みくサイド~お家デート~
みくサイド
いつもより少しぬるめのシャワーを体にかけた。火照った体を冷ますように。
さっきから心臓の高鳴りがどうにも止まらない……男性が部屋に居るのにシャワーを浴びるだなんて。私、どうしてこんな大胆な事をしてるんだろう。
ふとシャワールームの姿見を見ると随分と顔が赤かった。相当火照っているみたい……こんな感覚、生まれて始めてかも知れない。
恭介君と佐川さんには悪いけど、今回のWデートは私と後輩君の距離を縮める為に利用させてもらった。日々一緒に居るのに、全然距離が詰まらない事に業を煮やしたのが本音のところ。
それにあの二人はすでに相思相愛であることは、誘った時点で分かってたから、放置してても自然にくっつくのは予想できた。
ちょっとしたきっかけさえ作れば、あれよあれよと事が流れるだろうって。
こっちとは違ってね……。
「でも最後のハグだけは……良かったかな」
正直、突然の雨に感謝せざるを得ない。でも今回は私もそれなりに頑張って積極的に行ったつもりだけども、随分と空回りした感じもする。
特にお化け屋敷の件は。
ただ、腰が抜けておんぶされた時は顔から火が出る思いだった。平然を装うのにどれだけ必死だったか……。胸は当然当たっちゃうし……ふとももだって触られたし……。
一般的に見るとかなり密度の濃い一日を過ごした気はするけども、どうにもこれといった手ごたえを感じる事が出来なかった。強いて言うなら分かった事としては、後輩君が唐変木過ぎるという事ぐらい。
自分で言うのもなんだけども、現役女子高生があれだけ気を持って接してきてるにも関わらず、見当違いな薄い反応。えっちい事だけは超が付くほど敏感な癖に、それ以外が非常に残念。
そんな思った以上手ごたえの無さと、あやかさんの影を怯えてしまった私は、料理を作ることダシにして、後輩君を家に連れ込んでしまった。
「なによ、この顔……もうこれって完全に惚れちゃってるじゃない……。前にみさきちゃんには否定したけども、後輩君の事、めちゃめちゃ好きになってるよ、これぇ……」
もうお料理なんかよりも、後輩君とただ一緒にいたい……。でも、お料理があれば尚良いのは認める。そんな事を考えてると、ふいにお腹の虫が鳴った。
シャワーとはいえ、あまり長い事入っているとのぼせちゃうしそろそろ出ないと……。よし、ボディーソープの香りがする乙女の完成。とりあえず今はいつもの美味しいお料理を作ってもらおうかしら。
浴室から出て脱衣所でタオルを体に巻いた瞬間だった。
「みくぅ!! 男を連れ込むなんてパパ、聞いてないぞぉ!!? パパはなぁ、パパはぁっ——んだっしゃべしっ!!?」
いきなり浴室に乱入してきたお父様の左頬を、平手のフルスイングで打ち抜いた。
年頃の娘のお風呂に乱入なんて何を考えてるのかしら?