71話・きみには驚かされたよ
数日後。マリーザのもとをシルヴィオが訪ねてきた。貴族の子息姿の彼に新鮮なものを感じ、マリーザはじっと見つめてしまった。
「どこかおかしい?」
「いえ、その姿も素敵だなと思って」
「そう?」
「いつもあなたとは学園でしか会っていなかったから、ジオ姿でいるのが当然のように思っていて、そういった姿が珍しいというか、見慣れないと言うか、とにかく別人みたいで慣れないのよ」
シルヴィオに見返されて、恥ずかしく思ったマリーザは早口に言い訳をした。
「じゃあ、これからは慣れてもらわないとね」
「……?」
「これからはこの姿できみの元を訪れることがちょくちょく増えると思うから」
「どうして? 我が家はあなたに何か調べられるようなことをしていたかしら?」
「きみは割と鈍感なんだね」
「ますます分からないわ」
首を傾げるマリーザを見て、シルヴィオは笑った。
「まあ、いいや。そのことは後で。今日はきみにお礼を言いに来たんだ」
「お礼?」
「サンドリーノ殿下から聞いた。私がプラテーン公爵の手の者に嵌められて連れ去られた後、私には罪人殺害の容疑がかけられていたと。それをきみが庇ってくれて身の潔白を訴え、無実を証明するために、証人を陛下の前に突き出したと」
「ああ、あれは……、あなたが一方的に貶められそうになっていて許せなかったから。それに私、一人の力じゃ無理だったわ。リーノ達に手伝ってもらったの。あなたは頭の固い小父さん連中には煙たがられていたみたいだけど、リーノや若い人達には随分と支持されているのね? 皆が協力を申し出てくれて、すぐにこの件を裏で手を回していたのはビスタ卿だと分かったのよ」
「そうか。皆にも色々と迷惑をかけてしまったな」
「あなたがクラレンスのトップだったなんて……、驚いたけどね」
マリーザの言葉に、シルヴィオは苦笑した。
「きみにも驚かされたよ。まさかロキオン国王と、きみの父親であるミラジェン子爵が双子だったなんて知らなかった」
「あなたは間諜をしていたから、すでに私の素性について知っていたかと思っていたわ」
「王妃さまがきみを第三王子の婚約者にしたがっていた理由は知っていたけど、そこまでは知らなかった。王妃さまがきみたち母娘を特別に思い、何としても縁を結びたがっているように感じられたから探っていたけど、きみの母上さまについてしか分からなかった」
「お母さまのこと? 元公爵令嬢だってことかしら?」
「それにも驚いたよ。きみの母上さまは、陛下の筆頭婚約者候補だった時があるんだね?」
シルヴィオが驚いてみせ、マリーザは笑った。
「うふふ。箝口令が敷かれていたんじゃないの? 何十年か前にピエラ学園であった婚約破棄事件も知っている?」
「ああ。学園で当時、王太子殿下に婚約破棄を突きつけられたらしいね? それできみの母上さまは周囲から不評を買い、公爵から縁を切られて王都から追放された」
「そのおかげで、お母さまはお父さまと一緒になれたんだから、婚約破棄も本人にとってはそう悪いことでもなかったみたいよ。陛下はその後、熱を上げていた平民出身の彼女に手ひどく振られ傷心していた時に、婚約破棄した公爵令嬢と友人だった侯爵令嬢に慰められて親しくなり婚姻されたのですって」
「それで王妃さまは、躍起となってきみと縁を繋ぎたがっていたんだ? 陛下もそれを止めなかったのは、きみの母上さまに贖罪の気持ちがあったから?」
「私としては大迷惑だったわ。私も両親のように結婚するならお互い、想い合った人とと思っていたから。勿論、お母さまは大反対で断ってくれていたけどね」




