あやかサイド~寝てた!?~
あやかサイド
今私は何とも言えないこの夢見心地に、絶頂の幸せを感じている。
睡魔に散々あらがいつつも、屈した時って一番気持ちのいい睡眠じゃないかと個人的には思ってる。
受験勉強の時とかに何度も勉強しながら寝落ちしたのは懐かしい話。まあ、唯一欠点を上げるとすれば、たまに教科書やノートがしっとりしてしまう事かな?
……んはっ!? やばっ!? 私、もしかして寝ちゃってた!?
焦って目を開け、とりあえず口元のよだれを急いで脇にあったティッシュでふき取り、辺りを見回した。すると、目の前で机に倒れ伏す修君が居た。
どうやら二人揃って寝落ちしてしまったみたい。やっぱり徹夜は体に響くよね……。
微かな寝息を上げながらも、突っ伏した姿勢から微動だにしない。どうやらノンレム睡眠中みたいだね。思えば初日から満足に寝れてないみたいだし、いくら若いからといっても流石に限界だったみたい。
「……それにしても可愛い寝顔だなぁ」
迫りくる欲望に耐え切れず、ついほっぺたに指先を添えてしまった。弾力のある若々しいお肌だった。ちょっと羨ましい。
眠っているとはいえ、かなり大胆にやらかしてしまった。これはいよいよ末期かも知れない。昨日は昨日で人生初の告白をしてしまうし、本当にこのままでは周りからショタコン認定されてしまいかねない。
無防備に眠る修君を眺めながら、なんとか自分の内なる欲望を抑え込もうとしたのだけども、その思いとは裏腹にどんどん胸の奥から湧き出てくる熱い思いが脳内を駆け巡った。
気が付けば入念に周りを見渡し、誰の目もない事を確認している自分が居た。そして十分に確認をしたあと、もう一度修君を見据えた。
胸の鼓動は尋常では無い程に高まっており、そこにはもう正常な判断を下せる自分はいなかった。
私は……自分の唇を修君の頬に当てた。
まぎれもない誰が判決しても10:0の案件……。遂にやらかしてしまった。チューしちゃった……。
自分が犯した事の重大さに一気に血の気が引いた。おかげで冷静さを取り戻す事が出来た。そして私はすぐに動いた。
「お、修君? 起きてる? もしも~し? お姉さんですよぉ~、もしも~し?」
返事は無い……よし、完・全・犯・罪・成立!
バレなければ……大丈夫! って私って本当にやばい女の子だぁ……。自分で語るのもおかしな話だけど、こんな子じゃなかったのにぃ……。
「たはは……んんっ!?」
壁掛け時計が目に入った。その短針は……2の文字を差していた。つまり、午後二時を少しばかり過ぎてるということになる。朝からテストしてたけども、熟睡してる間にお昼を回ってしまったみたい。
今日、午後には帰る予定……だったよね!?
「きゃあぁぁぁ!! 修君起きてっ!?」
「ふがっ!? ふぇ!? あ、テスト……」
「テストなんてどうでもいいから! 見て、時計を見てぇ!!」
「ん……ん?」
どうやらまだ寝ぼけている様子。本日最終のバスは……午後二時着。これを逃すと明日まで駅に向かう事は出来ない。とてもじゃないけど灼熱の道を徒歩で辿り着ける距離じゃないもの。
「バスぅぅぅ!!? 時間がぁぁぁあ!?」
「とにかく急いで!! 大丈夫! 結構この辺りのバスってのんびり走ってて基本遅れる傾向にあるから! まだ間に合う可能性ワンチャンあるからっ!」
急いで荷物を詰め込み、玄関へと走った。寝落ちする前にある程度荷物をまとめとて良かった……。
「おばあちゃん! また来るね! おじいちゃんにもよろしくね!」
声だけを投げて玄関のドアを開けると、まぶしい太陽が注ぎ込んできた。今日も快晴みたい。てか今はそんな場合じゃないけど。
「ちょ、ちょっと待って下さい、あやかさん! お、おばあさん、三日間お世話になりました。おじいさんにも宜しくお伝え下さい。あと、お漬物ありがとうございました」
「修君!? 今は悠長に挨拶してる場合じゃないからっ! ほら、行くよ!! じゃあね、おばあちゃん!!」
律儀に頭を下げてしっかりとした挨拶をする修君の腕を強引に掴み、バス停へと走った。
ほんとに礼儀正しい子だねぇ、高校生になったばかりの子とは思えないぐらいにしっかりしてるよ……。




