53話・シルヴィオに殺人容疑?
「そろそろ来ると思っていたよ。僕に聞きたいことがあるんだろう? ミラジェン子爵令嬢」
マリーザが向かった生徒会室には、人払いしたようにサンドリーノ殿下しかいなかった。
「では私の伺いたいことにも見当がついているのでは?」
「シルヴィオのことだろう?」
「彼は殿下の命で動いていたのではないのですか?」
「奴のことをどこまで知っている?」
マリーザの指摘に、サンドリーノ殿下は片眉を上げた。殿下は慎重だった。マリーザは自分の推測が当たっていたことを察した。
親友ジオの語っていた、メローネの恋愛遊戯の攻略相は5人。
サンドリーノ殿下。
宰相の息子のニコラス。
近衛隊長の息子ルアン。
宝石商カッソ。
そして間者のシル。
その中の4人に彼女は出くわしていたが、一人だけまだ出会ってない者がいた。正式には出会っていたけど、間者のシルとして、メローネに認識されていなかったと言うべきか。そのシルが実はシルヴィオではないのかと、マリーザは疑っていた。
「私は何も知りません。彼についてジオの兄であるという以外に何も知りませんから」
殿下は短くため息を漏らした。
「彼はジオの身代わりをしていて私と出会いました。彼もまたリーノさまと同じく、間諜ではないのですか?」
マリーザは、殿下の身代わりを演じていたリーノと、言葉を交わしていたシルヴィオを覚えていた。その時のリーノはシルヴィオに対し、報告をして意見を仰ぐような姿勢を見せていたような気がした。
「先ほどジオから彼が屋敷に帰ってきていないと聞きました。彼は何かに巻き込まれているのではないのですか?」
「勘が良いのは考え物だよ。ミラジェン子爵令嬢」
「お願いです。教えて下さい、殿下。何かに彼は巻き込まれているのではないですか?」
「それを聞いてどうなる? きみには関係ないことだよ」
「彼とは半年以上、一緒にこの学園で学んできました。私にとって彼は大切な友人の一人です。何かに巻き込まれて大変な思いをしているのならば、助けたいと思うのはいけないことでしょうか?」
「友情か。それなりの覚悟があると言うことかい?」
「はい」
シルヴィオの身に何か起きているのならば、手助けがしたいと申し出たマリーザを前にして、殿下は思案する様子を見せた。
「殿下」
「……これは公表されていないことだが、彼には殺人の容疑がかけられている」
「……! 彼がどうして?」
先を促すマリーザに、渋々殿下は語った。その発言にマリーザは驚きを隠せなかった。
「彼と面会していた罪人が殺され、彼は姿をくらました」
「殿下はそれを信じたのですか?」
「いや、嵌められたのではないかと思っている」
殿下は、彼を疑っているわけではないですよね? と、マリーザはねめつけた。今までシルヴィオをいいように扱ってきたのだから、彼の無実くらい証明して下さいよと言う無言の圧力をかけたのだ。
トカゲの尻尾切りみたいに切り捨てられたのなら、彼が不憫過ぎる。




