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初めてのぉ……ちう

 

 確かな手ごたえを感じることが出来てある期末テストも今日が最終日。これが終わればいよいよ冬休みの到来となる。


 そして眼前に迫ったクリスマスイブ、エーンドクリスマス。我が家族は二泊三日の温泉旅行の予定となっており、帰りはクリスマスの日となっている。


 おっと、少し語弊があったな。『俺を除いた家族と雪の友達』だったわ。ちくしょう……。

 しかしこうなった以上、もう騒ごうがなにしようが状況は変わらない。なら、一人空しくチキンを馬鹿食いしてやろう。と物思いに更けている時だった。


「やっとテスト終わったぜぇ……まあ、秀才の修は今回も余裕だったんだろうけどさ?」


「ああ、余裕だったな」


「少しは謙遜しろよ!? なんだよ、その余裕たっぷりな表情は!? こっちは死に物狂いでヤマを掛けてなんとか踏破したんだぞ!?」


 そう言われても俺は人生二度目なのだ。当時大好きだった漫画はネタバレしてるし、ドラマもアニメも同じく既に見たものが放送されている。つまり、誘惑が一切ないのだ。そりゃ勉強も捗るってもんだ。


 正直、勉強が暇つぶしになっている今日この頃なのだ。そりゃあ賢くもなるさ。


「で、どうするんだ? 今年のクリスマスは?」


「どうもこうも……家族は俺をほったらかして、温泉旅行に行きやがるからな。おかげで聖なる日は、大食いでもして一人寂しく過ごそうかと企てているところだ」


 教室全体がざわついた。最近はクラスメイト達までもが過剰に反応するようになってきている。由々しき事態だ。


「……イライラ」


 そして本日も教室には、日に日に不機嫌さを増して来る三条先輩が今日も現れた。今日に関しては機嫌の悪さが口にまで出ている。末期症状だと思う。


「そ、そんなに不機嫌な顔をしないで下さいよ。前にも言ったでしょ? 和食のクリスマス料理ってあまりないんですよ。だって一週間後にはおせち料理という真骨頂が控えているんですよ? どう考えてもそちらが主流になるのは火を見るよりも明らかで……」


「ねえ、貴方。私の事、ただの食いしん坊かなにかと思っていない?」


「違う……のですか?」


 至近距離で威圧満載で睨まれた。


 しかしながらそのボディよ。初めて出会って今に至るまでデケぇは更なる成長を遂げている。そして全体的な肉付きもアップときたもんだ。


 もはや三次元から二・五次元を経由し、今まさに二次元と化した清楚系のデケぇ持ちだ。フィギア化したら絶対に売れると思うんだけどなぁ。


「後輩君? ちょっと来て?」


 憤怒のオーラをまとう三条先輩に手首を捕まれ、教室を後にした。今日は相当ご立腹の様子だ……。



 連れてこられたのは毎度お馴染みの実験室。ではなくて、寒風吹きすさぶ屋上。の手前の踊り場。


 基本的に屋上は施錠されているので、生徒が登ってこれるのはここまでだ。まあ、屋上は危ないからね。


 そんな屋上に近しい場所がこの学校の人気スポットである。だが、これは恭介に聞いた話だけども、人気ではあるものの、使用率は低いとのこと。


 その大きな矛盾の答えは、皆がここぞという時にしか使わないかららしい。まったくもって謎のスポットである。


「後輩君……」


 じわりじわりと迫る三条先輩に後ずさる俺。とはいっても、もう後はない。背中は屋上に繋がるドアにへばりついてしまっている。


「お、落ち着きましょう。まずは対話の場を設ける事から始めませんか? そうだ、今日は焼き芋にしましょう! ホクホクの焼き芋ですよぉ~?」 


 一瞬、口角が上がったような気もしたが、すぐに険しい表情に戻った。


 食べ物につられない……嘘だろう? 何かの間違いですよね!?


「クリスマスの日、貴方、一人なんでしょ?」


「な、なぜそれを……」


 誰か密告者が居るのか……一体誰だ? 最近三条先輩はウチに来てないし……てか恭介しかいねえか。


「どうして誘わないのかなぁ? 私、ずっと待ってたんだけどぉ?」


 ひえっ……こ、怖いんですけど? 無表情で至近距離に!? ご令嬢がしていい態度じゃないですよ!?


「はぁ……。私、今年のクリスマスは用事が入ってないなぁ~。誰かお誘いしてくれないかなぁ~? あ~あ、誰か暇している人居ないかなぁ?」


 この人っ子一人居ない場所で猛然とアピールしてくるぅ!! もはやガン見で質問されてるんだけど!? これって『誘え』って脅迫されてるのと同義じゃありませんか……。


 この状況をスルー出来る人なんているのだろうか……。


「あ、あの、もしよかったらですけど、俺、クリスマスは予定が空いてまして……。三条先輩さえよければ、その、ウチでパーティでもしませんか?」


「うんっ!! 行くわっ!!」


 目と鼻の先まで歩み寄られて満面の笑みを向けられた。ほんとこの人、直視するのを遠慮してしまう程に綺麗な人だよな……。


「ちょ、ちょっと三条先輩!? やけに近くないですか!? こんなところを誰かに見られたら……」


 俺が吐いた言葉に対し、まるで『静かにしなさい』と言わんばかりに少し強めに両腕を引っ張られた。


 そのまま体勢を崩してしまった俺は、前屈みになってしまった。その隙に頬に柔らかい物がくっつけられた。


 咄嗟に三条さんの顔を見ると、潤んだ瞳の悪戯顔が見えた。


「今度は正真正銘、ちゃんとキスしたわよ……」


 人差し指を震わせながら唇に当て、弱々しい姿を見せる三条先輩。相当勇気を振り絞ったのだろう。


 だが今までにない恍惚とした姿でもあった。ダイナマイトバディをお持ちの高校生……この子、絶対将来世のおじ様キラーになるわ。


 とりあえず脳内整理しよう。『今度は』というのはおそらく前回未遂に終わった文化祭の時に発生した濡れたスポンジの事を指しているのだろう。


 さて、ここで問題なのは、今回は三条先輩が自らの意思で俺の頬に唇を当てたということだ。しかも場所も場所だ。ここは告白のメッカ、聖地ですよ? 


「さ、三条先輩? 今のって……」


「ふふ、いくら鈍感な君でも流石に気付いたよね? でも私も心臓が破裂しそうなのよ?」


 余裕ぶって答えているようには見えるが、声は裏返ってるし、未だにかすかに震えてもいる。今、三条先輩の脈拍を測ればどえらい数字が出る事だろう。だけども……。


「あのぉ……さっきのってキスとは言わないんじゃありません? チューってやつじゃないですか?」


「そっちは意外と余裕があった!?」


 随分と驚かれたが、ほっぺにチューは国によっては挨拶ですよ? そりゃあここは日本だし、今ここでその例を上げるのはお門違いだろうけど。


 個人的にはデケぇが体に食らいついた方が、心臓跳ね上がる程の事件案ですけどね?


「き、君って……もしかしてキスはしたことある……とか?」


「そんなのある筈ないじゃないですか。してたら彼女いてますよ」


「じゃあどうしてそんなに余裕なのよ!?」


 どうしてと言われても……そりゃあ、ちゃんとしたキスなら、『ファ!?』ってなりますが、軽くほっぺにチュッでしょ?


 それってスキンシップの領域じゃないですか。ハワイとか行くともれなくしてくれるイメージがありますよ?


 しかしさっきの表情はちょっとぐっとくるものがあったな……。美少女の潤んだ瞳なんてただの反則技だもんな。


「さ、もういいですか? ここは若人が青春の一ページを刻む聖域ですからね。部外者がそうそうと立ち入っていい場所ではありませんよ?」


「むっきいぃぃい!! 貴方! もう鈍感を通り越してただの馬鹿よ!?」


「むっ! 馬鹿とはなんですか、馬鹿とは。これでも成績は首席ですよ?」


「そういう所! ほんとそういう所だから!」


 何か散々悪口を言われつつ、今日も料サーも活動に精を出した。ホクホク焼き芋に少しだけ機嫌の悪さが緩和されたのが幸いだ。


 でも焼き芋って簡単に作れるんだ。手抜きしたのは内緒にしておこうと思う。


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― 新着の感想 ―
[良い点] こいつが『彼女』と『おっさん』を口にするたびにむかつくわw 基準が行方不明…
[一言] こいつは押し倒さないとダメなヤツかもしれん
[良い点] 焼き芋を美味しく簡単に作れるのは貴方だからですよ、普通の人は生焼け焦げ焦げのオンパレードですよ。 チュー?あぁ、いいヤツだったよ。
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