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文化祭の出し物


 過ごしやすい季節となって来た今日この頃。いよいよ文化祭が迫ってきた。学校生活のイベントの中でもかなり期待度が高い催しでもあり、年甲斐も無く心が躍ってしまう。

 

 ちなみに今回で四回目を迎える文化祭なのだが、過去三回は部活が忙しく、ほぼほぼクラスの出し物の準備を手伝った記憶がない。運動部は部活を優先させられる傾向にあったからだ。


 確か一年の出し物は……タコ焼き屋だっけか? やたらと繁盛した記憶があり、運動部は準備期間に何もしなかったので、当日の手伝いにはがっつり駆り出され、クソ程こき使われたのを覚えている。


 思いっきりつまみ食いしてやったけどな。若さゆえの過ちである。もう時効だ。許してくれ、みんな。もうしないからさ。


「なあ、修。記念すべき高校生一発目の文化祭なんだが……。俺、やりたいことがあるんだ。一口乗らねえか?」 


 親友である髪の毛ふっさふさverの恭介が俺に話しかけてきた。これは過去にはなかった話だ。俺と一緒にサッカー部に所属していた恭介は文化祭の内容の提案なんて一度もした事は無い。


 やはり大きく過去が変わってる。まあ、俺が秀才キャラになってしまった時点でそうだが。あやかさんが以前言ったいた通り、これが新しい未来ってやつなのかも知れない。


「実は隣のクラスの出し物は咲を通じてもう知ってるんだ。聞いて驚け、向こうはなんと……『メイドカフェ』だ」


 う~ん、そういえば隣のクラスは確かそんな出し物だったような気がする。


 恭介は妙にもったいぶっていたが、別段あり得ない出し物でもない。クラスの女子に交じって男も女装して、注文を取るなんてギャグがあったのも記憶している。


「で? うちのクラスもそのメイドカフェで対抗するのか? 隣同士の同じ内容の出し物は食い合い必至だぞ?」


 コンビニを並列で立てるようなものだ。せめて学年が違うぐらいでないと。


 あと、絶対に口には出さないが、うちのクラスにはデケぇがいない。そして隣のクラスにはデケぇマニアの恭介の彼女、佐川咲さんが居る。


 メイドカフェで勝負した場合、うちのクラスの完敗は火を見るよりも明らかだ。


 繰り返し伝えるが、こんな事が漏れたら女子に袋叩きにあって、卒業するまで『そんなに胸が好きなら牛とでも結婚しやがれ、このクソ野郎』の称号を貼られてしまうので口が裂けても言えない。


 そんな性癖がバレて女子から総スカン食らった日には、かねてよりの願望である彼女を作るなんてことが夢のまた夢になってしまう。


 あわよくば、二回目の高校生活では甘酸っぱい青春ってやつを味わってみたいのだけど……。こればっかりは無理かなぁ……。やっぱ大学デビューを狙っていくしか――


「お~い、何ボーっとしてんだ?」


「いやさ……ふと俺も彼女欲しいなって。ほんと、恭介が羨ましいよ」


「俺は修の頭の中が羨ましいよ。世界のみんなの脳内が修ワールドだったら戦争なんて起きないのかもしれねえな」


 どういう意味だよ、それ。なんか馬鹿にされた感じがするんだが? 流石は彼女持ちのカースト上位のリア充様だな! あの時の恩を返しやがれこんちくしょう!!


「はぁ……苦労してんだろうな、三条先輩も家庭教師の人も」


 何故にそこで二人の名が上がる? 少なくとも料サーや授業で苦労しているのは俺だぞ?


「ともかく、俺が提案したいのはだな、メイドカフェに対抗した『執事喫茶』だ」


 執事喫茶? 真っ先に思いつくのは三条先輩のところの立花さんだが……。あの燕尾服を来て白手袋して『いらっしゃませ、ご主人様』とでも言うのか? 需要あるか、それ?


「まあ、俺の一票ぐらいなら入れてやってもいいが、それで決定する訳ではないぞ? 出し物はクラス全体の総意だからな」


「まあそこは俺の熱い思いをぶつけるさ。見ててくれ、俺のプレゼンを」


 やけに自信があるようだが。一体何を望んでいるんだ、こいつは……。変なところでマニアックさがある奴だからなぁ。



「……であるからして、俺は執事喫茶を推したい! それ以外の出し物? そんなもの敢えて言おう! カスであるとっ!」


 教壇に拳を叩きつけ、声を張ってアピールする恭介。どっかで聞いたことのあるような演説だが、あまりの熱量にクラスのみんなはドン引きし、噛み付くのも面倒だと察したのか、同意するに至った。


 結果、うちのクラスのタコ焼き屋案は却下され、執事喫茶なるものになった訳なのだが……。


「なあ恭介? どうしてそこまで執事喫茶にこだわるんだ?」


 大演説を終えて、額の汗を拭いながら余韻に浸る恭介に問いただしてみた。


「ん? なんかかっこいいじゃん。あのスーツ見みたいなやつって一度は着てみたいと思わねえか?」


 まあ、格好いい服だとは思うが……。いや、あの演説の熱の入りようはそれだけでは無い筈だ。絶対に他になんかある。


「本当にそれだけか? 正直に言ってみろ」


「ここだけの話だぞ? ……執事とメイドのごっこ遊びを裏でする予定だ」


 肩の力が抜けた。完全に私利私欲じゃねえか。こんなこと聞かれたらウチのクラスの奴ら全員から袋叩きにあうぞ? ただし、カップルは除く。


「お前ってやつは……」


「へへ、まあ同じ喫茶店とはいえ、客層は全く違うからな。需要はあると思うぞ? それに修が居るうちのクラスなら天下が取れるじゃねえかとも思ってる。食べ物は美味くて、イケメンの執事がいる喫茶店。流行らない訳はないじゃねえか」


 イケメンが自分の事イケメンって言うんじゃねえよ。このイケメンが。


 そして俺は裏方かよ……。おいちょっと待て、裏方で料理を作る算段になってるってことは、俺、燕尾服着れねえじゃねえかよ! 着るのはエプロンじゃねえかよ!!


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[良い点] 何はともあれ 面白い ストーリーも語彙も それから 読みやすい 地の文も会話も [一言] >>燕尾服着れねえじゃねえかよ! 着るのはエプロン 何故だか、どーしてだか、イメージしたのは、 割…
[一言] エプロン姿…それはそれで
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