49話(閑話)・子供は大人に遠慮なんかしちゃいかんよ
サンタクロースの正体は──??
「きみは分かっていたのか?」
「ここはガーラント家所有の森だし、滅多なことでは誰も近づかないからね」
「そうか。誤魔化せなかったか。実は、私は自国のプレシオザ国で間者に襲われ、攫われそうになったんだ」
「……!」
「その経緯は話せないが、おそらくロキオン国まで連れて行かれそうになっていたんだと思う。その途中で馬車の中から逃げ出したらここにたどり着いた。でも、向こうも私の不在に気がついたら引き返してくると思う。だから私はこの辺でさよならさせてもらうよ」
シルヴィオは早朝にここから出て行く気でいた。数時間共にいただけで、ノアやクラーラが良い子なのは良く分かったし、親切なガーラント夫妻に自分のことで迷惑をかけたくなかった。
「えっ? もう行ってしまうの? 明日の朝で良くない? お父さまが必ず連絡を取ってくれるよ」
「いや、それは申し訳ない」
「気にしないで。僕もお父さまも迷惑をかけられたなんて思ってもないよ。ララなんて天使さまに会えたって喜んでいたし……」
ここから出て行こうとするシルヴィオを、ノアが止めようとする。そこへ老人の声がかけられた。
「それではわしが送ってやろう」
「あっ、お……じゃなかった、サンタさん」
戸口にサンタクロースが立っていた。ノアは何か言いかけて言い直していた。
「あなたは……?」
「わし? わしはサンタクロースじゃよ」
うっほっほほほ。と、サンタクロースが笑う。サンタクロースは大柄だった。先ほど会ったガーラント当主よりも体躯が良いような気がする。そのサンタクロースに向かって、ノアが慌てて「ララが目を覚ましちゃうよ」と、小声で囁く。サンタクロースは悪い、悪いと頭を掻いた。
「きみはシルヴィオ・クラレンス君だね? わしの馬車でプレシオザ国まで送ってあげよう」
「でも、ご迷惑をおかけするわけには……」
「気にしない、気にしない。子供は大人に遠慮なんかしちゃいかんよ」
さあ。と、サンタクロースに背中を押されて、シルヴィオは外に連れ出された。そこには天井がない馬車が停まっていて、その馬車に繋がれている数十頭の動物にシルヴィオは唖然とした。
「トナカイ?」
「サンタクロースのパートナーと言えば、トナカイに決まっているだろう?」
「さあ、乗った。乗った」
「は、はい……」
強引に馬車の中に押し込まれる。そのシルヴィオにノアが笑顔で手を振ってきた。
「シルヴィオさん、元気でね」
「あ、うん」
ノアに手を振り返していると、サンタクロースは御者台に乗り、トナカイの背に鞭を振るった。
「さあ、出発──!」




