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二つのお弁当

 

 彩り豊かな複数のおかずを使い捨ての弁当箱に敷き詰め、俵形の握り飯にゴマを振りして一息吐いた。

 二個のお弁当、完成である。


 弁当箱には出汁巻き玉子を筆頭に、かぼちゃの煮物に高野豆腐、魚の照り焼きなどが入っている。少しばかり技術アピールのつもりで野菜の飾り切りも添えておいた。


 気合を入れて技術を惜しみ無く注ぎ込んだ結果、料亭で作っていたお昼の仕出し弁当に近い物になった。栄養バランスも考えられた傑作の一品だ。


 ただ、出来栄えには納得しているものの、中身が少々年配が好むようなラインナップになってしまったのは反省はしている。

 高級感はあるのだが、若い子が好んで選ぶようなお弁当ではないのは確かだ。


「家庭的な中にも趣を感じるお弁当になったわね。それにこの人参、もはや芸術作品ね……これは流石に真似出来ないわ」


 三条先輩は人参の飾り切りに首ったけのようだ。流石に包丁技術まで一瞬でコピーされたら泣きます。


 当の三条先輩は結局、出汁巻き玉子を作っただけで満足してしまったのか、他の料理を作る事はなかった。なにやら、自分で作った料理よりも、俺の作った料理が食べたいのだとか……。


 ちなみに余った出汁巻き玉子は二人でつまみ食いしたのだが、三条先輩曰く、自分が作った物よりも俺が作った出汁巻き玉子の方が圧倒的に美味しいと言っていた。


 材料も焼きの技術も対等なのにも関わらず。正直俺には全く同じ味に感じたのですがね……。


「はい、ではこちらをどうぞ。あとすみませんが今日は夜に用事がありますのでこのお弁当は家で食べて下さいね」


 なんだかんだと細部にこだわって作ってしまったので、いい時間になってしまった。早く出発しないと雪やお袋が帰ってきてしまう。


 ちなみに料理自体は家族の分を作ってある。もちろん、俺も帰って来てから食べるつもりだ。


「待って。解せないわ」


 解して下さい。というか、やめてもらえますかね? 犯罪者を見るような目で俺を見るのは。


「家族の分の食事を作る事には何も問題ないわ。むしろ褒められる所業よ。そして臨時で君の家で活動というのも、料サーとしての体裁も保てて問題は無いわ。男性の家で二人っきりでお料理を作れたのも……ま、まあ、問題無いわっ!」


 なんだ……なんか語り出したんだけど……。


「その上であえて言わせてもらうわ……何故にお弁当箱が二個なのかしら? 料理を別に取り分けしているなら、家族である妹さんの分をお弁当箱に詰める理由なんてなくないかしら?」


 ぐっ……そこは流して欲しかったんですけどそうは簡単にいきませんか。仕方ない、適当に言い訳を取り繕うとしよう。


「ま、まあ、その……ほ、ほら、雰囲気を味わいたいかな~って」


「ふぅ……ん。そういえば昨日の感じからすると、もうすぐ妹さんが帰ってくる時間よね? いいのかしら? 衣服を乱して表情に影を落とした私が、妹さんとすれ違って走り去っても」


 そういうとわざと綺麗にアイロンのかかったシャツをスカートから出して、シワを付け出した。


 彼女はマジだ。マジで今発言した行動を起こそうとしている。本能がそう感じ取った瞬間だった。


「このお弁当は雪の分ではありません。許して下さい……。そんな状態の三条先輩とすれ違おうものなら、まじで蹴り殺されますから……」


 誠心誠意の最敬礼をしながらゲロした。


 やめろよぉ、そのフリぃ。言っちゃなんだがこのパターン二番煎じだぞ!?


((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル 

ジャンル別日間ランキング日間一位ですって……?


ただただひたすら感謝です!


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