26話・メローネの嘘
「ねぇ、ジオ。どう思う?」
「そうね。私の知る限りでは、メローネがサロモネ男爵の子であるのは確かだけど、前セレビリダーデ侯爵の孫娘かどうかは正直、分からないわ」
「そう……」
王妃さまの元を辞した後、マリーザはジオヴァナのもとを訪れていた。王妃さまの話を聞いて気になったことがあったのだ。自分の記憶に多少不安があり、ジオヴァナの前世の記憶と照らし合わせて確認したかった。その為、王妃さまのもとで聞いてきた話を、ジオヴァナに打ち明けていた。
「マリーは、そのことに何かひっかかることでもあるのか?」
ジオヴァナの私室にはジオヴァナだけではなく、シルヴィオもいた。マリーザは二人のことを信用して打ち明けたが、このお屋敷の者達まではどうか分からないので、人払いを頼んだ上で話していた。
「実はね、私、メローネのお祖母さまであるリンさんから聞いた話があったの」
「どんなお話?」
「リンさんの旦那さまについての話よ」
「……!」
「私、前に領地で暮らしていた時の事、話したことあったでしょう。その時にメローネと知り合ったのだけど、リンさんはメローネ母娘が住む家の、近所に住んでいたの」
マリーザの言葉にジオヴァナは目を見張り、シルヴィオは黙ってその先を促した。
「そのリンさんは今も領地に?」
「いいえ。リンさんはもういないわ。私がこちらに移って来る一年ほど前に、病気で亡くなったと聞いたわ」
「そのリンさんと交流があったのか?」
「ええ。リンさんはメローネのお母さまが夜酒場で働いていたから、家に一人に残されるメローネを心配して毎日、家事とメローネの世話をするために足を運んでいたのよ」
メローネにとって母親代わりでもあったリンさんは、いつもマリーザに「孫が迷惑をかけて済まないね」と、謝ることが多かった。時々、そのリンに誘われてお茶を一緒したこともあり、その時に聞いた話があったのだ。切っ掛けはメローネの発言だった。
メローネが皆の前で、「自分の母は高位貴族の娘なのだ」と言い出したことで、その真相が気になってリンに聞きに行ったのだ。それを聞いてリンは頭を抱えた。
「またとんでもない嘘をついて……! あの子は嘘をつくことによって、後で酷い目に遭うって事を良く分かってないんだ」
そう言って嘆いていた。そのリンから頼まれてマリーザは、メローネを見張ってきた。それ以上、嘘を皆に吹き込まないように。同性の女の子達は、メローネの話を荒唐無稽な事とあまり本気で受け止めてなかったから、マリーザが否定する前に「あれは嘘よね?」と、聞いてきた。
残念ながら異性の男の子達は、マリーが男の子達に人気のあるメローネに嫉妬しているのだと誤解し、嘘つきメローネを守る騎士宜しく、彼女を取り囲んで危険人物と見做したマリーザを近づけさせないようにしていた。
そうさせていたのはメローネだ。メローネは耳に痛いことを言うマリーザを遠ざけ、自分に甘い顔をする男の子とばかりいた。




