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第6話 大森林を抜けるとそこには・・・

今回、後半が結構胸糞かもしれません。

それでも読みたいという方は、どうか楽しんでくださると幸いです。


それでは、第6話です!

 大森林を駆け抜け始めて5時間は経過した頃、所々で休憩を挟みながら進み、もうすぐで大森林を抜けれそうという場所まできた。


「うーん、マップによるともうすぐ森を抜けて次に行く国への道に出るはずなんだけど・・・」


 倒木に座って休憩しながら、マップを見て私はで考え込む。

 途中でブラックウルフやその他の魔物とも遭遇したけど、さすがに追いかけることはできなかったようだ。

 時折、気分転換で魔物を狩ったりしてその死体をアイテムボックスへと収納している。ゲーム内で魔物の死体は売ればそれなりのお金になるからだ。

 ゲームが現実に変わって金銭の相場が変化している可能性もある。それに備えて売れるものはできるだけ多いほうがいいと考えている。


「よし、あと一息でこの森も抜けれそうだし、このまま突っ切るぞ〜!」


 私の声は大森林に響き渡り、その直後にまた緑色の閃光が大森林の中を駆け巡る。





「もうそろそろだと思うんだけど・・・」


 再び駆け始めて数分後、マップを見る限りでは森を抜けて道へでるまで後1kmもないところまできた。

 周りの木の生い繁りが、さっきより薄くなっているような感覚もする。


「せっかくだし、後は歩いて森を突っ切れば・・・」


「・・・・ぁあ!」


「え、何!?」


 歩こうとした私の耳に、微かに人の叫び声のようなものが聞こえてきた。


「・・・ぁ!」


 耳をすませると、間違いなく人の声が聞こえてくる。


「一体何が起こってるの?」


 急いで【稲妻光】を発動させ、残りの距離を突っ走る。

 1kmもないため、ものの数秒で明るく、開けた道のような場所に出てくる。


「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!?」


 そこで目にしたのは、全長が10mはある巨大なトラと、それに噛み付かれて今まさに死に絶えた男性であった。


「・・・うっぷ!?」


 いきなり目の前でスプラッタな光景を目にして一瞬放心してしまったが、その直後に胃の中のものが込み上げてきそうな感覚に陥り、必死に耐える。


「うっ・・・あれって、マッドネスタイガー!?」


 必死に喉にこみ上げるものを飲み込み、私は目の前に現れたその巨大なトラの魔物の名前を言う。



 マッドネスタイガー。大森林において、MAOではいわゆる裏ボスと呼ばれる魔物であった。

 全長は10m超え、全身の色は血を浴びたかのような真っ赤な体躯と金色の瞳をもつ。

 そして、マッドネスタイガーの特徴は何と言ってもその出現率の低さにある。


 MAOにおいて、マッドネスタイガーは滅多にフィールドに出現しない。

 そしてマッドネスタイガーが出現すると、大森林エリアにいる魔物が興奮状態になり、魔物が森の外へと出てくる現象が起こるのだ。

 その現象を確認したプレイヤー達がマッドネスタイガーを狩ろうとしても、あまりにも広大すぎる大森林エリアの中から見つけ出すのはほぼ不可能に近い。よって、討伐事例も数える程度しか存在しないのだ。


 そんな存在が今、私の目の前にいるのだ。


「ぐるるるる・・・」


 マッドネスタイガーが男の亡骸を咀嚼して飲み込むと、ふと前を向いて唸り出す。

 私も釣られて思わずその方向に視線を向けた。


「あ、あれは・・・!」


 マッドネスタイガーが視線を向けた先、そこには一人の小柄な少女が座り込んでいた。






____________________________


 どうしてこうなったんだろう。なんで私がこんな目に合わなければいけないのだろう。


 私は元々、とある国の公爵家に生まれた人間だった。でも、兄姉さん達と違って私のお母さんは平民だった。

 腹違いの、それも平民から生まれた私は、実家ではいない物扱いされてきた。少しでも意にそぐわない行動をすれば怒鳴られぶたれ、ご飯も美味しいものをお腹いっぱい食べさせてくれたことがなかった。


 私のお母さんは私を産んだ後、病ですぐに亡くなった。だから家では誰一人も私の味方はいなかった。誰にも頼れなかった。


 私の生まれた公爵家は歴代で優秀な剣士を輩出してきた高貴な家柄だ。私はたくさん頑張った、一人前の剣士になって見返すために。

 でも、長い間まともに栄養を摂らせてもらえず、ろくに運動もさせてくれなかった私の筋力は、剣をまともに持つことすら出来ない程に非力だった。


 ならば、できるだけ知識をつけようと家の図書室を使って勉強しようとも思った。でも、腹違いの平民生まれな私にそんな許可が下りるはずもなかった。


 私がいた国では、13歳になると神殿に赴き、自身の所持している能力(スキル)を鑑定するという儀式が行われていた。

 もし私が強い能力を所持していれば家を見返せるかもしれない、そう心に秘めて、13歳になったその日に神殿を訪れた。でも、結果は散々たるものであった。



「ダメですね。能力を1つしか持ってない上に筋力がかなり低いです。器用さが他の人に比べてかなり高いですが、それだけですね。外れ(ハズレ)です。」



 外れ(ハズレ)、神殿の神官に半ば蔑むような顔でそう言われたのだ。恐らく、曲がりなりにもあの公爵家の生まれなのにこんな能力とステータスを持っていて恥ずかしくないのか、と言いたいのだろう。


 そして、私が絶望に沈んでいる時、公爵家の現当主すなわち私の実父がやってきてこう伝えたのだ。



「ほんのわずかな可能性にかけて貴様をこの家に置いてやっていたが、所詮は平民の血が混ざった存在か。もう不要だな」



 実の父親に真っ向からこう言われたのだ。

 そのまま私は裏で奴隷商人に引き渡され、奴隷として生きることになった。いても無意味なやつを置くよりも売って金にした方がいいと判断したのだろう。



 そして私が奴隷として売られて2年ほどが経過した時、様々な場所を引きづり回されて売りに出されたが、誰も私を買おうとはしなかった。

 恐らく理由は、母親譲りの黒髪と赤目であろう。この世界で黒髪と赤目はとても珍しく、黒髪を持つものはは災いを呼ぶという迷信があったのだ。

 名前も知らない変態に売られるよりはマシだ。そう考えて、この黒髪と赤目には感謝している。


 今日も馬車に揺られて中で蹲っていると、外から奴隷商人達の声が聞こえてくる。


「なぁ、あの奴隷どうするんだ?このままじゃ売れ残るぞ?」


「そうだなぁ、そろそろ潮時かもしれねぇなぁ」


「ならよ、次の国で売れなかったら俺たちで楽しまねぇか?終わればその辺の森に捨てとけばいいだろ」


「お、いいなぁそれ!くぅーっ!黒髪だが顔は上々だから楽しみだぜぇ!」


 外から聞こえてくる下品な会話と笑い声に思わず耳を塞いでしまう。

 次で売れ残ったらあんな奴らの慰み者にされるうえに森に捨てられるのだ。


「いやだ・・・こわいよぉ・・・」


 肩を抱えて私はただ泣くことしかできなかった。願わくはこんな私を嫌わず、優しい人に買ってもらえることを願いながら。

 その時、事件は起こった。



「ぐおぉぉぉぉお!!!」


「ぎゃぁあっ!なんだこいつはぁ!?」


 獣の大きな咆哮、そして奴隷商人の悲鳴が聞こえてきた。私が突然のことに困惑していると、突如、私の乗っている馬車が大きく横転した。


「きゃっ!?」


 横転した馬車の中から這い出てきた私は驚愕した。


 だって、目の前に見たこともないほどに大きく、真っ赤なトラが現れたのだから。


 そして、そのトラは目の前にいた奴隷商人の男の一人を、爪で薙ぎ切った。


「がっ!?」


 ろくな悲鳴もあげさせてもらえずに体の上下がおさらばした男の姿に、もう一人の奴隷商の男はヒィッと悲鳴を上げて逃げようとして、私を見つけた。


「おいお前!盾になれ!俺の逃げる時間稼ぎをしろ!」


 そう言って私を掴み、トラの前に投げ捨てた。そして、男は背を向けて逃げ出した。


「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁあ!!?」


 しかし、その巨大なトラは逃げ出そうとした男に狙いを定めて跳躍し、その牙で男を頭からガブリと食らいついた。悲鳴とともに迸る鮮血、そして骨を噛み砕くような音。


 やがて男を食らって胃の中に収めたトラは、私の方をギロリと向いた。

 その瞬間に、私の頭の中に死と絶望の言葉がよぎる。

 恐怖によって体が動かせず、目からは涙が溢れる。



 そんな私に容赦のかけらもなく、そのトラは牙をむいて私に襲いかかってきた。

 

 今まで碌な人生じゃなかった。神様から嫌われてるんじゃないかって何度も思った。

 でも、だからといって


「こんなのあんまりだよ・・・誰か、助けて・・・!」






「【稲妻光(いなずまびかり)】っ!」


 私にトラの牙が襲い掛かる寸前、トラの後方から誰かの叫び声が聞こえ、緑の閃光が走った気がした。



どぎゅぅぅぅぅぅん!!!



 それを認識したと思ったら、今度は雷が落ちたような音がしたと共に私は誰かに抱えられていた。


「大丈夫!?怪我はない!?」


 何が起こったのか分からず、混乱していた私の顔を覗き込んだのは、金髪碧眼の綺麗な少女だった。




第6話を読んでくださり、ありがとうございます!


面白い!

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日々の活力になります!


感想と誤字脱字の受付もしておりますので、そちらの方もよろしければドシドシと書いてくださると舞い上がって小躍りします!

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