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あなたのお助けキャラは断固拒否します!  作者: 朝比奈 呈
◇メローネのその後◇
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80話・お世話になりました


「シスターアンナ。今まで色々とお世話になりました。入所してからこれまでのご指導に感謝しております。ありがとうございました」

「本当にあんたには手がかかったわぁ。私が教育したなかでここまで手がかかった子はいないわ」

「あの頃は尖っていましたしね」




 青空の下、メローネは深々と頭を下げた。見送りに出てくれた教育係の先輩シスターアンナは、辛口で言ったが、悪気がないのは10年の付き合いでもう知っている。アンナは口で言う割には、温かな笑みを浮かべてくれた。それにメロ-ネもくすっと笑って応えていると、副修道長に就任したばかりのカーヤも門前に出て来てくれた。


「もう行ってしまうのね。メローネ」

「はい。副修道院長さま」

「今はその役職は止めて。ここではカーヤよ」

「はい。カーヤさん。カーヤさんにも大変お世話になりました」


 感慨深く言うカーヤに、メローネはこれまでの10年を思った。16歳で初めて足を踏み入れた修道院。建物は古めかしくて、シスターと呼ばれる修道女達を目にした時、目眩がした。ここで自分も彼女らに混じって生活することになる。目にしたシスター達の年齢は様々だったけど、自分の母親くらい、もしくはそれ以上の年齢の人達が多かった。その中でメローネが一番、若いのは見て取れた。


その彼女に追い打ちをかけるように、ここの取締役でもある修道院長の「まだ若いのに……」との呟きが何より応えた。彼女の一生がここで終わるような言い方に聞こえてしまった。その為、メローネはふて腐れた。


一生をここで終えるなら、別に今からすぐここでの生活に馴染もうとしなくてもいいのではと、反抗心が芽生えた。自分は貴族令嬢としての旨みある生活を知ってしまった。今更、貧乏くさい生活を今すぐ始めなくても、いつかはしなくてはならないし、それが今ではないだろうと投げだそうとした。

ところがだ。同室の先輩シスターアンナは彼女の斜め上を行く発想でそれを叩き潰してくれた。


 ここで生きて行くなら決められたことには従うものとメローネに雑巾や箒を投げてきたし、食事が欲しいなら労働しろと言い、修道院の自給自足の畑に問答無用で連れて行かれた。逃げ出そうとした。でも叶わなかった。隣でアンナが目を光らせ、口調は荒くとも挑戦的に指導してくるから、それに対抗心を燃やして反発していたら終えてしまっていた。そんなメローネ達を見て微笑んでいたのがカーヤだ。


 ここに来た初日には地獄のように思えたけど、いざ出ていくことになってこんなにも寂しく思えるなんて……。

 メローネは自分の成長と心の変化を感じ取っていた。


「頑張りなさいよ。ま、これからも大変なこととかあると思うけど……」

「何かあったら帰って来てもいいのよ」

「カーヤ。何、言い出すの?」


 アンナが言い淀むと、その後を引き取るようにカーヤが続けた。それに慌てたのはアンナだ。


「あなただってそう思っているくせに。代わりに言ってあげたのよ」

「カーヤ……!」

「大丈夫。私達はあなたのこといつでも見守っているわ。何かあったら相談にのるから顔見せてね」

「はい。ありがとうございます」


 素直じゃないんだから。ホホホと笑うカーヤを恨めしそうにアンナが睨む。それを前にしてメローネは笑った。この二人がいてくれたから、メローネはこうしてここを旅立っていけるくらいになった。



「お世話になりました。ありがとうございました」


 今の時間は他のシスター達は畑で収穫の作業を行っている。深々と他の仲間達にも感謝の気持ちを伝えたくて頭を下げた後、見送る二人を背にしてメローネは歩き出した。手には支給品であるスーツケースが一つ。これからは修道院長の紹介で、ご領主さまの屋敷で侍女見習いを始めることが決まっていた。

 乗り合い馬車の停車場で、ご領主さまの館前まで行く馬車を待っていると、背後から若い男性の声がした。


「メローネ!」


 ここはメローネが以前暮らしていた、プレシオザ国の隣国であるトロイル国の片隅にある領地。ここに知り合いなどいない。プレシオザ国にいたときも、王都に学園に通っていた時の友人達がいたが、皆、メローネが学園を去ることになると、掌を返したように親しかった者から遠ざかっていった。


 それでもただ一人だけ、メローネのことを気にしてくれた男子がいて度々、修道院に移ってからも手紙をくれていたりしたが、その彼も騎士の修練に入るとか、卒業試験がどうだとかで(メローネは興味がなかったのでよく手紙を読んでなかった)連絡が途絶えがちになっていき、卒業後は一ヶ月に一度だった手紙が三ヶ月に一度、三ヶ月に一度が半年に一度と減っていき、その内、何年かに一度だけ手紙が来るようになっていた。


だから名前を呼ばれて振り返ると驚いた。


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