46話(閑話)・ようこそ我が家へ
「うわあ。凄い」
それを目にした時、シルヴィオは感嘆の声を漏らした。
「これって手作りなのかい? きみが作ったの?」
「うん。お父さまと二人でね」
ノアに案内されてきたのは、大木の上に作られたツリーハウスだった。シルヴィオは初めて見た建築物に目を見開いた。木の上に家を造るなんて驚きだ。
「ビックリした? ようこそ我が家へ」
「きみらはここに住んでいるの?」
「まあ、お気に入りの別荘みたいなものだよ」
中へ入ってさらに驚いた。ツリーハウスの中には暖炉があって思ったより広く、ベッドの他にも椅子やテーブル。キッチンなどが常備されていた。
蝋燭で照らし出されたツリーハウス内は木の独特の香りがして、温もりのようなものが伝わってきた。
「素敵だね」
「天使さまも気にいってくれたみたい」
シルヴィオの感想に、クラーラはニコニコしていた。
「お~い」
「「お父さまだ」」
ノアとクラーラが玄関口を開けると、黒い一陣の風が入り込んで来た。
「かああっ」
「ネグロ三世。お帰り!」
クラーラが室内に飛び込んで来た烏を抱きしめる。
「烏を飼っているの?」
「飼っているんじゃなくて僕らの友達なんだ」
「友達?」
「そうそう。烏は友達だよ」
首を傾げるシルヴィオに、ノアは機嫌良く言った。そこへ体躯の良い男性が家の中に入ってきた。
「二人とも今夜はこっちに泊るんだって? おっ、彼はお友達かな?」
「彼はね──」
「天使さまなの」
父親がシルヴィオについて聞いてきたのを、ノアが説明しようとしていたら、クラーラが遮った。
「天使さま?」
「そうよ。天使さまは修行していた国から攫われてきたの。でも、追っ手から逃れてこの森にたどり着いたのよ」
クラーラの迷いない言葉に、シルヴィオは驚かされた。詳細は語ってないのに、彼女は大体の事を言い当てているように思えてならなかった。
「駄目だよ。クラーラ。話を作ってしまっては。彼はシルヴィオ・クラレンスさん。プレシオザ国の人だって。友達と旅行に来ていたけど、喧嘩して置いて行かれてしまったから、国に帰れなくて困っているんだって。お父さま、助けてあげて」
「……クラレンス? プレシオザ国?」
少し訝るような様子を見せた少年の父に、シルヴィオは自分の身元がばれてしまっただろうかと体を硬くした。そんな彼の前に立った父親は、シルヴィオの頭に手を伸ばし撫でてきた。それが何だか少し嬉しかった。シルヴィオには血の繋がった両親はいるが、このように接してもらったことはなくて何だかくすぐったくも思った。




