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あなたのお助けキャラは断固拒否します!  作者: 朝比奈 呈
◇メローネのその後◇
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82話・お嬢さまの婚約者?


 職場は快適だった。使用人の人達ともすぐに打ち解けて、特に同じ侍女見習いで、同室のセイラとは同い年と言うこともあり気があった。セイラは田舎に両親がおり、小さな兄弟達の為に仕送りをしている孝行娘だ。メローネはそこに感心していた。


 メローネも頂いたお給料の中から、幾らか今までお世話になってきた修道院へと送ってはいる。仕送りをするとぶっきらぼうではあるけれど、小まめにアンナがそのお礼として、修道院で焼いた菓子と共に返事をくれて、カーヤを初めとした他の修道女のことも教えてくれていた。それらによってメローネは、アンナと繋がっているという関係に安堵していた。修道院を出てもアンナ達のことはメローネにとって家族のように大切に思っていた。

 そんなある日のこと。メローネはお屋敷を訪ねてきた若者に声をかけられた。


「きみ見ない顔だね? 新人さん?」

「あ。はい」


 彼は茶髪で琥珀色の瞳をしていた。顔立ちは綺麗で、愛想のよい笑顔を浮かべている。着ているものや、柔らかな物言いや、雰囲気などからどこかの貴公子に思われた。何者かと思っていると、廊下の向こう側からこの屋敷の令嬢ニナがやってきた。


「フランキーさま」

「やあ。ニナ嬢」


 ニナは16歳になるこの屋敷の一人娘。使用人達には、ゆくゆく婿を取り領主の後を継ぐものと思われていた。彼の名はフランキーと言うらしい。にこやかに笑みを交わし合う二人から親しい間柄のように思われた。

 ニナは侍女見習いのメローネを馬鹿にしていた。修道院から来たと言うことで、過去に何か罪を犯してやって来たような人物だから、どう扱っても良いだろうという傲慢さが見えた。それだけではなく、自分のお気に入りのマックスと親しいのも彼女から不快を買ったようで、メローネはマックスと距離を置こうとしたものの、マックスは気にしなくて良いよと、今までと変わらぬ態度を取るので、それが一層、ニナの機嫌を損ねているらしかった。


 慌てて頭を下げてやり過ごそうとしていたら、相手はそれを見逃さなかった。


「あら、あなた。メローネじゃない。なぜ、ここにいるの? 相変わらず男性を誑かすのがお上手ね」

「お嬢さま。そんな、わたしはそんなつもりじゃ……」

「フランキーさま。このメローネには気をつけてね。手が早いんだから。全く、もう……。さあ、行きましょう。お父さまがお待ちです」


 ニナはメローネの発言など聞き入れる様子も無く、こちらに目を向けるフランキーの腕を引こうとした。


「ニナ嬢。そのように言うものではないよ。きみ、急いでいたのだろう? 僕が呼び止めて悪かったね。さあ、仕事に戻って良いよ」

「ありがとうございます。では失礼致します」


 気まずいメローネを察してくれたのか、フランキーはそう声をかけて促してくれたので、メローネは有り難くその場を辞すことにした。


 その晩のこと。セイラが興奮したように言ってきた。


「ねぇ、聞いた? メローネ。あの我が儘お嬢さまの婚約者が決まるみたいよ。ワガベリー伯爵家のご子息フランキーさまですって」

「ワガベリー伯爵? 確かここら辺一帯を治めている伯爵家よね? それにフランキーさまは、伯爵家のご長男ではなかった?」


 ワガベリー伯爵家は、メローネがいた修道院にも多額の寄付を治めてくれている御方だ。この屋敷に住むご領主さまは、伯爵家から委託されてこの地を治めているとメローネはマックスから聞いたことがあった。

 一応、貴族の令嬢でもあったメローネだ。貴族とは政略結婚ありきで、それをぶち壊してしまった彼女だから分かることだが、伯爵家のご子息が一領主の娘と何の旨みもなく婚約を結ぶとは思えなかった。ワガベリー伯爵家は、大富豪であるミラジェン子爵家とまでは行かなくとも、領地は栄えているし裕福だ。次期伯爵のお相手なんて同じ伯爵家のご令嬢、もしくはそれ以上の侯爵家のご令嬢だって狙えるだろう。


「う~ん。その辺は分からないけど、ニナさまは一人娘だし、婿入りされるんじゃないの? グレタがお茶を入れに行ったら花嫁修業の話が出ていたそうよ」


 グレタとはここの屋敷の侍女で、セイラやメローネの先輩にあたる。彼女の入れるお茶が美味しいと評判で、お客さまがいらっしゃる時には、彼女が呼び出されることが多かった。


「ニナさまが婚約ねぇ……」


 昼間、その二人と出くわした時の、ニナの嬉しそうな態度とは別に、彼女が腕に触れてきたときのフランキーが、さりげなく距離を取ったのを思い出したメローネは、それから先は口にすることなく、セイラの話に耳を傾けた。

 それからフランキーは、ちょくちょく屋敷を訪れた。ニナ嬢は好意を隠しもしないし、ご領主さまから二人について話が出ることはなかったが、使用人達はゆくゆくフランキーと、ニナ嬢は婚約されるものと思っていた。なぜならフランキーがニナ嬢に会いに来て、再三、花嫁修業をもちかけるからだ。その際には決まってご領主さまも同席したが、なかなかニナ嬢が首を縦に振ることはなく、その場を目撃した使用人達は、ニナお嬢さまはフランキー伯爵家に嫁ぐにあたって、しなくてはいけない次期伯爵夫人としての教養や、マナーについていけるか不安で、なかなか了承出来ないのだろうと噂しあった。


 それでも本人はフランキーを気に入っているようで、彼に会う前日からそわそわし、会ったあとは浮かれているので、そろそろ首を縦に振るのは時間の問題だろうと思われていた。


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