68話・ロキオン王は双子?
「プラテーン公爵。あなたは自国のみならず、他国まで陥れようとしたのですよ。その罪深さに気がついておられますか?」
「こんなことはどこの国でだってあることだろう? 皆が善人なわけじゃない。表沙汰にならないだけでざらにある。俺だけが悪いわけじゃない」
アントン修道院長の言葉に、ウルリックは他の国の王侯らや貴族皆がやっていることだと反論した。自分だけが悪くとられるのはおかしいと言い張った。
「兄上だって……、いや、おまえも好き放題やってきたよな? ロキオン国王?」
「ウルリックッ」
ウルリックが意味ありげに、ロキオン国王を見た。国王は声を荒げた。
「俺は納得がいかない。なんで俺が王位に就けないんだ? 側妃の息子だから? そういうおまえはどうなんだ? 単なる王太子の影武者だったくせに。どこの馬の骨とも知れないおまえがどうして王になれるんだ? なぜ王子の俺が王になれない?」
なあ、教えてくれよ。と、ウルリックは恨めしそうに、玉座のロキオン国王をねめつけた。二人は似てない兄弟だった。ロキオン国王は黒髪に焦げ茶色の瞳。ウルリックは明るい茶色の髪に、焦げ茶色の瞳。黒髪や茶髪はロキオン国特有のもので、この国の者は大概、黒髪か茶髪をしていた。
しかし、シルヴィオはロキオン国王に初めて会った気がしなかった。国王はシルヴィオが知る誰かに似ている気がしてならなかったのだ。
「それについては私の方から説明しよう」
そう言ってロキオン国王に似た声の持ち主が、その場に姿を現した。
「おまえは──!?」
姿を現した相手を見て、ウルリックは驚きを隠せなかった。ロキオン国王と瓜二つの容姿をした人物が現れた。男は貴族の当主の格好をしながらも威厳があった。その男は一人ではなかった。同行者がいた。彼と似た容姿をした少女。その相手を見てシルヴィオは声をあげた。
「マリー?」
少女はシルヴィオと目が合い、微笑む。ロキオン国王は玉座から降りて、彼を自分の隣へと導いた。アントンやシルヴィオは膝を突いた。
「みな楽にして欲しい。今のわたしはプレシオザ国のミラジェン子爵。ロキオン国の王太子であったのは、すでに過去のことだ」
「あんたが本物か?」
ミラジェン子爵登場に、大体予想が付いていたのかアントン修道院長や、シルヴィオが驚くことはなかったが、ウルリックはあざ笑うように見た。それを見てミラジェン子爵は眉を顰めた。
「どうやらお互い、認識の違いがあるようだな。ここにいるロキオン王は偽者でもない。プラテーン公爵の言葉を借りるのなら本物だ」
「……?」
その言葉にはウルリックだけではなく、ロキオン王やマリーザを除く皆が、怪訝な表情を浮かべた。
「おまえは周りが良く見えてなかったようだな。私達は双子で生まれた。しかし、このロキオン国では双子は忌む存在。公に出来なかった。その為、私達は二人で一人と見做されていたのだよ」
「二人で一人とは?」
「父王は母である王妃は王子を産んだことを公にしたが、それが双子だったことを明らかにしなかったため、皆は王子が一人だけ生まれたものと思っていた」
「そうなるとお二方は、第一王子を二人で名乗っておられた?」
「毎日交代で入れ替わっていた。どちらかが王子として素顔を晒し、片方は鬘を被って見目を変え、周囲には王子の影武者だと誤魔化してきた。その時のことを、この愚弟は言っているのだろう」
アントン修道院長の問いに、ミラジェン子爵は頷いた。




