風雲急を告げる
空前絶後のクリスマスパーティが終わった後、未だ酔いが完全に覚めていないあやかさんは、立花さんが車で送り届けてくれることになり、恭介達もこれから二人きりの二次会があると言い残し帰宅していった。
聖なる夜はまだ始まったばかりだもんな。俺が不本意なWブッキングをしたばかりに、貴重な時間を割いてくれた二人には感謝してもし足りない。この後はゆっくりと二人で甘い時間を過ごして欲しい。
そして俺も一人寂しく、誰もいない実家に帰……らずに三条先輩の部屋に居る訳なのだが……。
どうしてこうなった?
今、三条先輩はドレスから普段着にお着替え中である。俺個人としてはクリスマスパーティは満喫させてもらったし、料理長に久々に精神力をごっそり削られたので、早くお家に帰って寝たいのですが。
「お待たせ」
ドレスから普段着へ衣装チェンジした三条先輩が奥の部屋から出てきた。部屋の中に居るのに部屋から出てくるという違和感ね。金持ちの家はやっぱ違うな……。
「いえ、それじゃあ俺もこの辺りで失礼させてもらいますね」
「待ちなさい」
無論、帰してもらえる訳なかった。しかし夜遅く、と言う訳ではないが、それなりの時間帯にDKがJKの部屋に居るなんて問題になりかねませんよ?
「後輩君、今日は何の日?」
「ク、クリスマス、イブですね……」
お、怒ってはない。ただ、何かを求めている……そうか! クリスマスプレゼントか!?
でもそれはサンタさんに頼んで欲しいです……。サンタさんの正体である総帥様に頼めば、きっと大概の物はプレゼントしてもらえるんじゃないでしょうか?
あ、そういえば確かサンタになるのって資格がいるんだけ? 筆記試験があると聞いたことが……。
「またしょうもない事を考えてるみたいね」
俺の脳内思考がバレてた。完全に心を見透かされてる気がするのは気のせいではない筈。やはりエスパーか……。
「どうせ私の事を『エスパーかっ!?』とでも考えてたんでしょ? 分かるわよ、貴方の考えていることぐらいエスパーじゃなくったって」
完全に思考が読まれている……だと? そんなに分かりやすいですかね?
「でも三条先輩、本当に時間も時間ですから。そろそろお暇させてもらおうかと……」
じゃないとまたまたお父様に部屋に乗り込まれますよ?
「そうね、じゃあ手短に伝えておくわ。私は貴方の事が好きなの」
「はい、ありがとうございます。それでは失礼し……ふぁっ!?」
今、なんと言いました!? す、好きって聞こえたんですけど!? 嘘でしょ!? 今日はクリスマスであってエイプリルフールではないですよ!?
あ、これがもしかしてこれって噂に聞く、偽告白ってやつ!? やだなぁ、三条先輩! 誰に頼まれたんですぅ? 罰ゲームか何かですよね?
「私と付き合って欲しいの」
真っ直ぐ見つめてくる大きな瞳、真剣な表情。あ、ダメだ。これマジなやつだ。ふざけちゃいけないやつだ。
「あ、あの……マジ?」
「ええ、大マジよ」
ガチの告白だ。しかもこんな美人でデケぇ持ちの方に……。感無量としか言えない。タイムリープして最大の恩恵が今――
「でも……今はまだ、返事はしないで欲しい。ごめんなさい、変なこと言って……」
ん? あれ? これって秒でフラれてね? ねえ、じゃあどうして告白したの? ぬか喜びどころか、ぬかの感触すら味わう暇すらありませんでしたけど?
「あ、あの……意味が分からないんですけど?」
これ以上的を得た質問はないと思う。好きと言われて、即刻フラれるや、今は涙を溜めてこっちを眺めているんだもの。
ほんと訳が分からないのですが……。
「フェアじゃない、から……よ。返事は彼女と、あやかさんとも話をしてからに……して欲しい」
涙をこらえ、必死に言葉を紡いでくれてるのだが、どうしてここであやかさんが出てくるのでしょうか? 彼女、今頃はもうお休みになっているような気がするのですが……。
「この……唐変木。どうせ私の言っている意味、分かってないんでしょ……。もういいから早く今からあやかさんの家に行って……」
いつもの聞きなれた言葉を再び吐かれたのだが、悔しいかな、おっしゃる通り全く流れが掴めない。
「クリスマスイブが終わって、クリスマスの0時丁度が期限。その時に貴方と一緒に居た女性が……貴方の彼女よ」
ふと時計を見るとちょうど21時。残された時間はあと3時間……。
「立花さんが門の前で待ってるわ……早く行きなさいっ!」
「は、はいっ!!」
怒鳴られて訳も分からずその場を飛び出した。とりあえずあやかさんにも事情を聴こう、考えるのはそれからだ。




