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みく~エンディング~

最終話はマルチエンディングシステムを採用しました!

これでどちらの推しも愛でれますね!


三条先輩、あやかさんの最終話を同時に投稿しておりますが、まずは三条先輩との未来をご堪能下さいませ。

 

 みくエンディング


 TV局内にある控室の一室。そこで背筋を伸ばして正座をし、精神を統一しているのは俺こと、荻野修、二十歳。


 現役の大学生であり……板前だ。


 俺は二度目の高校生活を勉学と共に、料理の勉強にも尽力した。そして一流大学に合格した時、親父に頭を下げてひとつの頼み事をした。


『TVの料理対決番組の予選を受けさせて欲しい』と。


 俺は実家が料理店ではないし、他の店に所属すらしていない。世間的にはアマチュア中のアマチュアだ。そんな人物が料理番組の予選枠に引っ掛かることなどない。それゆえ、下策ではあるが、少しばかりコネの力を使う必要があった。


 出場権こそ七光りでゲットさせてもらうが、あくまで審査は平等にして欲しいと願った。

 そんな経緯もあって俺は当初こそ誹謗や非難も受けた。当然である。店で働いている訳でもなく、ただの一般人、大学生なのだから。


 他の料理人から見たら冷やかし、もしくは侮辱とすら映っていただろう。


 だけどそんな事は百も承知。全てを甘んじて受け入れ、ただただ愚直に実力を示し、順調にプロ相手に勝ち登っていった。


 そしていつの頃からか『大学生の天才板前』というニッチな看板を背負うようになった。


 そこからはトントン拍子にTVに出て名のあるシェフ達と勝負を繰り返し、実績を積み、今に至る。


「荻野さん、出番ですのでキッチンスタジアムの方にお願いします!」


 スタッフの方に声をかけられ、目をゆっくりと開いた。俺の目の前には和装をした美しい女性がじっと俺を見ていた。


 俺の彼女……といいたいところであるが、そうではない。友達以上恋人未満の関係である三条先輩である。

 尚、二人だけの時の呼称名はみくちんである。こう呼ばないとキレてくるので注意が必要である。


 距離感が近づいて分かったのだけど、普段から淑女な振る舞いをしている反動か、甘えてくる時の勢いが半端じゃない。可愛いは正義だと思う。


 少し話が逸れたが、大学入学後の十八歳から築き上げてきた戦績は現時点で無敗。プロの料亭の板前さんとの勝負でも勝ち星を稼ぎ、和の達人はもちろん、ジャンル違いの洋の達人、中華の達人をも制し、本日、初のレジェンドとの対決となっている。


 ……俺の元師匠、料理長の華さんと!


「修、分かっていると思うけど、ここが正念場よ」


「任せて下さい。俺の知ってる歴史とは随分と変わってしまいましたが、俺は料理長を超え、お義父さんに三条先輩との結婚を前提としたお付き合い認めてもらいます!」


 今宵の決戦の為に俺は持てる全てを尽くし、突き進むと心に決めていた。そう、あのクリスマスの日から。


 いや、正確にはクリスマスの翌日、首を絞められながら……。


 控え室から出る時、あの時の事が脳内をよぎった。



≪≪≪≪≪



「死んじゃう!? 死んじゃうってば、三条さんっ!? 修君の顔色が青ざめて……うめき声も掠れてきてるよぉぉ!!」


「あぎゅぅ……ぉぉぉ……」


「貴方って人はぁぁ!! どこまで唐変木なのよぉぉ!!」


 クリスマスイブが明けて翌二十五日の朝、俺は実家の前で殺されかけていた。


 とはいっても全て自業自得なので、首を絞めてきた三条先輩を別段攻め立てる事はしない。ただ、マジで三途の川をクロールで泳いだ。


「げほっ……げほっ……おぇ……」


 不意に首から手が離れ、なんとか呼吸を整える事に全身全霊を傾けた。

 なんとか息を整え、改めて周りを見ると、頭から湯気が上がる程に怒り狂う三条先輩をなだめてくれているあやかさんが見えた。


 感謝せねばならない。もう少しで異世界転生するとことだった……。


「これは一体どういう事!! 説明しなさい!! 事と次第によっては……」


 その蹴りの構えやめてぇ……。お尻割れる奴ですやん……。それにパンツまた見えちゃいますよ?


「す、すみません。でもこれが俺の出した結論なんですよ……」


 その言葉に二人は固まった。


「そ、そっか。第三の選択肢として、修君がどちらにも興味が無くて選ばない、というのもあるものね……」


「そ、それは……そうね、拒否する権利もあって当然よね……」


 なにやら二人が自己完結してしょんぼりし始めた。


「ち、違いますよ。俺は考えに考え抜いて結論を出しました。ただ、今のこの状況ではどうにもならないと考えたんです」


 俺はあやかさんを前に移動し、90度頭を下げた。


「すみません、偉そうに選べる立場ではありませんし、ご恩は言葉では語り切れない程あります。でも、俺……あやかさんとは付き合えません。すみません!!」


 地面に顔を向けたまま、誠心誠意の言葉を伝えた。


「あ、うん……そっか、えへへ……分かった。ごめんね……」


 顔は見えないが、鳴き声交じりの声が聞こえてきた。その声が聞こえた瞬間、俺はすぐに顔を上げた。


「謝らないで下さい。そして図々しいお願いですが、今後もお力を貸して下さい!」


「え? ど、どういう……こと?」


「ちょっと、貴方!? さっきから何が言いたいのか全く分からな——」


「俺は三条先輩と付き合いたいと思っています! でも……今の俺ではダメなんです!!」


 家の前がこれでもかと言う程に微妙な空気となった。


 女性陣は怒るべきなのか、悲しむべきなのか、喜ぶべきなのかが分からない状態になっている。中々に混沌カオスな空気感だ。


「三条先輩と釣り合う男になる為には……あやかさんのお力が必要なのです! 対価は俺の全てを差し出し——あぶぶっ!!?」


 目を吊り上げたデケぇ持ちのJKにまたまた首を絞められた。


「告白した相手が目の前に居るのにいきなり浮気!? この唐変木通り越してただのお馬鹿さんっはぁぁ!!」


「ち、ちが……はなじをぎいてえ……」


「お、修君の全て……そ、それって……だ、ダメだよ!? お姉さん、そういうのを望んでるんじゃなくってね!?」


 ブちぎれて首を絞める三条先輩に目を白黒させる俺、脇で何かとんでもない誤解をしているあやかさん。


 そんなぶっ飛んだ状況の中、丁度温泉旅行から帰ってきた家族に現場を目撃され、ドン引きされたのは別の話だ。



≪≪≪≪≪



 昔を思い出し、思わず口角が上がった。どうやら緊張はしていないみたいだ。


 真っ白な割烹着に身を包み、スタッフさんに案内され向かう先は、何度も通って見慣れたキッチンスタジアム。周囲にはTVカメラが数台設置され、観客席が見えた。


 広く空間を取られたVIP席には三条財閥総帥の姿も見える。その横に俺の彼女【仮】が座ったのも見えた。


 俺は三条先輩も同じく通う一流大学に合格し、三条財閥の総裁であるお義父さんからは、お友達としては辛うじてを認めてもらっているものの、その先は未だに認めてもらえていない。


 つまり、友達だからキスもデケぇタッチも無しなのだ。辛うじて手を繋ぐまで。二十歳になったというのに中学生以下の行いまでしか許容されていない。


 しかしながらそれらは至極当然の事と言える。だからこそ、あのクリスマスの日にひとつの結論に至った。


 日本屈指の財閥の令嬢を彼女、ひいては嫁さんにするには俺のスペックがあまりに足りていないと。


 一流と呼ばれる大学に入った程度では、大事な大事な愛娘を嫁に送り出すなんて真似、世界を牛耳る総帥が許す訳がない。だから俺は十八歳になった日、三条財閥総帥に頭を下げてこう頼んだ。


「一流大学に在籍しつつ、二十歳までに日本で一番の板前になれたら娘さんと結婚を前提としたお付き合いをさせて下さい」


 総帥はその条件を飲んでくれた。もちろん今まで清廉潔白を貫き通してきた。尚、恭介と佐川さんは何度か破局を迎えそうになりながらも、現在は大学に通い、仲睦まじくルームシェアという名の同棲生活を送っている。


 破局を迎えそうになったのは、全て恭介の例の性癖のせいだが。


 佐川さんもデケぇんだから余所見をする必要ないのに……。と諭した事もあったのだが、『目を瞑って自分の胸に聞いてみろ』と言われ、素直に謝罪した記憶がある。


 またもや話が逸れたが、今宵の一戦で全てが決まる。


 三条先輩の事はもちろんだが、恩師であるあやかさんの為にも負ける訳にはいかない……。ちなみにあやかさんは無事に高校教師となり、日々忙しくも幸せに暮らしている。


 そんなあやかさんには、大学に入る為に引き続き勉強を見てもらい、代わりに俺は料理の技術を伝授させてもらった。

 おかげで今は当時の俺と同じように、イケメンさんの胃袋を掴むことに成功している。


 ご本人曰く『胃袋を掴まれた人に、胃袋の掴み方を教えてもらうなんて思いもしなかったよ』と少々皮肉を言われたのは懐かしい思い出だ。


 俺はこれまで勉学に料理の技術鍛錬。この二つに全てをかけてきた。高校時代は料サーは三条先輩が卒業して廃部となったが、その代わりに時間を作っては三条先輩の家、というか部屋のキッチンを使わせてもらって更なる高みを目指した。


 三条先輩の家が俺の料理の修行場となったのだ。尚、あやかさんもご一緒してレクチャーをしたりもした。


 その様子を見る度、みさきさんは大層咽び泣いていたが。俺の事をやれ『鬼畜ハーレムめ』とか『私に男を紹介してくれ』など、客人に対して暴言……妄言? を良く振り巻いていた。


 都度、三条先輩にめっちゃ怒られてたけど。


 しかしこのことがまさかの料理長に漏れてしまい、わざわざ俺との一戦を迎える為にレジェンドの座に鎮座されたのは相当な誤算だった。


 だが、相手が誰であろうと、負ける訳にいかないのだ。三条先輩を俺の嫁にする為にも。


 二回目の人生、ここで気張らなきゃ何処で気張るって話だ! 


「やっとここまで登り詰めてきたわね……」


 お隣のキッチンから、随分と嬉しそうな表情をした料理長が語りかけたきた。


「お待たせしました。あれからずっとそのレジェンド席に華さんが座っているとは思いもしませんでしたよ……。でもそれも今日までです。その席は譲ってもらいますよ?」


 TV向けの会話……となっているが本心である。


 しかし料理長はメディアにひっきりなしには出ているが、店を任せられる二番手っていたっけ? 相変わらずスパルタとは聞いているから弟子はいないと思うのだが……。


 一応……聞いておくか。


「ところでお店の方は大丈夫なんですか? 私とは違って忙しい身なのでは?」


「ふふ、息子に技術を叩き込んできたから大丈夫よ? しっかりきりもりさせてるわ」


 なんてこった……。多分、本当に叩いて育てたんだと思う。きっと努力で才能を超越させたに違いない。リアルに血は見てると思う。


 しかしあのドラ息子がねぇ……。まさかこっちの過去では店をぶっ壊した本人が料理長に変わって店を回してるなんて……。

 なんだか胸熱展開だな。歴史も変われば変わるもんだなぁ。


 事実上面識は無い訳だけども今度、顔を出してみようかな。精神面、壊れてなければいいけど……。とりあえず、河原は紹介してあげた方が良さそう。


『さあ、美魔女板前の華さんと大学生板前の修君、異色の頂上決戦! 今まさに開幕です!』


 ちなみに俺はナレーターさんの言葉に料理長の頬が緩んでるのを見逃さなかった。華さんって結構、褒められるのに弱いタイプではあると思う。



 二十歳になるまでの約四年間。俺は我流であるものの、自身の腕を更に磨き続けた。常に食べてくれる人の事を思って作り続けた。満面の笑顔で食べてくれる三条先輩の為に。


 そのおかげか、デケぇが更なるアルティメットフォームに進化し……いや、余計な事を考えるのをやめよう。


 現在は既に調理は完了し、人生の全てをかけて作った料理は審査員に提出し、集計中となっている。

 全身全霊、一ミリも余力を残さずに本当に全てを出しきった。これで負けたなら俺はそれまでの男だって事だ。


 しかし先程から胸の鼓動が収まらない。次の瞬間に天国と地獄がはっきりと分かれることになる。尚、この勝負で俺が負けた場合、きっぱりと三条先輩とは縁を切ると総帥には伝えている。


 三条先輩を嫁にするには俺も相応の物を賭けねばならない。でなければ手に入れれない存在なのだ。何が何でも負けられない。その為に今までやってきたのだ。


 そして遂に緊迫した雰囲気の中、結果発表がなされた。僅差の大接戦だったらしいが、審査員の方の票を僅かに多く集めたのは……。


 俺だった。


「っんんんんっ、しゃあぁぁぁぁっ!!」


 渾身のガッツポーズを決めた。ナレータさんが俺を称える言葉を伝えてくれている。料理長は勝負に負けて肩を落としていた。でもその表情は、かつて弟子であった頃の俺に送ってくれていた優しい笑顔だった。薄い2%の。


 そして遂に勝てた……。料理勝負であの料理長に人生で初めて勝てた……。


「修っ!!」


 まだ撮影中だというのにスタジアムの舞台に三条先輩が飛び込んできた。着物を着用してるのにデケぇの存在感が半端じゃない。


「三条先輩! 俺、俺……やりましたよ!!」


 飛び込んできた三条先輩を受け止めたのだか、三条先輩が感極まって初めて熱いキスをしてきた。


 まだ収録中なのに……。あと、恐ろしくて総帥の方は向けない……。


 尚、後程三条先輩から聞いた話だが、三条財閥という屈指のスポンサーの力で、俺がもしあの勝負で負けていても、点数を差し替えて俺を勝たせるつもりだったらしい。


 TVの闇の部分を垣間見た瞬間だった……。親父、すげえところで仕事してるな。


 TVサイドは九分九厘、俺が負けると踏んでいたらしいが、実際はまさかの結果であったようであり、やらせ無しの僅差で正真正銘、俺が勝利したとのこと。


 このことから、総帥、いやお義父さんは既に俺の事を認めてくれていたらしく、三条先輩を嫁に出してもいいと了承済みだった模様。


 でも、もしかしたら裏で『この期に及んで修との関係を認めないなら私、この家出て行くからね!? お父様とも絶縁します!』とでも脅してたのかも知れない。三条先輩ならやりかねないからなぁ……。


 そしてこの決勝戦の模様は三条先輩の乱入と熱いキスもバッチリ全国地上波で放送され、俺は一躍時の人にもなった。三条財閥の跡取り息子として。



「ほら、見て下さいよ……。あの場面放送するから大変な事になってますよ……」


 最近買ったスマホを三条先輩に向け、肩を落として物申した。翌日、ネットニュースで俺達の事がトップを飾っていたのだ。


 ちなみに今日は昨日の大接戦の翌日なので、大学の講義はお休みして三条先輩の部屋で相変わらず調理を行っている。


「あら? 別に悪い事じゃないわ。むしろ修に悪い虫がつかないようになって助かるわ」


 無事にお義父様に認められ、結婚を前提としたお付き合いをすることになり、大学卒業後は三条財閥に婿養子に入る事にもなった。


 親父は左団扇がどうのこのうとほざいていたが、死ぬまで働くように念を押しておいた。コネの力を使わせた事には感謝しているが、それとこれとは話は別だ。


「はぁ……三条先輩のおかげで大学に顔出しづらくなっちゃったじゃないですか……」   


「私が隣にいるから何の問題もないわ。それよりも名前、ここは私達の部屋よ?」


「……みくちん」


「はい、良く出来ました。修ん♪」


 デケぇを押し当ててくっついてきた。結婚を前提としたお付き合い、そして未来の婿養子になった為、今までとは桁違いなボディタッチも許容となった訳なのだが……。

 その……お互いのその呼び名、何とかなりませんか?


 めちゃめちゃ恥ずかしいんですけど……。お願いだから変えてくんないかなぁ……。


 タイムリープしたけども実際に経験した人生の年数を数えると、俺、もうアラフォーなんですよ? 体は二十歳だけど。


 そんなバカップルみたいな呼び名で呼び合うのはちょっと……ね? まあ、選択権はなさそうだから心の内に閉まっておこう。


「……はい、出来ましたよ。みくちんの大好物の……」


「わっ! 秋刀魚の竜田揚げね! 懐かしい~♪ 最近、秋刀魚も高くなってきたもんね……。修が昔言っていた通り、今や高級魚扱いだもんね」


 ほっこりと揚がった秋刀魚の竜田揚げ。三条先輩に初めて作ってあげた料理でもある。


「いただきま~す! うん、安定の美味しさね!」


 清楚でデケぇを持つ美女が笑顔で食べるその姿は、あのJK時代と何ら変わりのないものであり、その姿に思わず幸せの笑みが漏れた。


三条先輩との恋物語はこちらをもって完結となります。沢山の三条先輩推しの皆様、応援ありがとうございました!


本作は作者の数ある作品の中でも、一番多くの評価をいただけた作品であり、夢であった日間一位や週間、月間、四半期の一位にも輝くことが出来ました。


これも皆様の応援あっての賜物となり、沢山の感想やいいねもいただき、感無量でございます。

また、誤字報告も同じく沢山いただき、感謝しかございません。


主人公である修君を唐変木に極振りしたことによって、様々な苦言もいただきましたが、作者的には結構愛着のあるキャラであり、ブレずに貫けてよかったと感じております。


今話の三条先輩のエンディングにつきましても、ご感想いただけると幸いです。


さて、お次はあやかさんとの未来です。最後にもう一話、楽しんでいって下さいませ!

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― 新着の感想 ―
[一言]  敗けた華さんに、『料理の技術はあなたに叩き込まれました』と打ち明けるようなサイドも読みたいですね。  めちゃ面白かったです。
[良い点] 二人、それぞれのハッピーエンドがイイ! [気になる点] 良い点と矛盾しますが、3人で一緒に歩む未来がなかった^^; 大きな問題ではないです^^ [一言] 完結、おめでとうございます。そして…
[一言] マルチエンディング万歳
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