あやかサイド~黒歴史~
あやかサイド
「にひひ……すんごく驚いていたなぁ。修君♪」
初めて料サーを体験し、家に帰って教育実習のレポートを作成している最中、不意に朝の修君のあの驚いた顔が脳裏によぎり、思わずにやけてしまった。
うふふ、まるで埴輪みたいだったなぁ……。
サプライズ大成功! 今まで我慢に我慢を重ねて内緒にしてきた甲斐があったなぁ~。ほんと言いたくて言いたくてたまらなかったもん!
でもまさかドンピシャで修君の通っている高校の教育実習枠があるなんて思ってもみなかったよ。
「この街で初めてやった路上ライブのお客さんが修君で、なんと家庭教師にまでなっちゃって、更に同じ学校の教育実習生になるとか、こんなめぐり逢いって普通なくない? くうぅ~、やっぱり運命ってほんとにあるのかなぁ~♪」
思わず近くに置いてあった抱き枕に頬をこれでもかと押し付けた。
「それにしても教師……か」
教員免許取得の為の単位は、音楽活動の傍ら、家庭教師のバイトをしていく上で何かの役立つかと思って取っておいたものだけども、今では点が線になり、面になってる。ほんと人生何が起こるか分からないものだね。
教える事自体は昔から得意だったし、よく友達とかにも勉強を教えていた事もある。でも修君の家庭教師をして『教え方が上手』『分かりやすい』と評価されたのが一番響いたかな。
修君のおかげだよ。教師になるという私の夢を固めてくれたのは。
確かに音楽も好きだったけど、それよりももっとやりたいことを見つけてしまった。やりがいのある夢を……。
「にしても懐かしいな、高校時代か……」
久々の高校生との触れ合い、ふと若かりし、高校時代の自分を思い出した。
きらっきらの付け爪に、腕には沢山の謎の輪っか。日焼けさせた肌に服は着崩し、ルーズソックスを履いていた、在りし日の昔の姿を……。
思わず頬が引きつった。そして死にたくなった。
自分で言うのもなんだけど、高校時代は勉強も出来る方で、クラスで常に首位を取れるほど頭が良かった。
ただ……バリバリのギャルだった。『ちょりぃ~っす!』がお決まりの挨拶だった。
若気の至りぃ……。つらい、どうして私、あんな格好していたんだろう……。
何気なく思い出してしまった黒歴史だけども、気になり出すと居ても立ってもいられなくなり、広いクローゼットを開けて片隅に置いてある段ボールに入ったアルバムに手をかけた。
思い出は風化する。そう言い聞かせながら。
実は自分が思っているよりはギャルギャルしてなかったのかも知れない。大人になった今、もう一度確認すれば意外とちょっとヤンチャな子ぐらいに映るかもしれない、と。
ひとつ咳払いをして、そっとアルバムのページをめくった。
秒で閉じた。まじでヤバイ……。
「こ、この事実は墓まで持っていかないと……。高校の時にギャルやってたなんて知られたら教師生活どころか、人生終わっちゃう。何が何でも秘密にしなくちゃ……」
もし私も修君みたいにタイムリープ出来たら、絶対にギャルの道には進まないようにしようと思う。
自身の闇歴史を垣間見た私は、そのままクローゼットの奥へと過去の黒歴史の遺物を仕舞い込んだ。
「よし、封印完了、これでOK。でも教師になったら、家庭教師のバイトもやめないといけないのが残念といえば残念かも。それに流石に修君のクラスの担任になれる可能性は皆無に等しいもんね……」
でももし担任なんかになったら……でへへ、毎日楽しいんだろうなぁ。そして禁断の恋が芽生え……。
「ダメじゃん!? よくよく考えたら生徒と教師って絶対に禁忌のやつじゃん!? まだOLの方が救いがあるんじゃない!? 少なくとも教育委員会が黙っちゃいないパターンだよね!?」
私は何を浮かれてたんだろう……。よくよく考えたらこの道、修君に近づくように見えて遠ざかってないかしら……。いや、でも待って? 私と修君は事前に知り合っている。別に学校内で恋が芽生えた訳じゃない。それ以前からとっくに芽生えている。
つまり……。
せ、セーフ? だよね? 昔からの知り合いなら大丈夫、だよね!? 実際、昔っていう程まだ出会って時間経ってないけどね……。
少々悶々としながら改めてレポートに取り掛かった。ただその日のレポートの進みは非常に悪かった。




