27話・乙女ゲーム内での設定
「メローネ達は、メローネの母親が前セレビリダーデ侯爵の娘だと疑ってなさそうだけど、その根拠って何だろうな? てっきり祖母が唆したのかと俺は思っていた」
シルヴィオは首を傾げる。彼女達がそう思い込んだのは祖母が吹き込んだのでは無いかと疑っていたらしい。マリーザは首を横に振った。
「それは違うわ。リンさんは、メローネが自分の母親には貴族の血が流れているって言い出した時、とんでもないと怒ってメローネを叱りつけていたから」
「メローネの母親の父親って誰だ? マリーザはそのリンさんから聞いてないのか?」
「リンさんからは幼馴染みの庭師だと聞いたわ。腕の良い職人さんで貴族の屋敷にも出入りしていたって。それをなぜかメローネは信じようとしなかったのよね」
マリーザが怪訝そうに言うと、「あっ」と、ジオヴァナが何か思い出したように声を上げた。
「どうしたの? ジオ」
「乙女ゲームの中では、メローネの母親は父なし子として育って来たようなことを言っていて、父親の存在は明かされていなかったの。だから気にしていなかったのだけど、一部の愛好家達の間では、メローネの祖父には何か秘密があるんじゃないかって噂されていたわ」
「秘密?」
「登場人物達の家族については、両親や兄弟など表記されていたのに、なぜかヒロインの父親や、祖父は公表されていなかったのよ」
ジオヴァナは、この世界は前世の彼女が知る「恋愛乙女ゲーム」の中の世界だと信じて疑わない。その登場人物達には、家族設定されていたらしい。それなのにメローネの父や、祖父についての表記はなかったようだ。
「ジオ。それはたまたまじゃないの?」
「そうかも知れないけど、ストーリーが進むうちに、ヒロインの父がサロモネ男爵だったのは判明していくけど、祖父の事に関しては濁すから愛好家達の間では、もしかしたらどこかの御曹司だったのではないかと、疑われたりしていたわ」
「メローネにもジオ、あなたのように前世の記憶があるとしたら、前セレビリダーデ侯爵が祖父なのかも知れないと、疑ってかかっているかも知れないってことね?」
「その可能性はあると思うわ」
「でもリンさんは嘘をつくような人では無いから、旦那さんが庭師だったと言うのは本当のことだと思うわ。話に聞いたルビーの指輪だけど、もしかしたらリンさんの持っていた物かも知れない」
「……!」
マリーザの言葉に、二人が反応する。
「私、一度だけリンさんから見せてもらったことがあるの。リンさんは自分の宝物だと言っていたわ。それは小さな黒い小箱に綿を詰めた物に収まっていて、ルビーの指輪だったわ。真紅の中に薔薇が収まっていて綺麗だったのを覚えている」
「それがもしかしたら、サロモネ男爵夫人が持っていたと思われる指輪かも知れないと?」
「そうよ。リンさんが亡くなる時に、その指輪を娘である夫人に託したかも知れないし、または形見として夫人の手に渡ったのかも知れない」
「そうなると、その指輪に刻まれていた言葉の意味が気になるな」




