恭介君の悩み
紫陽花の花の色も濃くなる梅雨時、なんとはなしに窓に打ち付ける小雨を眺めていた。雨で気温が上がらず、梅雨寒の気温に少しばかり肌寒さも感じる。
軽く腕をこすりながら景色を眺めていると、スピーカーからチャイムの音が流れてきた。授業終了の合図である。
「はい、そこまで。後ろから順に回収してくれ」
テスト用紙が回収され、先生が教室を出て行くのと同時に、ぐったりとした恭介がふらふらとした足取りで俺の机の下にやってきた。
「……よお、テスト、どうだった?」
「ああ。そこそこ出来た感じかな?」
「お前……そこは『はっはっは、全くダメだったぜぃ!』とでも言ってくれよ……。ちょっと前と言ってることが全然違うじゃねえかよぉ……」
確かにな。少し前まではそんな感じだったが、今はちゃんと効率良く勉強出来てるからな。二回目のテストでズルに近いとは思うが、それなりに努力はしてるからそこは目を瞑って欲しい。なにより、数あるテストの内容なんて覚えてないけどな。
別段チート能力も発動させていないし、純粋に努力の勝利だ。
「この短時間でそこまで劇的に変わるもんかねぇ……。俺もいっそのこと家庭教師ってやつをつけるべきかもなぁ……」
まあ努力と息巻いているが、正直、あやかさんの教え方のおかげである。今までのどんな先生よりも内容の説明が分かりやすく、親身になって教えてくれるその姿勢は、俺の錆び付いた脳みそを活性化させてくれたのだ。
特に今回のテストは範囲を事前に相談していた背景もあり、ワンチャン、今回に限っては百点じゃね? とさえも思っている。
中学時代の復習も完了したし、このまま続けれれば、夏休み前の期末テストではかなり好成績を残せそうな予感がする。
目指せ一流大学! 夢のキャンパスライフが俺を待ってるぜ! ひゃっほぅ!!
「それはそうと、修、今日ちょっと時間ねえか?」
恭介が真剣な顔をして尋ねてきたのだが、俺が毎度毎度、三条先輩に拉致られるのを知った上で誘ってくるとは……。よっぽど重要な事か?
「俺的には問題ないんだが……ほら、料サーの方がさ?」
料サーとあやかさんの家庭教師の両立の為、土日と金曜日以外はサークルに顔を出さねばならない。
あやかさんによる授業は結果的に週三日となっている。土日に加え、学生は勉学が本分とコンコンと説き、なんとか平日金曜日を勝ち取れた。
まあ、あやかさんも家庭教師をしていない時は路上ライブをするだろうから、ちょうどよい日程になったのかも知れない。
「なあ、料サーの部室で話をしたいから今日一緒に顔出していいか聞いてもらえないか? ちょっと真剣な話なんだ」
料理しながらでいいなら俺自身は構わないし、珍しくマジな感じだもんな。そういう事情なら三条先輩も許してくれるだろう。
多分。たまに慈悲の無さを見せつける時もあるが……。
「でもそれじゃあ、お前の真剣な話とやらは三条先輩にも筒抜けになるぞ? その辺りは大丈夫なのか?」
まさか髪の毛の話じゃないだろうな……。それは相談されても回答に困るぞ? 三条先輩だって流石に答えづらいだろう。
「それはそれでアドバイスを貰えるかもしれんからな、願ったり叶ったりだ」
本人がそれでいいと言うのなら、もう俺からとやかく言う筋合は無い。じゃあ、今日は恭介と一緒に料サーに顔を出すとしますかね。




