ポーカーフェイスな人面瘡《じんめんそう》
かさぶたかなと思ったら人面瘡だった。
盛り上がった塊に顔っぽい模様ができたかと思うと、最終的に人の顔になった。
(くくく……我は人面瘡。貴様から毎日10キロカロリー奪ってやる`・ω・´)
コイツ、直接脳内に⁉
口があるのに声を発さず、脳内にテレパシーか何かで語り掛けてくる人面瘡。
できたのはへその下なので、服を着れば隠せる。
勝手にしゃべらないのであれば、出勤しても大丈夫だろう。
ということで普段通りに日常生活を続行。
(くくく……風呂に入るのはやめてくれ`・ω・´)
窒息するので、とても苦しいそう。
だからなんだ死ね。
肩まで浸かって30分ぬるま湯で長風呂してやる。
(くくく……苦しすぎる。もうだめかと思った`・ω・´)
苦しいとか言いながら全く表情が変わらないな、コイツ。
「アンタさぁ、ピーマンとか苦手そうだよね」
(くくく……死ぬほど苦手だ、やめてくれ`・ω・´)
「よろしい、ならばいよいよもって死ぬがよい」
(うわなにをする`・ω・´)
ピーマンを無理やり飲み込ませる。
翌日私はお腹を壊した。
それから人面瘡とまったり非日常を堪能したのだが、ある日唐突にコイツを切除してやろうと思いいたり、美容整形に駆け込んだ。
「これから手術だって、お別れだね」
(くくく……思い直すのなら今の内だ`・ω・´)
「アンタさ、死ぬの怖くないの?」
(怖いに決まっている`・ω・´)
「じゃぁ、怖そうな顔してみなさいよ」
(それはできない`・ω・´)
なんで?
そう尋ねると――
(表情のパターンが一つしかないからだ´・ω・`)
微妙に悲しそうな表情をする人面瘡。
ちょっとだけ可哀そうだなっておもった。
ほんのちょっとだけね。
切り取った人面瘡の残骸を河川敷でお焚き上げする。
炭火でじっくりと中まで火を通した。
すると立ち上った煙の中に、人面瘡のあの顔が見える。
(……またね´・ω・`)
そんな声が聞こえて来たけど、もう戻ってくんなって思った。
ついでに炭火でマシュマロを焼いた。
美味しかった。
で……なんで?
(くくく……ごめんなさい´・ω・`)
私の大事なところに現れた人面瘡。
さすがに申し訳ないと思ったのか、謝っている。
再会できたのはちょっとだけ嬉しかったけど、やっぱりこのままだとイヤだなと思い、すぐに泌尿器科に予約を入れた。
(次はもっとましな場所にするから´・ω・`)
などと言うが、もう二度とごめんだ。
二度とごめんなんだからね。