一日四食は太りますよ?
「はぁ……やっぱり貴方が作る料理、とっても美味しいわ……しかし不思議だわ。どうしてこんなにも感じ方が違うのかしら……」
妙に艶やかな表情をした三条先輩が頬に手を置き、俺の作った肉じゃがを食しながら感想を漏らした。
そこまで幸せを込めた感想を頂けると、板前冥利に尽きるというものだ。
今回の味付けは料亭の味付けより少し濃いめにしておいた。もともと、料亭で出される食事はハラヘリヘリハラのJKをターゲットにはしていない。
食べる人の状態に合わせた味付けをするのも、おもてなしというやつだ。
「お気に召していただけたようでなによりです」
調理器具を洗いながら外を眺めると、すっかり日は落ちようとしていた。
運動部の連中は照明を付け、これから来る夜に備える準備をしている最中ではあるが、文芸部はもうそろそろ下校せねばならない。
「三条先輩、思ったより遅くなってしましたから急いで食べて下さい」
「貴方、ご飯はよく噛んで食べなさいって教わらなかった?」
どや顔で放り込まれた。昨日作った竜田揚げはがっついて食べてたくせに。ほっぺたに食べかす付けてた美少女が何を言うのか……。
「ふざけてないで早く食べて下さい、食べ終わったら家まで送りますから」
「えっ? あ、う、うん……」
JKに夜道を一人プラプラと帰らせる訳にもいかない。家が近所ならいいのだが……。どちらにせよ、明日からはもう少し早く帰るようにせねば。
なんといっても相手は未成年だもんな、俺も一応は未成年ではあるが。
「わ、私、男の人と一緒に帰るのって初めてで……」
「安心して下さい。保護者として無事送り届けますよ」
「はぁ……」
それは重い重いため息をつかれた。まあいいや。片付け片付け~っと。
「高校生の男女が揃って帰るのに保護者って……折角のムードが台無し……って私、何を言って……」
何故か挙動不審な態度を取っているのが見えた。何をしているのだろうか、早く食べてもらえませんかね?
「どうかしましたか? あ、お代わりはもうないですからね。どうせこの後にも晩ご飯食べるんでしょ? 確実に食べ過ぎですよ? 今後も料サーで二重食いし続けたら、確実に太りますから気を付けて下さいね? 運動なりなんなりしてダイエットにも励んで下さいね」
「……貴方に彼女が居なかった理由、改めてよぉ~く分かったわ……」
何ですかそれ、気になるじゃないか。是非とも今後の参考にしたいから教えて下さい。
≪
料サー活動終了後、三条先輩と並び下校する事になったのだが、先程からどういう訳か妙に不貞腐れている。
何なのだろうか……雪といい、三条先輩といい十代の女子達は。考えてることがさっぱり分からん。
「で、三条先輩の帰り道はどちらですか?」
「『そのまま直進、次の曲がり角を左です』」
ナビ口調ぉ……あれ? 割かし真剣に気分を害していらっしゃいます? 美しいお顔が無表情でございますよ? 笑お? ねえ、笑お?
「機嫌直して下さいよぉ。とりあえずまっすぐで左ですね。しかし奇遇ですね。俺の家もそっち方面なんですよ」
「そ、そう? き、奇遇ね」
……なんだ、このまたまた挙動不審な態度は。しかし俺の家と同じ方面だったとは幸いだ。世間とは狭いものだな。
「次はどっちですか?」
「『そのまましばらく直進したのち、途中で止まって、くるっと回ってワンとお鳴き』」
「そのまま直進で、途中で回ってワ……いやいや、何を言ってるんですか? 鳴きませんよ?」
段々調子に乗ってきた感あるな……。そしてそれに乗っかている俺も俺だが。だって清楚系JKだよ? つい従っちゃうのも仕方ない話じゃん。
しかし、サッカー部のルートを外れると、こんなイベントが用意されていたとは。まさに【事実は小説より奇なり】だな。
当時の俺じゃこのルートは歩めなかったもんな。料理が出来ない時点で三条先輩とは知り合うことはなかったし、仮に出会えたとしても恭介みたいに門前払い扱いになっていただろう。
そもそも三条先輩という人物自体、俺の記憶に無い。校内ですれ違う事すらも無かったもんな……。
まさか三年生にこんなデケぇを標準装備した美少女様が居たなんて思いもしなかった。まあ三年と一年の関係って、当たり前だけど一年間しか在学出来ないもんな。
新しい学校生活に慣れるにも時間はかかるし、自ずとチャンスは少なくなるのは仕方のない話なのだけど。
そんな貴重な高校生活をもう一度味わえるとは。これを強くてニューゲームと言わずになんと言うか。むしろ強過ぎてゲームバランス崩壊もんだわ。
「『目的地に到着しました』」
「……はい?」
ガチャガチャと脳内で考え事をしていたところ、ナビ口調の三条先輩の声が聞こえた。見上げたその先にあったのは……俺の家だった。
ジャンル別日刊ランキング、端ですが載りました♪
皆様、応援ありがとうございます!




