公爵令嬢 エリザベス かく語りき
まあ そんなにかしこまらないで。え?大丈夫よ。話を聞いてもらいたいだけで、出版社を訴えようとは思ってないの。
え? わかってるわ。この本の作者は姿を現さない人なんでしょう?
もしかしてわたくしの身近の人かもと思ってるわ。そのぐらい本当に起きたことと類似してるもの。
大丈夫よ。そんなに怯えないで。どうにかしようなんて思ってないの。
ただ わたくしは今幸せなの。その幸せを壊さないために重版する時に訂正して欲しいと思ってね。
まあ わかりにくいから順序だって話すわね。
わたくしが王太子殿下と婚約したのはお互いに8歳の時。立派な政略よ。王太子殿下は側妃様のお子だから後ろ盾が欲しかったらしいのよ。
有名だから知ってると思うけれど、国王陛下は側妃様とは大恋愛で王妃様は政略なのよ。だから国王陛下はわたくしの父が権力者だから後ろ盾にいいと思われたみたい。
王太子殿下はねぇ、初対面からわたくしは眼中にない感じでわたくしには態度が悪かったわ。
わたくしは親に言い含められて行っただけで、王妃になりたいとかまだわかってないのにいきなり「そんなに王妃になりたいのか」ですもの。唖然でしょう?
そう世間では見目麗しく賢い王子って言われてるらしいけれど、わたくしには常に態度の悪い人だったわ。
そうねえ、邪険にされるそんな感じでしょうか。邪険にされたら、女ですものいくら見目麗しくても気持ちは冷めるものよ。
一応の義理は果たしてくれてたわ。贈り物もあったし舞踏会のエスコートもあったわ。でも贈り物は何これという感じのわたくしには似合わないものばかり。多分侍従に丸投げだったのでしょうね。わたくしには無関心だったと思うの。
舞踏会のエスコートもお義理でファーストダンスが終わるとさっさと立ち去るわ。でも他の女性を近づけるわけではなかったわ。わたくしと不仲なら間に入ろうとする令嬢はたくさんいたのよ。美人で儚い雰囲気の令嬢とか肉感的で胸を腕に乗せてくる令嬢とか、まあ多種多様に言い寄られていたはずよ。
そんなにお互いに嫌ならなぜ婚約を白紙にしなかったかって?
王太子殿下はわたくしとの婚約を白紙にしないのではなくて、できなかったのよ。わかるかしら?わたくしに不満があっても、母君の側妃様は伯爵令嬢。しかも下位の方で裕福でもない伯爵家なの。王位につくには後ろ盾が絶対必要なの。
一方のわたくしは王命なのよ。いやでも断れないのよ。わたくしの方から申し出るのは不可能なの。
だから形式的に私と婚姻して、国王陛下みたいに最愛の人を側妃にするのではと思ってたのよ。
え?そんな結婚いやじゃなかったかって?どんなに見目麗しく賢い王太子殿下でも、わたくしを愛しく思ってくれないお相手なんて、もちろん嫌だったわ。でも高位貴族の婚姻て政略がほとんどなのよ。だからお互い歩み寄る気持ちがないと絶対にうまくいかない。歩み寄れない夫婦は後継だけ設けて後はお互い愛人を持つか、火遊びの連続よ。
私は自分の両親のように歩み寄るつもりで努力をしたわ。でもお相手の王太子殿下にはその気持ちはなかった。それだけが真実よ。
話がそれたわね。小説ではまるでわたくしが王太子殿下をお慕いしていて、男爵令嬢に嫉妬したように書かれているじゃない。とんでもないわ。男爵令嬢なんて側妃にもなれない身分よ。よくて愛妾よ。そんな令嬢に私が嫉妬なんてあり得ないわ。
男爵令嬢をいつも連れているようになったのを見て、わたくしは愛妾にするのねと思っていたわ。あの方をいじめるなんてとんでもないわ。本当にいじめをやる気ならあの方はもう死んでるか、辱められて娼館よ。残酷?何を言ってるのかしら。高位貴族なら当たり前よ。
男爵令嬢は愚かにもわたくしをはめようとしたみたいだけど、きれいさっぱり返り討ちにしてやったわ。え?どういう方法でと聞くの?それはね、高位貴族には秘密部隊があるのよ。あの方は愚かにも状況証拠で押し切ろうとしたから、証拠を出してやったわ。
また話がそれたわね。そんなわけでわたくしが王太子殿下をお慕いしてるとか、嫉妬してとかあり得ませんから、訂正をお願いしたいわ。
わたくしは今幸せなのよ。王太子殿下のしでかしたことで、父がやっと彼との仲を認めてくれたの。だから作者を訴えるなんてしないわ。だからさっきの点だけ訂正してね。
あらあら長居してしまったわね。それではこれで失礼しますわ。え?相手は誰ですかって?まあ プライバシーに立ち入りますのね。そのうち発表されますから、それまでお待ちになって下さいましね。




