47話(閑話)・ガーラント家当主
「そうか。それはきみみたいな少年が一人、誰も頼れる者もいない所に取り残されて心細かっただろうね。シルヴィオ君。私はガーラント家当主のフィオンだよ。早急に家族に連絡を取ってあげよう」
「ありがとうございます」
「おまえ達、今夜は屋敷に戻らないか? お客さまもいることだし」
「ここでいいの。とびきりのお持てなしをするから。ね、お兄さま」
「うん……。でも、シルヴィオさんはここよりお屋敷の方にいてもらった方が良いかも」
「そんなことないよね? 天使さま」
父親のフィオンは顔を顰めた。シルヴィオが名乗りをあげたとしても素性の知れない相手だ。自国と連絡がつくまでは自分の目の届くところにシルヴィオを置いておきたいのかも知れなかった。でもそれを、シルヴィオを気に入ったらしいクラーラが止める。兄であるノアは妹のクラーラに甘いのだろう。父親と妹に挟まれて困惑しているようだった。
父子の目がこちらを向いて、シルヴィオ自身も戸惑った。シルヴィオに決定権があるらしい。
「あの、僕はどちらでも……。でも、ここも素敵ですよね? ツリーハウスなんて初めて見ました。この国では皆がツリーハウスを持っているのですか?」
「この国では、私と息子ぐらいなものだよ」
ツリーハウスが褒められた事が嬉しかったのか、フィオンは破顔した。シルヴィオもフィオン父子と出会って気が緩んだようだ。そのせいかその場に相応しくない音が自分のお腹から上がったことに、冷や汗をかく羽目になった。ぐぐぐ──っと、鳴った音に、即反応したのはクラーラで「わたし、お腹が空いた──」と、シルヴィオを庇うように声を上げた。
「僕もお腹空いちゃったな」
「いま、外でシチューを温めさせている。もう少しで用意が出来る頃合いだろうな」
と、言って、フィオンは窓の外を見た。つられて窓を見たシルヴィオは、いつの間に集まってきたのか、そこには数十名の兵達と、火にかけた大鍋をへらでかき回している女性が見えた。
「天使さま。外でご飯しよう。美味しいよ」
クラーラが再びシルヴィオの手を握り、外へと連れ出した。その後を苦笑しながらフィオンとノアが続く。
「お母さまっ」
「あら、ララ、どうしたの? そちらはお友達?」
大鍋をかき回していた女性は、クラーラとノアの母親らしかった。やや赤味がかった灰色の髪に、こげ茶色した瞳の優しそうな夫人だ。
ガーラント夫人は、屈託のない笑みを向けてきた。シルヴィオに対し、警戒している様子はなかった。
「ううん。違うの。天使さまよ」
「天使さま? 迷子の天使さまかしら? 天使さまのお名前は何と言うのかしら?」
「はじめまして。僕はプレシオザ国のシルヴィオ・クラレンスです」
「まあ、プレシオザ国から? お隣の国じゃない。シルヴィオ君は、ここへは観光にいらしたの?」
「はい。それが──」
「天使さまはね、悪い人に攫われて命からがら逃げてきたのよ」




