70話・容赦のない一言
ウルリックには返す言葉もなかった。信じていた現実が砂のように崩れて行くように感じ、その場に膝を突いた。
それを見て、冷めた口調でミラジェン子爵が言った。
「ウルリック。おまえ、命拾いをしたな。もしも、私がここに立っていたなら、おまえの首はその体に繋がっていなかっただろうよ」
「……!」
元王子で王位が手の届くところにあった男は容赦がなかった。おまえのような王の血を引かない上に王位を望み、自分の欲求を通すためだけに、他人の命まで狙っていた者には情けなど必要ないと言い切った。
自分が王ならば、問題の多いプラテーン公爵を生かしてはおかなかったのにと言う。猛禽のような鋭い目線を向けられて、ウルリックは震え上がった。
ロキオンの王はため息を漏らした。
「おまえが臣下として、忠実であれば問題にならなかったものを……」
「お許し下さい。陛下。私は何も知らなかったのです。自分が王の血を引いてないなど。もし、知っていたら……」
「もう遅い。プラテーン公爵。そなたはお終いだ。公爵を捕らえよ」
「はっ」
壁際に控えていた近衛兵達が、前に進み出てプラテーン公爵を拘束した。
「牢に連れて行け」
ウルリックは抵抗をしなかった。落胆した様子で両脇を二人の兵に持ち上げられ、引きずられるようにして退出して行った。
「アントン修道院長。ご足労頂いて申し訳なかった」
ロキオン王が玉座に腰を降ろした。ミラジェン子爵父娘は、壇上から降りてアントン達と同じフロアに立ち、壁際に控えた。
「陛下、謝罪はいりません。私達はリギシア国から依頼を受け、この国のプラテーン公爵の素行調査を行っていただけですから」
「クラレンス卿も、我が愚弟のせいで危険に見舞われて迷惑をかけた」
「私のことはお気になさらないで下さい。このような目に遭ったのは私が未熟なせいです。保護頂いたアントン修道院長には、この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました」
アントン修道院長はあくまでも仕事の上で、王から頭を下げてもらうことではないと言った。シルヴィオは自分の未熟さを恥じた。
「それでは余の気が済まない。お二方に何か余で手助け出来ることはないだろうか?」
ロキオン国王からの言葉に、アントン修道院長と、シルヴィオは顔を見合わせた。




