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三条先輩の料理


 三条先輩が意味深な言葉を投げたおかげで、クラスメイトにとんでもない誤解を与えてしまった感がある。何人かの女子が、俺の事を毒虫でも見ているような視線を送っていたのが確認出来た。


 信じて欲しい……俺は自慢じゃないが童貞さんだ……。


「三条先輩ぃぃ……話が違うじゃないですかぁ……。俺の事は二人だけの秘密って約束でしたよねぇ?」


 校舎を後にし、帰路についているのだが、三条先輩は隣で未だに呼吸がおかしくなったままだ。というよりより悪化している感もあるぞ?


「い、今から、だ、誰も居ない家で……ふ、二人……二人っきりに……こ、これって、そうなるやつよね……」


「もしも~し、俺の話聞いてますぅ? 全く……ええ、そうですよ俺達以外誰もいませんから二人っきりですよ。今日も俺が美味しく調理してあげますから」


「なんだか卑猥に聞こえるのは……違う、私、そんな子じゃないわっ!」


 今日の三条先輩は情緒不安定極まりない。今日はミュージシャンのお姉さんにも会わなければならないし、体調が思わしくないなら、お家に帰ってはいただけないだろうか……。  


「で、でもどうして今日は貴方の家なの? それによくよく考えたら実験室でも二人きりと言えば二人きりよね?」


 急に冷静さを取り戻すところ、嫌いじゃないですよ?


「だって冷蔵庫、空っぽじゃないですか……。またお買い物からスタートすると、昨日みたいにどっぷり日が暮れちゃいますからね。一番の目的は時間短縮です」


 実は今晩、あのミュージシャンのお姉さんに差し入れを持っていくつもりなのだ。


 流石に高校生にとっては毎日の五百円の出費はデカ過ぎる。そして今日もお腹を空かせている可能性も高い。

 ならば家の冷蔵庫から食材をルパンルパ~ン♪ して、お弁当を引っ提げて行こうかと思い立ったのだ。


 少し気になるのは、昨日初めてあった初対面の人に対して、いささか入れ込み過ぎではないかとも思う事だが。でもなんか、ほっとけないんだよなぁ、あの人……。


≪  


 二日連続で三条先輩を実家にお迎えして、二人並んでキッチンに立った。

 

 実家での臨時料サーの活動スタート。となった訳なのだが、順調に調理を進めていく中、大事件が起きた。

 

 皿の上には展示用の食品ディスプレイかと思わせるような、見事な出来栄えの出汁巻き玉子が乗っている。


 程よくきつね色の焦げがつき、弾力と柔らかさを同時に感じさせるようなフォルム。ふわりと舞う湯気に食欲を掻き立てられる。


 我ながら自画自賛してしまう程に完璧な出来栄えの出汁巻き玉子。


 が二皿並んでいるのだ。全く同じクオリティの物が。一皿は俺が作ったのだが、もう一皿は……三条先輩作だ。


「……おっかしいな。三条先輩ってそんな器用なタイプでしたっけ? 俺の記憶では、どんな食材でも炭に錬成しちゃう悪魔のような方だと記憶してるのですが?」


「貴方、私の事を馬鹿にしてるのかしら?」


 だって、初見で秋刀魚を炭化させてたし、料理出来ない系のお嬢様と思い込んでおりまして。


「決してそんなことは……し、しかし、少なからずちょっとショックです。見様見真似で俺の作る出汁巻きと同じレベルの物を作ってくるとは……」


 こう見えて玉子焼きは俺の得意料理のひとつでもある。


 たかが玉子焼、されど玉子焼き。シンプルな料理ではあるが、火加減の感覚を掴んでいないと硬くなったり生だったりと差が生まれるものなのだが……。


 横に並んで真似されただけで簡単に技を盗まれた。末恐ろしい子だ……。


「今まではフィーリングで作ってたけれども、ちゃんとしたお手本がすぐそばにあるなら話は別よ。やり方を見せてくれれば、それなりの物を作る自信はあるわ。どう? 部長の力を思い知ったかしら?」


 なるほど……見て感じ取れる天才肌タイプか。


 今の時代じゃ料理動画の配信とかないもんな。料理本とか写真では感覚を掴めないタイプのようだ。


 良いか悪いかはおいといて、感覚で物事をこなしていく子なんだなぁ。


「おみそれしました。じゃあ引き続き他の料理もジャンジャン作って行きましょう」


「え? 今日は一品じゃないの?」


「そ、そうですね。今日はですね、幕の内弁当的な感じで仕上げようかと思ってまして……」


 お姉さんは昨日のご飯は肉まんって言ってたしな……。そうだ、味噌汁も作っていこう。きっと喜んでくれるだろう。


「……ん? 待ちなさい。どうしてお弁当の容器が二個あるのかしら?」


「ひとつは三条先輩の分と……もうひとつは、まあ、その、雪の分ですよ! 雪の! ほら、あいつも食べたいかな~って」


 何故か咄嗟に嘘をついてしまった。


 しかし僅かに反応速度が鈍かった俺を見逃す三条先輩ではなかったようだ。その証拠にデケぇを持ち上げながら腰を曲げ、眉までも曲げて斜め下45度から俺を睨んできてるもん……。


 これでもかという程、疑われている……とりあえず美少女清楚系JKがしていい目じゃない事は確かだ。 


日刊ランキング三位……((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

皆様、ありがとうございますぅ!これからも楽しんで行って下さいませ!


尚、うたのお姉さん、出る出る詐欺発動中です(笑)

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