28話・ヴィオは調べ物が得意なの
「親愛なるRへと言う文字と、セレビリダーデの家名ね? 指輪の裏側まで見せてもらってないから、その文字があったかどうか分からないけど、当時リンさんはあの指輪には傷がついていたから、商品価値はないと言っていたかな」
「傷?」
「でもそれは傷ではなくて、文字だったのではないかと思うの。リンさん達の世代は、貧しい生活を送っていた人達が、満足に教育を受けられる環境になかったから、今の子は羨ましいと言っていたし、リンさんは自分が文字の読み書きが出来ないことを、恥じているようなところがあったからもしかすると、リンさんの旦那さん同様に、文字が彫られていたのを傷と思い込んでしまっていたのかも?」
リンさん達は平民だ。領地の平民達の学校教育が始まったのは、マリーザ達の母親世代からと聞くから、その親の世代に読み書きできない人達は大勢いた。
「そうね。その可能性はあるかも知れないわね」
マリーザの見解にジオヴァナは同意したが、マリーザは顔を曇らせた。
「ただ、その指輪がどういった経緯でリンさんのもとへ来たのかが、問題になってくると思うのよ」
「リンさんは、旦那さんからもらったと言っていたんだろう? マリー」
「そうだけど、いくら腕の良い庭師でも宝石のルビーの、しかも特殊な薔薇の彫刻が入った指輪なんて、高額過ぎて平民ではなかなか購入なんて出来ないと思うのよ」
リンさんの言ったことを鵜呑みにする事は出来ない。あの頃は子供で物の価値など分からなかったから、純粋にリンさんが言っていたことを信じた。
でも今は疑っている。リンさんの旦那さんはどうやってあの指輪を手に入れたのかと。
指輪に掘られていた文字は「dear R/セレビリダーデ」だったらしい。メローネ母娘は、そのdear Rは親愛なるリンと思い込んでいるようだ。
親愛なるという文字から、その指輪は特別な相手へ贈られたもので、Rという文字からRの付く名前の女性に、セレビリダーデ家の男性が贈ったのではないかと推測される。
「じゃあ、誰かにもらったとか?」
「それが無難だと思うわ。最悪な場合もあるかも知れない。それは信じたくないけど……」
あのリンさんの旦那さんになる人だ。盗みなんてやる人だと思いたくない。マリーザの浮かない様子に、シルヴィオが言った。
「俺の方でちょっと調べてみようか?」
「そんなこと出来るの?」
「ああ。任せろ」
こういう時のシルヴィオは非常に頼もしい。彼に任せておけば大丈夫だと何の根拠もないのに思ってしまうが、それをマリーは顔に出すことはなかった。その為、誤解を受けたようで親友ジオが大丈夫だと言うように言ってくる。
「大丈夫よ。マリー。ヴィオは調べ物が得意なのよ」
「ジオがそう言うのなら信じるわ」
「ちぇっ。信用がないな」
「そういうわけじゃないけど……」
「何だよ」
マリーザの発言に少しだけ気を悪くしたのか、シルヴィオがふて腐れたように言う。それがなんだか子供っぽく感じられて笑みを浮かべると、彼はガシガシと頭を掻いた。
「それにしてもあの子は、誰を狙っているのかしらね? 一応、攻略対象相手のサンドリーノ王子と、宰相の息子ニコラス、近衛隊長の息子のルアンに、宝石商のカッソとそれぞれ接触したみたいだけど、特別誰かを気にしている様子が見られないし。でも、ニコラスの前で誰かを狙っているような事を言っていたから、それは間違いないと思うの。もしかしてまだ出会っていない間諜のシルが本命なのかしら?」
ふとマリーザが気にかかることを口にすれば、シルヴィオ兄妹はハッとした様子を見せた。




