31話・あんたのせいで
数日後。応接間で来客中のマリーザのもとへ侍女がふいの来客の知らせを告げた。
「来客? メローネかしら?」
「いいえ。サロモネ男爵夫人です」
「サロモネ男爵夫人?」
思わずマリーザは、その場にいたシルヴィオと顔を見合わせる。シルヴィオは指輪の件で分かった事があり、一人の男を連れてミラジェン子爵家を訪れていた。今その男からも話を色々と聞いていた所だった。
「どうしようかしら?」
「通したらどう? その方が話が分かりやすくていいんじゃない」
令嬢ジオヴァナの姿でシルヴィオが言う。連れの男に「それで良いわよね?」と、確認すると茶髪の優男風の二十代半ばの男性は頷いた。
「お通しして」
マリーザがそう指示を出してすぐに、夫人が侍女に案内されてやって来た。
「お久しぶりですね。サロモネ男爵夫人。私に何か御用でしょうか?」
「あんたね! あんたのせいで上手く行かないじゃないの。悉く邪魔ばかりして。この、役立たず!」
「……? どういう意味ですか?」
つかつかと歩み寄ってきた夫人は、利き手を振りかぶった。その手はマリーザの頬には届かなかった。その代りにジオヴァナに扮したシルヴィオの頬を打っていた。
「なんでそんな女を庇うのよっ」
夫人はマリーザをぶつ予定が、別の相手に成り代わっていたことに憤っていた。それを見て優男が目を丸くした。
「きゃあ、ジオ?! 大丈夫?」
「これぐらい平気よ。マリー。あなたがぶたれることにならなくて良かった」
「でも、赤くなっている。ナザリー、何か冷やす物を……」
「は……、はいっ」
夫人を案内してきた侍女ナザリーは、まさか夫人が手を上げるようなことになろうとは、思ってなかったらしく反応が遅れた。マリーザに指示を出されて、慌てて部屋を飛び出して行く。マリーザは腹が立ってきた。
「いきなり何をなさるのです? サロモネ男爵夫人。私の友人であるエスメラルダ公爵令嬢に対しての暴挙は見過ごせません。この事は男爵さまに抗議させて頂きますよ」
「好きにすれば? そっちが悪役令嬢ジオヴァナ? もしかしてあんたのせい? あの子のサポートをする事になっているマリーザをたらし込んで味方に引き入れて、あの子を妨害してきたのね?」
サロモネ男爵夫人は、ジオヴァナに対し謝罪の一言もなかった。一体、何様のつもりなのだろう? たかが男爵夫人でしかない彼女が、高位貴族である相手を見下して発言していた。
不快になるマリーザの横で、さすがジオヴァナは冷静に対処していた。
「何をおっしゃっておられるのか分かりませんわ」
「あたしはね、こうなることを見越して行動してきたのよ。せっかくあいつに妻として迎えられて、今までの苦労が報われると思ったのに……! 何一つ上手く行かないじゃないの。どうしてくれるのよ」
夫人は様子がおかしかった。意味不明な言いがかりをつけてくる。
「殿下への接近禁止令に加えて、停学処分ですって? あの子が何をしたって言うの?」
「サロモネ男爵夫人はその原因を知らされてないのですか? 彼女は殿下に対して失礼なことをしたのですよ」
「たかが服を脱いで見せて欲しいって言っただけでしょう? 大袈裟な」




