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第19話 貸し出し先

お久しぶりです。大変お待たせいたしました。

お納めください。

 昨日の清掃活動と見回りの後、隊長から

「フレッド、マテオの2名は明日から北城壁塔へ行け。

 一時的に領内東側へ貸し出すことになった。

 忘れ物・遅刻回数が多い、話している最中に被せて返事をする、他所に貸すには問題だらけのお前達をだ。

 お前達の評価が俺の評価だと思うように! いいか、泥を塗るなよ!」

と言われた。



 そのためプレッシャーを感じつつ、今は北城壁塔に向かっていた。


 塔の前まで辿り着くと、偶然マテオと会った。見張り番として立つ兵に身分証を見せて一緒に塔へ入った。


 中では、扉のすぐ近くにメリタ補佐官が立っていたので、マテオと俺は挨拶をする。


「おはよう、後輩達。よく来たね。

 あそこにいる2人がここの分隊長と分隊長補佐だ。

 君が聞きたそうにしていた2人だよ」


 メリタさんは前方、奥の男性2名を指差す。

 俺が聞きたそうにしていた?


 2人のうち一方は肩幅が広い……というか筋肉がすごい。兵服がパツパツになっている。今もスクワットをしている。

 もう一方は書類に目を通しながら眉を寄せている。


 ヴィートから聞いた特徴に当てはまることはすぐにわかった。


「挨拶をして、並ぶ位置を聞くといいね」


 マテオと俺は、メリタさんが示した、隊長と分隊長補佐官のもとへと向かう。



 声をかけようとしたとき、書類を見ていた男性が、顔を上げてもう一人の男性に詰め寄った。

 眉間に皺を作りながら、紙を2枚かざして見せる。


「グレゴリオ分隊長。勤務態度が悪い者など論外だ。直ちに取り消しを求める」


 詰め寄られた男性は、上げきらず下げきらない高負荷のスクワットをやめた。

 おお、逆三角形で筋骨隆々だ。


「俺のように美しい筋肉にしてやればいいんだろう? 任せておくがいい」


 サイドチェストをして見せる。


「噛み合わんな。脳みそまで筋肉でできている者の理解には苦しむ」

「褒めても何も出ないが、見惚れる気持ちはよくわかるぞう」


 多分褒めていなかっただろう。しかし気にしないどころか前向きに受け取る高い自己肯定感の持ち主だった。


「そもそも俺に説明するのが何故今日なのか。解せんな」


 眉間に皺を刻んだ男性は、ムキッムキッとポーズを決める男性の言葉を完全に無視した。

 ある意味、二人ともスルーを決め込む能力が高いのかもしれない。


「相談も考えもなく決めるなど……」

「なにも考えが無いわけではないとも」



 ここで隊長らしき筋肉な人は、挨拶のタイミングを逸していた俺たちに気づいた。


「おはようございます!!」


 すかさず朝の挨拶を口にしたマテオに、俺も続けた。


「フレッドにマテオ、よく来てくれた!」

「遅かったか……」

「俺は隊長のグレゴリオ。こっちは補佐官の……」

「紹介くらい自分で行う。補佐官のディーノだ。

 まず貴様!」


 ディーノ補佐官にギロリと睨まれる。


「はい!」

「遅刻は厳禁だ!」

「はい!」


 顔が怖かった……。

 ディーノ補佐官はマテオに目を向けた。


「次にきさ――」

「はい!!」

「言い終わってから返事をしろ」

「はい!!」

「指示は2度言わん。聞き逃すな」

「はい!!」


 ディーノ補佐官はそこまで言い、眉を寄せた。


「……今のが備考欄にあった、最後まで話を聞かない?

 まさか、返事が食い気味という意か? いや、まさか……」


 ディーノ補佐官がブツブツと呟き始めたが、気にする様子もなくグレゴリオ隊長は俺たちに指示する。


「フレッドとマテオは、列の最後尾に並べ」


 聞こうとしていた事項を指示としてもらったマテオと俺は返事をする。



 もし、ヴィートが言っていた2人が、隊長と隊長補佐官だとするなら、1つ気になることがある。

 隊長……あ、ドゥラン隊長は犯罪の起きやすい道で常に張っていたし、その前の隊長は困ったときに相談できるように1箇所に留まっていた。

 隊長や隊長補佐官という役職は見回りをしないものなら、人違いという可能性もあるのだ。


「すみません……聞きたいことがあります」

「何だろう?」

「グレゴリオ隊長もディーノ補佐官も見回りに出るのでありますか?」

「出るとも」

「何か不満でも?」

「いや、いや、そうじゃなく!」


 不満を持っているように受け取られることを想定していなかった俺は焦った。

 なんとか口から出た言葉は「2人が西門の近くから見回り始めると、何か起きたりする、みたいな……」だった。


「すみません……何でもありません……」

「要件が終わったならさっさと行け!」

「はい、すみません……」


 ディーノ補佐官に言われ、それに従う。



 列の後ろに並ぶと、俺の背中側にある入り口が開く音がした。


 扉を開いたのはルイーザ元お助け隊長だ。

 普段は……そう、監査官だったはずだ。


 監査官は、組織や指示に問題がないか見る役目だ。

 それでディーノ補佐官はピリピリしているのかもしれない。



「ルイーザ監査官、申告いたします。監査員は全員が揃っています」

「ご苦労!」


 入り口付近では、ルイーザ監査官が足を止めてメリタ補佐官に、ニッと笑いかける。


 ルイーザ監査官が再び足を動かすと、メリタ補佐官も後ろに続く。

 メリタ補佐官もにこやかだ。仲が良さそうに見える。


「おはよう!」


 挨拶を全体に投げるルイーザ監査官。

 俺とマテオを含めた16人の横に新たな列を作って、メリタ補佐官と共に並ぶ。


 グレゴリオ隊長は、全員が整列完了したのを見届けて、告げる。


「時間になったので始める。

 そこのまだ見慣れない顔の二人は、ドゥラン隊から無理言って借りてきたフレッドとマテオだ!

 皆、鍛え合えよ」


 低めの揃った返事が響く。


「報告会でドゥランから職務妨害について聞いた。

 我々の隊にも当てはまることと判断した。

 そこでフレッドかマテオのどちらか前に出て、君達が体験したことを、赤裸々に話してもらえないだろうか」


 マテオはこちらを振り向く。


「では俺が行こう!!」

「ありがとう。頼むぞ」


 市民を脅して時間を稼ぐ手口について説明が終わると、

「そういえばここ半年くらい話しかけられる数増えたよな」

「煙たがられるのとは違う問題が出てきたわけか」

と納得混じりの言葉が出る。

 中には「なんだ、俺たちに問題ないじゃん」「監査官、問題ナシって報告しといて」といった声まで上がる。


「静粛に!」


 ディーノ補佐官がざわつきを注意すると、再び皆は聴く姿勢に戻る。


 その後は全体に見回り場所の確認をして、仕事開始となった。


 俺とマテオは別々になり、もともとここで見回りをしている兵たちについて回るよう指示された。




「そんでここはまっすぐ。

 ……つか、なんでルイーザ監査官もいるんすか」

「仕事は?」


 ルイーザ監査官が「アタシも行くわ」と同行しているのだった。


「してるじゃない」

「監査官も新顔の1人なんすか」

「それいいわね、もらったわ!

 見張り班から貸し出された、でしばらく通すわね!」

「絶対、ディーノ補佐官に小言言われますよ」

「ディーノがカリカリしてるときってジワジワ笑えてくるから何言われてもいいわ」

「ツボがわかんないっす」


 雑談してもルイーザ監査官は構わないらしい。


「んで、ここ曲がるぜ」

「フレッド、ルイーザ監査官、ここまで覚えた?」

「多分、大丈夫だ。道もわかりやすいからな」

「覚えたわ!」


 歩く速度がゆっくりなのは、丁寧に教えてくれているということだろう。


「そういやルイーザ監査官、私服兵の話はどうなったんすか?」

「警戒されなくてよかったわ。

 あ、この話フレッドはわかんないわね。

 市民の中に混ざって衛兵がいたら、犯罪はやりづらいでしょ。

 それで傍から見分けられない衛兵の案を提出したら、珍しくちゃんと話が進んだのよ!」


 俺は相槌を打ちつつ耳を傾ける。


「いけると思うじゃない!?

 ……テストやってみた結果、承認取れるかわかんないわ。このままだとこの話は潰れてなくなるわね」

「え、テストまでしたのにでありますか……」

「そうよ。

 もう! 見張りだけじゃなくて、見回り班にだってもっと力を注ぐべきだわ!

 ホントにどうすればいけるかしら」


 ルイーザ監査官はちょっと悩ましそうに、しかし諦めはしない様子でいた。




 今日は、午前の報告に間に合わなさそうだということで途中から走ることになった。

 報告時間には滑り込んだが、これで見回りしたと言っていいのだろうか……。

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