みくサイド~お友達のお話なんだけど……~
みくサイド
「ただいま……」
「お帰りなさいませ、お嬢様。本日はご機嫌が悪いとお顔に書いていらしゃいますね。お願いですから八つ当たりしないで下さいね?」
メイドのみさきちゃんがズバリ今の心理状況を言い当ててきた。一瞬で見抜かれるぐらい険しい顔をしていたのかしら……。
「そ、そんな事するわけないじゃない。それよりも今日の晩ご飯は大盛りにしてちょうだい。今日の料サーでの料理、半分しか食べれなかったから」
「はい、分かりました。女の子は痩せてるよりぽっちゃりな位の方が可愛らしいとも言いますからね♪」
「……ちょっと待ってみさきちゃん。じゃあ、仮の話だけども、朝起きて私みたいにむっちりぽよぽよお腹になってたらどうする?」
「お嬢様みたいにですか? 死にますね♪」
「全然ぽっちゃりを認めてないじゃないのっ!!」
「冗談ですってば!? 冗談! てか、なんですか、その綺麗な蹴りの構え!? 一体どこで習ってきたんですかぁ!?」
全く、この人は歯に衣を着せぬ物言いをする人ね……。
とはいえ確かに思った以上にダイエットの効果は出ていない。胸は更に大きくなってる気はするけど……。
「しかし、ダイエットをするなとは言いませんが、今はしっかりと食べて体を作らないとダメな時期ですよ?」
思わずみさきちゃんの言葉に後輩君が重なった。同じ言葉を言われた事があるから。
「……ねえ、みさきちゃん。これは友達の話なんだけど……。その子、好きな人が居るらしいんだけどね、全然興味を持ってもらえなくて悩んでるんだって。どうアドバイスしたらいいと思う?」
「え? それってまんまお嬢様ご本人のお話ですよね? それに相手はあの高校生君ですよね? だいたい女の子が語る友達の話って、ほぼほぼ自分の事ですからそんな回りくどく言わなくても……。ストップ! はい、お友達の事ですね!? だからそのスマホを下ろして下さい! そう、ゆっくり、ゆっくり……はい、いい子ですねぇ……」
思わずお父様に電話をかけようとしてしまった。あと少し訂正するのが遅かったら、暇を与えてしまっていたかもしれない。
「ふぅ……で、興味を持ってもらうでしたっけ? そんなの普通にデートに誘えばいいんじゃないですか? 高校生らしく健全に映画とか見て、その後はショッピングモールでご飯食べたりとか」
「デ、デ、デートぉ!? そ、それは確かにそうだけど、周りに人が居たら恥ずかしいし……。じゃ、じゃあ映画館は貸し切りにした方がいいわね! それとショッピングモールじゃなくて高級レストランで二人きりに——」
「お嬢様? 一般のお友達は映画館や高級レストランを貸し切る術は持っておられないかと思いますが?」
うぐっ、そうだった、この話はお友達の話ってことにしてるから、ちょっと無理があるよね……。
でもデートか……。後輩君とはずっと前にWデートで遊園地に行ったきりだなぁ。あと、文化祭のあれもデートに入るのかな?
……あれ? それ以外って何かしたっけ?
……ヤバっ!? 今、秋だよ!? もう冬の足音が間近に聞こてくる今日この頃なのに、春からあった時間をずっとお料理に舌鼓を打って、文字通り私腹を肥やしただけじゃない!?
終わる!? このままだと何もしないままに花の高校生活が終わっちゃうっ! ただただデブって終わるぅぅ!!
「……もっと攻めなきゃ」
思わず天井を見上げ、拳を握った。
後輩君とは仲良くはなっているんだけど、正直お友達止まり。文化祭の時はキスされたかと思ったけども、よくよく聞くとあれ、濡れたスポンジが頬に当たっただけと種明かしされたし。
あの時の落胆たら無かったよ……。
「ね、ねえ、みさきちゃんはいろいろ経験してるでしょ? ちょっと私の友達に伝える為にも、いろいろと教えて欲しいんだけど……」
藁にもすがる気持ちでみさきちゃんを見ると、目を真一文字に紡いだ。
こ、これは、ど、どういうリアクションを取ればいいのかしら?
「私の……経験っすか?」
急に語尾が体育会系になった……。なんだろう、禁忌に触れた気がしてならない。でもここまで踏み込んだ以上、今更結構ですとは言い辛い。
「う、うん、学生時代の事とか、男性との交友関係とか……」
恐る恐る問いかけてみた。
「……も、モテモテっすよ!? もう毎日下駄箱にはラブレターが山のように入っていて、ファンクラブなんかも出来ちゃったりしてたし!? と、特定に彼氏とか作るとその人が恨まれちゃうから、俗に言うアイドル化してたって言うか、そのなんて言うか……」
あ、これ、嘘だ。汗びっしょりかいてるし……。き、聞いちゃいけない事だったのかしら。
「あの、みさきちゃん? む、無理しなくていいから。その……ごめんね?」
「謝られると超みじめになるんですけど!? ええ、そうですよ!? 声をかけられたことは沢山あるんですが、デートを二、三回も重ねるとすぐにフラれちゃうんですよ! 酷いのだと、デートが終わってもないのに『いいお友達でいようね』宣言された事も何度もありましたよ! なに、私のどこが悪いの!? むしろ私に教えて下さいよぉぉお!!」
多分、最初は見た目が良いから声をかけてみたものの、このテンションとずっと付きあっていくのが辛いと判断されたのかな? 正直、面倒くさいし、騒がしい人だし……。
「大丈夫だよ、みさきちゃん。必ずいつかはみさきちゃんの事を分かってくれる良い人は現れるから」
床に手を付き、大粒の涙を流すみさきちゃんに寄り添い、背中をさすってあげた。絨毯には既に涙の跡が出来上がってた。
話がおかしな方向に行ってしまっているのは分かってるけど、今は目の前で落ち込むメイドさんを労ってあげないと。私の責任でもあるし……。
「ほ、ほんどうですがぁ……あだじ、結婚できまずかねぇ……。およめざんになりだいのぉ……」
既にみさきちゃんの顔は涙と鼻水でぐっちゃぐちゃになってた。最初は私が相談を持ちかけた筈だったんだけどなぁ……。回り回っていつの間にか私に相談してるわよね?




