61話・目が離せない
メローネが家族という名の、パルミラにとって枷のように感じ、寄生虫にしか思えなかった。彼はパルミラと出会ってすぐに、メローネを害虫として早くも認識していた。
綺麗な花には害虫が付きやすい。それなら排除すればいいこと。ウルリックはパルミラを助け出しても、メローネはそのままにしておいた。彼女が願うように助ける気なんてさらさらない。
自分のことを酒場の主人として慕うパルミラは、ウルリックを悪く言うこともないし、馬鹿正直に信じている。しかし、あの娘は「何だかおかしい」と、言い出して、母親を唆し、ウルリックの周辺を調べようとしていた。そのことも彼にとっては邪魔でしかなかった。プレシオザ国にはあくまでも一商人として入り込んでいたから、もしも、ロキオン国の王弟である事が知られれば、好き勝手にやってきたことで、裁かれなければならない日が来る。
それが怖かった。今までは自堕落的に生きてきたから、自分のやったことで兄王が心を痛めようが、プレシオザ国との間に亀裂が入ろうが、構わないと考えていた。
でも今はこの放っておけない女がいる。
「あたし、リックが助けに来てくれて嬉しかった……。あの時、もう駄目かと思ったもの」
牢屋に入れられて王の判決を待ち、処分が下されることになっていたパルミラ。その彼女を牢屋から連れ出したのはウルリックの配下だった。
その頃、彼女の元を訪れていたクラレンスの長の目の前で、パルミラを数人の男達に襲われているように見せ、それを止めようとしたクラレンスの長の気を失わせた。その後に彼を馬車に乗せ、牢屋からパルミラを連れだし、牢屋には彼女によく似た他の女の遺体を転がしてきた。
牢屋という何者からも害されるはずのない状況下で、起こった殺人事件のように、プレシオザ国では考えているらしい。残った配下の者から知らせが来ていた。
「リックはあたしの命の恩人ね」
「おまえを助ける為なら例え火の中、水の中飛び込んでやるよ」
「ありがとう。リック。こんな薄汚れたあたしの為に……」
自分の許した愛称を呼び、あなただけだと縋る女をウルリックは抱き寄せていた。
「あたし、あんたに何かお礼したい」
「じゃあ、ずっと俺の側にいてくれ」
「そんなことでいいの?」
「おまえにとっては、あまりいい待遇ではないかもしれないぞ。おまえを俺の正式な妻にしてやることも出来ないし」
「別に構わないわ。あたしはもう死んでいたかも知れない女だもの。あんたならあたしを好きにしてくれて構わない」
パルミラはウルリックにとって、都合のいい女で構わないと言った。そんなところも馬鹿正直過ぎて、危なっかしくて目が離せない。ハラハラさせられる。




