第31話 アクセサリーのお店へ
今年もよろしくお願いします!(1月に滑り込み投稿できて良かったです!)
ルチアちゃんとヴィートが遊んだ次の日。
朝食を取った後、食事処でオリアーナさんから話しかけられる。
「フレッドくん、頼まれてくれるかしら?
このハンカチ、ルチアちゃんのものよね。お部屋の掃除中に見つかったのよ。
届けてくれる?」
オリアーナさんが持っているのは、『ルチア』という名前の刺繍が入ったピンク色のハンカチだった。ハンカチの外縁にはレースでできたフリルが着いている。
「ああ、届けてくる」
俺は散歩にとその場にいたヴィートに声をかけ、ヴィートは厨房にいたミアベラに声をかけにいった。
そのため、3人でペルリタさんとルチアちゃんの店へ向かうことになった。
お店のある場所、大聖堂の横のアーケードに辿り着いた。
大聖堂の横のアーケード、と聞くと大聖堂のすぐ近くにアーケードがあると思うだろう。
俺もそうだったが、現実は違った。
まずは大聖堂がある。正面から見ると、三角屋根のような五角形を3つ連ねてその間に飾りの柱を2本つけた大聖堂だ。
その右の側面の外壁には、端から端までバルコニーがあり、その下に2階建てのお店が入っていたのだ。
大聖堂自体が、テナントを入れる想定で設計されている。
バルコニー下のお店の2階部分がせり出て覆いのようになったアーケードで、かまぼこ形の天窓はない。
お店は30区画くらいに分けられている。
2階は1区画ごとに窓がついていて、壁の色が違う。薄茶色1色の大聖堂と打って変わって、白、オレンジ、ピンク、黄色、赤がランダムに塗られていた。
全員ではないが、上品な装いの人や、お屋敷に勤めていそうな装いの人も多く見受けられる場所だ。
賑わいはあるが、喧騒ではない。
アーケードの入口付近の貸衣装屋にノーラさんがいたので軽く挨拶してペルリタさんの店の詳しい位置を聞かせてもらい、そこへ向かう。
「そういえば、ペルリタさんのお店って何のお店なの?」
ミアベラは首を傾げて尋ねる。
「アクセサリーを作っていると言っていました」
ヴィートは帽子を目深に被って、ミアベラのスカートの後ろに隠れて歩きながら答えた。
「アクセサリーのお店!?」
ミアベラが驚きで声を上げる。
「きちんとした服装じゃなくてもお店に入れてもらえるかな!?」
「かしこまった服装が必要なのですか?」
ヴィートは不思議そうな声で聞いた。
俺はアクセサリーについてヴィートに説明した。
「宝石も使ってる金属も貴重で、それを沢山使ったものがアクセサリーなんだ。
一般的には、一生遊んで暮らせるくらいのお金がかかる超高級品だぞ。
高い商品を取り扱う店は出入り口に人が立ってることが多い。服装によっては入店を断られるんだ」
「そ、そうなのですか。それを……へー……」
ヴィートは戸惑った声でそう言った。
どういう反応なのだろう。
「ミア、多分、服装で入れないってことはないと思う。
ペルリタさんは、『アクセサリーは貴族の人が身に着けるもの』ってイメージを払拭したいみたいなんだ。
だから、そういうことはしないと思う」
「今日は届け物を渡すだけで、内容もハンカチですから、場合によっては出入り口の人に頼むという手も取れます」
俺とヴィートがそれぞれ言った言葉を聞いて、ミアベラは安心したようだ。
「そっか〜、それなら大丈夫だね」
そんな話をしながら、高級ブランド店から手頃な雑貨屋などが入り混じるアーケード街を歩いていくと、看板に『アクセサリー工房 ジョーイ』と書かれている店があった。
「ここがペルリタさんの店だ」
予想通り、出入り口に人は立っていない。入店を拒否されることもない。
ガラス張りの扉を開いて店内に入り、ミアベラとヴィートが入ってから扉を閉じる。
区画1つ1つには奥行きがあるようだ。入口はこじんまりとしているが、店の中は広い。
数多くの照明の魔道具と小さなシャンデリアが明るく店内を照らす。
床は、2種類の石材を使っており、黒色と薄灰色の正方形が交互に配置されている。
左奥の方にカウンターがあって、その側に男の人と小さな女の子がいた。
小さな女の子は、遠目からルチアちゃんであることがわかる。
とりあえず、届け物のために奥へと歩みを進めた。
両サイドの壁と、店の中心にはガラスケースがあり、細長い『ロ』の形で動線が確保されていた。
ガラスケースは木の枠で縁取られ、枠はツヤが出るように加工されている。
透き通ったガラスの向こうにはアクセサリーが入っていて、光を受けたアクセサリーが色とりどりに煌く。
歩きやすく、商品も見やすい。
「あー! ヴィートちゃんだー!」
カウンターの近くまで来ると、こちらに気が付いたルチアちゃんがヴィートの名前を呼び、ヴィートの前まで歩いていった。
ヴィートはいつの間にかミアベラの後ろにいるのをやめていたようだ。
ルチアちゃんは、頭にティアラのようなカチューシャを着けていた。
フレームは金色で、葉っぱとツタを意識した形をしていて、葉の部分には透明な小さな石がはめ込まれている。真ん中に来る部分のツタの形がハートのようになっていて、そこにパールがある。
小さい子がこういった飾りを着けていると、絵になるな。
「ルチアさま、おはようございます。
ぷりんせすらしい素敵な髪飾りをしていますね。とてもお似合いです」
ヴィートの言葉を聞いて、ルチアちゃんは嬉しそうに「きゃー!」と声をあげた。
よくそんなセリフがするすると出てくるな、と感心したのも束の間だった。
ルチアちゃんの近くにいる男の人の、ヴィートを見る目がつり上がった。とても怖い。
その人は鼻から口を布で覆っているため、顔の上半分しか出ていないのだが、それでもわかる。
どう見ても「口説いてるんちゃうぞ」という顔をしてる。
その視線に気がついたらしいヴィート。
一瞬怯えたものの、すぐにルチアちゃんに微笑んだ。
「ルチアさまを大切に思う方がいますね」
ヴィートはルチアちゃんの後ろを指差す。
ルチアちゃんが振り返ると、目をつり上げていた男の人の顔は即座に怖い顔をやめた。
「パパー!」
ルチアちゃんは、男の人を見て、そう呼んだ。
やはりルチアちゃんの父親だった。強火なルチアちゃん好きは、父親故なのか。
「パパ、あのね、ヴィートちゃん、ミアベラちゃん、フレッドくん!」
ルチアちゃんが、ルチアちゃんのお父さんに俺たちのことを紹介してくれた。
ルチアちゃんのお父さんは、スンと鼻を鳴らす。
そして、俺、ミアベラ、ヴィートを順に見てから言った。
「もしかして、宿屋の……?
昨日、ペルリタが世話になったって言ってた」
どうやら家庭内の話題に上ったようだ。
「ああ。ルチアちゃんのハンカチを届けに来たんだ。
掃除中に部屋から見つかったって」
俺はハンカチを取り出そうと鞄を漁る。
「……あれ?」
忘れた?
俺が焦っていると、後ろからヴィートが言った。
「おにいさま、わたしが持っていますよ」
「良かった……忘れたかと思った」
俺が安心していると、ヴィートはルチアちゃんに笑顔で話しかける。
「ルチアさま。昨日は物語を教えていただけて面白かったです」
「ぶとーかい!」
「はい、舞踏会へのご参加も、ありがとうございました。
実はその舞踏会で落とし物が見つかりました」
「ガラスのくつ?」
「こちらのハンカチはガラスの靴と同じように持ち主が誰なのかわかりません。
いったい、どなたのものでしょうか?」
わざと誰の物かわかっていない風の言い回しをしながら、ヴィートはピンク色のハンカチを手に乗せてルチアちゃんへ差し出す。
「ルーちゃんの!」
「ルチアさまのものだったのですね。
どうぞ。お受け取りください」
ルチアちゃんはハンカチを受け取った。
ミアベラは、しゃがんでルチアちゃんに言った。
「ハンカチさんがね、ルチアちゃんと会えない間、寂しかったって。
今はね、また会えてとっても喜んでるよ! もう落とさないであげてね」
「ハンカチさん、さびしいだったの? ごめんね」
ルチアちゃんはハンカチに謝って、しっかりと両手で握る。
ルチアちゃんは、カウンターの近くにある扉へ行って、「ママー!」と呼びながら扉を開けて入っていった。
ペルリタさんに渡しに行ったのだろう。
本来の目的は達成したが、まだやることはある。
実はヴィートがミアベラを誘ったのは、ミアベラと色々なお店を巡るためだったのだ。
「おねえさま、せっかく来たのでお店の中を見て回りましょう」
「そうだね!」
「お好みなものを教えてください」
「うん!」
ルチアちゃんのお父さんはカウンターの辺りから木製の踏み台を持ち上げ、ヴィートの近くまで行って渡した。
「ガラスケースが見えなかったらこれ使って。
ゆっくりどうぞ」
「ありがたく使わせてもらいます」
そして、ルチアちゃんのお父さんは、俺に話しかけてきた。
「よければ待ってる間、そっちのソファに座って。ああいうのは長くかかるって相場が決まってる。
飲み物持ってくる」
「あ、ありがとう」
「羊のミルクとリンゴジュースだったら、どっちがいい?」
「それならミルクで」
ルチアちゃんのお父さんも、カウンターの近くの扉に入っていった。
怖い人かと思ったが、優しい人だった……。
ルチアちゃんが絡まなければなのか……?
店内の右奥にある仕切り、その向こう側の話し合い用スペースのような場所がある。
4〜6人用の広い机があり、片側に椅子が3脚、片側に3〜4人掛けのソファがある。
椅子もソファも座り心地が良さそうだが、ソファの方は特に高級感が溢れている。張られている生地は赤に染色された革で、柔らかそうだ。
ソファに座ってって言ってたけど、これだけ高級そうな物に座るって、精神的なハードルが高いぞ……。
そう思っていると、再び扉が開く。
グラスを持って、ルチアちゃんのお父さんが出てきた。
「どうぞ」
テーブルのソファ側の方に、グラスが置かれた。
「ありがとう」
俺は、ソファを汚さないように、精一杯気を付けて座ることにした。
椅子側には、ルチアちゃんのお父さんが座った。
「自己紹介が遅れた。俺はチェルソー・ジョーイ」
「改めて……フレッド・ムラトーレだ。よろしく」
ルチアちゃんのお父さんは、チェルソーさんと言うらしい。
チェルソーさんは、真剣な表情で、俺に尋ねた。
「アークイラ亭って言ったっけ?
その宿屋に、家族プランの実装予定はある?」
「俺は、アークイラ亭を手伝ってるけど、そこまでは……」
ミアベラに後で聞いてみようか。
まだ次のことは考えてない気がするので、案の1つになるかもしれない。
「そ……そうか。じゃあ俺の話を聞いてくれよ」
「え、はい」
「女子会プランだからって、俺だけ家に置いてかれたんだよ。酷くない!?
家族プランだったらノーラじゃなくて俺が行ってたはずなのにさ?
帰ってきたルチアの口からは永遠に男の子の話が出てくるし」
男の子の話……ヴィートだな。
それであの怖い顔をしていたのか。少し大人気ない気もする……。
俺はそのまま、チェルソーさんのやるせない気持ちを聞いて過ごした。
ミアベラとヴィートが店内を1周した頃、ルチアちゃんがペルリタさんと一緒に戻ってきた。
「ミアベラちゃん、フレッドくん、ヴィートくん。
忘れ物、届けに来てくれてありがとう」
ペルリタさんは、俺たちにそう言った。
「大丈夫ですよ!」
「ああ」
ミアベラと俺は頷く。
ミアベラの横にいるヴィートはペルリタさんを見て尋ねる。
「ペルリタさま、ルチアさまのティアラはお店で売っているものなのですか?」
「あー……それね、ルチアかわいさに作っちゃったんだよ。売ってない」
「ルチアさまの首飾り……ネックレスもお店の中で見かけませんでした。
ネックレスも、ルチアさまのために作られたものですか?」
「うん、そう」
ルチアちゃんのネックレスとは、赤ピンク白のハート型の石がついた物のことだ。
ヴィートは何か思うところがあるようで「……そうですか」と言った。
「ヴィー、気づいたことでもあるのか?」
ヴィートは悩んでから、俺の近くに来る。
「おにいさま、耳を貸してください」
俺はしゃがんで耳を貸す。
「アクセサリーを多くの人に着けてもらえる方法がひらめいたので、大銀貨25枚で売っていいですか?」
閃いたのはすごいが、高い!
大銀貨3枚で1か月暮らせるので、大銀貨25枚では8か月と少し暮らせるような金額だ。
「そんなに取るのか!?」
「この考えを使ったときに、このお店に入ってくるお金を思えば安いくらいです」
ぼったくろうというつもりではないようだ。
「どんな考えなんだ?」
「それはですね――」
ヴィートからアイデアを具体的に説明された。
「本当にすごいな」
それしか出てこない。頭の出来が違うのだろうか。
「売ってもいいですか?」
「ああ」
他所にはタダでは教えないところがヴィートらしいな。
「では、おにいさまが思いついたということにしていいですか?
ある程度の分け前をもらえれば、おにいさまのお手柄にしていいですよ」
「え、なんで?」
「子どもの言うことをまともに取り合うのはおにいさまたちくらいのものです。
聞く耳を持たれないか、足元を見られるかです」
冷静に考えると、見知らぬ3歳児に何か思いついたことを売り込まれても、ごっこ遊びくらいにしか思えないかもしれない。
しかし、ヴィートの頭の良さもミアベラにしてきた助言も、俺は知っている。
「……俺は、ヴィーが考えたって言いたい。
ヴィーが小さいから信じてもらえないなら、俺はヴィーの考えがすごいことを伝える。
大人が横ですごいって言ってたら、ある程度は信じてくれると思う」
「わかりました。おにいさまがそうしたいなら、それでいいです」
ヴィートは少し不満を残した表情をしているが、折れてくれた。
そして俺は、テーブルからペルリタさんのいるカウンター近くまで移動する。
ヴィートもついて来る。
「ペルリタさん、アクセサリーを多くの人に着けてもらえるようになる方法があって、それを売りたいって、ヴィーが」
ペルリタさんは意外そうにした。
「えっと、フレッドくんが思いついたんじゃなくて、ヴィートくんが?」
「ああ」
「んーと、これは新手の冗談……?」
ペルリタさんはどう捉えていいのか迷っているようだ。
「ペルリタさんが予約したアークイラ亭の女子会プランは、広告を配っていたんだ。
ペルリタさんは知ってるか?」
「うん。ノーラが広告を渡してきて、『行くでしょ。予約して』って。
ああいう、色々書いてあるのいいよね。
私は、町中で聞いて『いいな』って思っても、後で、どこで聞いたかも細かいところもわかんなくなりがちなんだよ」
よかった。高評価だ。
「その広告を作って宣伝しようと思いついたのはヴィーなんだ」
ペルリタさんは3秒くらい固まった。
「そうなんだ!? ヴィートくんが!? すごいね!」
そこへ、流れを読んでくれたらしいミアベラが加勢してくれる。
「ヴィーちゃんは、アークイラ亭のランチをたくさんの人に知ってもらう方法を色々教えてくれたんです!
実は、前からランチを出していたんですけど、あんまり知られてなくて……」
「それもヴィートくんがミアベラちゃんに教えたんだ……」
ペルリタさんは明らかにヴィートを見る目を変えた。
真剣な表情でヴィートに尋ねる。
「ヴィートくん、できるの?」
ヴィートは頷きながら言う。
「長い目で見ていただけるなら、アクセサリーを多くの人に着けてもらえるようになるでしょう。
ですけど、先に断っておきます。うまく行かなくても責任は取りません」
「そうだよね。アイデアを売った後のことはこの取引に関係ないよね。
いくらで売ってくれる?」
「大銀貨25枚です」
チェルソーさんは懐疑的な目をして俺に聞いてくる。
「その子、大銀貨25枚の価値わかってる?」
「ああ」
俺の返事を聞いて、チェルソーさんは「なんか『頭が良い』を超えてるっていうか……」と呟いた。
ペルリタさんは少し考えてから決めた。
「うん、買う。
……あ、チェルソーはどう思う?」
「俺の意見はオマケなのかよ!
……ま、ペルリタが納得してるなら買えば?」
「珍しいね。いいんだ」
「悪いかよ」
「ううん、別に。
それじゃあ、お金数えて持ってきて?」
ペルリタさんにそう言われて、チェルソーさんは扉の奥へ行った。
チェルソーさんが戻ってきて、ジャラッと音のする袋を持ってきてくれた。
それをヴィートが数えて、25枚あることを確認して、俺に渡してくる。
重みがある。質量的にも金額的にも。
俺はしっかりと鞄にしまった。
さっそく作戦会議となる。
先程まで俺が腰掛けていたソファがある、店内の右奥の話し合い用スペースに移動した。
椅子側には、チェルソーさん、ペルリタさん、ルチアちゃんが座っている。
ソファには、ミアベラ、俺、ヴィートが座っている。
ヴィートは全体を見渡してから、おもむろに口を開いた。
「ではお話します。
わたしが思いついた、多くの人がアクセサリーを身につけるようになる方法は、お子さま向けのアクセサリーを作ることです」
「子どものアクセサリーを?」
「ルチアが着けてるカチューシャを見て思いついた?」
ペルリタさんとチェルソーさんに、ヴィートはまとめて答える。
「はい、その通りです」
ヴィートは続ける。
「先ほどお店の中を見て回りました。
ペルリタさまは価格を抑えて綺麗なアクセサリーを作っていました。
アクセサリーが高価だから、手が届くようにしたのですね」
「うん。あ、一応チェルソーも作ってるんだよ」
「一応って何だよ。ちゃんと作ってるわ」
ペルリタさんとチェルソーさんは、そう言って笑う。
「そうなると、ペルリタさまとチェルソーさまは価格を抑えているのに、多くの人にアクセサリーを着けてもらえていないことが課題です。
そこでその理由を考えました」
ペルリタさんとチェルソーさんは、頷き、次の言葉を促す。
「思い至ったのが、『アクセサリーを高くて買えないと思い込んでいる人』と『アクセサリーを着ける習慣のない人』は手が届くアクセサリーを探すのか、ということです」
「た、確かにね……」
ペルリタさんは、困った表情だ。
「これを解決するために、いくつか考えてみました。
真っ先に思い浮かぶのは、アクセサリーが高いものという印象を壊すことです。
具体的には、多少粗悪でも値段を抑えて……例えば銅貨単位で買えるようにします」
ヴィートは「ですが」と逆説で繋ぐ。
「安くなければ買わない、という人が多くなるでしょう。
また、ここにある品物を見る限り、それは目指している方向性が違いそうです」
ペルリタさんとチェルソーさんは強く頷く。
ヴィートの見立て通り、粗悪なものを用意するのは主義に反するようだ。
「次に、アクセサリーを着ける習慣を作ることですが、これは難しいです。まず手元にないものを着けようとは思いませんから。
配れるほど安いものではありませんので、そこら中に配って着けてもらうという手も取りにくいです」
ヴィートは一拍置いて、続きを話す。
「そういうわけで、まだアクセサリーが高いものという印象を持っていない人を対象にするのがいいと思ったのです」
「それで、子どもをターゲットに?」
そう聞くペルリタさんに対し、ヴィートは首肯した。
「幼いうちからアクセサリーが手元にある状態で大きくなってくれれば、アクセサリーを身に着ける習慣を持つ世代が育つと思います。
実際にルチアさまもアクセサリーを身に着けているでしょう?」
ルチアちゃんに視線が集まる。
難しい話だろうに一生懸命聞いていたルチアちゃんは、「ルーちゃん?」ときょとんとしながら言った。
「ルーちゃんが時代の先駆けだね」
ルチアちゃんは、きっとよくわかっていないのだろうが、ペルリタさんに笑顔で「うん!」と返事をした。
ヴィートは手を2回叩く。
全員の注意が再びヴィートに集まる。
今のは、話を戻すときのオリアーナさんの真似な気がする。
「提案はこれでおしまいです。
わたしが告げたのはあくまでも案です。
これが全てでも正解でもなく、そうしなければならないということもありません」
「うん、わかってる」
ペルリタさんはそう言った。チェルソーさんも頷いた。
ヴィートはその様子を見てひと息ついた。
***
程なくして、ペルリタさんたちのお店から俺たちは出た。
ヴィートはルチアちゃんから遊ぼうと誘われていたが、「今日はおにいさまとおねえさまとお出かけをしたいです」と断った。
ルチアちゃんは、ガッカリしていたが、『やだ』と言うことはなかった。
そして、ヴィートとミアベラが楽しんでいる間に、俺は1度お金を置いてきてから合流した。
金額が金額だから、長く持ち歩きたくはない。
その後はヴィートにあげる本を買った。
ミアベラはというと、かわいい小物を見つけては購入を迷っていたが、今日は我慢したようだ。
ヴィートはミアベラがかわいいと言う度にミアベラが手にした商品を見ていた。
しばらくすると、ヴィートは眠くなってしまったので、お昼頃には3人で帰ったのだった。




