第32話 悩み事は抱え込まないこと
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ヴィートがアクセサリーを普及させるアイデアを売った次の日の朝のことだ。
部屋の洗面所で、俺とヴィートは顔を洗ったあとタオルで顔を拭いていた。
俺は、ふと、ヴィートに気になったことを話した。
「そういえば、ヴィーは、ペルリタさんにアイデアを売る前、お金をある程度もらえれば俺が思いついたことにしていい、みたいなこと言っただろ?
子どもだと聞く耳持ってもらえないからって」
ヴィートはタオルに顔を埋めていたが、目だけ出してでこちらを見た。
「あれ、意外だったな。
どうしてお金をある程度もらえればって話から入ったんだ?
タダでってところから始めてそれでいいって言われたら、ヴィートにはお金が全部入ってくるだろ?」
ヴィートらしくない交渉の仕方だと思った。
「それは……」
ヴィートはもう一度タオルに顔を埋めて、しっかりと水気を拭き取ると、顔を上げて笑顔を向ける。
「そうですね……おにいさまは木を彫ったり印刷所を借りたりと色々していました。
持っていかれても、それは広告の印刷を外注したらかかったはずのお金と同じくらいでしょう。おにいさまの懐に入るなら許せます」
「なるほど……?」
俺は一瞬納得しかけたが、答えになっていないような違和感がある……。
許容できるというだけで、タダで俺の名前を使えた方がいいことに変わりがないのだ。
変だな……。
俺が疑問に思っていると、ヴィートはタオルを渡して、笑顔を保ったままササーッと洗面所を出て行ってしまった。
それから、ヴィートの様子が少しおかしかった。
こちらの視線を感じ取ると笑顔を作るのだが、ふとした瞬間、何か考え込んでいるような表情をしていた。
何かあったのか尋ねても何も答えてくれない。俺、まずいことを言ったのだろうか……。
* * *
そしてモヤモヤしたまま時間が過ぎ、3日経った。
すっかり夜が更けた時間のことだった。
「ぎゃあああ!」という叫び声で、俺は目が覚めた。
声がした方を見ると、俺の真横で、上体を起こしたヴィートがゼェゼェと呼吸を乱しながらタオルケットを掴んでいた。
普段のヴィートからは聞いたことないような声だった。恐怖と拒否と嫌悪が混ざった悲鳴だ。
俺も体を起こして、ヴィートに聞く。
「ヴィー、どうしたんだ?」
「うわっ!」
俺が声をかけると、ヴィートはこちらを見てぎょっとしたのかビックリしたのか、体が跳ねた。
それから、恐る恐る尋ねた。
「……おにいさま、想い人はいますか?」
何でこのタイミングでその質問をするのか疑問に思いつつ、俺は答える。
「いない」
「恋人はいますか?」
「……いない」
答えてて悲しい。泣いていいか?
「奥方さまはいますか?」
「彼女もいたことないのに!? いるわけないって!」
それを聞いたヴィートは、額の汗を拭う動作をした。
「そうですか……どうやら夢の中ではなくなったようですね」
「他の確認方法はなかったのか!?」
彼女いない歴=年齢の俺にとってはオーバーキルだぞ!
「これが手っ取り早いと思いました」
「よりによって!? なんで?」
「……夢の中ではおにいさまが、わたしの……よく知らない女の人に入れ込んでいました。
その女の人はおにいさまに隠れて、他に密に仲良くしている男の人がいるという状況でした」
「そんな夢だったのか……」
怖い夢というよりも、修羅場な夢だった。
それにしても……嫌な夢であることに変わりないが、さっきの悲鳴が上がるような夢なのだろうか……?
端的に説明してくれたからそこまでの内容に聞こえなかったのか?
「もう1つおまけに、どのような女の人が好きかを聞いてもいいですか?」
「いいけど……なんで?」
「……夢の中に出てきた人と違っていてほしいからです」
ヴィートは顔をしかめてそう言った。
それくらいで安心できるなら、いいか。
「しっかりしてて胸が大き……あ。しっかりしてる年上の女の人」
教育に悪いこと言いかけたな……。言い直したけど、あんまり意味ないかもしれない。
ヴィートは全部聞いているだろうから。
「……」
ヴィートから返ってきたのは、沈黙だった。
もしかして、大きく外れてはいなかったのだろうか?
「ヴィーの夢に出てきたのは、どんな人だったんだ?」
ヴィートは回答に困ったようで、目が色んなところに泳いだ。
そして徐々に、げんなりとしていった。
「思い出そうとしていたら気分が悪くなりました。やめていいですか?」
「あ、ごめん。嫌な夢のこと考えさせて。
大丈夫か?」
「はい……」
かなり堪える夢だったみたいだな……。
「こういうときは、別のことを考えるといいぞ」
「別のことですか?」
「食べたいものとか、楽しいこととか」
「そうですね……それが良さそうです」
ヴィートは膝を抱えて、窓の外を眺める。
三日月に照らされて見えるその表情は、楽しそうなものではなく、思い詰めたものだった。
やっぱり、様子が変だ。
「ヴィー。俺……何かヴィーが傷つくこととか言った?」
俺が聞くと、ヴィートは驚いた様子でこちらを見た。
「いいえ、言っていません。どうしてそのようなことを聞くのですか?」
「俺が何か言ったから、ここ3日くらい元気がないのかと思って……」
「元気です。毎日おいしくご飯を食べていて、よく眠っていて、お手伝いもしていて、今日はおねえさまにお手本を書いてもらって文字を書きました」
「それは、良かった。
……それなら元気がないのは、別の理由なのか?
俺に言いにくいことだったら、オリアーナさんやミアに相談してくれ」
「あの……元気ですよ?」
ヴィートはそう言うが、とても元気そうには見えない。
気を遣わせてるのだろうか……。
「俺、駄目だな……。なんて声かけていいかわからなくてさ。ごめん」
俺がそう言ったのを聞いて、ヴィートは少しの間、こちらを見つめた。
それからゴクリとツバを飲み込み、いつも肌身離さず着けている胸元の巾着袋を服越しに握る。
そして笑顔を作って俺に向けた。
「おにいさま」
「うん? なんだ?」
「おにいさまは広告を作るときに木版を彫ってくれましたね。印刷所も手配してくれました」
「彫ったのはそうだな。
印刷所を借りてくれたのは、マテオとマテオのお姉さんだ」
「マテオさまに話を通したのはおにいさまです。
その2つ分の働きのお金をお支払いしましょうか?」
ヴィートが自ら進んでお金を払う必要があるかを聞くなんて思わなかった。
しかも、自分が手にしたお金から。
「何があったんだ、本当に?」
「……とりあえず答えてもらっていいですか?」
「あ、ああ……。
木の材料費のことならオリアーナさんからもらってるから気にしなくていいぞ。
印刷所のお礼を渡したいなら、相手は俺じゃなくて、マテオとマテオのお姉さんだな。
俺に渡す必要はない」
ヴィートは頷いた。
「おにいさまはそう答えると思っていました。
それはおにいさまが木を彫ってくれると言ったときからです」
「……ちょっと待ってくれ。話の進み方についていけなかった。
えー……つまり、俺にお金を支払うか聞いても、受け取らないって答えると思ってた?」
「はい。そうです。
アークイラ亭にとっては広告作りに力を注げば売り上げになります。
マテオさまたちが印刷所を貸すまで支援したのは、わたしが考えた広告を参考に、羊皮紙の端切れを使って新しいことを始めるつもりだからでしょう」
ヴィートはそこで少し間を置き、それから続きを話す。
「では、おにいさまは?
おにいさまにとっては広告作りをしてもおいしいことがありません。働き損です。
わたしがペルリタさまにアクセサリーを広める案を売るとき、その案をおにいさまが思いついたことにしてほしいと言ったこともそうです。おにいさまはお金を受け取らないと思って話を持ちかけました。
おにいさまに『自分を自分でおとしめると安く買い叩かれてカラカラに搾り取られますよ』と言いましたけど、その実、おにいさまを利用して安く買い叩こうとしているのはわたしでした、という種明かしです」
特にいつもと変わらない淡々とした口調でヴィートは言い切った。
しかし、その目は俺の様子を窺っていて、胸元にある手は震えている。
おそらく、俺がどう反応するのかが怖いのだ。
「ヴィーは、それで悪いことしたって思ってるのか?」
「悪いことをしたとは思いません。
それに求められていないお金を払いたいとは小指の先ほども思いません」
まず、ヴィートは、俺にお金を支払うか聞いても、受け取らないって答えると思っていた。
だから、俺に木版を彫ったり印刷所を手配してもらった。
お金が浮いて喜ぶ気持ちは少なからずあると思っていいだろう。
それなのにヴィートは、『利用して安く買い叩こうとしている』と思って気にしている。
「ヴィーは、自分が悪いと思って自分を責めているわけじゃないんだな。
それなら、えー……俺を利用したとして、利用したことの何を気にしているんだ?」
「おにいさまとわたしには取り決めがあるでしょう?
人を騙して利益を得るようなことをしない代わりに面倒を見てもらう、という取り決めです」
ヴィートをここに連れて来た日に交わした約束だ。
「わたしは、おにいさまに最初から料金を支払う気はなく、おにいさまにとって働き損になる話を持ちかけていますから、その取り決めに触れています」
約束を破ってしまった、と思っているのか……?
「加えて、わたしはおにいさまのことをなめています。
取り決めを破ったところでおにいさまはわたしの面倒を見ないとは言えないでしょう?
おにいさまはわたしからカモにされているわけです」
「そうなのか。それで?」
ヴィートは、俺の反応が意外だったのか、急に歯切れが悪くなった。
「へ? いえ、ですから……その……。
……おにいさまはこういうことをひと通り聞いてもわたしに何も思わないのですか?」
「何も思わないわけじゃないぞ」
俺の返事を聞いて、ヴィートは胸元にある巾着袋を強く握った。不安なのだろう。
不安なのに、そういう言い方をするのは、不思議だ。
それはさておき、俺はどう思っているのかを伝える。
「そういうことを常に考えないといけなくなるほど、ここに来る前は追い詰められてたんだなって、思ってる。
だから、のびのび過ごして、時間をかけて、そうする必要がないって覚えていってほしいんだ。
俺はずっとそう思ってる」
ヴィートは黙ってしまったが、俺はその間、ただ待った。
しばらくしてからヴィートは再度口を開いた。
「わたしは……目の前に利用できそうなものがあれば使わずにはいられません。それはどうでもいい人でも近しい人でもです。
もう明日のご飯に困っているわけではないのに……もうそうする必要がないのにやめることができません。
使えるものは何でも使う、自分さえよければ周りがどうなってもいい、望み通りにならなければ平気で見放す……わたしもそういう人なのです」
ようやく、ヴィートが、悩んでいることの外郭ではなくて、中心を話してくれた感じがした。
あれ? 『わたしも』? 『も』ってなんだ?
まるで他にそういうことをする人がいるかのような言い方だ。
「おにいさまは……面倒を見ると言ったことを後悔しないのですか?」
俺がヴィートの面倒を見ないって言わないことまではわかっているのに、どうしてそこは全然わかっていないのか……。
後悔するわけない、と言おうとして俺が口を開いたとき、ヴィートは何かに気がついたように慌てて告げる。
「言わなくていいです!
こういう聞き方をされたら、おにいさまはしないとしか答えることができません。ずるい聞き方です」
ヴィートは怒っているような泣きそうな声で呟く。「……結局は同じような人がもう1人増えただけではないですか……!」と。
ヴィートの瞳が潤んで、外から入る薄い光が映り込む。ヴィートはすぐに目元を擦って涙を拭った。
『同じような人がもう1人増えただけ』?
誰かと比較したような言葉が出てきた。
あ、もしかして……『使えるものは何でも使う、自分さえよければ周りがどうなってもいい、望み通りにならなければ平気で見放す』というのは抽象的な人物像ではなく、ヴィートの知ってる人の中にそういう人物がいたということなのだろうか?
「ヴィーは自分の中で、ある誰かと比べていて、その誰かと似た行動を取っているように感じて嫌だってことか?」
俺がそう聞くと、ヴィートはハッとして口を手で塞いだ。
そして、少し迷ってから小さく頷き、目を伏せた。
「ヴィーは、人を利用したくなってしまうんだよな?」
ヴィートは首肯する。
「それなら、利用したいの方向性を変えるのはどうだ?」
俺がそう聞くと、ヴィートは視線を上げた。
「……どういうことですか?」
「利用したくなるっていうことは、人の動かし方がわかるってことだろ?
それはヴィーに人を動かす才能があるってことだ。
才能は、道具と一緒で使い方次第だ。良いことにも悪いことにも使える」
「悪いこと以外にどう使うのですか」
「リーダーシップを取ったり、落ち込んでる人を元気にさせたりできるぞ。
ヴィーが言っていた『誰か』のことは全然知らないけど、これだけはわかるんだ。
ヴィーが同じようになりたくないって思ってるなら、同じにはならないって。
ヴィーは、その人とは違うんだ。別の道を歩けばいい」
ヴィートはまだ不安が拭えない顔で「もし同じになる道しかなかったら――」と口にした。
「同じ場所にしか繋がってない道なんてないぞ。
その誰かだって、その才能の使い方を自分で選んでるんだ。他の使い方だって沢山ある。だけどその中から選んだ。
ヴィートは、その誰かとは違って、まだ他の使い方を知らないだけだ」
それを聞いた途端、ヴィートの不安が和らいだのか、ほっと息を吐いたのが聞こえた。
「ヴィー、悩んだり不安になったりしたらいくらでも相談に乗るから、今度は1人で抱え込まないんだぞ」
ヴィートは頷く。
「相談事がどんな内容でも、ヴィーのことは大事なままだから、安心して話してくれ」
ヴィートは顔を手で隠そうとしながら、再度頷いた。
「よし、いい子いい子」
俺はヴィートの頭を撫でる。
ヴィートはすぐに顔を背けた。
顔を隠す手はそのままに、おとなしく頭を撫でられている。
その状態でしばらく過ごしていると、ヴィートは1つあくびをした。
「もう眠れそうだな」
「……まだ処遇の話がまとまっていません」
「え、処遇って?」
「人を騙して利益を得るようなことをしない代わりに面倒を見てもらう……という取り決めは交換条件です。
ですがおにいさまは……わたしの面倒を見ないという手が……取れないのでしょう?
その上で違えたことを咎めないなどと言ったら、わたしは……その取り決めを守る意味がありません」
ヴィートは眠くなってきているようで、眠気と戦って、なんとか思考を保っているような話し方になっている。
「確かによく考えると、ヴィーが人を騙してご飯とかお金とかをもらわない代わりに俺が面倒を見るっていう約束、良くないな。
交換条件だからそれを守るってなるよな……。それだと結局ヴィーのためにならない。
この約束をしたときは、ヴィーに、この場に留まるって決めてもらおうと必死で、そこまで考えられてなかった……」
ヴィートは、まだ1人で生きていけるような年齢じゃないのに俺が面倒を見る話を断ってきたからな。
焦っていたんだ。
「とりあえず、その咎めるどうのこうのっていうのは、今回なしにしよう」
「おにいさま……? お話を聞いていましたか?」
「聞いてたぞ。
ただ、俺からはヴィーが人を騙したと思えなかった」
「……どういうことですか?」
俺は、その疑問に1つめの理由を説明する。
「まず、俺にとってアークイラ亭のためになることはプラスのことなんだ。広告のために木版を彫ってアークイラ亭に客が増えたら、俺にも良いことだ。
アークイラ亭の人たちに恩を感じていて、アークイラ亭のためになることをしたいのは、ヴィーも俺も同じだ。
それに俺は、ヴィーが考えたアイデアを形にしたかった。
俺にとっては利用されたも何もなくて、俺がやりたくてやったってことだな」
ヴィートは首を傾げる。
「その気持ちを利用されたとは……思わないのですか?」
「思わないぞ。もしヴィーがこの気持ちを利用してたとしても、利害の一致ってことで済む話だ」
「利害の一致……ですか?」
「俺がやりたいと思ったことは、ヴィーにとって俺にやってほしいことだったってことだ」
俺は、もう1つの判断理由を続けて話す。
「あと、ペルリタさんにアイデアを売ったときは、最終的にヴィートが自分でペルリタさんに伝えただろ?
だからこれはカウントしない」
「どうして……ですか?」
「だって、ヴィーは、俺がお金を受け取らないと予想して話を持ちかけたんだろ?
でも、俺は、ヴィーが考えたことなんだからヴィーが考えた、ヴィーはすごいんだって知ってもらいたくて、その話を断ってる。
成立してないから、騙せてない。
だから、今回は何もなしだ。納得できたか?」
ヴィートは何かまだ言いたかったようだが、考えている途中でうつらうつらとして、船を漕いだ。
これはもう寝かせないといけないな。
約束事の内容を変えたいところだが、今日はやめておく。
「今日はもう寝よう。もう遅い時間だからな」
ヴィートは重そうなまぶたで頷く。
ヴィートと俺は、横になった。
ヴィートは自分でタオルケットをかける。
俺は暑いので何もかけない。
「おやすみ、ヴィー」
声を掛けると、ヴィートは、既に半分も開いていない瞳でこちらを見る。
そして俺の寝間着の半袖の部分に手を伸ばして掴み、顔を近づけて、俺の肩におでこをくっつけた。
それから間もなく、ヴィートからは規則正しい呼吸音が聞こえてきた。
ここのところ、気が付けばヴィートは俺にくっついて眠っていることが多い。
身体の半分くらいが上に乗っかっているときもある。
この、どこからどう見ても甘えている仕草を見ていれば、わかる。
俺のことを利用したい気持ちがあるのは事実でも、それだけでないことくらい。
今日、合点がいったのだ。ヴィートはこちらに甘えてくる割に、こちらを身構えさせるような物言いをする理由に。
俺のことをなめているとか、カモにしているとかいう言い方が、身構えさせるような物言いに当てはまる。
もしカモにしているのが本当なら、ヴィートが俺に『自分を自分でおとしめると安く買い叩かれてカラカラに搾り取られますよ』と言う理由がない。
自分を貶めるな、なんて俺に言わない方が、買い叩いて搾り取れる。
ヴィートは、俺に対して、利用したいという気持ちがずっとあり、それと同時に利用したくないという気持ちもおそらく存在しているのだ。
だからこそ、俺に警戒を促すようなことを言うし、自らを警戒させるような言い回しをするのだろう。
利用したくなるから、そっちも気を付けてほしい、と。
そうなると、お金をある程度もらえれば俺が思いついたことにしていいという話は、案外、俺がお金を受け取るって言ったらそれで良かったというオチだったりして……。
ヴィートは『求められていないお金を払いたいとは小指の先ほども思いません』と言っていたが、逆に言えば求められたら払うとも受け取れる言い方だった。
お金を必要な分だけ支払うことで、ヴィートは、人のことを利用したと悩むこともなかったとか?
タダではなくお金を払うところから交渉し始めたのは、そういうことなのかもしれない。
色々と回りくどくて、思考回路が拗れていて、まったく……わかりづらく不器用だ。
今年の夏の夜は、例年より暑いな。




