文化祭当日
天高く、馬肥ゆる秋。
濃い青い空が広がる晴天。文化祭当日、俺のクラスの入り口に雄々しく立つ女性が居た。
「おおい、荻野ぉ。三条先輩がお見えだぞ~」
クラスメイトから自然な感じでお呼びがかかった。
入学から早半年。毎日なにかしらのアクションをしてくる三条先輩に対し、クラスの面々も、もはやクラスの一員かのような接し方へと変わっていた。
おかしな話である。
時折、俺との会話が終われば普通に女子とも話してるし、なんなら男共とも普通に会話してたりもする。なんたるコミュニケーション能力であろうか。
「ああ。ありが——」
だがそんな三条先輩慣れしたクラスメイトが、蜘蛛の子を散らすように俺に周囲から居なくなった。
「……どういうことかしら? その恰好は……。説明してもらえるわよね? 事と次第によっては……」
そのぶつけられた感情たるはまぎれもなく憤怒。そしてうちの雪がよくする構えを取っていた。
やめましょう、以前それでパンツ見えた事件ありましたよね?
ちなみに俺は三角巾を頭に巻き、エプロン装着状態となっている。完全に料理を作る人以外、何者でもない。
「え、えっとですね!? 俺は調理担当になっちゃったので、終日裏方の予定で……」
「へえぇぇ……ぇぇええっっ!!」
いかん、声が震えとる!? めっちゃ怒ってますん!?
蹴られる。すぐさま防衛本能が働き、すかさず尻を押さえ、後ずさったのだが……三条先輩の反応に意表を突かれた。
その場で力無く、ぺたんと女の子座りしてしまったのだ。
「わ、私、楽しみにしてぇ……貴方と一緒にまわる、文化祭を……」
あの常に凛々しく雄々しくしている三条先輩が、弱々しく声を震わせ出した。
当然ではあるが、こんな姿は見たことがない。いつも完璧に事を成し、クールに対処する人なのに……。
罪悪感が半端ないんですけど? ど、どうしたらいいの!? JK泣かせてしまいそうなんだけど!?
「あ、あの、荻野君!? 仕込みは全部終わらせてくれたし、あとは私達でも十分対応出来るから!」
「お、おう! そうだぞ、荻野! 俺達に任せておけ! だから早く三条先輩をなんとかしろ!」
「おい、三条先輩を泣かすなよ!? いいかこれはフリじゃないぞ!? 本当に泣かすなよ!?」
クラスメイトから一斉掃射を食らった。てかみんなの三条先輩への気遣いが半端ではない。でも口をへの字にして涙ガンガン溜めてるんですけど!?
やばい、もういつ決壊してもおかしくない状態……やめて? マジで泣かないで!?
「さ、三条先輩? ど、どうやら俺の仕事はなくなったみたいでして……。今から一緒に文化祭をまわれそうです。だから落ち着いて……そうだ、深呼吸、一度深呼吸をしましょう……」
執事の服やエプロンを付けたクラスメイトに見つめられながら、ゆっくりとなだめるように、じわりじわりと近づいて行った。
三条先輩まで残り三歩、二歩……一歩。遂に手を伸ばせば届く距離にまで来た時だった。
そこで俺はかねてより思っていたひとつの疑問を投げかけた。
「でも俺なんかと一緒にまわらなくても、三条先輩なら他にまわってくれる人なんていくらでもいません?」
その瞬間、クラス全員の視線を一身に浴びた。皆が皆、同じく凍るような目線をぶん投げて来たのだ。
「うう……貴方って人はいっつもいっづもぉぉおぉぉ!!」
やばい何かが爆発しそうだ!? こ、こうなったら奥の手だ!
「ふぇ?」
すかさず三条先輩の頭の上に手を置き、撫でてあげた。まだ雪が小さい頃によくやってあげた必殺技であり、通称『頭なでなで』だ。あいつはこれで機嫌が良くなったもんだ。
まあ、今したら蹴りあげられるだろうけど。思春期女子怖い。
「い、いい子ですねぇ、はい、泣かない泣かない……」
「修ぅ……それ違う、小さい子をあやすんやないんやでぇ……」
何故か方言を放つ恭介と、落胆の様子を示すクラスメイト達。ところで何故俺はさっきからさらし者になっているんだ?
でも大丈夫だ。小さい頃の雪はこれでいつも泣きや——
「馬鹿にしてるぅぅう!!」
あ、いや、馬鹿にしたつもりはしてなくてですね……、え? ダメなパターン!?
流れ的に行けそうな気はしたんだけども、現実はそうは甘くなかったみたい……。余計な事をして罪悪感MAXのギャン泣きをされた。
雰囲気的に顔を赤らめて『も、もう……やめてよ。子供扱いは……』とかいった感じに和むと思ったのだけど……。
何が……何がダメだったんだ?
いつも応援ありがとうございます!
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これも皆様のおかげです!今後も修君の行く末共々、お楽しみいただければ幸いです!
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