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みくサイド~みくお嬢様~


 みくサイド


「「お帰りなさいませ、お嬢さま」」


「ただいま」


 吹き抜けの階段が見える玄関にて、私に帰宅の挨拶の言葉を投げてきた二人組。


 ダンディな白髪と優しい顔付きが印象的な、燕尾服の似合う執事さんの立花藤兵衛たちばなとうべいさんと、私が言うのもなんだけど、胸回りの肉付きが非常に良い、若いメイドさんの伊集院いじゅういんみさきちゃん。


 基本的にパパとママは留守にする事が多いので、この二人が家の事も含めお世話をしてくれている。


「早速でございますが、本日の夕食は——」


「そうそう、今日は学校でお料理して食べてきたから。少な目で用意してもらえるかしら?」


 私がそう言った瞬間、赤十字の柄の入ったボックスを取り出すメイドのみさきちゃんと、すかさずグラスに水を注ぐ執事の立花さんの姿があった。


 いつも思うんだけども、それ、どこに隠し持っているのかしら?


「お嬢様、症状の程は? 吐き気、むかつき、下痢、めまい、幻覚、高揚感、虚無感はございますか?」


「ないわ。でも強いて言えば、お腹は至福感で満たされているわ。感情は悔しさでいっぱいだけど」


 結局、後輩君には逃げられたものね……何が何でも絶対に明日確保してみせるわ! お料理サークルに後輩君は必要不可欠な存在。すでに今日逃亡を図った以上、実力行使もいとわないわ。


 明日の後輩君捕獲プランを練ろうとした最中、執事の立花さんはグラスを床に落とし、メイドのみさきちゃんは震えながら口元を押さえてしゃがみこんだ。


 なに? この茶番は。


「こ、これは粗相を……申し訳ございません。あ、あの、お、お嬢様ご自身がお作りになった物を食されたのでしょうか……」 


「もうすでに味覚が……だから何を食べても……ううっ、お嬢様ぁぁぁっ!!」 


「なにこの唐突な三文芝居は? 失礼にも程がないかな?」


 思わず怒りで手が震えた。特にみさきちゃん。私の事をなんだと思ってるの? まるで死期がもうそこまで迫ってるみたいな言い方よね?


「だってこの前も生焼けの炭の塊作っていましたよね!? あんな物、食べ物ではありませんよっ!? 有害物質もいいところです! 外見は真っ黒で中は生ですよ!? もう物理的におかしいですもの! それを食べきったご主人様はトチ狂ってますよ!」


「みさきちゃん? さっきから喧嘩売ってるのかなぁ?」


 私が凄むと『ひいっ!』と小さく漏らし、立花さんに後ろに隠れた。この人、静かにしていれば見た目は完璧なメイドさんなのに色々と残念な所が多い……。


「まったく……お料理サークルに新入部員が入ったの。その子が作ってくれたのよ」


 まだ入部していないけどね。でも後輩君が作った料理を食べた瞬間、感じたの。胃袋を鷲掴みにされるってあんな感覚だったんだってことが。


「そうでございましたか……しかし高校生でお嬢様の舌を唸らせる料理を作られる方がいらっしゃるとは。調理の方はからきしではございますが、舌の方は肥えていらっしゃいますので。にわかには信じられない話ではございますな……」


「立花さんまで乗っかって来るの? もう……食べたのは別段、手間暇かけた高級料理とか、高級食材を使用しているとかではなかったわ。こう、なんていうかしら……心がこもってるというか、家庭的な温かみがある味だったわ。なんかそれが妙に心地良くて……ふふ、まさに私が求めていた味ってやつだったの」


「お、お嬢様!? それって……ま、まさか、恋をされてらっしゃいませんかぁ!? 今、完っ全に恋する乙女の顔してましたし、流れ的にフォーリンラブな感じじゃないですか!?」


 この巨乳メイドは……いきなり一体何を言い出すのやら。恋だなんて見当違いにも程があるわ。私はただ、後輩君の料理が食べたいだけよ。  


 ……食べたいだけだし!


たまに視点替わります♪


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