67話・ウルリックの本音
「そうでしたか。そのパルミラさんはどういった女性ですか?」
「あいつは前世の記憶があるとか言っている、夢見がちな女で、自分の娘を王子と結婚させたがっていた」
「その彼女の手伝いをしましたか?」
「ああ。勿論だ。あいつだけでは叶えるのには無理そうなことが沢山あったからな。娘を男爵令嬢にしないと、王子と出会うイベントが起きないと困ると言っていたから、冴えない男爵を引っかけて紹介してやったり、男爵といい仲になれるように惚れ薬を都合してやった」
「そのパルミラさんには、他に何を頼まれましたか?」
アントンは淡々と問いかける。ウルリックは悪びれる様子もなく応えた。
「金を都合してやったし、あいつの金蔓になりそうな相手を紹介してもやった。それと娘の攻略相手に宰相の息子がいるが、なかなか近づけないで困ると言うからアドバイスしてやった」
「どのようなアドバイスでしょうか?」
「低位貴族が高位貴族に近づくのは難しい。だが、きっかけさえあれば何とかなると言ったら、あいつは母親の形見として、セレビリダーデ侯爵家当主から恩賞でもらったらしい指輪を見せてきた。だからその指輪に細工して近づけと言ったのさ。そのおかげで上手くいっただろう? セレビリダーデ宰相としては面白くない展開となっただろうが、あいつは前セレビリダーデ侯爵当主の娘として一躍、時の人となった」
ウルリックがほくそ笑み、シルヴィオは黙っていられなくなった。
「あんた達が余計なことをしたせいで、その宰相子息とその許婚の婚約は駄目になったんだ。その事について何か思うことはないのか?」
シルヴィオはマリーザの婚約が解消となったおり、口では清々したと言いながらも、自分がもっと歩み寄る努力をしたなら彼との関係は続いていただろうかと、寂しそうに言っていた彼女を覚えている。
貴族令嬢の婚約は政略に基づくもの。そこに愛はあるかと言えば人それぞれだと思うが、多少なりと婚約関係にあれば情ぐらい湧くと思う。それに恣意的に横入りをした彼らを許せなく思った。
「別に。横槍で簡単に壊れるぐらいの仲なら、相手の女にそれだけの魅力がなかったんだろうよ。相手に魅力があれば、言い寄る女が出来てもよそ見しないだろうよ」
「くそ……っ」
ウルリックはへらへらと笑い、シルヴィオを馬鹿にした目で見る。シルヴィオは悔しさに拳を握りしめた。
「他に俺に聞くことはないのか? 気分がいいから何でも答えるぜ」
薬の影響なのか、気分が高揚してきたらしいウルリックは口が軽くなった。
「ではプラテーン公爵。あなたはどうしてリギシア国の王女に求婚をしたのですか?」
「リギシア国の王になるためだ」
「リギシア国には王太子がいる。あなたが仮に王女と婚姻したとしても王にはなれないですよ」
「王太子は体が弱いと聞いていた。その王子を亡き者にしてしまえば、王位継承者は王女となる。しかし、あの国では王女は王位には就けない。その配偶者が王冠を戴くことになる」
「なるほど。あなたはリギシア国の王女と結婚した後で、王太子を亡き者にして、王になろうとしたのですね?」
「その通りだ」
これでプラテーン公爵の自分が王になりたいが為に、他人を殺してまでもその座に就こうとした欲望が露わとなった。彼の本音を聞いて、実の兄であるロキオン国王は顔を歪めた。




