え? めっちゃ嫌われてますやん……
久々の新作です。お楽しみ下さいませ♪
運命の神様というのは、思ったよりも残酷な方のようだ。
「え……? い、今なんとおっしゃいましたか……?」
まるで雷にでも打たれたかのような衝撃が走った。
そんな衝撃なんてこれっぽっちも望んではいなかったけどね。にしても言葉で頭の中が真っ白になるって本当にあるんだな……。
高校を卒業して十四年。今年で三十二歳になる絶賛彼女募集中の俺こと、荻野修は地元にある老舗の料亭で料理の修業に励んでいた。
そんな俺が現オーナーである料理長のドラ息子に呼び出され、それはもう嫌み全開で今後の事を申し渡された。
「あぁ? 何度も言わせんな! 料亭なんてまどろっこしいもんは廃業って言ったんだよ! 折角、一等地にデカい土地があるんだ。こんな古臭い建物なんかぶっ壊して、管理しやすい駐車場にでもした方が簡単に儲かるからなっ!」
わざわざ顔を近づけて、憎たらしく物申された。マジでむかつく……このまま頭突きしてやろうかとよぎったぞ?
しかしすっかり忘れてたわ。こいつ、俺の事大嫌いだったよな……。
先般、不慮の事故で料亭のオーナー兼料理長が亡くなるという事件が起こった。
人の命の儚さを嘆き、皆が悲しみに暮れているにも関わらず、ドラ息子は意気揚々と廃業を申し出てきたのだ。
マジで正気を疑うレベルだった。てめえの親だぞ? 喪に服せよと心底思う。
料理の世界は厳しい。見習いから始まる修業期間はまさに地獄と言ってもいいレベルだった。
いや、ほんとマジで何度も挫けそうになった。包丁を無心で眺める時間が増え出した時には少し暇を貰ったぐらいだ。
それでも辛うじてこの道を外れなかったのは、料理長の腕前に惚れ込んだのと、少々矛盾するかも知れないが、厳しい指導の中でも可愛がられていたからに他ならない。
飴と鞭の使い方が神がかっている人だったからな……。クッソ厳しいけど、めっちゃ甘やかしてくる時があるんだよなぁ。
そんな下積み時代を終え、身に付けてきた力量をやっとこさ実感し出した時だった。
「で、ですが、それではこの料亭で働いてる者達は……それに料理長は廃業なんて望んでいませんよ! 俺、料理長には及びませんけれども、一生懸命やりますから! 絶対にこの料亭の信用を落とすような真似は——」
「うっせえな、今ここの権利は俺が持ってるの。料理長からは随分と可愛がられていたようだが、ここから先は一介の板前が出しゃばるところじゃねえよ。この店はもうしまい、閉店ガラガラ。以上だ。分かったらとっとと従業員全員引き連れて、ハロワにでも行って来い!」
おぉん? と、喉元まで出かかった言葉を辛うじて飲み込み、拳を握りしめて耐えた。
もともと俺が気に食わない存在であった為だろう、これ見よがしに辛辣に当たってきやがる。
そして改めてこのドラ息子の人間性を疑いたい。どうして雇われ人の俺が、オーナーからハロワ行きの旗振りガイドを押し付けられなければならないのだ?
訴えたら絶対に勝てる案件だからな?
そんなドラ息子はこっちの都合も考えず、早々に料理長が亡くなり、高い品質の料理を提供出来無くなった為、やむを得なく廃業すると世間に公表した。
しかし実態は先ほどの通り。あくまで建前の公表だった。現に従業員に発表する際にも、涙のひとつも流しやがらなかった。
そんな中、更に胸糞悪い裏事情を他の仲間に伝える訳にもいかず、癪ではあるが、俺の胸の中にそっとしまっておいた。
結果、ドラ息子の宣言通り料亭で働く者は全員解雇となった。
幸いだったのは、ドラ息子はハロワがどうとか言っていたが、なんとかツテの料亭に頼み込み、従業員のみんなが流れて行けたという事だ。
あのドラ息子、マジで何もしやがらないと察し、結局俺が骨を折った。
俺にもありがたい事にいろいろな店からウチに来ないか? と声はかけられたのだが、皆の就職先を斡旋することを優先して回った。
だが、全てが終わったと同時に無気力になってしまい、お誘いの返事を返す事が出来ず、そのまま引き籠ってしまって今に至る。
あの日から気分はずっと『もう俺、疲れたよ……パトラッ——』げふんげふんっ!
まあ、そんな感じだった。
毎日投稿で頑張っていきます!