鬼神降臨
お待たせしました、三条先輩推しの皆様。
当初の予定より一泊伸びてしまったが、長いようで短かった夏期講習もいよいよ終わりを告げた。
長旅を経て再び地元に戻ってきて、あやかさんとは先程駅前で別れた。
西日に切り替わった日差しがより一層厳しく降り注ぎ、アスファルトを熱し、ここに来て気温上昇に最後の追い打ちをかけている。
そんな中、じんわりと汗を浮かべつつ、重い荷物を担ぎなから我が家に向けて足を進めているところである。
地元は大都会という訳ではないのだが、商店が集まる場所では行き交う人々の雑踏が絶える事はない。そんな風景を見ると早くも田舎の空気感が懐かしく感じてくる。
都会は妙に息苦しいな……。
少し足を止めて格好つけてみるものの、コンビニが歩いて五分だから全てが許せる。スーパーも近いし、娯楽施設も満載。
やっぱ暮らすなら都会だよなぁ。
そんな情緒の欠片も無い事を考えながら、やっとこさたどり着いた自宅の玄関のドアを開いた。
「ただい——」
「おかえり、後輩君」
手に持っていた荷物が全て足元に落ちた。
玄関のドアを開けたその先には、憎悪の炎を背負った三条先輩がデケぇを持ち上げ仁王立ちしてたからだ。
帰宅早々いきなりの衝撃映像である。旅の疲れが一気に二乗になった気分だ。
「……え?」
「何が『え?』なのかなぁ~? ねえ? 何が?」
いかん、相当機嫌が悪いぞ!? 顔は笑ってるけども内心はハラワタ煮えくりかえってる系だぞ、あれ! ただでさえ、あやかさんとの夏期講習の件でご立腹の状態であったの上、更に一日すっぽかしてしまった訳だもんな……。そりゃあこうなるか。
でもなぜ我が家に居るの? てかいつからそこで待ってたの?
「あ、お兄ちゃんお帰り。このおっぱい、昨日から泊まり込んでるの。尚、お菓子うまし」
玄関で凍り付いている俺を横目に、我が妹の雪が通りがかりながら理由を伝えてくれた。
まじか……まさかお泊りになられていたとは。てか雪の懐柔の方法を完全に見出してますね。高級菓子で釣って手懐ける策、功を奏したのですね。
「随分とまあ日焼けしてるわね……本当に夏季講習に行ってたのかしらぁぁあ!?」
なぜ質問と同時に拳を握るのですか? 暴力反対っ! ダメ、暴力絶対ダメ!!
「も、もちろんですよ! ばっちり勉強してきました!」
「へぇ……じゃあ次の試験で学年一位取れるわよね? 取れないと……貴重な料サーの活動もサボって遊んでいたとみなして……制裁するわよ?」
え? 難易度高くね? 学年一位って結構なハードルだと思うんだけど?
「あ、あの、三条先輩? もう少しハードルを下げてはもらえないでしょうか? 流石に学年一位は――」
「ふ~ん、無理なのね? という事はやっぱりあやかさんとイチャイチャしてたのね……。二人っきりであんなことやこんなことを……この変態っ!」
人の家で何とんでもない事を叫んでるの!? 両親はいないっぽいけど、そこに雪が居るからね!?
「三条先輩っ!? そうだ、今から学校に行って少し打ち合わせしましょう! 夏休みの料サー活動のプランを練らないと! すぐに用意して来ますのでちょっと待ってて下さい!」
急いで旅の荷物を持ち直し、颯爽と自分の部屋へと向かった。
「あっ!? ま、待って!?」
いやに焦る三条先輩の声が後ろから届いたのだが、待てと言われて待つお馬鹿さんはいない。そんな制止する声を振り切り部屋のドアを開けると、思わずフリーズしてしまった。
俺のベッドの上に……パジャマと共にでっかいブラと可愛らしいパンツが無造作に置いてあったからだ。
てかここで寝泊りしてたんかいっ! 着替えた服や下着はそのままにしてないですぐにしまって下さいっ!! 今、夕方ですよ!? 朝から放置してたの!?
大富豪の箱入り娘さんだもんな……きっといつもメイドさんとかがやってくれてるんだろうな。
「えっちぃぃ!! 見ないでぇ!!」
すぐさま自分の抜け殻に飛びつき、もろもろのアイテムを抱え込むJK。てか自らベッドにインしちゃったよ。ダメな奴じゃん。JKが男の部屋のベッドに寝そべるなんてそれはもう——
「さいてー」
雪に白い目で見られ、案の定、尻を蹴り上げれた。脳に響くような衝撃に、尻がみっつに割れたかと思った。
なあ……これって俺が悪いの?




