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第5話 旅立ち

今日は少し早めに投稿!

そして、ようやく物語が進み始めます・・・!


それでは、第5話をどうぞ!



 私が村に帰ると、何やら騒がしくなっていることに気がついた。一体何があったのだろうと村の人たちに近づくと、村人の一人が私を見るなり目を見開き、指差しながら騒ぎ出した。


「いた!リンさんがいたぞぉ!」


 そう叫ぶと、村の人たちが一斉に私の元に走り寄ってきた。


「リンさん!今までどこにいってたんですか!?」


「朝起きたらリンさんがいないってなって、村の中を探し回ったぞ!」


「もしかしたら大森林に入ったんじゃないかってみんなで話してて・・・」


「でも、無事でよかったぁ・・・!」


 村の人たちは私のことを心配していたようだ。

 時間帯で言えば今は朝の8時くらいだ。おそらく、私が宿にいないことに気づいて探し回り、村人総出で探し回ってくれていたのだろう。


「えー・・・みなさん、本当にご迷惑をおかけしました」


 とりあえず、黙って出ていった私にも非はあるためここは素直に謝罪する。

 すると、奥の方からギウスさんが慌ててやってきた。


「リンさん!無事じゃったか!」


「すいませんギウスさん、すこし大森林の方に行ってまして・・・」


 そういうと、ギウスさん含め、村の人が驚愕に包まれる。


「大森林じゃと!?大丈夫なのか!怪我はないのか!」


「いくらリンさんでもそれは無茶すぎるぜ!?」


「そうよ!命がいくつあっても足りないわよ!」


 村の人からそう言われては、流石に私は縮こまることしかできない。

 ここは反省すべきだと思って、素直に説教を受け入れた。




 数十分後、ギウスさん達のお説教が終わり、私は本題に入ることにした。


「ギウスさん、これって何か覚えていますか?」


 アイテム欄から洞穴で見つけた弓を取り出し、ギウスさんに両手で渡した。

 すると、ギウスさんは驚きで両目を見開き、キールと彫られた文字を見た。


「こ、これは、キールが使っていた弓!」


 それを聞いた他の村人達は驚きの声に包まれ、一気に騒がしくなる。

 ギウスさんはそんな騒がしさをよそに、息子さんの弓を大事そうに抱えて大粒の涙を流していた。


「キールッ、キールゥ・・・」


 ギウスさんのすすり泣く声を聞き、私は静かに頷く。

 キールさんはようやくお父さんの元に帰ってこれたのだと。


「・・・他にも色んな弓があったので、どなたか確認できるでしょうか?」


 他の弓も取り出し、村の人たちに手渡す。


「間違いないわ!これ、うちの息子が使っていた弓!」


「これは兄貴が使ってた弓じゃねぇか!」


「うあぁぁぁぁあん!お兄ちゃぁぁあん!!」


 他の弓もどうやら、村の人の家族が使っていた弓だったようだ。

 遺族の誰もがその弓を大事そうに抱え、自分の家族の遺したものに涙を流している。


 私は家族との再会に水を差す気はなく、そのまま静かに待った。




「ありがとう。リンさんのおかげで儂らはこうしてまた家族と再開できた。本当にありがとうなぁ・・・」


 あれから1時間後、ギウスさん達に私は感謝されていた。

 ギウスさんはたくさん泣いたのか、目元を真っ赤にしている。


「いえ、それよりもよかったです。皆さんがこうして喜んでくださったことに」


 私は思わず微笑み、村の人たちの再会を祝福した。


「それにしても、リンさんその弓をどこで見つけたんだ?」


 奥の方からヘインツさんがやってきて、私にそう尋ねた。他の人たちも気になるのか、耳を傾け出した。


「えっとですね・・・まずはこちらを見ていただいた方がいいかと・・・」


 アイテム欄からブラッディグリズリーの死体を取り出し、村の中心にドンと置く。


「うわぁぁぁあ!なんじゃこりゃぁあ!?」


「く、熊!?にしてもデカすぎんだろ!?」


 その巨体の魔物を見た瞬間に村の中が蜂をつついたような大騒ぎになる。


「リ、リンさん、まさかこやつは・・・!」


 ギウスさんはブラッディグリズリーの死体を見るなり腰を抜かして驚いていたが、何かを悟ったのか、私に確認してきた。


「そう、これが15年以上前にキールさん達を殺した魔物、ブラッディグリズリーです。私が倒してきました。」


 こんな化け物が大森林にいたのかという驚き、この化け物が15年前の悲劇の元凶だったのか、そしてこんな魔物を倒してくるって一体どうなってんだ。

 村人達は3つの驚きで満ち溢れ、また村の中で大騒ぎしたのであった。


 ブラッディグリズリーを倒した後にその寝床を発見したこと、その寝床に弓が遺されてあったことを全て話し、遺骨を持ち帰れなかったことを謝罪した。

 しかし、村の人たちは『気にしないで、弓を取り戻してくれただけ嬉しい。むしろ感謝しなければいけないのは自分たちだ』と言い、さらに頭を下げられて私は慌てたのであった。





 その日の夜、村では2日連続の宴が催されていた。家族との再会を祝すための宴、ということらしい。

 そして私は夜空を眺めて、ある決意をしていた。


「リンさんや、どうしたのじゃ?」


 私の様子に気がついたのか、ギウスさんが話しかけてきた。


「えぇ。・・・明日、この村を出ようと思いまして」


「んんっ!?それは一体!」


 どうしてだ、と言いたいのだろう。


「私はこの村の者じゃありませんし、なにより私の目的はこの世界を旅することですから」


 私がどうしてこの世界にいるのか、どうやったら元の世界に帰れるのか。それは皆目見当もつかない。

 だからせめて、この世界のあらゆる場所を訪れ、見聞を広めたいのだ。


「そうか・・・じゃが、恐らく村の者は誰もそなたを拒みはしないぞ?だからここに残っても構わんのじゃぞ?」


「・・・すいません」


 気持ちはこの上なく嬉しいが、私はこの世界が一体なんなのかを見て回らなければいけない。

 ギウスさんの気持ちを反故にしてしまうようで私は胸が苦しくなった。


「そうか・・・ならば無理に引き止めるわけにもいかんのう」


 しかし、ギウスさんは予想よりもあっさりとした答えをした。

 私は思わず、ギウスさんを見る。


「しかしこれだけは約束じゃ。必ず生き抜くこと、決して自分だけに頼らず、辛くなったら周りを頼るのじゃ。たとえそなたが誰であろうとも、この村の者はいつでもそなたの味方じゃ。・・・いつでも帰ってきたらええ。歓迎するぞ?」


 ギウスさんが優しい声で私にそう言ってくれて、私は思わず涙が溢れてしまった。

 泣いている私をギウスさんは優しく抱きしめ、私が泣き止むまで肩を貸してくれた。

 

 こうして、宴の時間は過ぎて、次の日を迎えた。





 翌日の昼前、村の入り口には多くの村人がおり、私はその村の入り口でギウスさんにお礼を言っていた。


「ギウスさん、村の皆さん。この村では色々とお世話になりました」


「いやいや、世話になったのはこっちの方じゃ。そなたのおかげでこの村は救われた。本当にいくら感謝しても足りないほどになぁ」


 村の人たちもそうだそうだ、と賛同している。


「昨日も言ったのじゃが、辛くなったらいつでもこの村にきたらええ。村の者みんなで歓迎するからなぁ」


「ありがとうございます、ギウスさん。村の皆さんもお元気でいてください」


 そして、私は大森林に向かって歩き出す。

 私の実力はみんなが太鼓判を押してくれたから特別に許可を出してくれたのだ。


「それでは、皆さーん!いってきまーーす!!」


「いってらっしゃーい!」


「そっちこそいつまでも元気でなぁー!」


「体には気をつけるんだぞー!」


「「「「「お姉ちゃーん!ばいばーい!」」」」」


 村の子供から大人の方もみんな、私に手を振って見送ってくれた。

 私はみんなの姿が見えなくなるまで歩きながら手を振り続けた。




 大森林の中に入った私は、色々と準備をする。


「『暗視』、『索敵』共によし!いっくよー!」


 今回は大森林の横断が目的であり、モンスターの捜索ではない。

 つまり、何にも囚われずに思いっきり走り抜けることができるのだ。


 私は陸上選手のように両手を地面につけて駆け抜ける準備をする。


「いくよ!・・・【稲妻光(いなずまびかり)】!」


【稲妻光】は攻撃を一切行わず、足に碧雷を纏って高速で走り抜けるOA(オリジナルアーツ)だ。攻撃を行わない分、【碧閃】以上のスピードが出る。



どぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!!!



 両足に碧雷を纏って駆け抜けると、大森林の中で緑の閃光が迸るようなエフェクトがでる。

 ネフリティスの力と雷属性魔法、身体強化のスキルをふんだんに使用したOAは、大森林の中で音速に迫るほどのスピードを叩き出す。


 『索敵』と『暗視』を用いながら大森林の中を高速で駆け抜ける。その最中に、私はずっと疑問に思っていたことを考える。


 何故あの時、ブラックウルフは村を襲い出したのか、それがなぜか気になる。

 最初はブラッディグリズリーに追い立てられて森から出てきたのかと思っていた。

 しかし、昨日ブラッディグリズリーと戦う時、一直線に私の元まで走ってきて襲いかかってきた。まるで何かに怒りを表して私にやつあたりしてきたように感じたのだ。

 MAO内では目と目が合えば攻撃してくるような凶暴性だと聞いていた。しかしあの時は距離があって視界も暗かったにも関わらず、一直線に私の元まで走って攻撃してきた。

 一体何故なのだろうか。


 いや、大体予想はついている。だけど、その確証がない。

 もしその予想が当たっていた場合、少しめんどくさいことになるなぁ、と思いながら私は大森林を駆け抜けていく。



 しかし、その予想が的中し、なおかつさらに面倒さを増していることを、この時のリンは思ってもいなかった。



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