やる気満々
折角のお誘いに遅れて二人を待たす訳にはいかないと、ジェントルメンを気取りつつ、早めに出発し、程なく待ち合わせ場所である駅前が見えた。
時計を見ると、約束の二十分前。ちょっと気合い入れ過ぎて早く着いてしまった。
てっきり一番乗りだと思っていたのだが、ある一角の状況を見てそうでないことを悟った。
街行く人々がみんな余所見をして歩いている場所があるのだ。否、そこに居る女性を見ながら歩いていると言うべきだろう。大道芸人も親指の爪を噛むほどの注目度だ。
「あ、修君~♪」
「やっと来たわね」
懸命に手を振って居場所を示す元気なあやかさんとは対照的に、静かに背筋を伸ばして腕を組んでいる三条先輩。
二人とも夏コーデで非常に可愛らしい&美しい。天使な二人を迎えるにはTシャツ、デニム姿の俺では少し申し訳がない気がする。
「は、早いですね……一体いつから待ってたんですか」
「い、今、来たところだよ? ねえ、三条さん!」
「そ、そうよ、ちょうど今来たところよ?」
嘘っぽいなぁ……。その言葉を言う人って絶対にちょうど今来ていないから。てか三条先輩に限っては『やっと来たわね』っておっしゃってたの聞こえましたよ?
「すみません、待たせちゃって。それじゃあ早速行きましょうか」
「うん、そうだね!」
「ええ、そうしましょう」
少し集合時刻には早かったが、メンツが揃った以上はもう待つ必要も無い。これで日本の優秀な鉄道よろしく、時間定刻まで動きません! などとジョークをかましたら二人は笑ってくれるだろうか?
……やるか? ボケて場を和ますか!?
いや、三条先輩に蹴られそうだからやめとこう。出会って早々に不機嫌にさせる必要はないもんな。
「ところで、今日はどこ連れて行ってくれるのですか?」
個人的に飲み屋以外の遊ぶ場所を知らない俺は、今回は全て二人にお任せしている。飲み屋が遊び場かどうかの定義はいろいろと必要だが……。
故にJKとJDがプレゼンしてくれている本日の内容は、全てがサプライズ演出となっている。いやはや、休日の朝から女の子と遊びに行くなんてマジで奇跡以外何者でもない。神に感謝せねば。
おお、全知全能の神、ゼウス様! ありがとうございます! よし……一番トップの神様にお礼を伝えておけば大丈夫だろう。日本の神様ではない点だけが少々不安だが。
やっぱここは七福神様ぐらいにしておけば良かったかな? 何と言っても七人もいるもんな……。
「ちょっと修君、何ぼーっとしてるの? じゃあ、私から先に案内しようかな! じゃあ、二人とも、お姉さんにはぐれない様に付いてきなさい♪」
どの神様に感謝すればいいか悩んでいる間に、あやかさんが先に歩いて行ってしまった。
急いで意気揚々と歩くあやかさんの後ろを三条先輩と共に追った。年甲斐もなく心を躍らせながら。
しばらく美女達と共に駅沿いを歩いていたところ、喧噪が飛び交う街中でもより一層賑やかな場所であやかさんは足を止めた。
「私の一押し遊び場は……じゃーん! ここだよ!」
あやかさんが紹介してくれたスポット。そこは煌びやかな内装とポップな音楽があちらこちらから鳴り響く場所……ゲーセンだった。
まるっきり初めてと言う訳ではないが、意外に行った回数が少ないスポットだったりする。
一応はバリバリの運動部であるサッカー部だったからね。部活帰りはヘトヘトになってるし、体力の余裕がある時は公園で練習したりしてたもんな。
今思うと、なんて健全な高校生活を送っていたんだ……恭介とも行った覚えがないもんな。
「へえ……ここがゲームセンターという場所なのね。初めて来たわ」
そしてここに俺より初心者が居た。少なくとも俺は何度かは来たことはあるからな。家族とかで。小さい頃は雪と一緒にメダル落としのゲームに興じたものだ。
あの頃の雪は『お兄ちゃん、お兄ちゃん♪』って俺のことを呼ぶ純朴で素直な……。やめよう、過去にすがるのは。
現在進行形で過去にいるんだけどね。




