51話・ヴィオが行方不明?
「ヴィオが行方不明?!」
「マリー、声が大きいわ」
「あ。ごめんなさい」
学園での休憩時間。マリーザは親友のジオヴァナから兄のシルヴィオがいなくなったと聞かされて驚いた。
「ヴィオがいなくなったのって、いつからなの?」
「1週間前からよ。屋敷に帰って来ないの」
「ヴィオの行き先に心当たりは?」
「全然ないわ。今まで所用で屋敷を空けることはあっても必ず行き先は告げて行っていたし、黙っていなくなることはなかったから、お父さまや、お母さまも心配しているわ」
ようやく学園に平穏な日々が訪れたというのに、マリーザは胸騒ぎがしてならなかった。あのお騒がせメローネは学園を退学となり、これからは心脅かされることもなく、ジオやヴィオと楽しく学園生活を送れるとマリーザが思っていた矢先の事だった。
「まさかメローネが関係していたりしないわよね? ジオ」
「彼女は、戒律厳しい女子修道院に入れられたと聞くし、何も関係ないと思うわ」
不安からメローネに何かされたのでは無いかと疑ってしまうマリーザに、ジオヴァナは、その事とは関係ないと思うわと言ってきた。
あれからメローネは、母親がこの国では禁止されている薬を用いていたことと、その薬で男爵を洗脳し、自分の思うように操り夫人の座に納まろうとしたこと、王妃殿下の腹違いの妹と偽り、人を騙してお金を巻き上げていたことなどから罪に問われる事になり、その娘である彼女は、母親が危険思想の持ち主で、その思想を押し付けられて育った被害者だと言うことで、陛下の温情もあり修道院に入り更生の道を歩むことになった。
本人は不本意だったようだが、母親に薬を盛られていたサロモネ男爵が正気に戻り、メローネ母娘との縁を切ったので行くあてもなく従うしかなくなった。
そうなるように仕向けたのはマリーザだ。マリーザとしては自分の行動に後悔はない。マリーザは自分の家庭教師をしてくれていた、ロッサーナに恩を感じていた。ロッサーナは優しく、時に厳しく指導してくれた。その人柄に好感を抱いていたマリーザは、ロッサーナに思い人がいることを知っていた。
その相手が誰かは分からなかったが、ロッサーナがたまに語っていた昔話の中に、甘酸っぱい思い出のような話があったのだ。ロッサーナが思うぐらいの相手なのだから人格者なのだろうと思っていたが、その相手がまさかメローネの義父とは思わなかった。
メローネの母親に靡くくらいの男としか思えず、良い印象を持てなかったが、サロモネ男爵が義娘の為にマリーザに、仲良くしてやって欲しいと言いに来たときに、彼女の側にいたロッサーナが彼の様子がおかしいと言い出した。
──あんな人ではなかった。
そう言うロッサーナに、年月が経てば性格も変わってくるのでは? と、言ったマリーザに対し、そうではないと彼女は言った。彼らしくない言動だったと。
ロッサーナは、ピエラ学園に通っていた当時の彼を良く知っているが、あんなに誰かに執着を見せたことが無い。盲目的に誰かを思い詰めるような人では無かったと。それに目の動きがおかしかった気がすると言う。




