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心世界  作者: rin極
第二章 帰らずの森編
12/48

第12話 「生きる」


薄暗い森の中で1人、いや、二人・・・

少女は木の上に座ったまま。

周りの木々は震えている。

森は、何かを始めようと。

顔をしかめていた。


この二人の周りは冷たい風

森の外は矛盾の雨

ヒバナは眠りの中

何の夢を見ている?

俺には分からない


その少女、バスキアス=カーナは言った。

その前に、一つ言っておこう。

俺はコイツが嫌いだ。


「あなたは間違っている」

「あなたが逃げても、誰も背負ってくれないよ」


俺はその言葉を聞いて、ハッとツバを吐いた。

そして、少年は一切の表情を変えずに言葉を発した。


「今になって答え合わせか、そんなのどうでも良いんだよ」


「じゃあ」

「一つ忠告良いかしら」


「ハッ!忠告だと?お前が?この俺に向かって?舐めやがって、まあいいぜ。その忠告って何だ?」


「君の場合、打算的に動いたほうが良い。だからこそ、天国とか地獄とか、あんまり信じないほうが良い。いつかきっと後悔するから」


俺は、バスキアス=カーナが発した言葉には、首を傾げた。


 何いってんだコイツってな。

あれ?コイツいつも訳の分からないこと言うけど。

いや、もしかして。

あの日のガルムが言っていたアドバイスに何か同じものを感じる。


 そういえばあの時、俺はガルムに聞いた。

何でそんなにペラペラと喋れるんだって。

そしたらガルムはこう言った。

私の能力の一部です、と。


今思えば、あの時ガルムが言った言葉には、信憑性に欠ける言動が多かった。


 例えば、

貴方の知らない街で、貴方の大切な人が泣いています。

もしこの言葉が真実だとするなら。

俺は頭の中で疑問符を浮かべるだろう。

何でお前がそんな事知ってんだってな。

俺ですら知らない事だ。


まるで、人の未来を見ているような。


「お前、何でそんなことが言えんだ?」

「まあ、私の能力の一つとでも言おうかしら」


同じだ、あの時と同じだ。


「なあ、お前には見えてんのか?」

「さあね、どうかしら、未来なんて」


俺は確信した。アイツは、ヒトの未来を見れる。

ついでに、ガルムにも同じ能力を持っていた事に気付いた。

そっか、だからあんなにペラペラと喋れる訳だ。

あの時俺を助けてくれたのにも納得した。

偶然じゃ無かったんだ。


俺に龍が封印されている所、龍宮寺に行けって言ったのも。

全部見えてたんだな。


「なあ、お前もしかして」


「ガルムを知らねえか?」

「さあ、誰だろう。私わかんない」


「もう良い」


「あなたは未来に興味があるの?」

「終わりを知りたいの?」


俺はいきなりのことでキョトンとした。

考えてもいないことを言われると反応が鈍る。


「無いな、この先の終わりなんてどうでも良い。大事なのは今をどう生きるかだろ」

「ああ、貴方この森じゃ死ぬかもしれないものね。だからそんな事言うんでしょ?」


「からかうな俺を」


「あなた、死ぬの怖いんでしょ?」

「嫌な女だな、男心を分かってねえ」


「あら、あなた男の子じゃ無いのに分かるの?」


俺はその瞬間、激怒した。


「俺は男だ!!!!」

「そんなに弱そうに見えるか?ああ!?」


「ビビリのくせして、あなた金玉どこに付いてんの?」

「はあ?てめえ舐めてんのかオイ!!」


「あらら、そんなに叫んで、怖いのね。しょうがないね、良いこと教えてあげる」

「お前から教わる事なんか何一つ無いね!!」


「あなた短期ね、ホントに玉金付いてる?」

「辞めとけ、俺は人を殺せる」

「私は死なないよ。あなた弱いもの」


 その少女は、俺の事なんか無視して、自分のペースで語り始めた。


「良い?私達は生きることを強制されない限り、私達は自由よ」

「それが、後悔の無い人生を生きる事しか考えてこなかった私の、答えよ」


「へえ〜そうかい覚えとくよ」

「で、お前の人生に後悔は無かったのか?」


「貴方ねえ、女心を分かってないね」


「さあ? おらサッパリ分かんないな、女心なんて。ていうか興味無いし」

「あなたモテないでしょ」


「それは言わないで欲しいな」

「ところで死の恐怖についてのアドバイスじゃ無いんだな」


「これしか良い迷言思いつかなかったの、それで満足?」

「知らん」


「あなた私のこと嫌いでしょ」

「そりゃもう結婚したいぐらい」


「あら、私は別に貴方に嫌われてもいいの。私は貴方の悪で居たいもの。そんな事で私の晴れた人生に曇りは来ないわ」

「貴方に恐怖させてあげる」

「そうか、おらァ何時でも戦える準備できてるぜ、今すぐ殺るか?嬢ちゃんよー」

「お断りするわ」


「失恋した気分だぜ」

「んじゃバイバイ、そろそろ新しい娘に会いに行くから」

「あなたの心に雨が降らないことを、私は願っています」


「そりゃどうも」

「てか、最後まで話しが噛み合わなかったな」

「そうかしら」


コイツ絶対気ィ合わねえ。


そして、少女は消えた。

少女が何故この森に居たのかは分からない。

しかしあいつは、間違いなくこの森を出た。

ヒバナがそう告げる。


ここは帰らずの森だぞ?

あんな一瞬で森を出るなんて。

そんな事が可能なのか。


悔しいさ、ガルムが死ぬ羽目になった原因のゼロゲインに加担したからなアイツは。


 「クソッ!!!」


エルザ!!!


俺はお前が嫌いだ!!!

そんな奴の手伝いをしたんだアイツは。

エルザの友達か?

さっき殺せばよかった。


でも、今の俺じゃ敵わない・・・

奴は強かった。エルザよりも、だ。

だから・・・俺はリュートに弟子にしてもらう!!

強くなるんだ。

そのためだけに薄気味悪いこの森に入ったんだ。

必ずいつか殺してやる!!


「はあ、はあ・・・」


いや、落ち着け。

俺は何言を言ってる。

くだらん復讐心で俺の人生縛られてたまるかよ。


そして、少年は自分に強く言い聞かせた。


いいか、俺が強くなりたいのは、ガルムやステファみたいにカッコよく生きたいからだろ!!

俺は、俺の生き様は!

カッコいいんだって、全世界に証明したいんだ!!!!!


なんなら今すぐ宣言するぜ!!

俺の未来は超カッコいいって!!!!


 それから少年は森を歩き回った。

興奮を抑えながら。

何十分 何百分 何時間と

ヘトヘトになっても。

足が動かなくなりそうでも

少年は歩き続けた。


俺は最近土地感覚が優れている気がする。

だんだん疲れが無くなってきた。

足腰の痛みも無くなってきた。

自分の太ももを触ってみる。

とても熱い。


それでも俺は歩いた。

足場の無い、まるで砂漠で歩いてるぐらい歩きにくい土地だ。

一度踏んだら膝まで沈む泥沼さ。

この森は泥で包まれている。


 (ワクワク樹海生活5日目)


そして気付いた。

同じところを何度も回っている。

どうすりゃ良い?


気づけば5日目だ。

また一日過ぎた。


流石に疲れた。


少年は木の枝に飛び乗る。

そして幹に持たれて身を休める。


曇った空を見る。

もう見慣れた。


数えるほどの夜しか越えてない

それだけの日にちでも俺は結構強くなった。

最初の俺と比べればな。


今ならよく分かる。

前の俺があんなに弱かったんだって。

今だって、俺が生きてるのはヒバナの力

それでも俺は良いさ。

自分の力じゃ無いってのは分かってる。

でも俺はヒバナに感謝しない。


森から聞こえてくる音はどれも散らばら

知らぬ間に増えた俺の体重で支えられる枝は少なくなった。

この爆弾みたいなヒバナと何週間と過ごして少し分かった。

1人ぼーっと今とこれからを考える時間が必要。

有りすぎても病むけど。


今のままじゃ家に帰れない。


この世界にきて最初は思ってた。

俺はただ毎日部屋に籠もってただけなのにって。

ほんとなら今も漫画とか読んでた。


そんな日常がずっと続くと思ってたのにな。

これが当たり前だと思ってたんだ。


毎日ご飯を作ってくれるママも、俺に構ってくる弟も、それが当たり前だと思ってたんだ。

それが突然無くなった。


何かだんだん寂しくなってきたな。

久しぶりに発狂しちまいそうだ。


神を恨んじまった。

お前のせいでってな。


はあ、こんな暗いことを考えるのは俺が今暇だからか?

休憩してるだけだろ。

俺は何かしてないと落ち着けないのか?


そうならさっさと食い物でも探すか。

そう思い、少年はため息を付きながら立ち上がった。


 「はあ、ちょっと憂鬱・・・」


俺は、そんなふうにため息まじりな言葉を発した。

少年の目は、少し寂しい

今のその心の天気は、曇だった。


俺は木の上から飛び降りる。

そして着地する。


この動作にも多少慣れてきた。


「さて、美味しい獲物はどこにいるかな」


《起きたぞ、ショウ。おかげでいい夢見させてもらった》


「おおヒバナ、どんな夢だ?」


《お前が無様に地面に這いつくばる夢をな》


「チッ、聞くんじゃなかった」

「それよりヒバナ、どっかに美味しいもんいねえのか?」


《自分で探せ》


「分かったよ」


そして、少年は歩きを再開した。


探索しているとあるものを見つけた。

3十センチぐらいのでかいカタツムリ。


「おいヒバナ、コイツ食えるか?」


《おかしいな、まだ数週間はいけるはずだが小僧、貴様ついに胃袋に限界が来たか?》


「ああ冗談だよ食べる訳無い、てか何このカタツムリ」


《コイツはいろんな物の怪から嫌われてる》

《めったに近づくもんでは無い》


「何だよコイツまじいのか」


《ショウ、そいつは食べるなよ。物凄くマズイしオマケに毒がある。腹壊すぞ》


「ちぇ、とんだハズレくじ引いちまったみたいだな」

「どうせなら上手い肉食わせろよ」


《そいつは厳しいぜ、この森じゃあ変なもんしかいない。前貴様が食べた赤赤熊が最後のグルメだ》


「まじかよ」

「早くこの森から出ないとな、飢え死にしてしまう」


《そう慌てるな、今は無理だ。ここも慣れれば良いところ、に成るわけでも無いが俺様が居るからな、いつか出られるさ》

《まあせいざいゆっくり森ライフを楽しむんだな》


「おいヒバナ、今言った言葉。お前も他人事じゃ無いからな」

「お前も道連れにしてやろうか」


《さすがの俺様も早いとこ脱出したくなった》


「そっか、じゃあ・・・」

「いっそ森燃やすか?」


《辞めておけ、婆婆を怒らせる。それは最終手段だ》


「ちぇ、ていうか・・・」

「何だよ婆婆って」


その問いにヒバナは答える。


《帰らずの森に婆婆は1人ずつ居る、この森は鬼婆だ》


「あーそういや前言ってたな」


俺は1人で納得する。


《まあ気にするな、婆婆は滅多なことが無い限り、姿を拝むことすらままならない》


少年はその言葉を聞いて、少しホッとした。

これ以上危険な目には遭遇したく無いかな。


少年は歩きながらその婆婆についての情報を聞き流す。

一応脳みその記憶装置にかけといた。

いつか俺の脳内ウィキペディアが役にたつ時が来るかもしれない。


今は1人で森をさまよってるだけだが。

幸い、ヒバナのおかげで孤独は感じない。


 「はあ〜あ、早く飯食いてえ〜」


 ザッ


何か物音がした。

地面に落ちてる小枝を踏んだ音

つまり足音だ。

その瞬間、ものすごい冷や汗がブワッと出た。


「誰がババアだって・・・?」


バクバクと鳴る己の心臓と共に、声がした方向に顔を向ける。

そこには何ともまあウフフな格好の1オッフ貰えそうな1人の女性がジョジョ立ちしていた。


緊張で喉の奥まで枯れ果てた重い口を気合で動かす。

恐怖のせいか、震えた声がかすれでた。

何ともまあ情けない。


「お前誰だ?」


やっとの思いでその女性に質問をする。


すると、その問いに女性よりも速くヒバナが反応した。


《ショウ、貴様とんだババ引きやがったな。気をつけろ》


忠告だった。

ヒバナの声が脳内で響く。


それで少し落ち着き、心のなかで頷く。


 分かってるよ


「あら坊や、私は悪婆よォ。こんな所に子供が居るだなあんでえ、迷子かしら?今夜暇ァ?」


悪婆か、マジかよ。

ついてないな俺も。

ん? でも、この婆さん、何か大丈夫そう。

それから俺は自分でも驚くぐらい平然とした態度を取ることができた。


「ん?お前が婆婆か、にしてもまあ何でそんな目のやり場に困る服装してんだ?」

「あら坊や、私は悪婆よ。色気こそが私の武器よ」


「そうか、いい年してなんて格好を・・・」

「ていうか、何で他の森の婆婆が居るんだ?」

「ここの主は鬼婆だろ?」


すると悪婆は人差し指を口に当てた。


「しーーー、ちょっと探しものよねえ」


そう言って、悪婆はため息を付いた。


「ああもう、いけない子ねえ。これだから感のいいガキは嫌いだよ。察してよねえ」

「また会ったらその時にお仕置きよ」


「ちょっ、待てってオイ!」

「まだ聞きたい事が!!」

「っ・・・!!。」

「・・・。」

 「・・・あれ、もう居なくなった」


 結局何だったんだあの人。


《ショウ、中々危なかったな》


「何で?」


《悪婆はその美貌で人の心を支配するのさ、そして何と言っても。悪賢さは右に出るものも居ない》

《その気になれば悪婆は、お前を廃人にだってできたはずだ。運が良かったな貴様》


「そんなにやべえ奴らなのか、婆婆って」


《帰らずの森の主だからな》

《でもおかしな事が起こったな》


「それって、悪婆がここに居るって事か?」


《そうだ、普通は婆婆同士で互いの領域には入らん。鬼婆もさぞお怒りだろうな》

《まあ、小僧が気にする事でもない》

《そんなことより今日も生きるぞ》


「へ〜い」


俺は無闇やたらと歩き回るのを辞めた。

木の陰でじっとする。


そして食い物がありそうな所を考える。


 どこに食べるものがあるのか、もっと木々や草むらが沢山ある所か?

生きやすい場所、隠れられる場所。

水が飲める場所。


水・・・ 水はどうだ?


水がある所。

川や湖、それなら前見たことがある。

そこら辺に居るかも知れない。


とりあえず水がある所を探すか。

どうする。

どうやって川や湖を見つける?

分からなければ聞けばいい話だ。


 「なあヒバナ、川はどこだ?」


《さあな》


そう来たか、ヒバナとて、万能では無い。

どうしたもんかねえ。


いや待て、何か大きな音を立てたら物の怪が寄ってくるんじゃ。

前だって青鬼から逃げる為にジャンプして盛大に落下した時に赤赤熊来たんだ。


試してみないとな。

万が一赤鬼や青鬼を呼び出したとしても、殺すか逃げるかだ。

後者の方だな。


《貴様にしてはいい案だ。やってみろ》


「で、どうやって大きな音を出す?」


《大きな木でも倒せば良いだろ》


「なるほど」


 俺は起き上がる。

そしてすぐ横にある大きな木を見る。

そして見上げる。


少年はこう思う。

ホントに倒せるのか、と。


にしてもデカイ、どうなってんだっていつも思うよ。

不思議なもんだ。

まるで巨大樹だ。


この森では何もかもデカイ。

虫ですらデカイ。

この前見つけたカタツムリだってそうだ。

やれやれ、困っちゃうな。


 「ヒヒヒヒイっw」

「根っこごと引き抜いてやろう」


おっと失敬、つい昔の衝動が蘇る所だった。


少年は腰を下げ、右足を後ろに下げ、左足を前にだす。

両手を右の腰に持っていき。

一呼吸飲む。


一気に足を踏み込み、地面がえぐれる。

そして力いっぱい両手を前に突き出した。

木の幹に手が当たる。


 「ッドガアアアアアアアアアア!!!!!!」


バキバキと音が鳴りながら。

腕が伸び切るまで。

精一杯前に突き出した。


木の幹に手が少し食い込みながら、まっすぐ太陽に向かって成長した大きな木の幹が。

その幹が、嫌な音を立てながら、大きな大きな木は少し傾く。


 「バキキキイイキキk!!!!」

「っ・・・!」


その手の中心から折れ始めた。

その一箇所から木くずが飛び散り、ゆっくりと傾き続ける。

次第に傾きが加速していき、一気に倒れた。


「ズドドドドドドドドドンンン!!!!!」


それは、森全体に響きまわるかと思われるほど騒音をたて、やがて静まり返る。

土ぼこりがたつなか、俺は倒れた木を見つめる。


「おお凄え、まじで倒れるとは」

「やってみるもんだな」

「さて、後は愚かな虫けら共が来るのを待つとするか」


《ショウ、貴様もうそこまで進行したのか?やけに速いな》


「凄いだろ?」


《俺様の力だからな》


「俺の力でもある」


《この泥棒が》


「お前もな」


《お互い様か・・・》


「やれやれ、もうそろそろ何か変なもん来てもおかしくないはずだが・・・」

「随分とビビリなもんだぜ、それとも何だ?聞こえてないのか?」

「物の怪にも年があるのかねえ」


《聞こえているはずだ警戒してるんだろう脳がないくせに》


「本能だろ」


 それから数十分待ったが結局何も来なかった。

ええいもう一度。


「ズドドッドドドンンン!!!!」


また一本の木が犠牲になる。

そして何分か待つ。


「ハハッ、ハハハ・・・、生態系壊しちゃおっかな」


《早まるな》


ああもう3度目の正直!!!!


「ズドドドドドドどどd!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


一気に数本倒しちまったぜ。

まあ良いか。

今度こそなんか来い!!


 すると右斜後方から気配がした。

俺はその方向に向かう。


そして木の上に飛び乗った。

 

「おお、居た居た!!」


ん?いや待て。

何だコイツ。


 俺の目に写ったその生き物は、変なミミズみたいな奴だった。

しかもでかくて気持ち悪い。


「またハズレか」


《まあそんなもんだ》


蛇とかなら食えたのに。

寄りにも寄ってミミズかよ。


 ちょっとショック。


俺はその後も何度か探したが変な生き物しかいなかった。

ホントにこの森には変な奴しかいないらしい。


ヒバナの言ったとおり、赤赤熊が最後のグルメだったらしい。

俺は目を閉じ、ため息をついた。

 軽く絶望した。

静かな森の中で。


 「俺、このままじゃ死んでしまう。どうしよう、まあとりあえは寝るか」


今回も成果なし、何もかもこの森ではうまく行かない、もうウンザリだ。

もう俺の中ではとっくに一つの常識を身にしみていた、帰らずの森は最悪ってな。



--ワクワク樹海生活6日目



突然だが俺は今、現在落下中だ。

なぜそんな状況になったかと言うと。


まず、俺は森の出口を探すため、上空に跳んだ。

これで両足は潰してしまった。


だが、森の大きさが分かるはずだ。


さて、結論から言うと。分からない。


何ていうか、霧が濃いせいで遠くがよく見えないのだ。

だが、俺も進化したのだ。


遠くを見る能力はこの間でグンと上がった。

わずかながら代償もかねて。


 そして分かった事がある。

この森は案外小さかった。


っと、今はそれどころじゃ無かったな。

俺は真っ直ぐ下の方を見る。


物凄い勢いで落ちているのが分かる。

俺はそのまま華麗に着地した。


「さて、どうする?」

「・・・。」

「まあ良いか」


俺はこの森に来てから大体一週間が過ぎた。

そろそろ森を出たい所だが、ていうかもう脱出しないとヤバい。

森にはもう食べ物は無い訳で、飲水になる川や湖などの水源を見つけるのには骨が折れる、オマケに危険がいっぱいだ。

何時死んでもおかしくない、せめて、この俺に翼があれば・・・


『なあヒバナ、ホントに森を脱出する方法は無いのか?』


《ま、無いことはないが、その場合お前が犠牲になるぞ?》


『マジカヨ、、、ていうかどうするんだ?この状況』


《知らん、貴様が何とかしろ。俺様はもう寝る》


『もう三時間経ったか・・・』

『やれやれ、居眠りさんめ』


それにしても、ヒバナの一日の活動限界が三時間って、何とか成らないのかねえ。


これじゃあもしもの時ヒバナが寝てたら困るんだよな。

俺の体 貸してやってんのにもっと役に立って欲しいところだ。


少年はため息をついた、そして重い体をゆっくりと起こす。

背中に激痛が走る。


「いてて、」


さっきのジャンプした時の足のダメージと、着地のときに負った背中へのダメージ。

2つ同時に痛みが走った。重症だ。


俺は自分の体に目を向けると大きく驚愕した。

体中に蒸気が出ていた。

開いた口が塞がらない。


特に怪我をした部分に、モクモクと白い湯気が上がっている。

右の足の太もも、膝、ふくらはぎ、足の甲、ついでに左足も。

背中の方もだ。


体中が熱い。


少年は自分の体を物珍しそうに眺めていた。

やがて、その湯気は無くなった。


興味が無くなったのか、すぐ周りを見始めた。

怪我の痛みはもうすっかり引いていた。


治った、治ったのだ。

前にもこんな感じに怪我をした時はすぐ治った。

まあ今回の治りの速さは異常だが、いつものことだ。


どうやら俺は、ヒバナを吸収した影響で自己再生能力を獲得したらしい。

どこまでの再生能力かは分からないが非常に便利だ。


今回のような大怪我には、治すのに何故か蒸気が出るらしい。

我ながら愉快な体になったもんだ。

 


どういう原理で再生しているのかは不明だが、考えても無駄なので目をつむっておこう。

後でヒバナに聞いてみるか、知っているかどうかは別として。

 まあ再生という能力は非常にありがたい。

前々から薄々思っていたけどやっぱりトカゲってのは生命力の強い生き物なのかも知れない。

羽つきトカゲともなればその倍だろう。


道理で、トカゲに羽を付けた生き物が強い訳だ。

まあドラゴンだしな、言うまでも無いか。


ひょんな事を考えながら少年は立ち上がり、しばらく適当に歩いた。

森を脱出する方法を考えながら。


勿論、最初に帰らずの森に来てからすでに脱出の方法を考えていた。

まあそれはあっさりとボツになったが、まだ脱出する方法が無いわけでは無い。

生きて出れられるかは知らないが・・・


もっと安全な方法があるはずだ、考えろ考えろ。

どうすれば森を出られる?


How can l get out of tha forest ?


「はあ〜、分かんねえ」


 それから少年は、この森で一番大きいであろう木に登った。

その木の頂点でうんこ座りをする。

 その木は風で揺れている。

少年を振り落とそうと言わんばかりに。


森を見渡す頂点に、森の子らは額に手を当て目を開ける。

その子は森の中心に、木はその子を隠さんとばかりに動いてる。


大きな大きな森の鳥かご。

風は明後日の方向に吹いている。


 明日はもっと深くなる。

入れば入れば深くなる。


一度入れば出られない、それが帰らずの森の、森の子ら、婆婆はきっと貴方を見ている。

たとえ君が、隠れたとしても。


「ああクソッ、よく見えねえ」


あ、あれ?何だか頭がフワフワして・・・


 それから俺は、気を失った。

体はゆっくりと傾き始めた。


全身の力が抜け、首がガクンと後ろの方に傾く。

 最後に俺の目に映ったのは白い雲だった。


「ああ・・・」


 ズザアアッ


やがて足から木が離れる。

風の切る音がビュービューと鳴る。


どんどん体制が変わっていき、最終的に頭の方が地面に近づいた。



--



ふとっ、意識が戻った。

まだ、頭がフワフワしていて、まともな思考が出来そうも無かった。

気を抜いたらまた気絶しそうだ。


 お、俺、どうなった?


 ザッ、ザッ


足音が聞こえる。


ゆっくりと目を開ける。

まだ視界はぼやけていた。


遠くから鼻歌が聞こえた。

やがてその音色もクリヤになってくる。


「ふう〜ん♪ふう〜ん♪ふ〜・・・」


それは、幼い頃よく聞いていたお婆ちゃんの鼻歌とよく似ていた。


「・・・んん〜、東の魔女は死んだ、次はあたしの番かねえ」

「あ・・・」


俺とそのおばちゃんの声がほぼ同時に出た。

声がハモる。


どちらも、互いの存在に今気づいたような反応だ。

視界もほぼ戻っていた。


俺は、呆然とそのお婆ちゃんを見ていた。

普通の農家の人の服装だ。


おかしな点は靴を履いていない事だけ。

それ以外はどこにでも居る普通のばあちゃんだ。


「あんた、どうしたのさ、こんな森の奥で。」


先に声を掛けたのその婆ちゃんだった。

俺はまだ頭が回らなかったのでボーっとしていた。


続けてそのお婆ちゃんは俺に問う。


「迷子、にしてはいい年だねえ。じゃあ、遭難、と言ったところかい?」


俺はまだボーッとしていた。

しばらくの間、沈黙がその場を支配した。


お婆ちゃんは優しい笑みで俺を見つめていた。

数秒して頭の回転が元に戻った。


俺は慌てて返事をした。


「は、はい!」

「そうかそうか、大変な目に会ったねえ。どれ、怪我見してみな」


言われて俺は気付いた。

頭を触ってみる。


その手を見ると血がついてた。


「あ、だ、大丈夫。俺は怪我の治りが早いから」


そう言って俺は立ち上がる。

まだフラフラしていた。


「まあ無理するもんじゃ無いよ、包帯ぐらい巻いたらどうだい?」

「ああ、そうするよ」


俺は着ていた服を破る。

リュートに貸してもらった服だ。

お腹の辺りの左脇ら辺に太陽の模様が付いている。


「下手くそだねえ、あたしが巻いてあげようか?そっちの方がいいさね」

「いいよ婆さん、大した怪我じゃない」


俺はそう言って適当に巻いた。


「あんた腹減って無いかい?あたしは腹ペコだねえ」

「俺も腹減って死にそうだ」


「アタシの家で食べさせてあげようかい?」

「マジで?メシあんの?」

「ああそうだよ、少なくともあんたがたらふく喰えるくらいにはねえ」

「助かるよ、で、礼は何が良い?」


「礼はいらないよ、あんたがうちに来てくれるだけでアタシの望みが叶うってもんさあ」

「お、おう?」


「ついてきな」


少年は不思議に思った。

でも、これで今まで頭を悩ませていた問題が解決する。

俺はその後続いた。

これで飯が食える!


ふとっ、何かを見逃していた気がしたが、俺は対して気にしなかった。


こうやって、帰らずの森は生きている。



Future story

未来の話

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