体育祭〜翔馬と瑠海の記憶〜
学校に入学して、初めての行事体育祭。
付き合う人も増えてくる。
6月になり、体育祭が近づいて来た。
「大倉くん、これ運んでおいて。」
「お、おう」
私は体育祭実行委員会会計だったので、忙しかった。
「お、頑張ってるな。」
「あ、大木先生。」
「大変ですよ。」
大木 悠二(おおき ゆうじ)
私のクラスの担任|(3年B組)
「そう言えば、瑠海見てないですか?」
「桜木か、見てないな。」
「そうですか…」
どこ行ったのかな?
あ、もしかして…
〜学校の屋上〜
屋上に着くと、瑠海が空を見上げていた。
「瑠海〜」
私が呼ぶと、屋上の柵に寄りかかっていた瑠海が振り向いた。
「やっぱり、ここに居たか。」
「なんだ〜、珠央か。」
私は瑠海の隣で柵に寄りかかった。
私達は1年生の体育祭のことを思い出した。
「あれから2年か〜」
「そうだね。」
今でも思い出すんだ。そんなことを思っていると…
「結局、2人共が参加した最初で最後の体育祭になっちゃったな…」
瑠海が静かに言った。
「いや、翔馬が死んだみたいになってるけど!」
「あ、確かに。」
2人で顔を見合わせて笑った。
立原 翔馬(たちはら しょうま)
瑠海の彼氏。中2になる春に家の事情で転校してしまった。
「今年は来れるの?翔馬。」
「たぶん、来れない。」
「やっぱり。仕方ないね。」
瑠海は来て欲しいんだろうな。体育祭の準備に戻るか。
(ん、翔馬の記憶か?)
体育祭か、めんどいな〜
椅子ここにおけばいいのか。
「あのさ、ここ1つ空けといて。」
「え、あ、はい。」
あの子かわいい。
(翔馬って、一目惚れしたんだ…)
〜体育祭当日〜
「翔馬、今日は負けないから。」
「いや、俺に言ってどうするんだよ。俺らまだ、1年だぞ。」
あ、昨日のあの子だ。
「楽しみだね。」
「中学の体育祭って、すごいんだろうね。」
まあ、いいや。とりあえず、席着くか。
あ、あの子昨日椅子並べに来てた子だ。
(え、もしかして翔馬と瑠海の記憶?)
「あ、どうも。」
「どうも。」
やっぱり、かわいいな。
(男って単純…)
〜体育祭 お昼すぎ〜
「あのさ、君名前なんていうの?」
「俺?」
「いや、あんたしか居ないじゃん。」
「そうか。俺は立原 翔馬。君は?」
「私は桜木 瑠海。」
びっくりした。いきなり話しかけてくるなんて。
この子面白そう。
「友達いたみたいだけど…」
「うん。今、実行委員のシフトだから。」
「そうなんだ。君は実行委員入らなかったの?」
「私は部活優先だから。」
「へぇ〜」
2人きりで話すなんて!
疲れたな〜
(なんか、ややこしい…)
「応援パフォーマンス、始まるみたいだよ。」
「そうか。」
今ぐらいだよな。2人きりで話せるのって。
「あのさ。」
「なに?」
なんか迫力あるな。まあいいや。
やば、ギャルっぽいところ出ちゃった。
「今日の放課後、時間ある。」
「あるよ。」
「じゃあ、屋上来てよ。」
「いいよ。」
ばれたかな?さすがにベタすぎたかな。
なんだろう?まあ、どうせ珠央と空は実行委員で忙しいだろうし。
〜放課後〜
「なに?」
「え…」
気付いてない! でも、よかった。ベタでもいけた。
なんで、え、なの。
(気付かないの…)
簡潔に、簡潔に。
「あ、あの。俺と付き合ってください。」
あ〜緊張する。
え、告白!初めてされた。いつも、告白する方だったのに!うれしい!
「はい。よろしくお願いします。」
(あ、終わりか。こんな感じだったんだ…)