48話(閑話)・クラーラの実験?
ガーラント夫人は、隣国に住む少年がどうしてここに? と、言いたげな顔をしていた。シルヴィオはノア達に使った言い訳をしようとしたら、クラーラに遮られた。
「ララ。駄目だよ。また話を作って。シルヴィオさんが困っているよ。シルヴィオさんはお友達と旅行に来て、そのお友達と喧嘩別れして、ここに置いて行かれてしまったらしいんだ」
「意地悪なお友達ね。今にも雪が降ってきそうな天気なのに、ここに置いて行くなんて非道だわ。ノア達に出会ったから良かったものの、誰にも出会わなかったなら、凍えて大変な思いをしていたところよ」
「本当にな。きみは運が良かったぞ。普段、我々もこの森から足が遠のいていたんだが、娘がどうしても今夜はツリーハウスで一晩、過ごすと言ってきかなくてね」
ガーラント夫人は、その話を聞いて本気で怒っていた。 ガーラント当主も夫人の言葉に同意する。それはシルヴィオの作り話なのだけど、本当のことを言えないシルヴィオは、この夫婦に嘘をついているのが心苦しく感じられた。
夫婦の様子を見ていて、始めから正直に事情を話しても良かったかもしれないと思っていると、大鍋の中のビーフシチューがどんどん器に盛られていく。器をもらった皆は、その辺の切り株や、ツリーハウスの階段部分に腰掛けて食事していた。
シルヴィオはクラーラやノアに手招きされて、ツリーハウスのベランダで、ガーラント夫妻と共に頂くことにした。星空の下、頂くビーフシチューは美味しかったが、シルヴィオはフィオン達に嘘をついているだけに、心から味わうことが出来なかった。
その晩。食事をしていた大人達は屋敷へと帰っていき、その場にはノアとクラーラとシルヴィオだけが残された。
「みんな帰ってしまったけどいいの?」
「いいのよ。天使さま。今夜はね、ここにサンタクロースさんが来るかどうか実験するの」
「実験?」
子供だけこの場に残して去って行った、ガーラント家の人々に不用心では無いかと思ったシルヴィオだったが、クラーラの言葉に、今夜はクリスマスだったと気がついた。でも、そのサンタクロースが来るかどうかの実験とは、どういうことなのだろう?
「ララは毎年、サンタクロースさんからプレゼントをもらえるのは、子供部屋にいるからじゃないかって思っているんだ。それでもしも、自分がいつも寝ている場所ではなくて他の場所で寝ていたらどうなるか調べたいと言い出してね」
「でも、サンタクロースさんに会う前に、天使さまに出会うなんて思ってもみなかった……ふわあぁ」
お腹が満たされて眠くなってきたのか、クラーラは大きな欠伸を漏らした。
「ララ、寝る?」
「……うん。眠い」
クラーラは用意されていたベッドに潜り込んだ。床には寝袋が二つ。そこにはノアとシルヴィオが寝ることになっていた。
クラーラがベッドに入ったので、ノアとそれぞれ寝袋の中に体を滑り込ませた。早くも寝台からはスースーと、寝息が聞こえてくる。
「本当はどうなの? シルヴィオさん」
「ノアくん?」
「旅行でリギシアに来て、喧嘩した友人にこの場に置いて行かれた、だなんて嘘でしょう?」
ノアはシルヴィオの嘘に気がついていたようだった。シルヴィオを天使だと信じ込んだ妹のため、事を荒立てたくなかったようだ。




