第11話 「バスキアス」
わくわく樹海生活 (3日目)
帰らずの森に来て2日たった。ホントに2日かは分からん、なんせここでは夜がない。
この森の特徴は山程ある。霧が濃いのと何時まで経っても暗くならないという事。
そして何より、驚く程静かだ。動物の気配はまるで無い。
居るには居るが化けもんばっか、物の怪しかいない。そもそもこの世界に動物は居ないらしい。
実に残念だ、俺はこのままずっとビーフシチューが食べられないのだ。
流石にそろそろ牛の姿が薄っすら見えてきた。
幻覚である、このままではヤバい。
《ショウ、同じ所をグルグル回っているぞ》
ヒバナが呆れた顔しながら言ってきた。顔見えないけど、多分そう。
俺にはヒバナの顔は見えないが分かるのだ。
少年はヒバナの言っていることに気にもとめず口を動かす。
「腹減った・・・」
「・・・。」
少年は歩き始めて5時間経った。
それまで何も口に入れていない。
昨日も、だ。
流石に腹の一つは減るだろう、これは最近断食にハマった40歳のオバはんでも頷く以外の選択肢は無い。
この森は全然楽しくない、誰だよ、森は人生の暇つぶしに最適だって言ったやつ。少なくとも俺のクラスには居なかったぜ?
それにしても腹減った・・・
《小僧、お前は少なくとも数ヶ月は何も食べなくても大丈夫だぞ》
「あーそういや俺もう人間じゃ無ェな」
「亜人って所か? なあヒバナ」
《亜人じゃないが亜人で良いだろう》
《それよりマズイな、あの爺さん俺達を殺すつもりだ》
「爺さんってリュートの事か?」
《ああ・・・》
《貴様も分かって居るだろ、この森は危険だ》
《帰らずの森に入って帰って来たものはいない。あの爺さんならいけるだろうがお前にはこの俺様ですら心配だ》
少年はそれを聞いて少し考えた後。
口から言葉を出した。
「一週間は諦めるか、良し、帰るぞ。まだ死にたくない」
《あの爺さんは貴様の存在が厄介なんだろうな、何故ならこの俺様を相手に自我を保っている》
「そりゃどうも」
「さて、そろそろ休憩を終わらすか」
周囲を見回した。何か似ているのがあるならそれは、もののけ姫に出てきそうな樹木の事だ。
全部でっけえぜ、テーブルの木材に最適だ。
高く売れそう。
そして体調が何時もと違う。特に視力、近くの物を見るとぼやけるのだ。俺も年かな、まだ13だよ?俺。
そして何より、筋肉痛が治った。さっきまで痛かったが。凄まじい回復力だ。まだまだ若いぜ俺ァあ、だってまだ13。
更に2時間が経過した、歩きまわった、探し周った、だが、特に何もなかった。
目印を付けた木を探したが見つから無い。
そこには俺の即席ベットが有るのだが・・・
そんなに遠くに行ったつもりは無かったんだが、迷子になった。
またかよ、、、もううんざりだ。
そっか、帰らずの森だもんな。
そう簡単には出られんか。
少年は歩きながら聞いた。
おいヒバナ、道を教えろ。
《今は無理だ、そもそもこの森で真っ直ぐ歩いても出られんぞ。生憎だが俺様に錯覚を防ぐ能力は無い。》
《空でも飛べたら解決するのだが、今のお前じゃ身体が爆散する》
「マジか・・・」
「どうする・・・」
《・・・》
《一週間待つか、一週間もすれば貴様の細胞も3割は龍の細胞になるはずだ》
《最悪の場合、森を燃やす》
《まあその間に貴様は死ぬかもな、ここは鬼婆が居るからな。》
・・・?、何だよオニババって?
ヤバい奴なのか?
てか一週間待つって。
結局変わんねえじゃん。
《鬼婆の事は今はどうでもいい。それより赤鬼や青鬼に気を付けろ、奴らは人を喰う》
鬼が居るのか?物の怪だけじゃなくて。
そういや餓鬼も鬼か、、
《鬼も物の怪だ、人間か亜人、物の怪か悪魔、そして龍と神》
《一応言っておくが天使は堕ちて悪魔になった。だから天使は世におらんぞ》
「ふ〜ん」
「・・・」
「あのさ、前から思ったんだけどお前物知りだな」
《当たり前だ、俺様は柱の龍だぞ。人間より知能が高いのは当然だ》
「そんなもんかねえ・・・」
その時、誰かが会話を聞いていた。
そのものはひっそりと身を引き、姿を消した。
それとは別に、人か、ヒトならざるもの。それは突然姿を現す。
本能のままにただひたすら、青いものは瞋恚「しんい」、悪意、憎しみ、怒りを。
赤いものは貧欲、欲望、渇望を。
それは今、少年の後ろに居る。
少年はまだ気付いていない。
「・・・ザッ」
何か物音がした。
その時気付いた、後ろに何か居る。
俺は慌てて後ろを振り向く。
そこには何もいなかった。
しばらくの間、森が静まり返る。
物音一つもしなかった。この間、ものの数秒だったがとても長く感じた。
心臓の鼓動が遅れて聞こえてくる。
ドッ、ドッ、ドッ、ドッ
一瞬だった、森は静かだが自分の心臓の音でとてもうるさい。
貴方の心臓が泣いている時、それを奴はあざ笑う。
彼は冷静さを取り戻すだろう。
「ゲラゲラゲラww」
そいつは笑った。
そいつの目には、人間に対する瞋恚、悪意、憎しみ、怒りなどの復讐心が宿っていた。
赤と青、少年の目の前に現れたのは青い方だ。
「・・・青ォ・・・オ二ィ」
《ショウ・・・マズイな、青鬼だ》
《逃げろ》
俺はヒバナの言葉に素直に従った、少年は走り出す。
物凄い速さで森を駆け巡り、必死に逃げる。
いつもとは段違いな速さだ。
正直自分でも驚いている。が、今はそれよりどう逃げ切るかが重要だ。
自分でも分かっている。こいつは強い。
とてもじゃないが今の自分には手に負え無かった。
青鬼は水平移動して俺を追いかけてくる。
足を動かさずに移動している。
足が動いていないのにも関わらず追いかけてくる。
多分3ミリぐらい浮いてるのでは無かろうか。
途中で振り返って見たら鬼はすぐそこに来ていた。
「こっわ!!」
マジで恐怖でしか無い。
よく見ると意外と可愛い。
「アカン!!こりゃダメだ」
そう思った。
なので刻印を使う。
あんまり使いたくは無いのだけど。
今の俺なら死にやせんだろ。
何故って?
俺にはヒバナが着いている。
《ショウ・・・!!刻印はまだ使うな!》
「何でだよ・・・」
俺は走りながらヒバナに聞いた。
《勘違いしているようだが貴様のそれは刻印だぞ、神様からの最悪な贈り物さ》
《いいか?呪いは呪いだ、お前の運命は常に神に仕組まれているものと思え》
《今は俺様を取り込んでいるから大丈夫だが神さまはその気になれば何時でもお前を殺れる》
「ああ・・・肝に銘じとくよ」
「てっオイ!!今はそれどころじゃ・・・」
《・・・ショウ、今から貴様の魔晄炉を展開させる。貴様は今すぐ上に向かってジャンプしろ!、ただし全力は出すなよ。お前の身体が持たん!!》
「了解」
この時青鬼は少年に触れる寸前だった。
後2ミリ程度の距離を、鬼は触れる事が出来なかった。
見回す限りの森の中、その中心で大きな衝撃が生まれた。
まるで雷が落ちたの如く、爆音が鳴り響く。
曰く、森の子らは空を跳ぶ。
少年はただ、軽くジャンプをしただけだ。
それだけの事で、一瞬で森全体を見渡せる高さまで到達した。
それほどの大ジャンプだ。
青鬼はもう追うことが出来ないはずだ。多分・・・
「おいヒバナ、どうだ凄いジャンプだろ?」
《5点だ、無駄な動きが多すぎる。正確なジャンプなら同じエネルギーで今の3倍以上を余裕で超えられる》
「いや普通に褒めろよ、まあ別にお前に褒められても何も得しないけど」
「さて、後は落ちるだけだ」
「おいヒバナ着地上手くいくか?」
《まあ何とかなるだろ》
「・・・」
俺は、自分は今どんな状態なのかを改めて確認する。
約30メートルまで上昇した後、現在落下中だ。
我ながら馬鹿みたいに跳んだな。
ふう、落ち着け、テンパってるな俺。
心を落ち着かせろ。
それから少年は冷静に落下地点を予想する。
自分の感覚を頼りに、苦し紛れだが受け身の体勢に入る。
スカイダイビングをしているような感覚は全然無かった。
バンジー跳んでる気分でも無かった。
意外と普通だった。
ただただ、ビュービューとなる風の切る音が聞こえるだけだった。
地面が物凄い速さで近づいて見える。
不思議と恐怖とか緊張は無かった。
俺の体は今ヒバナだからか?
「バキバキッ、ズドン!!」
木の枝を折りながら落下し、意外と大した事なかった衝突音がなり。
身体を震え上がらす振動が遅れてやって来た。
何と、奇跡的に受け身が成功した。
「どうだヒバナ、今の受け身は何点だ?」
《小僧、貴様からにはセンスを感じる》
「えへへ、嬉しいな〜」
「・・・。」
「・・・上から目線やめろ」
しばらく経って体を起こす。
「痛てて・・・」
背中に激痛が走る。
流石に無傷では無かった。
だが動けない程ではない。
つまり?
《ショウ、大丈夫か》
「問題無い」
少年は立ち上がる。
少し時間が経って自分の体が発熱している事に気がついた。
全身が熱い。
それより青鬼はもう大丈夫なのか?
《奴らは標的を見失ったら諦めるさ、鬼ってもんはそんなもんだ》
《それから一応忠告しておく、鬼門にだけは近づくな。後、世界鬼にもな》
「一応覚えとくよ」
「この森には危険が多いな」
「さっきのはマジ危なかった」
「確か死番虫の住処とか、妖刀迦楼羅が眠っているとか、いろいろあるな。もしかしたらもっと危険な生物にも会かもなァ」
「そういえばさあー、死番虫って何だ?」
《死番虫の目に写った瞬間から、その生物の命を奪う事ができる。死神のペットだ、まあ、めったに姿を現さないから気にするな》
《ちなみにシバンムシは帰らずの森の近くに多く生息する》
「流石ヒバナ、博識だな」
「おっとそれどころじゃ無かったな」
「もう一度確認するけど青鬼はホントに来ないよな?」
《それより今は周りを警戒しろ》
周り?
そっか、さっきの落下の音で他の物の怪がよってくるかもしれない。
警戒せねば。
俺はそう思い、神経を尖らせる。
心を落ち着かせながら。
何か音や気配が無いか気を張る。
相変わらず静かで薄暗い気持ち悪い森だ。
その辺の石ころでも触ったら呪われそうだ。
ヒバナ、何か居るか?
少年は心の中で呟く。
するとヒバナの声がいつもどうり脳内で響く。
《右にデカブツが居る。そいつが襲って来るまで絶対に動くな》
了解。
少年はヒバナの言葉どうり右を警戒する。
だんだん五感が鋭くなっていくのを感じた。
龍化が進んでいるのだろうか、今このときにも。
最近集中力が上がってきている気がする。
だが少し不安を感じた。
何故ならばさっきの着地で背中を痛めたからだ。
結構ジンジンする
おまけに足も。
ジャンプする時、ちょっと加減をミスったな。
動けるだろうか、化け物が来ても。
今回はヒバナや刻印には頼れない。
使ったら俺の体が持たないからだ。
だから自分の力で戦うしか無い。
頼ってばっかじゃダメなんだ。
その時、奴が動いた。
ゆっくりと。
草木の潰れる音を立てながら。
どんどん近づいてくる。
大きな影が動き。
ついにその姿を現した。
薄汚れた白い毛並みを持ち、ゾウですら余裕で上回る図体のデカさ。
立ち上がれば5メートルを多分超えるのでは無いかと思われる化け物。
この化け物じみたデカブツの正体は熊だった。
「おいヒバナ!何だこいつ!!」
《コイツは赤赤熊だ》
アカシャグマ!?
《コイツが居る限り森を出たとしてもお前の未来が崩れる》
《貴様、運が良かったな。赤赤熊この森では一匹だけのようだ。さっさと殺せ》
「言われなくとも殺してやるよ」
その時、熊は少年を襲う。
何でかな、そいつは目があった相手に迷わず飛び込んでくるんだ。
初対面なのにさ、人様に礼儀ってもんを知らねえ。
なんなら俺が教えてやっても良いんだぜ。
まぁ無理だけどな。
俺はとっさに木の上に飛び乗り、一旦落ち着く。
それも軽々と。
少年の身体能力はめっさ上がった。確かに。
数秒もしない内に熊は木に抱き付く。
その前足の大きな爪で引っ掻いてくる。
一瞬で木が傾いた。
それはそれは大きな木だったのだが、倒れ始める。
「っ・・・!。」
「うわマジか」
15メートルぐらいありそうだな、この木。
後で売ろう。きっと高くつく。
《気をつけろ、ケツの穴しっかりしめて戦え!》
ヒバナのやや怒鳴った様な少し低い声が頭の中で鳴り響く。
突然話しかけるものだから毎回結構ビビる。
これでも慣れてきた方だが。
「分かってっからそこで大人しく見とけよ!」
「俺だって戦えんだよ」
木が倒れている最中で俺はしゃがんだ。
体全体から足に力をぐっと込める。
そして、俺は跳んだ。
跳んだ方向は熊の真後ろ。
そこにも木があった。
俺はビュービューとなる風の切る音と共に、冷静にそして大胆に。
そこにあった木の幹を思いっきり蹴る。
その反動を活かし、まるでスーパーボールが跳ね返る様な感じで跳ね返ったそこには熊が居る。
どうだ、この華麗な動きは、まるで忍者みたいだろ?
我ながら軽快な動きだ。
俺は今、猿を超えた。
猫にも勝った。
少年はそのまま熊の首であろう場所に回し蹴りを入れた。
言い忘れてたけど、実は俺、蹴りは得意なんだぜ。
熊の上半身が傾く。
俺は構わず空中で体を捻ってもう一度蹴る。
威力はさっきより半減したが十分だ。
俺は熊より少しだけ離れた場所で着地する。
熊は振り向いた。
だがその時には、少年の左腕の爪でそいつの顔面を撫でるように引っ掻いた。
熊は前足で顔を隠す、そうとう痛がっていた。
それは、さっきヒバナに教えてもらった龍爪って奴だ。
簡単に言ったらドラゴンの爪の小さいバージョンを指から出せる訳だ。
例えると猫の爪とかが近いかな、あれの人間版さ。
使いようによっては結構便利じゃね?
だんだん自分が人間離れしていくのが実感できた。
前まで普通の体だったのにどんどんヒバナの特徴を受け継いだ体の進化が続いている。
二年後には完全にヒバナの体で俺はそれを支配する形になるだろうな。
ちゃんと人の形残ってるだろうな。
じゃなきゃ俺の意識は消えるだろう。
今だって俺は、ヒバナの支配を耐えている。
精神が鍛えられて今はもう何も感じないが寝ている時は不安なのだ。
でも俺はヒバナを信じることにした。
人間ってさ、信じたいものを信じたいんでしょ。
でも俺の場合はちょっと違う。
信じた方が楽だからだ、ずっと気を張るのはもう疲れた。
実は俺、あんま寝てないんだよね。
こりゃダメだって思ったのさ。
だから俺はずっと警戒するのをやめた。
しかし油断は禁物だ。
それなりの覚悟は必要だろう。
俺はまた地面に着地してそこらにあった手頃な木の棒を拾う。
俺はそれを右手で強く握ったまま熊の方へとジャンプする。
あのデカブツの横面に木の棒をぶっ刺してやった。
恐らく脳にも達しているはずだ。
冷静さを保ったまま静かに再び地面に足を置く。
当然熊はぶっ倒れて即死した。
少年はその様子を一切の感情を抱かず、静かに見つめる。
その目には少しだけ、情が写った。
矛盾を抱え生きてきた俺には滑稽だった。
俺は死んだ熊の亡骸にそっと触れた。
温もりが消えていくのが分かった。
にしてもデカイな。
5メートだしな。
でも・・・
「余裕だな」
「お肉ゲットだぜ」
「赤赤熊も大した事無かったな、どうだヒバナ、俺の戦闘センスは」
《まあまあだな、小僧にしては良くやった》
「ありがと」
少年は熊の死骸から少しだけ離れた場所の木のそばで腰をおろした。
「・・・はあ~」
流石に疲れた。
そういえば昨日餓鬼が見せた夢の内容が思い出せない。
だが自分の夢は明確になった。
マイナスをゼロに返るだけだが俺には価値が有るものだ。
家に帰りたい、家族に会いたい。そう強く願った。
今更だけどな。
少し時間が経った後、俺は起き上がった。
さて、料理の時間だ。
俺はまず薪を集め始めた。
できればよく乾燥した燃えやすい枝が良い。
だがそう簡単には見つからない、それが・・・・・・帰らずの森!
面倒だったので適当に集めた。
それから熊の死体がある場所へ戻る。
それも何とかぎりぎり。
マジで迷子の二乗になるとこだった。
・・・危なかった。
そこら辺に適当に薪を置く。
そして熊をさばいた。
早速爪が役に立った。
良いね龍爪、気に入ったよ。
薪に火を付ける。
湿っているので燃えないが無理やり燃やした。
凄い煙だ。
ちなみにどうやって火をつけたかというと、黒くて紅がまざった炎、龍火 を手から出してゴリ押しして何とか火がついた。
いやあ、便利だねこりゃあ。
ますます人間離れしていく。
楽しいねこれ、手から火がでるとかもう魔法じゃん。
ちなこの炎はもとファイヤブレス。
口から出るはずの炎が手から出るって面白いよな。
俺が組み込んだ薪はどんどん燃え上がった。
キャンプファイヤに熊の肉をぶち込む。
肉に油が炎をさらに炎上させた。
何時間かして熊肉が焼けた。
それをムシャムシャと食べる。
かぶりつく、飲み込む。そしてまたかぶりつく。
その繰り返し。
そうとうお腹が減っていたのか、、結構うまい。
このジューシーな味わいと噛み心地。
焼き肉の香り、うん、獣臭い。
でもそんな事は気にならないくらい腹が減っていた。
あっという間に骨まで食べ尽くした。
巨大な肉の塊が、気がついたら無くなっていた。
何故なら全部オレが喰ったから。
そうとう腹が減っていたのか、それともドラゴンの体に近づいてきて胃がデカくなったのか。
なんともまあよく喰ったもんだ。
自分の孫がご飯をおいしそうに食べる様子を眺めるのが毎日の楽しみのお婆ちゃんでもドン引きだろう。
少年は食休憩をはさみ、熊の毛皮の上で寝ることにした。
臭いけど。
さて、もう寝るか。
ヒバナ、夜襲があったら起こしてくれよ。
《了解》
俺はそれを聞いて目を瞑った。
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わくわく樹海生活 (4日目)
風の音と共に目を覚ました。
ゆっくり体を起こす。
辺りを見回す、相変わらず天気は悪く、雨が降っているわけでは無いが。
とにかく薄暗い、霧も濃い。
今日も森に変化無し。
つまんねえ森だよ。
「おいヒバナ、寝てる間に何かあったか?」
《ショウ、何も無かったぞ》
「・・・そうか」
「とりあえずはお早う」
さて、今日はどうしようか。
早いとこ脱出したいが今は無理だな。
食料でも集めようか。
少年は今日の予定を決め終えた後、空を見上げた。
今日の空も薄暗く、太陽は見えない。
森全体が霧に覆われているのでそのせいなのかもしれない。
今にも雨が降りそうな天気だった。
きっと明日もこんな天気なんだろう。
不思議だ、この森に来てから太陽を見ていない。
青い空も、綺麗な星も夜空も朝日も夕日も。
ここに来てから上を見ると薄暗い雨雲と大きな木の枝や幹しか視界に入らない。
だが、ここへ来て気づいたことがある。
人は、こんなにも青い空を求めているのだと。
俺だけかもしれない。
でも、そう思っている人は居る。
少なくとも俺がそう感じている。
じっさんには悪い早くここから脱出して青い空を拝みたいものだ。
何故じっさんは俺にこんな危険な場所に置いて行ったのだろうか。
俺が思うにじっさんがこの森に行かせた理由は考えられた。
違うかもしれないが、俺が考えた理由はこうだ。
俺がヒバナを取り込んでいるから、ということだ。
ヒバナは封印されるような危険な生物だ。
昔はとても恐れられていたのだろう。
だからこそだ、そのせっかく封印した恐ろしい龍が1人の少年の体に移ってうろうろしている。
一刻も早く排除したかったのだろう。
これはあくまで俺の予想だけどな。
間違ってたらごめんなチャイ。
でもか弱い男の子こんな危険な森に行かせないでしょ普通。
流石にパワハラの域を超えている。
まあよく超厳しい師匠とか居るけどさあ、リュート師匠、これはアウトだわ。
俺死んじゃう。
ホントに何回か死にかけたからねマジで。
生きているのが奇跡だよ。
はあ、リュートへの不満を横並びにしても何もおこらない。
さっさとメシを探しに行くか。
そろそろ水も飲まないと。
少年はそう思い、食べ物を探すために森を彷徨い始めた。
森を歩いていると見えてくる景色は渋い樹木だけ。
他に変わった景色は無い。
強いて言うなら物の怪が暴れた跡がちょくちょく見かけるくらいだ。
でも、歩みを止めるわけにはいかない。
なんとしてでも生き残らなければならない。
歩いている途中で川を見つけた。
俺はそれを見て大喜びする。
「やっとだ、水を見つけた。あともうちょっと遅ければ脱水症で死ぬとこだった」
《どうだ、俺様の言ったとおりだろ?川があるって》
「っ・・・。!」
ヒバナが話しかけてきた。
俺は今飲んでる水を胃の中に流し込む。
そしてさっきまで乾燥していた口の中だったが水を飲んだことによって潤った口を開けた。
「ああ、マジ助かった。ホントに川があるとわな」
「ヒバナ、森を出る方法思いついたか?」
《いや、それどころか脱出できる可能性がほとんどない》
「へっ、そりゃ嬉しいね。ほとんどって事は可能性がゼロでは無い訳か」
《・・・。》
《貴様余程の阿呆だな》
《貴様がこの森を抜ける可能性がほとんど無いと言ったのだぞ》
「あのさ〜、ポジティブにいこうぜ、水を差すんじゃねえよ。俺はまだ死んじゃいないさ、生きる限り諦めるなんてさらさら無いね」
「ちっせー夢すら叶えられていないのに一生ここで怯えながら小便散らさなきゃならないなんてゴメンだよ」
「どうせ死ぬならカッコよく死にたい」
「でもここでは無理だ」
「分かるか?」
《分からんな》
「・・まあ良い、ドラゴンには理解できねえわな」
「・・・。」
それから少年は川の水で顔を洗い始めた。
水面に自分の顔が映っている。
そこにはまだ馴染めていない新しい自分の顔が映っていた。
一息付くと少年は再び歩き始めた。
それから沢山の時間過ぎていき。
自分の体内時計では昼過ぎになった。
それべも一度も休まず歩き続けた少年は、とある一つの気配を感じ取る。
生きているものの気配に気づくのは大体呼吸を飲んでいる。
なのですぐに気づいた。
木の枝の上に誰か座っていた。
どこかで会った事があるような気配だ。
俺の目に映ったのは1人の少女だ。
俺はその少女に話掛ける。
「お前、何でこんな所に居るんだ?」
「あら、いつかの少年ね。まずはこんにちはでしょ?」
「お前に挨拶なんかしねえよ」
「まあいいわ、あなたがエルザを殺したの?」
この少女の言うエルザは俺の命を狙っていた犯罪集団の仲間。
ガルムが死ぬ羽目になった原因の女だ。
確か、ゼロゲイン=エルザディアンって名前だったかな。
まあ俺の刻印でとどめを刺したけど。
この女もゼロゲインに何かしらの関係が有るのだろう。
なぜこんな場所に居るかは不明だが・・・
「まあな」
「つまらん復讐にでも来たか?」
「いいえ、あなたの方から来たんでしょ?」
「でもせっかくだからエルザが言ってた言葉を教えてあげる」
「で、そのエルザって奴はなんて言った?」
「言葉っていうか歌みたいな感じだけど」
「エルザはいつも私に、口癖のようにこれを喋ってる」
「この世界で独りぼっちになった僕らは、これからずっと独りだろう。でもそれは嫌だから人と接するのは辞めない。でも結局それだけで終わって。今日は何も進歩も無くて、だから昔のほうが良かったって思う日々。でもこの先は明るいと信じて、僕の未来はあると信じて、だから今日も生きるんだ。ほらママが待ってる。それだけで良いじゃん」
「・・・。」
「これをあのイカれた女が?」
「そうよ?」
Believe that tha future is bright
この先の未来は明るいと信じて




