゆっくりと頷き。

言葉を発した。


「お前さんそれ、ガル坊のネタだろ?」

「いや橋本環奈」


だった気がする。いや違うな。


「いいかショウよ、ワシの弟子になるのは辞めておけ」

「お前さんには成し遂げられん、お前さんにはセンスはあるが才能は無い」


俺はその言葉を聞いてしばらく黙る。

少し考え、それを口にする。


「なあ、俺が才能が無いって言える根拠なんかあんのかい」

「勝手な決めつけで俺を落とすんじゃない」


「ワシの話を聞かんか「ああああ、うるせえ黙れ臭い口閉じろ」

「ワシを怒らせたいのか?辺り一面氷の大地と化すぞ」

「別に俺はあんたの機嫌を損ねに来たんじゃない、いやお前の方からか、お前だってそうだろ?でもなあ、俺の気持ちを考えろ。クソの川に溺れろ」


俺がそう言うとリュートは苦い顔をする。

それまで黙って俺たちの様子を見ていた鬼婆が声をあげる。


「リュートや、弟子にしてやったらどうだい?あの子も強い」


《そうだそうだ、ショウを弟子にしてやれよ。俺たちは最強になれるんだ》


『あ、なんだヒバナ、お前誰だよ』


《お前と俺様、二人で最強さ》


「うおおお!!カッコいい事言うじゃん!!ハハッ、俺たちゃ最強だぜ!!」

「取り敢えず俺を見ものにしたこと謝ろうかヒバナ・・・」


「ショウ、弟子にしてやる」


リュートから弟子入りが認められた。

これでひとまず安心・・・って帰りどうすんだ。


「そうか、さっさと森を出ようぜ」


さらっとリュートに帰る術を持っているか確認しようとしてみた。


「もう俺に死に場所を渡すなよ」


ついでに保険にも成らない保険。


『おいヒバナ、リュートは俺に攻撃してこないよな?』


ついでにヒバナに確認。

リュートに襲われたらたまったもんじゃない。


《大丈夫だ、敵意は無い》


『そうか、でもヒバナの言う事だからな。信用できねえ』


《なら自分で確かめる術を身につけるんだな》


『だから弟子入りしたんだよ』

『ヒバナより爆弾持ったほうがまだ安心できる』


《俺様はお前を支配する事はできないんだぞ》


それが嘘だったら困っちゃうよ。


『じゃあお前なにもんだよ』


《俺様の事を語っていたら夜が明けちまう》


『もう明けちまったよ、ほらな?信用できねえ、もう朝日昇ってんじゃん。鬼婆の事隠すから信用されないんだ』


リュートが歩きだした。

ショウに声をかける。


「ついてこい」


俺は無言でついていく。

そしてすぐ疑問が生まれた。

鬼婆の方に振り返る。


「なあ鬼婆、何でお前ら知り合い何だ?そんでなぜヒバナを知っている?」

「あァあ、最悪さね、あんたのせいでこうなっちまった」

「俺は悪くねえ、悪いのはお前の運だ」

「早く俺の質問に答えろ」

「リュートの姿が見えた時点であんたを殺せなくなっちまったのさ」

「もう帰んな、リュートとヒバナは帰らずの森の出口を知っている。羨ましいねえ、アタシは出れないのにねえ」

「それだけか?もっとないのか?」

「忠告だけしたやってもいいさね、大事なことを教えてあげようかい。神はアタシら人間何かどうでも良いんだ。神は人の神じゃない、世界の神なんだ。できれば世界鬼にも仲良くしてやって欲しいねえ、神は世界のために動いているのさ、だから人間が犠牲になる。アタシはそれでもいい、でもなあアタシらの邪魔するもんはどんな奴でも許さねえ、アンタも大変なんだろ?まあせいぜい足掻きな、もしアンタの夢にアタシが出てきたら気をつけな、その時のアンタは限界がきている」

「もういいだろ?さっさと帰んな」

「はあ」


俺はゆっくりリュートの方に歩み寄った。

そのままリュートの背中を見ながら歩いていく。

神は人の神じゃない世界の神、だから人間なんてどうでもいい。

なるほど、何となくこの世界の神について分かった。


俺がこの世界に迷い込んだのも世界のため、なのか?

勘弁してくれよ。


まあ何よりヒバナとリュートは出口を知っている。


ショウは右手から炎を出してみる。

龍火は使えるみたいだな、力は元に戻ったか。

体が軽い、筋肉痛も治った。


「なあリュート、何で出口を知っている」

「ワシはお前さんと変わらんよ、お前さんにもできる」

「まあヒバナが教えてくれりゃな」


《そうさ、俺様は気分やだからな、お前は早く俺様無しで戦えるようになれ》

《俺様はもう寝る》


ヒバナの奴、前は俺のこと貴様って呼んでたくせにお前って呼ぶようになったな。

どういう風の吹き回しだ?


「ショウ、帰らずの森は案外小さいぞ、だからすぐ出られる」

「なあ出口ってどこだ?」

「森に出口など無いわ、どこからでも出られる」

「そういうものなのか?」

「帰らずの森には呪いがある。わしらはその呪いが効かん」

「なるほど」


数時間歩けばあっという間に森を出た。

そのままリュートの家に向かう。


「何で俺を帰らずの森に送ったんだ?」

「なぜ聞く」

「一応」


「お前さんの中にヒバナがおるだろ?そいつはいつか覚醒する。そうなるともう手がつけられん」

「だから俺をあの森に?」

「そうだ」


まあ、予想どうりだ。

これならリュートを信用できるかも知れない。


「直接俺を殺せば良かったのに」

「ワシに人殺しはできん」


「そっか」

「痛っ」


目の前にあった木の枝にぶつかった。

クソッ、近くのものがぼやけて見える。

遠くは見えるんだが。


「ついたぞ」

「おおいつの間に?」


俺の眼前に家がたっている。

まあ古そうなお家だよ。

一週間ぶりだな。


いやあ長かった。


リュートが扉の前で何やらガチャガチャやっている。

すると横扉式のドアが開いた。

どうやら鍵を開けていたらしい。


リュートが中に入る。

俺もそれに続いた。


今更だが靴は脱がなくていい。

そもそも今裸足だが。

中に入り、廊下の床を踏む。


バギイイイ、


床に穴が空いた。


「おっとすまねえ」

「ショウ、体重重いのか?」


リュートがそう言う。

中々失礼な事を言う、結構気にしてるんだからね?


「そうだった俺重いんだった」


取り敢えず外に出る。

ショウがこれだけ体重が増えたのにも理由がある。

ショウはヒバナを吸収してから少しずつ重くなった。

それはショウの中の細胞がヒバナ(龍)の細胞に変わっている途中だからだ。

二年後には完全にヒバナ(龍)の体重になるだろう。


一般的にドラゴンの体重は全長40メートル程で700トンを超える。

ヒバナは柱の龍の中では一番小さいのにも関わらず一番体重が大きい。

大体20メートル、体重1200トン。

一番でかい龍で200メートルを超える。

体重は1000トン、この巨体に少ない体重、どうやって体を支えているかは不明。


今ショウの体重は大体700キロを超える。


「ふむ、しばらくは外で生活だな、ショウ、狩りに行くぞ」

「ワシの事は師匠と呼べ」

「うっす師匠」


今日、アブソリュートが我が師匠となった。

師匠と二人での修行生活が始まる。

Tha beginning of a new day

新たな一日の始まり

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