実家に乗り込まれる
「あらぁ~♪ どうしたの修!? 可愛いらしい子を連れて帰ってきちゃってぇ~♪」
「初めまして、三条みくと申します」
ぺこりと頭を下げて玄関でお袋に挨拶する三条先輩。非常に礼儀正しい所作である……って何故俺の家の場所を知っているのさ!? それに自然に一緒に入って来ちゃってるしぃ!?
もういい時間だし、自分のお家にとっとと帰ろうね!?
「三条先輩!? 家に送ってる途中でしたよね!? ここは俺の家であって三条先輩の家じゃありませんから!」
「そんな事知ってるわ。当たり前じゃない」
こ・の・ガ・キ・ん・ちょ・は!! 大人を舐めてるのか!? 今は年下だけどな!!
「随分と楽しそうね。玄関で立ち話もなんだから少し上がっていきなさいよ。で、二人はどんな関係なのぉ~?」
「おい、お袋……」
非常に下世話な表情を出して訪ねてきた。これだから大人ってやつは……。まあ、俺も精神年齢はがっつり大人ではあるのだが。
「えっ!? お、おふく——す、すみませんっ! 私、てっきり修さんのお姉さんだと思って。お母様だったとは……」
「ふぁ!?」
思わず変な声が出た。三条パイセン? 見たら分かるよね? どうしてそんな見え透いた嘘をつくの?
そして修さんってなに!? そんな呼び方今まで一切してなかったじゃん!! 何気に名前を呼ばれた事すら初めてなんですけど!?
「あ、や……やだわぁ~。うふふ、みくちゃん? ついでにご飯食べていかない? さ、そんなとこに突っ立ってないで早く上がって上がって♪」
相変わらずちょれぇんだよ……お袋よぉ……。誰がどう聞いても純度100%の世辞じゃねえか。
「それではお言葉に甘えて……あと、私と修さんとの関係はですね、その、がっつり掴まれてしまった間柄といいますか……」
その三条先輩の言葉に、俺とお袋はその豊満な胸に目線を向けたのは言うまでもない。
やめてくれないかな? 家族会議になっちゃうだろ?
≪
「お料理サークルねぇ……良かったわ、うちの愚息が非行に走っていなくて」
「おい、聞こえてるぞ? 誰が愚息だ」
キッチンで今晩の味噌汁の下ごしらえをしながらツッコんでおいた。不純異性交遊なんて生まれてこの方経験した事ねえやい。
「す、すみません、私も言葉足らずで……掴まれたのは胃袋の方でして。すでに秋刀魚の竜田揚げと肉じゃがを作っていただけ、恥ずかしながら修さんの作るお料理の虜になってしまいまして……」
頬に手を当てて物思いに更ける美少女。様にはなっておりますが、さっきから三条先輩に修さんと呼ばれる度にむず痒いんですけど?
「いつの間にそんな凝った料理を……。ねえ、修? もしよかったらその流れで晩御飯作ってくれない?」
「いいけど……その代わり三条先輩に変に絡むんじゃないぞ! 三条先輩もあの件はくれぐれもお願いしますよ?」
俺が未来の事を知ってるのはオフレコにして欲しい。話が非常にややこしくなるし、下手したら親に心配されて精神科を受診する羽目になるかもしれない。
逆の立場だったら今すぐ病院連れて行くもんな。
「で……二人はどこまで行ってる仲なの? キスぐらいは行ってる感じ?」
「あ、いえ、胃袋こそは掴まれましたが、そういったものは……その、まだ、私自身、まだ経験もした事はないと言いますか、そのぉ……」
「わぁ~。とってもピュアピュア~♪」
「おふくろぉぉぉ!!? 行ったそばからNG出してんじゃねえよぉ!」
めっちゃ三条先輩追い込んでるじゃねえか!! やめろよそういった下世話なことはよぉ! 流石の三条先輩も狼狽えているじゃないか! そして見た目通りめっちゃ清純だった件ね!
「……何の話」
ひぃぃっ!! タイミング悪く雪が塾から帰って来たぁっ!! しかもなんか知らんがめっちゃ不機嫌なんだけどぉ!?
「……誰?」
「あ、あの、私、三条みくと申します! 修さんとはお料理サークルの部員と部長という関係で……」
「そこのおっぱいが大きい人には聞いてない」
やめて……ねえ、どうしてそんな綺麗な人に憎悪の眼差しを向けれるの? 昔の雪はそんな目はしなかったよ? いつも『お兄ちゃん♪』ってくっついてきてくれたのに……。
それに本人を目の前にしておっぱい大きい人って……間違ってないし、確かにそうだけどもストレート過ぎない?
俺だって世間体を考えていつもデケぇと比喩してオブラートに包んでいるだよ? 少しは兄を見習って欲しい。
「はいはい、雪もお客さんを威嚇しない。全くこの子は誰に似たんだか……。じゃあ修が料理を作ってくれてるから、ここはガールズトークに華を咲かせましょう! で、あなたたちって、付き合ったりするの?」
「ふうん、そんな感じ……でもママ、お兄ちゃんとは釣り合いが取れそうもないよ? 相手のレベルが高過ぎて豚に真珠、猫に小判、ドラゴンに耳かき、貧相なオークに女騎士だよ」
「雪ちゃん? ママ、途中から分からなくなっちゃった。特に最後らへん」
おま……誰が貧相なオークじゃい。ねえ、本当に俺の事、兄って認めてくれてる?
「つ、付き合うとかは、置いておいて、その……わ、私個人的に見た修さんは、そこまで悪いものではないかと思うのですけども……」
「ええ? どこにでも転がってるような量産型男子高校生よ? みくちゃんと違って、完全に一山いくらのワゴンセール品よ? まあ、それでも大事な息子なんだけど」
お袋よ、最後にフォロー入れてるけど、その大事な息子の事をボロクソ言い過ぎじゃね? 軽く凹むんですけど?
誰がワゴンセール品じゃい。そして雪、スルーしそうになったけど、ドラゴンに耳かきの比喩の方も意味が分からんのだが?
かなりお袋が悪ノリして三条先輩に詰め寄ってる。これはいかん。こうなったら……。
よし、キレよう!
「でぇいい! もうお前らの飯はもう作らんっ!! 今日はインスタントラーメンでも食っておけ!! 三条先輩、家まで送ります! ここに居ちゃ毒されてしまいますから! そしてお袋と妹に変わって謝ります! 嫌な気分にさせてごめんなさいですぅっ!」
「お、修さん!? わ、私は別に嫌な事は——ちょ、ちょっとぉ!?」
言葉途中で俺は強引に三条先輩の手を引き、家を後にした。
ランキング入り記念に今日はもう一話!




